あと数話はストックがあるので、よろしければご覧になってください。
SEX1 百:アップライジング
――全人類の8割が【個性】と呼ばれる特殊な能力を持つ超人社会において、その個性は様々なことに使われています。その最たる例が、ヒーロー活動でしょう。
人命救助、暴徒鎮圧、災害復興など、個性を用いて人助けをする彼らヒーローには、人々からの多大なる尊敬の念が送られています。悲しむべきは、そのヒーローの最大の敵は同じ個性を持つ人間という部分ですが、今はそんなことはどうでもいいことです。
要するに、個性と一言にいってもその内容は千差万別あるということ、そしてその個性を最大に活かせる仕事や役目などは人それぞれだということなのです。
私の個性は【創造】。物質の分子構造を理解することによって、自身の肉体から生物以外の物質を作り出せるという個性です。
決して万能というわけではありませんが、私の個性は活用方法が広く、様々な分野で役立てるということは想像に難しくありません。だからこそ、進路に関しても悩み続けていました。
この個性をどう活用するか……? そのことを考え続けていた私は、その問題にはっきりとした答えを出せずにいました。しかし、ある出会いによってその迷いは文字通り吹き飛ばされることとなったのです。
物語の始まりは中学校三年生に進級したその日、HRで進路希望の話をされた後の帰り道のことでした。
「はぁ……」
家までの帰り道を1人で歩いていた私は、胸の内の蟠りを表現するような大きな溜息を吐く。薄暗いトンネルの中は、まるで今の私の心を表しているようだ。
通っている中学校の第三学年、つまりは最上級学年に進級した今日、先生はHRにて学校を卒業した後の進路についての話をなさりました。
どの高校の、どんな学科に進むのか? 先生は冗談半分、本気半分といった様子で全員ヒーロー科に進むだろうと仰っていましたし、あながちそれが間違いだということもないのですが……私は、その答えを肯定しながらも本当にそれでいいのかと悩み続けていました。
私の【創造】は、大体の物事に役立てられる個性。それが故になんにでもなれますが、バッチリと当て嵌まる答えが見出せないことが悩みの原因です。
大半のことに役立てるのなら、その中でも一番多くの人たちのためになる職業、つまりはヒーローになるのが最適解なのかもしれないとは思っているのですが……いまいち、それでいいと自分に胸を張って言えないのです。
(私が、本当になりたいもの……。私にしか出来ない何か。【創造】の個性ではなく、八百万百という人間が必要な何かが、この世界のどこかにあるのではないでしょうか……?)
私の個性は優秀です。しかし、優秀過ぎるが故に葛藤を抱いてしまうこともあります。
私の中で価値があるのは【創造】の個性の方であり、八百万百という人間から個性を抜いたら何も残らないのではないか……? そんな考えが拭えないのです。
そうではない、そうならないように必死に今まで努力し続けてきたではないかと自分に言い聞かせても、心の何処かではやはりネガティブな想いを抱いてしまう。勉学ならまだしも、身体能力は人並みである私は、自分が机に齧りついている頭でっかちというイメージがありました。
こつん、こつんと足音がトンネルの中に響く。薄暗い、車の1台も通らないこの道をたった1人で歩く私の視線は、前ではなく下を向いています。
自分に自信がない、なりたいものも見つからない、自分の将来すらもイメージ出来ない……そんな自分自身が嫌で、どんよりとした暗い感情が胸の中に満ちていく。光の見えない、闇の中を延々と歩いているような、そんな重苦しさに涙が零れそうになったその時だった。
「君は、八百万 百くんだね?」
「はっ!?」
不意に声をかけられて前を見た私は、そこに信じられないものを見た。
トンネルの出口で光を背にして立つその男性の体は、女子の平均値以上の体格を持つ私よりも二回り以上は大きく、筋肉質だ。浅黒い肌がいきり立つ筋肉をより力強く見せ、非常にパワフルな印象を覚えます。
しかして、私が目を奪われたのはそこではありませんでした。私の驚きの視線が向かっているのはその男性の股間にある、その……男性器の部分だったのです。
ぴっちりとしたトレーニングウェアのようなコスチュームを着ている男性の股間の逸物は、猛々しく勃起していました。そういった淫猥なことには詳しくない私にもわかるほど、男性の肉棒は大きく、規格外れのサイズを誇っているように見えます。
(い、いけないっ! こんな、ふしだらな真似をしてはいけない、のに……っ♡)
勃起した陰茎を女子に見せつける、筋肉隆々としたぴっちりコスチューム姿の男性……こんなの、完全に変質者に決まっています。一刻も早く逃げるか、通報するかしなければなりません。
ですが……私はその男性の陰茎から目を逸らすことが出来ませんでした。何故だか、彼の巨大な性器に視線が吸い寄せられ、それを見ていると体が熱くなるのです。
まだ結婚も出来ない未成年の身でありながら、あんな卑猥なものに興味を示すだなんてどうかしている。そう頭では思っていても、もう1人の私がその興奮を肯定しているかのように身体のコントロールを寄越してはくれない。まるで湧き上がる思いに従って、このままでいろと私自身にそう命じているかのようでした。
「あ、あなたは何者なのですか? どうして、私の名前を……?」
私は懸命に視線を男性の濃い顔に向けて、弱々しい声で質問を投げかけました。
そうすれば、男性は私の視線がちらちらと自分の男性器に向いていることを理解しながら、真っ赤に染まった私の顔を真っ直ぐに見つめて自己紹介を始めます。
「失礼、怖がらせてしまったね。私は【ビック・チンポ】という名で活動を行っているエロヒーローさ。八百万くん、私は君をスカウトに来たんだよ」
「す、スカウト……? 私を、ですか……?」
「そうさ! この話は君のご両親には既に伝えてある。これがその証拠だよ」
「これは、お父様の字……! お母様の分もありますわ……!」
そう言いながら……び、ビック・チンポさんが差し出してきたのは、とても見覚えのある字で書かれた2通の手紙でした。
そこには、お父様とお母様の字でビック・チンポさんは信用出来る殿方であるということと、私の選んだ道ならば何も言わずに全力で応援するということが記されており、彼が既に2人に話を通してあるという事実を裏付ける証拠を手にした私は、幾ばくか冷静になった頭で再びビック・チンポさんへと視線を向けると質問を投げかけます。
「これはどういうことですか? あなたは私を何にスカウトしようとしているのです?」
「……八百万くん、この話は君の将来を大きく変えてしまう可能性がある。だから、立ち話で簡単に伝えるようなことはしたくないんだ。君が、私のことを信用してくれるというのなら……この車に乗ってほしい」
そう言って彼が視線を横に向けると、音もなく1台の車が私たちの横に停車しました。
高級そうに黒光りするそのリムジンには運転手がおらず、何らかの方法で遠隔操作されていることがわかります。
(車の中には私とビック・チンポさんのみ。外部に話が漏れぬよう、しっかりと措置を取っている……それだけ、この話が重要だということなのでしょうか?)
情報漏洩の危険性を限りなく排除したその対応に思考を深めつつ、私は彼の言うことに従うかどうかを迷っていました。
明らかに変質者としか思えないこの男性と、車の中という密室空間に2人きり……そんなの、絶対に危ないに決まっている。襲われたりしたら、逃げられないではありませんか。
乗るべきではないと、私の理性は言っていました。こんな危ない橋を渡る必要はない、そんな正しい意見が私の頭の中で反響しています。
しかし、思考ではない何かは私に車に乗れと訴えかけてくるのです。それは先ほどビック・チンポさんの陰茎に視線を集中させていた、理性なんかよりも何十倍も強い意志の力でした。
後に、それが私自身の女としての本能ということに気が付くのですが、この時の私はただただ自分の中で激しく暴れまわる初めての感情に翻弄されていて、心の整理をつけるのがやっとだったのです。
そして、私が気が付いた時には……私は自ら車の後部座席に乗り込んでいました。
ビック・チンポさんはそんな私の判断に頷くと、私と同じく後部座席に乗り込んで車のドアを閉めます。こうして、密室空間を作り上げたリムジンは音もなく発車すると、静かに街の中を走り始めました。
(窓にスモークが貼られている。これでは外から車内の様子は伺えませんわね)
視覚に関しても対策がなされているこの車の厳重さにごくりと息を飲んだ私は、ビック・チンポさんに声をかけられてびくりと体を震わせます。
「八百万くん、悪いが携帯電話を預からせてもらうよ。これは決まりなんだ、悪いね」
「は、はい、わかりました……」
言われるがままに携帯電話を渡してから気が付いたのですが、これでは外部との連絡が取れないではないですか。何かあった時、私の身の危険を外部の人間に伝える術が奪われてしまいました。
正確には奪われたというよりか、自分で差し出してしまったわけなのですが……まあ、最悪【創造】の個性を使えば連絡手段は何とでもなりますから、動揺せずに話を聞くことにしましょう。
「それで、その……ビック・ちちち、チンポ、さん……私にどういったご用件があるのでしょうか?」
ちんぽ、などというはしたない言葉を口にしてしまったことに羞恥心が駆り立てられます。しかし、どこか解放的な気持ち良さを感じてしまうのは何故なのでしょうか……♡
「っっ……!!」
と、若干恍惚とした思いに体を震わせていた私は、至近距離にいるビック・チンポさんから真剣な眼差しを向けられていることに気が付いて心臓の鼓動を跳ね上げました。
近くで見る彼の顔は思っていたよりも精悍で、筋肉隆々とした大人の男性からこんな至近距離で見つめられる経験などなかった私には、とても威圧感を感じる代物だったのです。
「……八百万 百くん。改めて、話をさせてもらおう」
「は、はい……!!」
すぅ、と息を吸う音が聞こえる。ふぅ、と息を吐いた音が聞こえた。
深い、とても深い呼吸を行い、私にそれを伝える覚悟を決めたビック・チンポさんは、一音一音はっきりと発音するようにして、私へとこう言いました。
「この国が誇るエロヒーロー養成機関【色情学園】に入学し、女性トップエロヒーローを……性の象徴を目指してくれないか?」
「え? は? えええぇっっ!?」
ビック・チンポさんが発した言葉の意味を理解しきれず、されど彼が何を私に求めているかを理解した私は、車の中で素っ頓狂な叫びを上げてしまいました。
エロヒーローや性の象徴など、聞き慣れない単語が並ぶそのセクハラじみた発言に顔を真っ赤にして慌てる私ですが、不思議とビック・チンポさんに嫌悪感を抱いたりはしませんでした。
普通なら、最低! の一言でも口にしながら横っ面を叩いたりするくらいはしてもいいのにと思いつつ、そう思わないのは彼の表情があまりにも真剣だからなのだろうと自分でその理由に当たりをつけます。
「あ、あの……何なんですか? その、エロヒーローや色情学園というのは? 私に、何を求めて……?」
「すまない、話を飛躍させ過ぎてしまったね。順番に説明していこう。まずはエロヒーローからだ」
そうしてあわあわとせわしなく思考を働かせていた私は、多少の落ち着きを取り戻した後にビック・チンポさんにそう尋ねました。そうすれば、彼は聞き慣れない単語や私が知り得ぬ情報について、詳しい解説を始めてくれます。
「エロヒーローというのは、性奉仕や風俗関連の仕事が活動の大半を占めているヒーローのことを指すんだ。性犯罪を取り締まる役目も我々エロヒーローが務めているが、諸々の事情で存在を公には出来ないことになっているのさ」
「18禁ヒーローであるミッドナイトさんとはまた違うのですか?」
「そうだね。我々は自分たちがヒーローであることを世の中に隠して生活している。普段は私のように風俗関連の仕事をしているが、有事の際には極秘で活動するといった感じさ。ヒーローであることを公表し、教職にも就ける彼女とは大きな差がある」
「そう、なのですか……」
ビック・チンポさんが語るエロヒーローというものの在り方にどう反応していいのかはわかりませんが、私たちの生活を陰から守ってくれている存在だということはわかりました。
そのことに感謝しつつ、されど疑問がないわけでもない私は、それを彼へとぶつけてみます。
「ですが、それならば何故性犯罪専門のヒーローとして活動しないのですか? その、破廉恥なことをする必要はないのでは?」
「うむ、尤もな疑問だ。しかし、我々のもう1つの活動もまた、この世界にとってはなくてはならないものなんだよ。……世界中の人間が個性を発現させるようになって、長い月日が過ぎた。世界は超人社会に相応しい形へと変化を遂げていったが、それは風俗業界も変わらないんだよ」
「……確かに、仰っていることの意味はわかります。一言に人間といっても、個性によってその容姿は大きく変わるものですからね」
「ああ、そうさ。複数本の腕や脚を持つ者、軟体生物のような無数の触手を持つ者、人間というよりも獣のような容姿を持つ者といったように、見た目だけでもこれだけの差が生まれるものだ。そして、超人社会に入ったことで、そういった数々の個性を活かした過激なセックスを求める人々が多く現れるようになった。新しい時代の流れに乗るべく、多くの企業がそういった作品を発表していったが……根本的な問題として、女性の負担が大きくなりすぎるというものがあるんだ」
悔しいことに、ビック・チンポさんが言っていることの意味が分かってしまう私は、ふむと頷いて思考を巡らせます。
個性を活かしたセックス……というのはよくわかりませんが、仮にそういったことを行うとしたら、大まかに分けてパターンが2つに分かれると思うのです。
つまり、男性がペースを握るか、はたまた女性がペースを握るか……どちらの個性を活用し、そういった行為の主軸とするかで内容が決まる。しかし、ここには大きな問題があります。
「女性の個性を活かした性行為を行うならば、その女性への負担はやや軽くなる。ですが、その反面行為の内容がワンパターンになりがちになってしまう、ということですよね?」
「……流石は八百万くんだ、その通りなんだよ。どれほどの逸材でも、やることが同じならば飽きが来てしまう。個性が性行為に特化していればいるほど、プレイの幅は狭まるということが多い。どんなに頑張っても3作品くらいでその女性の個性を活かしたセックスは飽きが来始める。では逆に男性の個性を活かしたプレイはというと――」
「女性の負担が大きい、ですよね? この世界の個性は本当に多岐に渡っている。その中で性行為に使えそうな個性を持つ男性を10人集めたとしたら、10個の過激な特殊プレイが生まれます。それを、たった1人の女性が体験するというのは、些かハードという他ないでしょう」
「……私の話からそこまでの情報を導き出せるとは、恐れ入ったよ。八百万くんの聡明さは私の想像を遥かに超えている。そんな君ならば、私が何を求めているかもわかっているんじゃないかな?」
そう、私を褒めながら尋ねてきたビック・チンポさんの言葉に一瞬口を紡いでしまう。彼の言う通り、私が自分が何を求められているかは理解していたが、それを口に出すのは何となくはばかられた。
されど、期待に染まったビック・チンポさんの瞳を見ていたら黙っているのも申し訳なくなってしまい……観念して、私はそれを声に出します。
「ビック・チンポさんは、私にその過激な性行為を行う女性になってほしい……そうですよね?」
「正解だ。数々の個性を活かした過激な変態プレイに対応し、それを楽しめる女性エロヒーロー……風俗業界を救い、不足している女性のエロヒーローの代表として活動する存在、それこそが【性の象徴】ということさ。八百万くん、私は君ならばそれになれると信じている。だからこそ、エロヒーロー養成機関である色情学園に入学してほしいんだよ」
大真面目に、真剣に、目の前の男性が信じられないことを言ってのける。まだ14歳の女子中学生である私に、破廉恥な行いをする女性になってくれと大の大人が懇願するこの状況は、控えめに行って狂っているとしか言いようがない。
しかし、私も本心ではこの誘いに悪い気分はしていませんでした。その理由が自分でも何故だか分からずに混乱する中、私の口からは自分の意思を無視したある言葉が飛び出してしまいます。
「1つ、お聞きします。どうして、私なら性の象徴になれると思うのですか? 私の個性が万能で、どんな状況にも対応出来そうだからでしょうか?」
考える前に、言葉が出た。この質問はきっと、私が常に抱えている不安と疑問なのでしょう。
どうして、私を必要とするのか? ……【創造】の個性を持つ私だから必要されているのかもしれない。必要なのは私ではなく、私の個性なのかもしれないという思いが頭を過ぎる中、ビック・チンポさんは静かにその答えを話し始めます。
「理由は3つある。1つは今、君が言った個性さ。しかし、これは3つの理由の中で最も価値が薄い理由だ」
「では、2つ目の理由とは何なのでしょうか?」
「君のその中学生離れした体だよ。その大きな胸と尻、大人も顔負けの発育したエロボディは、エロヒーローにうってつけだ。八百万くんはとても魅力的な女性の体をしているよ」
「そう、ですか……」
「しかし、これもまた副次的な理由に過ぎない。私が君を推す理由は、また別にある」
またセクハラじみた発言をされてしまいましたが、それを喜ばしく思っている自分がいることに私自身も気が付いていました。
【創造】の個性ではなく、八百万 百としての自分を褒められたことが嬉しくてたまらないのでしょう。それが例え、どこからどう考えても犯罪的な誉め言葉だったとしても、私は個性以外の部分を認められたことに幸福を感じてしまいます。
そして、ビック・チンポさんが次に語ってくれたことは、私が彼の話に乗る決意を固めるのに十分な感激を与えてくれたのです。
「私が八百万くんを推す最大の理由。それは、君のその性格と勤勉ささ。君は、優秀な頭脳を持ちながらもそれで決して満足しない。様々な物体の分子構造を頭の中に叩きこんでおけるだけの知識量を持ちながら、まだ上を目指している。何より、君は誰かの役に立つことを心の底から喜べる優しい人間だ。ヒーローを名乗る人間ならば、そういった正しさを持つ者ではないと駄目だと私は思っている。私にとって最も価値があるのは、君の個性ではなく君の心の美しさなんだぜ」
「っっ……!!」
ドクンと、心臓が跳ね上がった。それはきっと、今までずっと私が求めていた言葉を聞けたが故に起きた反応だったのだと自分では思います。
学校のクラスメイトは、先生たちは、口を揃えてこう言う、「創造の個性は凄いし、それを使いこなす百も凄い」と。それは私の一番の価値が私自身の個性にあると思っているから出る発言で、学校で努力を重ねている私の姿を見ているはずの彼らはそれをまるで無視してそんなことを言い続けていました。
中には、「いい子ちゃんアピールがウザい」や「絶対に周りを見下している」といった心無い暴言を吐かれたこともあります。直接言われたわけではなく、あくまで陰口として耳に挟んだ程度ですが、それが私の周囲の人間からの評価だということでしょう。
彼らは私自身の努力なんて見ておらず、私の個性だけを見ている。八百万 百という人間は【創造】の個性ありきの存在で、そこが一番の価値であると……そう、思われていると思っていました。
でも、この人は……ビック・チンポさんは、私の努力を評価してくれた。私の中で最も価値があるのは、個性ではなくて私自身の心であると言ってくれました。
誰かにそう言って欲しかった。家族ですら言ってくれなかった求めている言葉を、この人は投げかけてくれた。それが、堪らなく嬉しい。
「八百万くん、君は……エロヒーローになれる。なるべき人間だ。個性なんか関係なく、八百万 百って女の子が今の私たちには必要なんだよ」
体がかあっと熱くなる。涙が溢れ、視界が滲んでいく。
嬉しかった。本当に嬉しかった……私自身を見てくれる人が、私の個性以外のものを認めてくれる人が、家族以外に現れた。この喜びを、感謝を、表すことが出来るのなら……私はなんだってしようと、心の底からそう思うことが出来た。
答えは決まった、ビック・チンポさんの話に乗ろう。そう決意し、答えを返そうとした瞬間、動いていた車がピタリと止まった。驚いた私が窓の外の景色を見てみれば、そこは私の家の前でした。
「話はここまでだ。もう一度言っておくと、君のご両親はこの話を知っているし、君自身の決断を尊重するとも言っている。あとは、八百万くん自身がどうしたいかで決めてくれ」
車から私を降ろし、荷物と預けていた携帯電話を返したビック・チンポさんは、最後に折りたたんだ紙切れを渡すとこう告げました。
「もしも君にその気があるのなら、次の金曜日に……2日後だね。そこに書かれている連絡先に電話をしてほしい。……待っているよ、八百万くん」
そう言い残すと、ビック・チンポさんは再び車に乗り込んで私の前から去っていきました。
走り去る車を見送りながら、私は連絡先が書かれた紙を見つめ、冷静になってから自身の進路を決めようと昂る鼓動を抑えつつ、屋敷の中に入っていきます。
でも、やっぱり、心を震わせた感激を忘れることは出来なくて、あの喜びに身を浸らせている私が、2日後にどんな選択をするかなんて、もうこの時点からわかり切ったことでした。
こうして、私は新たな出会いと共に自分の進むべき道を見つけ、その道を歩み始めました。
言い忘れていましたが、これは私が最高のエロヒーローになるまでの物語です。
本番行為のある2話までを投稿します。そちらもどうぞ。