他作品で色々あり、ちょっと思いついたので投稿しました。
「に、にいさあああん」
「へ?」
帰路につくベルの全身は固まった。
前方にはガネーシャファミリアの皆さんと、何か魔法陣出しているアミッドと、「どうして来てしまうのですか?」と慟哭するアリシアと──何か救いを求めてるようにこちらに手を伸ばすレフィーヤ。
一度目をつぶる
「兄さん兄さんって」「え? どうしてベルくんを兄さん」「レフィーヤちゃんの方が年上じゃないか」「ファミリアさえも違うよな」「まさか、ゼウスの如くアブノーマルプレイをっ」「まさか、そんなベルくんは違うと信じていたのに」
にいさあああああん。
どうやら、間違いなく自分がレフィーヤに兄さんと呼ばれているようだ。
目を見開く。
慟哭の表情でこちらに手を伸ばしてにいさんにいさんと泣き叫ぶレフィーヤが居る。
ああ、現実だなあ。羞恥に焼き尽くされそうになるこの感覚こそが現実だ。
色々な修羅場を潜り抜けたベルは、先ず受け止めた。
どうするか。と思考しようとしたがやめた。レフィーヤには思考して迷うのを待てる余裕がどう見ても無い。
そんなベルの頭に浮かんだのはリューの顔。心を壊し過去へと帰ってしまったリューの顔だった。
同じだ。レフィーヤの顔に浮かんでいるのは同じだ──「待ってください全然違います」と叫ぶリューの顔を打ち消す。なんて無礼なことをしたのだろう。リューがそんなことを言うはずが無いのに。
間違いない。
レフィーヤの瞳に浮かんだあまりにもの哀しい色を見間違えることは無い。
ならば、すべきことは明白だ。恥を棄てる。
「どうしたのレフィーヤ」
「!!?? に、にいさん?」
「そうだよ。レフィーヤ」
ぱあぁっ、救われた満面の笑みをレフィーヤは浮かべた。
こいつ正気かという目をアリシアは向けた。
そうかそう来たかという目をアミッドは向けた。
周りの野次馬は変態を見る目でベルを見てきた。
そんな視線など、ベルにはそよ風みたいなものだった。レフィーヤが笑顔を浮かべてくれた。それだけで十分だった。
それだけでありとあらゆる恥を棄てることが出来た。
「「「ゼウスっ」」」周りの神々が一致団結して戦慄に慄く姿に心は揺さぶられているが、何とか踏みとどまりレフィーヤの確認する声にこたえた。
「兄さん」
「うん。レフィーヤ」
「や、やっぱり、兄さん、なんだ」
「うん。そうだよ」
「っ…………」
感極まったように震えるレフィーヤに対して、ベルはニッコリと笑い手を広げた。おいで、と。
「に、にいさぁぁぁんっ!!!???」
ドンっと全身でしがみ付いてくるレフィーヤを小動もせずに受け止めた抱きしめたベルは、ゆっくりと優しくレフィーヤの頭を撫でながら視線をアリシアへ飛ばした。
問いかけるベルの視線に、アリシアは「ああ──解放された」透明な笑みを浮かべて頷いた。
ミアハファミリア。明日。連れていく。とハンドサインで送ったベルに。
よろしくお願いします。と深々とアリシアは頭を下げる。
その間も、にぃさぁん、にぃさぁん、しんじてたぁぁっ、わたしをすてないってしんじてたぁぁっ。と逸れたことを棄てられたと認識していた幼子が、必死に探していた親の腕の中に入ったそのものの姿で泣き叫ぶレフィーヤ。
「年上を妹に」「奥さんが居るのに」「子供まで生まれるのに」「これが英雄」「英雄ってやっぱりクズじゃないと成れないんだな」「良くも悪くも常人じゃねー」「所詮はゼウスの孫か」「祖父そっくりね」「幻滅したわ。結局はゼウスの孫は孫っ」周囲のドン引きの視線を意にも介さず、そんな彼女の頭を優しく撫でながらベルは決意を固める。
今度こそ護る。いや、リューさんも治してみせると。「え? どうしてそうなるのです?」と驚愕の眼差しをしているリューの顔が何故か浮かんだが全て打ち消す。
大切なのは、レフィーヤを安静にして眠らせ翌日病院に連れていくことなのだから。
「にいさぁ~ん、にいさぁ~ん」
「はいはい兄さんですよ」
すりすりと全身を擦り付けてくるレフィーヤをおんぶしながらベルは帰路に就く。
思ったよりも豊かな胸が擦り付けられるたびに「これは浮気じゃありません」と心の中のアイズに言い訳しながら。