月光そのもののように輝く絹のようにきめ細かな髪。
白くなめらかな磁器のように綺麗な肌。
すらりとした余分の肉がついていない体。
誰もが振り返る美しい顔。
乳房も尻肉も十分に付いてはいるが豊かとは言えない。それを、もう少し女としてのふくよかさがあればと思うか、少女らしい初々しさと思うかは、贅沢な好みだろう。
そんな白く輝くような少女が仄かな光に照らされているのは幻想的なものさえ感じられる。
「んしょんしょ」
やっていることは酷く幻想からはかけ離れているが。
「目、開けちゃ駄目、だよ。みちゃ、駄目だ、からね」
そんなことを意識の無い少年に呟きながら、パンツ一枚まで服を脱がしたベルの上半身を布で拭くアイズ。
片手でベルを拭いて、もう片方の手で自身の胸を隠しながら拭く。
何故なら、今アイズは上半身どころか下半身まで靴下とブーツ以外身に付けていない一糸まとわぬ姿だからだ。
ベルの体を拭くために着ていた服を脱ぎ絞ったからだ。
出来る限り布を増やす必要があるから、下着も脱いだ。
ただ、それだけだ。何もおかしくない。
なのに、ベルが目を覚ましてアイズの裸体を目にするのではないかと思うと心臓がはねる。
「前、ベルに、見られたんだよね」
自分の裸体を余すこと無くベルに見られた時のことを思い出し羞恥に頬を染める。
18階層で覗かれた時は驚きのあまりの体が硬直してしまった。今思い出すと、頬が赤くなり体が火照ってしまうのに、不快な気持ちが一切出て来ない。それどころか、もっと見てほしくて、ベルが自分の体をどう思ったのか知りたいと──
「っ」
頭を振って変な考えを頭から追い出す。
何故か気恥ずかしくなった。だから、控え目ながら美しい流線を描く乳房の頂点で尖る、薄桃色の乳首を一層手で隠しながら、膝を立てるような姿勢になり秘所がベルの視線に映らないようにする。
不安定な姿勢になると、もっと気恥ずかしくなった。
湧き上がる乙女の衝動から目を逸らそうと、アイズは今脱いだばかりの服でベルを優しく拭く。
「うぅ……に、匂わない、よね」
自分の体温が残っている服、特に下着でベルの裸の上半身を拭いていると、そんなことが気になってしまう。
確かに汗はかいたけど、水で流れたから、大丈夫だし、今はベルから水気を拭うのが最優先だし。
もしアイズの考えを育ての母が聞いたら、まずアイズの耳を掴んで部屋の隅へと連れていくだろう。
それから正座させて「気にするのはそこじゃない。何で下着まで脱ぐんだ。嫁入り前の娘が男の前で裸になるんじゃない。男をパンツ一つになるまで脱がすんじゃない。いや、まず、下着で拭くのを止めろっ」とお説教の時間になる。
しかし、此処には育ての親は居らず、いっぱいいっぱいのアイズの行為を止める者はいない。
んしょんしょと懸命にベルの上半身から水気をとっていく。万一の警戒だと言い訳しながら視線を洞窟の外に向けながら拭う。
不安定な姿勢で、視線をそらしたまま拭えばこんなこともおこる。
「あ……」
距離感を間違ってしまった。つるんとベルの皮膚で滑りバランスを崩す。
バランスを保つのはそこまで難しいはずが無い。なのに、アイズは胸を反らして自分の胸がふにょんと音を立てるようにぶつかった。
ベルの右上腕に、ぶつかってしまった。
「わざとじゃ、ないよ…………」
言い訳にもならない言葉をつぶやくと、無言で体をそのままベルに預ける。
ぶつかったアイズの裸の乳房が変形していき、ベルの上腕を乳房で挟み込んだ。
頂点に座す桜色の色素の薄い乳首がベルの温かさに触れて、その熱が伝わる様に次第に尖っていくのを感じながら、顔を火照らせたアイズは視線をあちこちにやる。
ベルの引き締まった腕に当たって包むように変形するアイズの胸、それに見覚えがある。
(あ、お母さんのおっぱいだ……)
何時の間にかアイズの胸は母の胸と遜色無い大きさになっていたと、アイズは初めて自覚した。
自分の胸がこんなに大きく柔らかい、女の胸なのだと自覚する。
(なら、子供も産めるのかな)
月の物以外の性教育を未だされていないアイズは、具体的にどうやって作れば良いのか分からなくても、自分がもう子供が産める体なのだと本能で自覚する。
……誰かとの子供を産む。例えば、今触れ合っている男性と、とか。
何故か胸がドキリと跳ねた。
(ベルの体、硬い……)
腕を自分の乳房で挟んだまま、拭うベルの体の硬さがやけに気になる。
細身だがしなやかな筋骨が隆々と締まった体。ステータス頼りにせず、ひたむきに日々鍛え上げなければこうはならない。
そのことに、微笑ましいと今までは考え、ベルの純粋な思いに触れて心が透明になっていた。
なのに、今ベルの裸体を見ると眩しすぎて落ち着かない。
(胸が……苦しい)
沸き立つ鼓動から反らした先にはベルの顔、アイズより高くなった男の子の顔。
あどけないのに精悍さが増した顔。
見ているうちに、息づかいが次第に速く熱くなっていく。
「あぅ……」
喉の奥から鼻にかかった吐息が漏れ出る。無意識の内にアイズがベルの顔に近づけていたせいで、ベルにかかってしまう。
今まで出したことのない熱を持った吐息が、ベルにかかってしまう。羞恥に、ビシリとアイズの体が固まる。
内面の幼女がアワアワとぐるぐる走り回る内に、状況が動いた。
「ぅ……」
ピクリとベルの瞼が震えて、唇が僅かに開く。アイズよりも厚くて硬く引き締まった弾力のある、少し前まで重ねるとこれ以上なく安心していた唇が僅かに開いて息が漏れる。
「あ……」
胸の鼓動が抑えきれない。だけなら、まだ、いい。
ベルの吐息が顔にかかったアイズの体内で、じわりとした未知の熱さが、アイズの胸の先と下半身に集まる。
桜色の先端に集まって先端がさらに尖り、鼓動が速くなる。下半身には経験した事の無い妙な熱が灯──
「……っ!?」
かああと全身が熱くなる熱で意識を取り戻した。
慌てて、すぽんと音を立てて乳房をベルの上腕から離し、未知の感覚を追い出そうとフルフルフルフルと頭を振るアイズ。
「よしっ」
パンパンと顔を叩いて、何とか落ち着く。内面の幼女が真っ赤な顔でバシバシ地面を叩いているが落ち着いた。
自然な動作(自分では)で、またベルの体を拭い始める。
自分の体温が残った服に、ベルの体温と匂いが染み付いた水気を染み込ませる。
「……」
何だろう、とてもいけないことをしている気がする。リヴェリアが知ったら頭を抱えそうなことを。
思考が逸れてまたバランスが崩れた。
「ひゃんっ!? ……はぁ」
普段の倍にまでに大きさを増して、赤みが乗った薄桃色の乳首がベルの胸板で擦れて電撃が走り、アイズは目をつぶって身震いする。
熱い吐息を漏らした蕩けた顔、熱く火照った肢体がさらなる快楽を期待する。
内面の幼女が顔を真っ赤にして目を塞いでいる。広がった手で目が隠れていない。ガン見している。
「う、ぅぅ……」
あまりにも熱っぽい苦悶に似た吐息を漏らす。
アイズが性教育を受けていれば、自分が性的興奮を覚えていると理解できただろう。
しかし、アイズがそんな時間があれば自分を鍛えていたのと、育ての親がハイエルフ故に、アイズは性知識に関して真っ白だった。
だから、何をすればいいのかどころか、今自分がどうなっているのかさえアイズには理解できない。
「んぅ……ベル……」
どうにかして欲しいと、気絶したままのベルを一瞬だけ切なげな眼で見て、乳房を胸を誇示するように張る。
そうすると、尖って敏感になった乳首がプルンと柔らかく揺れる。
ツンと乳首に引っ張られるように上を向いた乳房は非常に形がよく、男の情欲を刺激させる。
「あっ、ふっ……」
たおやかな腰を折れんばかりに胸を張れば、綺麗な敏感な乳首がベルの胸板で擦られ、ゾクゾクと背筋を走る電流のような甘い刺激にアイズは体を震わせて熱い吐息を漏らす。
未知の刺激に腰が引けるアイズだが、直ぐに元の姿勢に戻りベルの胸板で乳首を擦る。
「んっ……」
目を閉じてパクパクと口を閉口しながら甘い刺激に少し高い声を出す。
決して強烈なものではない、じれったい甘い刺激。だが、それがアイズという少女が初めて味わった快楽。気になる異性の体で初めて刺激された官能だった。
ベルの胸板で何度も擦った右の乳首は固く隆起しているのに、もう一方はほぼ普段と変わらない姿。男が見ればいやらしいと感じるだろう。
「あっ、んっ……」
だが、アイズにとってはそうではない。どちらも起たせようと起っていなかった方の乳首をベルの胸板で擦りだす。
「ベル……」
ベルの首筋に顔を押し付け、懸命に鼻をひくつかせて男の匂いを嗅ぐ。そのまま舌を出す。鼻で香りを吸い取り、舌で味を舐め取る。
ぴちゃすんすんぴちゃすんすんと淫らと呼ぶにはあまりに幼い音を立てて、アイズはベルを堪能する。
ベルの胸板で擦られる乳首がもう一つと同じくらいに起ってから、名残惜しそうに体を離して見下ろす。
見下ろせば映るのは、ぷっくりと大きく膨れて紅くなった乳首。見慣れた自分のものではないかのような乳首は、さらなる刺激を、誰かに吸われるのを待っている。
「ベルっ……」
ベルに口に含んでほしい。そうでなくとも、ベルの胸板でずっと擦りたい。
甘い刺激がもっと欲しい。ベルに刺激して欲しい。ベルに気持ちよくしてほしい。
高まる欲望のままに、アイズはベルの胸板に乳房を近づけていく。
……怪我をして気絶しているベルに。
「んっ……んぅぅっ……」
首を振る。
内心の幼女がぺちんぺちんと頬を叩く。
なけなしの良識と理性が欲望を押しとどめてくれた。
怪我人にとんでもないことをしようとした自分を責める。
そのまま、アイズは荒い息を吐きながらベルの体を自分の下着で丁寧に拭いた。