※この作品はR-18です。

憧憬が憧憬でなくなった日   作:サリエリキキ

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ダンメモのデートオアアライブのコラボイベントを見て、ベル×アイズでエロ書いてみようと思い立ちました。


ベル、アイズにレベルで追い付く。
ヘスティアファミリアとロキファミリアと共同でダンジョンへ。
深層で強敵とバトル、ベルとアイズで殿。
何とか倒すも、はぐれてしまう二人。
伝え合う想い。


……このプロットで、どうしてこうなったんだろう。



起①

 怪物の強烈な一撃を受けて受け身も取れず壁に叩きつけられ気絶したアイズ・ヴァレンシュタインが意識を取り戻したのは、全身を刺すような冷たさが覆った瞬間だった。

 

(目がっ!?)

 

 反射的に目を開けるが視界はボヤけ歪み真っ暗でほとんど見えない。加えて眼球を叩く冷たさと体に巻き付くような重み。反射的に目を閉じてから、今自分が冷水の中に居ると直感した。

 泳げないアイズは、自分が真っ暗で水底の見えない冷水の中に居ることに、パニックになっても仕方がなかった。だが、アイズの心の片隅も、恐怖と混乱は占拠出来なかった。

 

(ベル!?)

 

 閉じる直前見えた、大小の岩石と砕けた巨大な魔石と小さな魔石の土石流に埋められるように存在していた存在のことしか脳裏には無い。

 

(私は溺れない私は溺れない私は溺れない)

 

 自己暗示を終えて再び目を見開き、視界の片隅に捉えていた存在を見当をつけていた場所の辺りで見つけ出し、我武者羅に手足を動かして自分より深く沈んでいた少年にたどり着く。雪崩を打つ土砂と岩石の流れから()()()()逃れていた体を抱き締める。

 間違いなく第一級冒険者でなければ体力が尽きる愚行。だがその甲斐はあった。

 冷水の中で抱き締めているからか、一際暖かく感じる少年の温もりを感じたような気がして胸に暖かい想いが宿る。

 だが、それを満喫している暇はない。

 ベルは脱力して全く動きがない。息をしているかすらわからない。

 

 見上げれば、頭上には水面を波立たせて流れ落ち続ける土砂と岩石。

 加えて、ダンジョン深層の地底湖では何時水棲の怪物が現れるかも分からない。

 泳げないアイズにはベルを抱えたままこの状況から逃れる術は一つしかない。

 ついさっきまで戦闘中だった怪物は魔石が土砂に紛れていたから死んだはずだ。ならば、上からこの地底湖を覗いている存在はいない。

 なら──

 

(お母さん、お願い)

 

目覚めよ(テンペスト)

 

 水中で発動してくれるか不安だったが願いに応えてくれた。いや、恐らく母が助けてくれたのだ。

 水中で作った風の壁を蹴り、水中から脱して意外と近くに存在した壁に向けて宙を蹴り、壁にデスペレートを突き刺す。

 

(断崖絶壁、か……)

 

 愛剣が望み通り突き刺るまでの間、遥か上で燃え盛る──多分、ベルの聖火の英斬で──ダンジョンの壁を明かりとして、それを頼りにこの地底湖に休めるところがあるかと探したが、一瞬では見つからない。

 どうするか? と考えていたのは愛剣が突き刺さるまで、突き刺さりその上に危なげなく立った瞬間アイズの関心は抱きしめた少年にだけ集まる。

 

「ベル!?」

 

 呼びかけるが反応はない。全身傷だらけのベルは完全に意識を失って目を閉じている。

 べったりとずぶ濡れの髪と蒼白の顔面は、出血した体で体を急に冷やしたからだろう。

 折れて骨が突きだした左腕と穴が開いた脇腹から染み出て雫となってポタリと垂れていく血液が、ベルの命の残滓のように見えてしまう。

 そんな死人と間違えそうな様相に、息を飲みかけるが抑える

 

「ベルっ!?」

 

 息をしてない。

 でも、心臓は動いている。微かにだが、動いている。

 息さえ戻せば助かる! 

 

「っ」

 

 治さなければ。

 抱き締めたままベルの左腕にそっと手を当てる。手を添え木変りにして、もう片方の手でホルスターをまさぐり万能薬を取り出し口に含む。

 

「んっ」

 

(あっ……ベルの唇って私より厚いんだ)

 

 自力では飲み込めないベルと唇を合わせるとき、何故か自然と目をつぶりながら何の脈絡もなくアイズは思う。

 そんな場合ではないと理解しているが、初めて触れた異性の唇の感触で思考が埋め尽くされる。心の中の幼女も真っ赤になった頬を押さえながら、わあっわあっと歓声を上げるだけで役に立たない。

 ベルとアイズの唇、唇と唇同士が触れ合ったときのプニッとした感触をアイズは一生忘れることがないだろう。

 そういえば、私の傷はどうしたんだろう。気絶する直前、間違いなく私は傷だらけだったのに、今は治療に伴う痛みと違和感はあっても傷一つ無い。

 他に人は居ないからベルが治してくれたんだろうけど、どうやってかな。

 そんなことを考えないと、冷えきって固まったベルの唇の何とも言えない感触でアイズの頭は一杯になってしまい体が動いてくれない。

 ベルの命がかかっているのだと、心の中で自分の顔を叩く幼女に頷き、ベルの唇を舌で割る。

 そのまま、アイズは口内を舌でまさぐってベルの口内から喉への道を確保しようとする。

 

(舌が冷えきって固まってる)

 

 冷えきったベルの舌を包むようにアイズは舌を蠢かせて、出来た隙間から万能薬を流し込む。

 僅かにベルの顔色が戻る。

 

「んっ」

 

 気を良くして間を置かずに、二度目、またベルの唇に唇を当てるときにどうしてか目を瞑り、出来る限り鼻息がベルにかからないように気を付けてしまう。

 抱き締めるベルの顔がどうしても見れない。

 

「んっ……ちゅっ、ちっ、んんっ、ちゅふっ、ちゅぴ……っぃ」

 

 夢中で、何度も口に含んだ万能薬をベルの口に送り込む。その度に、ドキドキと胸の鼓動が速くなる。今までに感じたことが無かった熱を感じながら、ベルの回復を祈り、癒えていく折れた左腕を丁寧に元の形に戻しながら万能薬を飲ませ続ける。

 初めて他者と重ねた唇で、口移しで飲ませ続け──考えちゃダメ考えちゃダメ考えちゃダメ……

 

(起きて……ベル、お願い……起きて!)

 

 ベルの唇に噛みつくようにして、舌を絡めて固定し万能薬の通り道を作り、アイズは口に含めた万能薬を一気に送り込む。

 その万能薬がベルの喉を通った瞬間……

 

「ごふっ、ごほっ」

 

 ベルの体が大きく跳ねた。咳き込むようにして水を吐き出しながら、呼吸を始める。

 ベルの呼吸が戻ったんだ。これなら助かる。

 へたり込んでしまいそうな安堵に、ベルの吐き出した水以外の暖かいものがアイズの整った顔を流れ落ちる。

 なら──このまま、念には念を入れて口付けして飲ませないといけない。間違いない。人命救助の為には幾らでも念を入れるべきだ。

 心の中の幼女も満面の笑みを浮かべてさんせーと頷きながら腕を輪っかにすると頷いて輪っかにした腕を自分の胸に押し込んでいる。

 

(そうだよね。これだと、ベルを感じられない──ううん。落としてしまうかもしれないよね)

 

 ベルが手に持っていたナイフを丁寧にホルスターに仕舞い抱き合った時の万一の危険を無くしたアイズは、腕を輪にして、きゅっと優しくアイズの胸にベルの胸が当たるように抱き締める。

 普段は気にもならない互いに着た鎧を邪魔に思い、無骨な鎧同士が奏でる音がどうしてか耳障りに感じる。

 でも、鎧をつけていないところからベルの温もりが伝わってきて胸の奥からポカポカした心地良い想いが沸き立って上書きされる。

 

「不思議……」

 

 ベルを抱きしめていると、こんなにも心が落ち着くのはなぜだろう。何かとても大切な、無くてはならないものを抱きしめているような安らぎが、体全体を包んでいく。少しでも長く触れていられるように、優しくくるむように、アイズはベルを抱きとめる。

 

「……ベル……」

 

 想いのままに万能薬を含んで目をつぶりながらベルの口へ運んで唇を合わせる。

 救助の為とはいえ、ベルと口付けをしていることが、普段の倍以上に速く大きく心臓を激しく打ち鳴らしてしまい、アイズの胸が破裂しそうになる。

 

「んっ」

 

 万能薬をベルの口の中に送り込む。

 ベルの喉が蠢くのをみて、ちゃんと飲み込んでくれたのだと理解した。

 そう、無事に飲み込んでくれた。

 ……アイズの舌の補助なしで。

 

「むぅ」

 

 ベルの体が治っている証なのに、嬉しいどころかむっ、とした気分になるアイズ(天然)

 心の中の幼女が、ムスッとした顔で舌を突きだしている。これが必要だと。

 

「そうだよね……ベルを助けてあげなきゃ」

 

 具体的には舌だ。舌の補助が要る。

 ベルは傷ついた体で冷水に浸かったショックで気絶してしまうほどの重症なのだ。

 万能薬をさらに飲ませる必要がある。その為に舌を入れてベルの舌を絡め取って、万能薬が喉に確実に流れ込むようにしなければならない。と、心の底から本気で考えるアイズ。

 

「ベル……んっ……」

 

 ベルの呼吸が少し整った瞬間に唇を重ねる。

 唇を合わせているだけで喉が乾いてしまい、アイズはゴクリと唾液を飲み込んでから、万能薬を口に含む。

 ベルの脱力した舌を絡めようとアイズの舌が恐る恐る動いて触れる。

 舌と舌が触れ合ったとき、ベルがびくっと震えたから、ベルの後頭部にアイズは腕を回し、唇を固定する。

 膝枕の時のようには逃がさないというように。

 

「あっ……」

 

 ベルの口内に侵入したアイズの舌が水の気配を感じて、アイズの閉じられた瞼が震える。

 万能薬によってか、アイズの唾液か、おそらくその両方で、ベルの口の中は唾液で一杯になっていた。

 躊躇いなく吸い取る。

 

(ベルの……味だ)

「んくっ」

 

 口の中に広がる自分とベルが混ざった味をこくりと艶めかしい白い喉を動かして嚥下すると、ほっこりと胸が暖かくなるアイズ(幼女込み)。

 

(ベルが息できなくなったらいけないよね)

 

 万能薬を飲ませると沸きだす唾液を啜る。

 飲む度に、ベルの白い色に自分が染まられていく。優しくて暖かい思いに満たされていく。

 欲しい。もっと欲しい。もっとベルの色に染められたい。

 心の中の幼女が口をパクパクしてねだる。

 止められない。止まらない。止めたくない。

 衝動に押し流されるまま、アイズはまるでしゃぶるようにベルの舌をねっとりと舐め回す。

 

「んんっ……んふっ……ちゅくっ……」

 

 万能薬飲ませる、沸きだす、啜る、ベル呼吸。

 万能薬飲ませる、沸きだす、啜る。ベル呼吸。

 万能薬飲ませる、沸きだす、啜る。ベル呼吸。

 

 じゅるじゅる、ちゅるぢゅる、んくんく、はぁはぁ。

 湿っていても肌触りの良いベルの白髪を優しく撫でながら、口内に侵入させた舌で絡め取り飲ませて嚥下たびに、アイズの鼻息が段々強く荒く艶やかになっていく。

 

「んっ……ベル、ちゅるっ、ちゅっ、こくっ、はっ、んんぅっ」

 

 ベルの名を一度呼ぶと胸に溜まった熱が痺れるように甘くなり、股に熱い衝動めいたものが訪れる。

 未知の感覚。心の中の幼女も戸惑ったように体のあちこちを撫でても同じく理解できない。でも、どうでもいいと頷く。

 そう、どうでもいい。未知の感覚だけど恐くはない。温かくて幸せなものなのだから。

 ベルと唇を重ねるたびに、綻んで柔らかくなり、今では乙女の笑みを浮かべている自分に気付かず、アイズはベルの舌を絡め取り唾液交じりの万能薬を飲ませる。

 断崖絶壁に刺さった愛剣の上で、アイズによるベルの治療っぽい何かは止まること無く続く、区切りが訪れるまで続く。

 

(嘘……)

 

 ……万能薬(区切り)が空になった。

 …………ベルはもう安定して呼吸できてる。

 だから、もう、口移しで飲ませなくても…………いいん、だよね。

 心の中の幼女が涙目で嫌だ嫌だと空を飛べそうな勢いで首を振り続けるのを、こちらも嫌々宥めている内にハッと気付く。

 あまりの偉大な発見にアイズ(幼女込み)の心の中でピコーンと『!』が立った。

 間違いない。

 

(ベルの口の中、まだ冷たい)

 

 なら、暖めないと。

 そう、また、舌が冷えて気道を閉じてしまうわけにはいかない。それに万能薬だけだとベルも飲むの大変だから私の唾液も飲んでもらわないと。これは、必要なことなんだ。

 心の中の幼女が満面の笑みで大きく頷くと舌を伸ばしてペロペロと動かす姿に、心の底から同意する。

 これまで生きていた内で、ここまで彼女(幼女アイズ)と意志が一致したことはない。

 

 ……傍から見ればベルの肌の色は青白くとも生気を取り戻し、呼吸も安定しており、口の中の温度がベルのほうが低いように思えるのは生来の体温差の誤差でしかなく、ただの気のせいだと断言できるのだが。

 

「んふっ、んっ、ちゅるっ、ちゅっ、ちゅぅぅっ……ごくっ、ふんっ、ふぁぁっ、んぐんぐ」

 

 今この場にそれを指摘できるものはおらず、アイズは無我夢中でベルの口内を舌で舐めしゃぶり、唾液交じりの万能薬をベルの口に流し込む。

 ベルの口の中を舐めて温もりを与えながら万能薬を飲ませて治療に励んでいる(アイズ視点)内に、万能薬(区切り)がさらに一本無くなってしまった。

 

(万能薬だけだと不安だよね)

 

 ベルに精神回復薬(NEW区切り)を口移しで飲ませる準備をする。

 その前にベルの傷が全部塞ぎきっているのかを確認しないと。

 手探りでベルの体をまさぐる。

 折れていた左腕は大丈夫。自由に動くだろう。ベルが解毒の為に解毒効果のある短刀を自分で突き刺した傷も含めた大小の傷も癒えている。

 だが……

 脇腹近くに血の感触。あった。間違いなく、敵に、あの怪物の触手みたいなモノに貫通された傷だ。

 小さく、深い、焦げた傷。倒れて動けなくなったティオナを庇って受けた傷。

 ベルが回復薬を飲んでいたからなのか。水面に上がった時には傷は僅かに出血していたが、今は万能薬で完全に塞がっている。これ以上の治療の必要がないように見える。

 

(でも……)

 

 触手に貫かれたままのベルが、触手に埋もれた本体? を鷲摑みにして魔法(ファイアボルト)で(自分ごと)燃やした姿を思い出す。

 

(…………)

 

 その一撃で、誰の攻撃もダメージが与えられなかった原因である、敵の液体状の膜を内部から弾き飛ばして本体を露出させたのはいい。まだいい。

 

(…………でも)

 

 敵が本体を露出させられた動揺によって僅かに開けてすぐ閉じた毒霧の壁の隙間を通して、もう片方の手で足元に倒れているティオナを対岸のフィンたちの所へに放り投げるような無茶を見せられたのは良くない。

 触手に貫かれたままでそんなことをした姿を見せられたアイズの心臓にとても良くない。

 その隙に怪物の半身をアイズが吹き飛ばして、ベルに刺さった触手を無力化して助けても心臓に悪い。

 特に、必要だったとはいえ、触手が刺さったまま『鐘の音』を鳴らし始めたのがとても悪い。

 具体的には、大好きな音を聞いた内心の幼女が、ベルのあまりの姿に瞳に涙をためて、止めて、と悲鳴を上げたくらいに。

 

(…………直接振りかけないと)

 

 昔の無茶ばかりしていた自分を見ていたリヴェリアに強烈な共感を抱きながら、アイズは万能薬と念のための解毒薬を直接振りかけて癒した。

 

 

 さて──

 

「ぅ……」

 

 ツンツンと唇を舌で突いてやれば、かすかにピクリと震えるベル。

 

(ベルっ!?)

 

 内心の幼女が花が咲いたような笑みを浮かべる。アイズの顔もほころび、ゆっくりとベルの唇を開く。

 

「んちゅっ」

 

 細い舌をベルの口内に侵入させると、縦横無尽にツンツンと突き続ける。

 歯茎を突き、頬を突き、口蓋を突く。

 

「ぅ……」

 

 その度にかすかに震えるベルに、内心の幼女がむふーと鼻息を荒くして胸を張る。

 ベルの口の中をまさぐるアイズの舌。舌を絡め取り、歯茎や口内粘膜を舐めると、アイズは肌が泡立つような痺れたような熱を体に感じた。

 

「はあっ」

 

 ベルの唇から離れるとき、橋のようにアイズとベルの唇の間にかかった唾液を吸い取りながらアイズの口元から吐息が漏れる、息継ぎと艶めかしい感嘆の声。

 

「んんっ」

 

 治療(アイズ主観)の心地よい余韻を保ったまま、アイズは自分の首筋をベルの白髪に擦り付ける。

 長時間の治療で熱を持ち粟だった肌に擦り付けられるベルの白髪はとても心地よく、荒い息を吐きながら擦り付け続け──

 

「あんっ」

 

 うなじをベルの白髪で愛撫されたアイズの腰に甘い電撃が走り、艶めかしい声、初めての嬌声を上げてしまう。

 自分の喉から出たことがない濡れた声と、初めて体験した甘い痺れと熱くなる胎の中に、驚いたアイズ(幼女込み)が同時にビクリと震えて動きが固まる。

 聞かれていないかと口を押えてキョロキョロと周りを見渡して、何もないことを確認すると安堵の吐息を吐く。

 

「んっ、んんっ」

 

 そして嬉しそうな幸せそうな表情をして天を仰ぐと、すぐにベルの唇に唇を合わせて治療を再開した。

 唾液混じりの精神回復薬が乗った熱い舌をベルの舌に絡ませると、体の芯が蕩けたようになる。

 ぬるぬるとした柔らかい感触が、ベルとくっついている幸せを呼び起こす。

 

(溶け合ってひとつになっちゃいそう)

 

「ちゅ、ちゅぱっ……れろっ、あ、ちゅ、んっ……ふ、ふぅ……」

 

 アイズは柔らかな太腿や二の腕などの敏感な部分を、ベルの体温を感じ取りながらベルの引き締まった肉体に擦り付ける。その度に体に訪れる甘い痺れを堪能するために。

 そんな深い治療を続けていると、断続的に腰の痺れが襲ってくる。

 無垢な体が初めて味わい刻み込まれていく痺れを心地よく感じながら、アイズは精神回復薬が無くなるまで存分に治療を堪能した。

 

 

「はぁ……んっ」

 

 ベルの唇の周りについていた唾液を飲み込む。

 これで一通りベルの治療は終えた。

 念のためもう一度手探りしても傷は無い。

 ……アイズが気絶するまで無事だったはずの左腕が、何故折れていたのかが分からないが。

 

(ううん。まだ、そんな余裕はない)

 

 強敵は居ないとはいえ、何時怪物が出現するかわからない。何があったか思い出すのは後だ。これからを考えなければ。

 何とか休める場所を探さなければならない。

 傷は塞いだが、ベルもアイズも体力の限界に近い。

 準備もなく冷水に飛び込んだのだ。高レベル冒険者の二人であっても、即死は回避できても寒さによる消耗は回避できない。

 体温を取り戻さなければ、ほどなくして力尽きる。

 

(その為に、ベルの治療を手早くしたんだから)

 

 だから、早く体を休めて温めないとと焦るアイズ。

 

 だが、大嘘である。

 いや、アイズ(幼女込み)の主観では嘘をついているつもりは全くないのだろうが、事実を客観的に見れば、アイズの主観は嘘であり事実ではない。

 アイズがベルの治療に費やした時間と薬の量は、断じて手早くなどとは言えない。

 客観的に見れば、ベルが息を吹き返したときに一度治療を中断して、ベルの口に万能薬の容器を入れて飲ませながら休憩場所の捜索にかかるべきであり、二本目の万能薬と精神回復薬は必要なかった。

 何らかのトラブルに見舞われなかったのは『幸運』としか言いようがない。

 

 客観的に見て、時間の許す限りベルを味わい堪能し貪ったアイズは、ベルを強く抱きしめながら静かに上を見上げる。

 

(このまま、ベルの火に照らされて暖まりたいな)

 

 心と体も暖まる遥か上で、ベルの火によってダンジョンが燃え盛る熱風を感じていると、激しい誘惑に駆られる。

 内面の幼女もベルの火に顔をあげて手を大きく広げて、好きな人に抱かれているかのような満面の無垢な笑みを浮かべているが、第一級冒険者の経験が待ったをかける。

 遥か彼方、燃え盛るダンジョンの壁の回りに小型の飛行型モンスター。

 ベルの火に夢中になって飛び回る火食鳥の群れ。

 遠目でも、何体か傷を負ったように妙な飛行をしている火食鳥であっても迎え撃つには地形と調子が悪すぎる。

 餌に夢中で此方には気づいていないとはいえ、安心できる状況ではない。

 

 ベルの火を貪っている火食鳥にムッとする内心の幼女を宥めながら視線を巡らせる。

 

 眼晶も破壊されたから連絡が取れない。

 ティオナを受け止めた後、毒霧の壁を迂回して自分たちを捜索しているに違いないフィン達の救助を待つのが上策。でも、ティアナのような第一級冒険者者さえ立てないほどの負傷を負っていた状況では、救助にはかなり時間がかかるだろう。

 可能ならばベルが意識を取り戻したら、自力で緊急時の避難場所まで辿り着きたい。

 

(やっぱり、最優先は休息)

 

 そんな風に思考しているうちに岩陰になっているところが二重に見え、目を凝らす。

 

「あった」

 

 切り立った崖の隙間に洞穴らしきものが見えた。静かに剣を抜きながら壁を蹴る。

 

 たどり着き、天然の扉に体を入れて、回りを見回す。

 深さは三十Mほどで、立ち上がっても拳二個分の余裕がある。恐ろしく静かでモンスターの気配がないどころか、外からは天然の扉で見えない上に、入り口から漂う何ともいえない香りがアイズたちの匂いを誤魔化してくれる。

 仄かに壁の一部が光り、明かりと熱を発している。近づけば、十分冷えきった体を暖めてくれる。

 その上、壁の盛り上がった所からコンコンと澄んだ水が湧いている。

 水を掬い口に含む。飲める。ベルにも飲ませた(もちろん口移しだ。決まっている)

 ホルスターに有る非常食と合わせれば、十分な休息が取れる。

 

「あ……」

 

 何かの加護を得たような出来すぎたまでの幸運な場所に一瞬自失するが、第一級冒険者としての経験が立ち直させる。

 経験と、教えられた知識がここが何処かと示している。

 

(安全地帯……良かった)

 

 自分でも恐ろしいほど落ち着いた行動が取れたていたが、それはベルが居たからだ。

 ベルの重みと暖かさがなければ、深層で冷水に放り込まれた時に、どうなって居たのか分からない。

 念のために壁に傷をつけた安全な場所に、自然と力が抜けて膝を突き、安堵の息を漏らしながら体を数分間休める。

 

(よし……)

 

 暖まった体から、体を真綿のように締め付けていた倦怠感が薄らいだ。ならば、次に何をするか。

 

(暖めないと)

 

 部屋が温かくとも、冷たい衣服を着たままでは意味がない。

 アイズはベルの鎧に手をかけゆっくりと外した。

 

 

 

「あれ……」

 

 ベルを脱がすために背を壁に預けさせても、何処かおかしい。

 鎧を脱がせてから、上衣を脱がそうとしても上手くボタンを外せない。

 

(私が不器用なんじゃないよ)

 

 誰に言うわけでもなくそう呟く。何というか間合いが違うのだ。アイズが把握していたベルとの間合いと今のベルとでは間合いが違う。

 どうしてかな、不思議だな。内面の小さな幼女も手を組んでうんうん唸ると、表情を明るくして手を叩く。

 

「あ……」

 

 うん。そうだ。違うわけだ。

 

「背……伸びたんだ」

 

 少し前まで同じくらいの目線だったのに。

 座っていても、アイズより指二つ分はベルの方が高くなっていた。

 

「立ったらもっと違うのかな」

 

 多分、拳一つはベルの方が高い。このままだと、何時かベルの顔をアイズは常に見上げるようになるだろう。

 あどけなさが残ったベルの少し大人びた顔を見る。何時の間にか知らないベルが増えた気がして、アイズはちょっと落ち着かない気分になる。

 

「あ……」

 

 無意識のうちにベルと拳一つ分の距離にまで近づいて、ベルの顔立ちを見つめていたアイズは、眠っているベルのうっすらと開く唇を見、呼吸を感じ、そこに自分が口づけた時の感触と味わいを思い出してしまう。

 

「う、ぁ……」

 

 動悸が増す。血潮が騒ぐ。からだじゅうがほてる。心がポカポカしてずっとベルの顔を見ていて居たいと思う。内面の幼女が真っ赤になった顔を覆って地面をごろごろする。

 とても楽しくて暖かいのに、どうすれば良いのか分からなくなって途方に暮れてしまう。

 

(こんなの……知らない……リヴェリアも教えてくれなかった……)

 

 その内に、温まった体から筋肉のこわばりがとれていく。

 弛緩していく筋肉と警戒に反して高まる緊張。

 内面の幼女さえ顔を真っ赤にしたままピクリとも動けない中、緊張のあまりにアイズの体が僅かに揺れて、アイズのほっそりとしていてもしっかり肉のついた太腿がベルの投げ出された手に触れてしまう。

 

「んあっ」

 

 太腿に触れたベルの手に、アイズは甲高い濡れた声を出し腰だけでなく下半身全体に走った甘い痺れを感じてしまった。

 形のいいなまめかしい太腿が、ベルの指──何時の間にか男の節くれだったものになっていた指を沈めて、ベルの指の形を覚える。

 気持ちがいい。でも、恥ずかしい。そして、くすぐったくて、下半身が甘く疼く──

 

「っ……!?」

 

 バッと音を立てて背中を仰け反らせて万歳をするアイズ。

 あわあわと目を躍らせながら両手をバタバタさせて少しでも落ち着こうとする。

 

「そ、そうだ、ベル……ぬ、濡れてるから……ふか、拭かないと……」

 

 パニックになったアイズは、声を躍らせながら何かしようと必死に探す。

 何故あれだけの甘い痺れを覚えたのかという考えから目をそらすために。

 

「布……」

 

 手近に布はない。布が必要だ。布。布。

 少し湿っていてもいいから布。

 それでベルの水気を拭いて、拭いて……

 内心の幼女が、その後何をしようかと真っ赤になって頭を抱えてわめいているが、何もしない、するわけがない。ベルの体を楽にしてあげるためにするのだ。

 その後のことはその時考えればいい。

 そんな決意をして全身をまさぐるが、肝心の布が見つからない。ホルスターにも入ってない。

 

(どうしよう……)

 

 このままではベルが……

 深刻な苦悩に満ちた顔──傍から見ても苦悩しているとわかるほどの──をするアイズの脳裏に閃光が走る。

 

 あ、そうだ。

 いや、でも、これは。

 一瞬脳裏をよぎった案に、アイズの心臓が跳ねて大きく揺れる。

 心の中の幼女もギョッとした目をしている。

 それほどの恥ずかしい案。でも

 

 ──仕方ないよね。

 

 心の中で困った顔で笑う幼女と言葉が重なり合う。

 アイズは頬を赤く染め、恥じらうように体をくねらせると、そっと自分の上衣に手をかけた。

 




幼女アイズ便利ですね。

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