休暇が明けて仕事に戻った頃、エルヴァさんや士郎は試合に臨むにあたっての準備をしていた。そんな最中にルーマニアに行っていたというイリヤちゃんとクロエちゃんが、セイバーさんやイリヤさん、それとエルマとともに帰国した。
一緒に行っていた筈のランサーさんとランスロットさんは、妹のエルヴァちゃんともども、まだまだあちらで仕事があるらしく今回は戻らなかった。切嗣さんは事態の推移を見守った後、一度スイスに寄ってから帰るそうだ。
毎度のこと安穏な仕事だろうと思い込んでいた俺は、実は魔術師の家と家との決闘で、霊脈の主導権を巡る戦いでもあったと聞いて大変驚いていた。
「大丈夫なのか?」
「ええ。本国から送られてきました報告書によれば、無事に解決したようですわ。それよりも研究者として見逃せないリポートがありましてね」
珍しくルヴィアさんはコーヒーを飲んでいた。しかも陶磁器のマグカップでなく、エルヴァさんが良く使っている木のお椀だ。名をククサといって、フィンランドの北部、以前行ったラップランド地方の伝統的な食器だった。
サーミにはこのお椀が幸運を喚ぶという言い伝えがあって、俺も友人となったヨハンネスから贈られて持っている。エルヴァさんのはルヴィアさんが贈ったものだ。きっとルヴィアさんも誰かから贈られたククサを大切に使っているのだろう。
このコーヒー、実は西欧で一人頭の消費量が1番多いのがルクセンブルクで2番目がフィンランドだった。以下、北欧四カ国とオーストリアにスイスが続く。
エルヴァさんがコーヒー好きなのもちゃんと理由があったのだ。そんな事をオーギュストさんに教えられて驚いたものだった。
ルヴィアさん自身は紅茶派だけど、時々こうやってコーヒーを楽しむ時がある。それは大抵、今回のような難しい書類を読んでいる時に限られた。
「その見逃せない事って?」
興味が湧いたのか凛さんがルヴィアさんに尋ねた。彼女は相変わらず紅茶だ。エルヴァさんとお揃いのククサは、アウトドアのスープ用でしか使っていない。
「コンフリクトと言いますか、バッテイングと言いますか。例えて言うなら、1台のパソコンに二つ以上のアンチウイルスソフトが入ったかのような」
そんな表現に凛さんは目をパチクリとさせていたが、それは不味いんじゃないか? パソコンなら動作が重くなったり不具合が出たりする。それが魔術的なものならどうなるんだ? 俺の説明で凛さんもわかったようで心配していた。
「生憎その通りですのよ。とても珍しいケースですが、魔術的に起こりましたの。そのルーマニアのある街で大掛かりな魔術が二つ以上使われており、なおかつ内一つは誰かの意図ではなく、家々の結界が相互に作用してそうなったと言いますか。ファースト・オーナーやセカンド・オーナーですと見過ごせない話なのですわ」
ある家の張った結界が隣の家の結界と反応し、それが長い年月でその地域全部を覆う結界となった。結界と言ったって、この場合は防御目的とかそういうのでなく、魔術的見地から言うところの、神秘が行使されるある範囲の事を指している。
「その偶然に増殖し起動した結界が、そこに住まう者達の命運を決定づけた……そこも驚きなのですが、これとは別にもっと巨大な城砦跡や遺跡等を起点とした結界も発見されたそうですわ。まぁ、これは度々の侵略を味わったが故の防衛的な結界ですが。しかしこれと、その家々の結界。更にはアインツベルンを迎え撃とうとして新たに張った結界とが反応して、とんでもない事になっていたようですの」
「具体的には?」
「行動や思考が、ある特定の方向へ定められるのです。今回のそれは滅亡に向かうようになっていたと言いますか……」
「ああ、なるほど。やっとわかった。ルヴィアはそれが本国の霊地や、この冬木にも当て嵌まるのではないかと心配だったのね?」
「ええ。勿論断定はしませんわよ? ですが倫敦なども、あの家、このフラットと真っ先に思い浮かびますわね」
「そうよね。時計塔の地下工房はともかく、学科ごとにあれだけ校舎が離れているのはそこがあるからだろうし」
「ええ、プラハもそうでしょう。意外ですが、そういう工房が近い場合の弊害などは、学府や研究機関でなければわからないものなのかも知れませんわね」
凛さんが俺に説明してくれた。一つ一つの礼装や魔術道具に於けるバッテイングはすぐに気付くから改善されやすい。けれど街全体を覆うような大掛かりな術だと気付き難いだろうと。
「こういう諸々の事情が明らかになって、当初は敵対者を滅ぼすとまで言い切っていたエルヴァが折れたそうですわ。それで当代は蟄居、次代は時計塔から離れプラハの協会に籍を移すそうです。それと相手の召喚したサーヴァントを借り入れる契約も交わしたそうですわね。こちら、別添えの手紙ですが、アーチャーさんを一度連れて来て欲しいとありますわ」
「顔合わせかしら?」
「でしょうね。それとシェロ?」
「何だろう?」
「こちらをどうぞ。ランスロットさんからあなたへの手紙ですわ」
受け取った手紙にはこうあった。『今のシロウを客観的に評価して下さる最良の人が居ました。是非会って教えを乞いなさい』と。
『では、倫敦のキャスターは?』
『何がどうなってああいう者が召喚されるのか。これがレプリカ故の弊害なのでしょうか……』
大聖杯の前でラズヴァンが答えた。さすがというか、そこがレプリカというか。目の前の巨大な大聖杯は簡単に解体できるようになっていた。その分、城砦に掛けられた術式頼みなところが多々あった。
まぁ、決闘用だったからこんなものだろう。簡素化できるならそれに越したことはない。
またそういう急拵えの聖杯だったので、とても『願望器』とは言い難い。なので当初から召喚するサーヴァントには、道理のわかる者を厳選したそうだ。
ヴラド3世にしてもケイローンにしても、他のサーヴァントの説得役を進んで請け負ってくれたという。あの二人には感謝しか無いとラズヴァンは話していた。
なるほど。そういう英霊と懇意になるのはメリットが大きそうだ。何より今の私は人手が欲しかった。またレンタルできるのなら、そのレンタル料はアイスコル家を潤すだろう。
だからその二人を現世に留めおこうと、大聖杯を解体するのでなく改造する事になった。その調査のために地下へ降りてきていたのだった。
『いかがですか? イケそうですか?』
『お姉様方の協力があれば何とかなりそうです。それにバーサーカーとキャスターを還せば、あなた一人でもヴラド3世とケイローンを支えられるでしょう。それだけのマナがこの地にはあります』
『領主殿を?』
『あの方は私欲を棄ててあなたの願いに報いようとしていましたね。それはあなたに共感したからですよね?』
『ええ。巻き込まれ堕ちて行くばかりの我々を憂いて下さった』
『なら、次はあなたの番ですよ。ヴラド3世とドラキュラは別物だと周知活動をなされば良いでしょう。ネットでの発信、パンフレットの配布、資料館などの設立……それが取りも直さず新たな観光資源となるかも知れません』
『そうですね。ですがケイローンは?』
『こちらの英霊や、戦闘に向いた魔術師を鍛えて欲しいと思います。そして、そちらが許可して下さるのなら、ロシアへも同行して頂きたいと。中継基地などが落成すれば、そちらのパーティにはセレニケさんにも参加して頂きますよ』
『娘をそちらの協力者に?』
『ええ。アインツベルン主催のパーティに招待される……それは名ばかりかも知れませんが、少なからずそれでセレニケさんは安全です』
『感謝します……』
結局ルーラーの存在は、大聖杯の安全弁が作動しただけだった。ただ、レプリカでの誤作動に近かったので、憑依という変わった現象が起きたのだった。憑依されていた女性は、アインツベルンの者が責任を持ってフランスへ送り届けた。
今、ここにはお祖父様の手の者が20数名入っている。そしてこの大掛かりなコンフリクトを一つ一つ、絡んだ糸をほぐすかのように解除や再調整をしていた。
そして……問題のキャスターだ。その正体を知って腰を抜かさんばかりに驚いた。何と魔術師でなく、作家だったのだ。それは英霊なの? 召喚可能なの?
だけど英霊になる条件が『過去の偉業』であるなら、あり得る現象だと思えた。だけどA.L.グリムがキャスターだなんて。そんな事ってあるの?
そのA.L.グリムは、確か有名な方のグリム兄弟とは関係ない童話作家だ。有名な方は男5人女1人の6人兄弟だったと思う。物語を編纂した長兄ヤーコプに次兄ヴィルヘルム。挿絵を描いた末弟のルートヴィッヒまでは私も知っていたけれど。
だけどお姉様が指摘した────。
『グリム童話で知られるグリム兄弟と同時代・同姓の、けれど血縁ではない童話作家。ドイツ系でも私のような好き者しか知らない、不遇の作家と言っても良い存在……。アイスコルやヴラド3世とやたらカブリますよね?』
実にその通りだと思った。それでもって作家系キャスターは自分の作品世界や執筆した心象世界へ対象を落とし込んだりするらしい。
時計塔が動けなくなった、倫敦での連続殺人鬼はジャック・ザ・リッパーでも何でもなく、全部噂だけで被害は皆無だったのだ。
だけど、人々はその再来を信じ、真剣に恐れ精神に変調をきたす者まで出る始末だった。それが作家系キャスターの宝具の怖さだと教えて下さった。
これもあってバーサーカーとキャスターを真っ先に還させたのだ。それを確認後、イリヤお姉様とエルマお姉様、そしてセイバーさんはお姉ちゃん達を連れて帰国した。
なおエルマお姉様は、ランサーさんとアサシンさん達を50人ほど置いていって下さった。申し訳ないので魔力はこちらで持つと申し出たのだけど、あっさりと断られてしまった。
礼装も併用するらしいけれど、日本から供給できるところが凄い。それにエルヴァお姉様も大概だ。ランスロットさんはこちらのエルヴァお姉様の魔力でなく、日本から送られる魔力で活動分を補われているのだもの。
日本一を決める大事な試合だとお聞きしているが、本当に凄い。また、お二人のお姉様(白い『エル』と褐色の『エルヴァ』)を残していく事に、イリヤお姉様は随分憤慨なさっていた。
『でもね。おチビちゃんもそうだけど、クロエちゃんも私と同じで怒ってるよ。だから、あのもう一人のエルとエルヴァの事はあなたに任せるしかない。だってあの二人はあなたを手伝うためにエルが作り出したようなものなのだから』
私がこの優しいお姉様から、こんな風にキツい話し方をされたのは初めてだった。イリヤお姉様にとって、残られたエルヴァお姉様も日本で弓道の試合に挑まれているエルヴァお姉様も同じ妹で、親身に私を手伝って下さるエルお姉様も大切な妹なのだろう。そこを私は自覚しておくべきだと強く思わせる出来事だった。
『だけど、あなたも私にとっては大切な妹よ。だからこそお願いしたいの。あの二人が人として生きるチャンスはあなたの傍しかない。だから、お願いするわね?』
そうなってしまう。あのエルお姉様やエルヴァお姉様は、間違いなくエルお姉様が私のためにご用意下さった存在だ。なら私は、お二方を姉として、家族として迎え入れるしかない。
そしてそれは、決して嫌な感情では無かった。今後の事業上のメリットだけでなく、私自身がお二人の存在によって励まされたり、気付かされる事が多いと素直に思えたからだ。
イリヤお姉ちゃんもクロエお姉ちゃんも大好きだ。でも、二人はまだまだ子供で事業の事を話せる相手では無かった。そこを一気に解決する存在を送って下さったエルお姉様。
その御慧眼に慄くばかりだ。と同時に先達者の余裕に悔しく思い、並行世界にも関わらず深い愛情を私に注いで下さる事に感謝の念を禁じ得ない。
父は一通りの道筋が見えたところでスイスに行った。お祖父様への報告があるのだ。獅子劫さんも次の仕事に向かわれた。今度はお祖父様からの依頼らしい。なので二人は同じ飛行機でブカレストを飛び立った。
そしてフィオレさんとルヴィア(妹)さんもプラハに帰った。ポツンと残った私を気遣うモードレッドとお姉様方。私はこの4人なら、あのロシアの霊脈をどうにかできると確信した。
『昔は神の思惑で翻弄される人が実に多かったものです。今の時代、その神からの影響はない。あなたはとても恵まれていますね?』
ケイローンの言葉だけれど、その通りだなと思った。だけど、私がまだ11歳だからとお姉様方が見せないようにしていた城砦の最深部、大聖杯のその下のフロアへと私はラズヴァンに案内させた。
随行はヴラド3世とモードレッドだけだ。
『非難されますかな?』
『いえ。生命を弄ぶ行為と言うならアインツベルンも同じです。むしろ完璧でないだけに人道的かも』
『そこが私どもの慰めでもありました』
大量に並ぶ培養槽。その液体の中には人とは形容し難いモノが浮かんでいた。生命と言えば生命だろう。だけどそのどれもが、自我どころか思考する能力もない、ただの生体魔力発生装置だった。
『これが私どもの限界です。だからこそ、ゴルドはアインツベルンを羨んだ』
『しかし、ムジーク家は……?』
『あの家がホムンクルス鋳造で脚光を浴びたのは、かれこれ300年も前の事です。ゴルドの数代前で一度途絶えています。しかも、その全盛期に完成されたホムンクルスも、アインツベルンの作品には遠く及びませんでした』
『ですが、給仕をしているホムンクルスなどはかなりの完成度だと思いましたが?』
『あれの鋳型はそちらから脱走したホムンクルスですよ。それを偶然捕らえ、研究し鋳型をとっただけです』
親族から流れたのか……。
『それでもよく鋳型をとれましたね?』
『そこまでがご先祖の限界だったようです。結局量産化もその型のみで、そこからの進歩もなければ、新しい型起こしも出来ませんでした』
この城で働くホムンクルス達はきちんと管理され、虐待めいた扱いもされていなかった。ウチで言うなら何世代前になるのか、ずっと古い古い型。
そして現在の技術だと人としての体をなさない程度。だからこれに対する判断は、持ち帰って頭首に仰ぐと一旦保留した。たぶんお祖父様も不問に付すだろうけど。
『エルヴァ、顔色悪いぞ? もう上がろう』
培養槽を見ていて以前の自分をついつい重ねていた。モードレッドに手を預けたら力強く握って引っ張ってくれた。だから目でお礼をいった。
地上階に上がった私は、お祖父様の寄越したスタッフの中の顔馴染みの人に尋ねた。その人の名はルオンノタルと言った。
『ルオンノタルさん?』
『はい、お嬢様。何でしょう?』
『お手隙でしたら少しお教え頂きたいのです。その昔、当家、或いは一族の家から脱走したホムンクルスはどうなったのかを』
この時、ルオンノタルさんは少々複雑な顔をした。
『それは一族一門の恥でもあります。お嬢様も大きくなられて』
『いえ……。敢えてそこをお聞かせ下さい』
『実はこの100年は皆無で、200年近く前に1人出ただけです。つまりこの200年で僅か1人です。ところがそれより前となりますと、この1000年で合計50人以上も脱走しています。ただし、その全員が捕らえられ処分されています』
『それは一門全体ですか? 全部把握しています?』
『恥だとして、報告されていないケースもあるでしょうね。ただ、この200年でメイド達の待遇はかなり良くなっているはずです。才覚があれば自分を買い戻す事も可能となったのが、やはりこの200年の事ですから』
メイド=奴隷でなく、ハウスキーパーの専門家として他家にまで売り込めるようになったのは100年ほど前だっけ? 何れにせよ、ある程度の人権を認め個性を尊重するようになったからだ。
このルオンノタルさんも元メイドで、お祖父様の抜擢を受けて工房助手となった優秀なホムンクルスだ。だけど私は親しみを感じているこの方のみならず、どのメイドにも命令口調で話した事はない。
『という事は、やはり報告されていない脱走例があった可能性は否めないと?』
『はい、残念ですが。何かありましたか?』
『ええ。この城の給仕などをしているホムンクルスは、そんな知られざる脱走者から型を取られたものでした』
『ああ……。劣化して『自然の触覚』としての機能が弱まっているのですね?』
『そのようです。勿論お祖父様には報告致しますが、ここまで差があるのなら不問になるでしょう』
『そうですね。お館様なら、そう仰るでしょう。ただ……今更ですが、どの家から出奔したのかは調べておかれた方が良いでしょう。宜しければ調べておきますよ』
『お願いします』
これは案外早くわかった。意外だったのはアハトの家ではなかった事だ。私はてっきりあの家だと思っていたのだけれど、予想に反して出奔していたのは五大老の内の一つからだった。
五大老とはアインツベルン一族の中でも特に古い家で、お祖父様の家を含めた五家を指す。要は有力な一門から選ばれる、次期総裁(頭首)候補が立つ家だと解釈すれば良い。
現在10代目候補として私の他に数名居るが、その人達もこの五家のどこかだ。そしてその五家の現当主が五大老と呼ばれている。つまりお祖父様は9代目総裁であり、一族一門を率いる現頭首なのに五大老の一人でもある訳だ。
また、お祖父様は私達魔術師だけでなく魔術回路が途絶え一般人となった、元一族・元一門の総裁でもある。そちらはアインツベルンを名乗らずハーウェイと姓を替えるのが昔からの習わしだったが、今は敢えてアインツベルン姓を棄てている人も多い。
それはこの業界であまりにもアインツベルンが有名になってしまったからだった。だからそれを危惧されたお祖父様は、私の出生届をハーウェイで出されていた。なので私は学校や公的な場ではハーウェイで通している。
この件を両親は知っているだろうとお祖父様は仰っていた。だけどお姉ちゃん達には話していない。それはアインツベルンという姓を絆のように感じていたからだ。
それでなくとも私は本来の名を隠している。エルヴァは亡き年上の姪から頂戴した愛称のようなもので、秘められた本名はスウェーデン語の『Alvor(Aにはウムラウト付き)』で、意味はエルフ。英語で言うところのフェアリーとなる。
これは並行世界でも同じらしく、エルお姉様も同じだった。勿論、エルヴァお姉様もご存知なのだが、日本に残られたお姉様もこちらにいらっしゃる二人のお姉様も、その名はこの世界ではあなただけだと仰って下さった。
だから尚の事、二人のお姉ちゃんには話せない。それはこの名には魔除けの意味もあるし、健康に育って欲しいとのお祖父様の願いと、次の孫にはこの名を送りたいと残していったお祖母様(お祖父様の最初の奥様。スウェーデン人だった)の秘められた願いもあったからだ。
そしてお祖父様は何故か、大勢いらっしゃる年上のお孫さんの誰にもこの名を贈らず私に贈った。それは私だけが最初のお孫さんであるエルヴァさんと似ていたからだ。
ホムンクルスとのハーフだからそれはそうだろう。だけどエルお姉様の場合はハーフだとは知らずに育ち、知ったのは8歳になってからだと仰られた。
『お前は工房で薬品を落としたら生えてきた』とか、『犬を散歩させていたら木の股に生えていた』とか散々な事を言われていたらしい。
あちらのお祖父様は、私のお祖父様よりイタズラ好きらしくお姉様がお気の毒だと思ったものだけれど、当の本人は屁とも思っておらず、無茶なことやイタズラばっかりしていたそうだ。
子供の頃から野山を駆け、テントを張り、バイクやボートに乗り、料理もしていたお姉様。乗馬とフェンシング以外は何もしていない私とは大違いだった。
だから魔術ではそのうちあなたに追い越されると言われた時は嬉しかった。また私の存在がクロエにとって良い緩衝材になっているのも実感している。きっと私が居なければ、あのお姉ちゃんは魔術を学べない環境に対して、もっと焦っていたと思うのだ。
そうなるとイリヤに、言いたくもない事を言ってしまって辛い思いをさせてしまう。またそれを言った事を後悔するのがクロエだ。だからそうはならなくて本当に良かったと思う。
スイスのお祖父様から正式な裁定書が届いた。表立ってはアインツベルンの全面勝利で『ユグドミレニア』は魔術協会(時計塔)から追放、並びに賠償金を支払う事となった。
だけど、裁定書とは別にプラハの魔術協会への連絡先が添えられていて、しかも賠償金の振込先はそちらの協会の口座だった。
つまりロシアの霊脈を諦めさえすれば、ラズヴァンの代はともかくセレニケの代からは面倒をみるとお祖父様は仰っているのだ。
だってお祖父様は時計塔の理事こそ人に任せているが、プラハの理事は今も続けていらっしゃるからだった。こうなるとフィオレさんとルヴィア(妹)さんが動いたのも怪しいものだ。
プラハはお祖父様だろうけど、時計塔側で動いたのはエーデルフェルトだろう。そしてアインツベルンとエーデルフェルトから睨まれて動ける魔術師は居ない。
『ユグドミレニア』に与した者はアインツベルンとエーデルフェルトの獲物だ、手を出すなと知らしめる事になるからだ。そうなると横合いからアイスコル家やムジーク家を襲うハンターも居なくなる。
だってハンターは支払ってくれる相手が居てこそ成り立つ仕事だからだ。
これらの事を説明するとラズヴァンは深く頭を下げてくれた。後は引退声明とセレニケへの家督相続を残すだけだ。でも私はそこまで残らなかった。
お姉様方を伴ってスイスに戻り、急いでロシアの霊脈開発計画を練り直さなければならなかったからだ。なので翌日にはブカレストからチューリッヒに飛んだ。
こうして『ユグドミレニア』との決闘は幕を閉じたのだった。
チューリッヒ空港から出るとマアエモ・ママが迎えに来てくれていた。お礼を言って荷物を載せようとしたらクルマの様子がおかしい。いつものママのクルマでなくゲレンデヴァーゲンだ。
「どうしたの、これ?」
「お館様が休暇で山の別荘においでです」
ザンクトガレンの南部にあるアルヴィアーやガウシュラの連なる連峰だ。その麓にあるフォアアルプ湖近くにお祖父様の夏の別荘がある。アルプスの山を映す湖面はとても美しく、湖畔のベンチには誰かしら座っていてその景色に見惚れている。
だけどスイスにはそんな場所がそこかしこにあって、誰しもが自分だけのお気に入りの場所があったりする。国内には海外にも知られる有名な景観が多いけれど、意外と地元の人は地元以外に行こうとしない。それはさっきも言ったように自分だけの場所があるからだ。だから同じ行くなら海外だという人が多いと思う。
そしてそんなフォアアルプ湖から街の方へ下るとヴェルデンベルク城がある。並行世界のお話だけれど、その近くにエルお姉様が過ごした家があるという。
クルマはチューリッヒの街を抜け、3号線を南東に進んだ。オーバー湖やヴァレン湖の横を通り過ぎれば、遠くにあった連山が目の前に広がる。その一番南のゴンツェンを巡るようにしてクルマはライン川と並走するように今度は北上した。
このゴンツェンからわかれる道に入らず、真っ直ぐ行けば有名な温泉保養地のバートラガーツだ。国道を挟んだ東、チロル側がマイエンフェルト。この街は『ハイディ』という物語の舞台らしく、日本人の観光客がやたら多いので有名だ。
「嘘!? エルヴァちゃんは『アルプスの少女ハイジ』を知らない?」
「知ってますよ。でも原作は読んでいません」
「それこそ嘘!? 驚いた……エル様はドイツの放送を観て育ったというのに」
「え? 本ですよね?」
「本もありますが、有名なのは日本のアニメですよ」
「どうしてそれがスイスのザンクトガレンで?」
「南ドイツの電波が入るんですよ。映りはイマイチでしたが」
「そこから日本のアニメにハマって。遂には日本で暮らすようになったという」
「ええ~」
午後の光がライン川を照らしている。川の向こうはリヒテンシュタインだ。
「自転車で探しに行きましたよ。大きな時計等のある城はないかって」
「周りが湖でね?」
「ね? 本気で屋根から駆け下りたら飛べるかなって試しましたよね?」
「やった、やった。空間転移できなかったら大怪我ですよ。素知らぬ顔でママにただいま~って」
「でも、屋根がドタドタと響いたから感づいていて」
「結局聞き出され、叱られましたね」
いきなり路肩にクルマが停まった。マアエモ・ママが運転席から飛び降りてお腹を抱えて笑っちゃったのだ。
「お前らと言うか、元のエルか。アイツは本当にエルヴァの異世界同位体なのか?」
モードレッドも呆れつつ笑っていた。思わぬ休憩を挟んだ後、クルマはプフス、ヴェルデンベルク、グラーブスと幾つかの小さな街を抜けグラープサーベルクという山道に入っていった。お二人のお姉様は、窓の外の景色をとても懐かしがられていた。
そしてこんな山道にスーパーマーケットやバス停に駐車場がある。この近辺で暮らす人もいれば、この辺りに別荘を持つ人もちらほらいるのだ。
だからこの先登山道を歩いても、レストランや軽い飲食店が幾つかある。そんな並びにお祖父様の別荘があった。信じられないだろうが、簡素な木造の小屋だ。だけどいつものポ◯シェが前に止まっているので、それで正しいのだとわかる。
「別荘というより、山の中の書斎ですからね」
「そうですね。そういう使い方かな」
ポ◯シェの横にゲレンデヴァーゲンが止まると、お祖父様が扉を開いて待っていてくれた。
「おかえり、チビにモードレッド。それに白黒チビもようこそ。以前会った白い方の魔術じゃろ? 並行世界の孫は信じられん魔術を使うな?」
確かに。エルお姉様(白い方)はまだわかる。宝具で複製された体だとわかるから。だけどエルヴァお姉様(黒い方)は謎だ。英霊の能力込みでの複製ってあり得ない。
だけどお祖父様はそんなお二人にも分け隔てなく以前のように歓待して下さった。中に入るとテーブルの上に冷たい飲み物が用意されていた。
「マアエモも席に着きなさい。ご苦労じゃった。チビ、ようやったな。ラズヴァンの蟄居は正解じゃ。娘に希望を残したのも。これでユグドミレニアの問題も片付いた」
「お祖父様……」
「うむ。次はいよいよ霊脈開発のための予備調査じゃ。そちらの人員も報告を受けとる。なのでそれに見合った機材などは手配済みじゃ。揃い次第杖に取り込み、ルーマニアに残した者達とイルクーツクで合流すれば良いじゃろう。現地で使うクルマも現在移動中じゃよ」
「ありがとうございます。それと後でお話が」
「ああ……先に知らせてくれたアルトゥルの件じゃろ?」
「はい」
「感謝するよ、チビ。本当にありがとう」
お祖父様は立ち上がって私を抱きしめて下さった。
「お館様? もしかしてメイドを誰も連れずに?」
「ああ。チビの報告の内容もそうじゃが、そちらの二人をな。事情を知っとるマアエモは良いが、余り他の者に知らせたくないんじゃよ」
思わずお尋ねしてしまった。
「どうしてですか?」
「お前のために、あちらのチビが用意してくれた存在じゃろう? 霊脈開発が終わって、はいさようならとはいかんじゃろう? 吸収されるのか消されるのかはわからんが、お前の態度を見るまでもない。報告も何もかも精査しとる。なら、終わった後はこちらでお前の姉として引き取るしかあるまい。それに儂はこの二人がお前に足りなんだモノを与えてくれると思っとる。また、モードレッドの良き相談相手・理解者になる。お前に見習えとも言えん……あのチビは恐ろしいな」
お祖父様は、エルお姉様が7歳で11代総裁に就任なさった意味が本気でわかったと呟かれた。そして私はお祖父様がわざとこれをお姉様方の前で話した意味がわかった。
エルお姉様(白い方)がこう仰ったのだ。
「消されるという事はありません。宝具の中に戻って待機状態になるだけです。ですが、私の方は自己調整でどういう生活にも馴染めます。また、エル様なら必要とあれば幾らでも私のような存在を用意できます。問題は彼女です。かなり強い再調整をしないと苦しいと思われます」
「それはどうしてじゃ?」
「ルーマニアに向けて出発する寸前までの記憶は、日本に残った方と同じなんです」
「そうか……キリツグやアイリスフィール、それに妹達家族の記憶。友人達もおろうしな……。しかしそれは全部、あちらの黒チビのものじゃ。そこはお前さん達も魔術師としてわかっておるのじゃろう?」
「ええ」
「はい」
お二人はしっかりと頷いた。
「なら、ヘタな再調整などせずにその記憶を留めながら生きた方が良いじゃろう。11代目の端くれと言っては失礼じゃが、お前さん達なら大丈夫だと儂は思う。どうかな? 勝手に話を進めるようで悪いが、ここに残らんか? そしてチビの善き姉として導いてやってはくれんか?」
そうしてお二人はモードレッドとともに私の大切な『姉』となった。本物のエルお姉様が11代目としてどう判断を下すのか、日本のエルヴァお姉様がどう思うのか、またお姉ちゃん達や父に母がどう思うのか、そういう細かな問題もある。
けれど、それもエルお姉様次第でどうにかなると思えた。またそれがイリヤお姉様の望まれた結果に近い答えだとも思えたし、エルヴァお姉様をあれだけ心配していたママが反対する理由もない。
仲間が増える事にモードレッドは素直に喜びを表し、ママもお姉様方を抱きしめた。落ち着いた後は、3人でそそくさとキッチンに行っちゃったから一緒に料理を作るのだろう。
私は『恵まれている』か……。さすがはケイローンだ。愛弟子の事で思うところもあるだろうに、ああいう言葉を残してくれた。お姉様方とは違った意味で『参謀』として欲しい人だと思ったのだった。
あの二人を残して日本に帰ってしまった私は、行き場のない気持ちを抱えていた。ヘラクレスを召喚して、私がロシアに行く積もりだった。だけどエルには読まれていたって事だ。参るなぁ。
それで自分ではどうする事も出来ないのに、悶々と悩んでいた。本日何回目かも不明な溜息を吐いていたら……。
「あなたも私よね。一度家族として心の中に入れちゃった人がずっと気になるの。シロウもそうだし、アーチャーもそうだわ。そしてそれが並行世界の人であっても気になるのよ」
巫女の彼女だった。
「そうね。魔術的に作られた存在だから意味合いが少し異なるかも知れないけれど」
「あなたの方が範囲が広い?」
「そうなのかも。けど、エルヴァは……」
「あなたを家族として、また姉妹として受け入れてくれた最初の人。それが異世界に流された心寂しさから来るものだと知っていても、愛情は本物だった。言いたいのはそういう事でしょう?」
「はぁ……あなたも、色々あったのね?」
「そういう事。愚痴なら聞いてあげるから、子供達にはそういう態度を見せないでね?」
「ええ、ご忠告感謝するわ。それであなたの方のあの子達は?」
これは『ちぃイリヤ』と、連れ帰った『イリヤ』の事だ。
「うん。相乗効果で精神的にグッと成長していると思うわ。今もその二人を残してきた事で落ち込んでいるおチビちゃん達を励ませないかと相談中よ。暑いから体力的に遠出も無理だし、涼しくなる夕方頃からできる何かを考えたらってアドヴァイスを贈ったところよ」
「そうね。花火なんてどうかな?」
「良いわね。日本のでしょう? 可愛いものね」
「そうそう。私もエルヴァに教えて貰って。先月ルヴィアや凛を交えてやったのよ。もっと数を揃えたら楽しくなるんじゃないかな?」
「それで冷たい氷菓子でも出してあげれば。良いわね、それを薦めてくるわ」
そう言い残して彼女は2階へと向かった。いつもの食堂では私だけがポツンと残った。厨房にはアーチャーも居れば休みの明けたミユのシロウも居る。
「はぁ~、アルバイトでもしようかなぁ」
海の家のアルバイトは終わったし、受け取りに行けなかった給金もエルヴァが預かってくれている。だけどその本人は試合で他県へ行って連泊だ。
しかも今回はかなり遠いところなので学校関係者でも応援に行けずにいるらしい。それでエルマがトロンメルと桜に後を頼んで、現地まで飛んで行った。
「私も行こうかなぁ」
そんな事を呟いていたら、目の前に良く冷えた紅茶が出て来た。
「実際の大会はお盆が過ぎてからだろう。今回は会場と宿泊先の下見と聞いているぞ」
紅茶が紅茶を持って現れるのか? という冗談はさて置いて。
「そうなの?」
「そうだ。エルヴァは遠的だろう? 日程も近的の選手と異なる。3人の選手の内、部長は近的の選手達の面倒があるので動けない。それでエルヴァと遠峰だったか、同じ3年の選手と先に出たのだ。向かいの士郎が同行しているのは、同じ理由だ。動けない部長の代わりに副部長として近的の下見に行ったのさ。本来は大会に進出した女子が行くべきなのだろうが、なかなかそうは行かんらしい。それでビデオやカメラを持ってな。エルマはそれの手伝いだろう。今日か明日には全員一旦戻るはずだ」
あら。試合はまだ先だったみたい。
「戻ったら、工房に籠もりっぱなしのルヴィアや凛達と気分転換にサイクリングに行くと聞いているぞ?」
そうだった。師匠の凜から色々課題を出された二人は、凜が帰った後もマルガリータを交えて真面目に修練を積んでいた。そこを労おうとのエルヴァの提案だった。ルーマニアの事で頭がいっぱいだった自分が情けない。
「そう思い詰めるな。その昔、『イリヤ』が私を殺しに来た理由が良くわかったよ。何事も思い詰め過ぎるのだな」
「そこは父親の遺伝よ。そんなのに影響をモロ受けした人が、他人事のように言うな~」
「ハハハ、その通りだ」
ガラにもないのに、精一杯私を励ましてくれている。だからこの心の籠もった紅茶はゆっくりと味わおう。あ、美味しい……。
真っ黒なゲレンデヴァーゲンの横には、カーボンの外装をミッドナイトブルーに塗り替えられたポ◯シェ964ターボ。ボア100mm、ストローク76.4mmの3600cc。
数値だけだとターボ3.6のM64/50だけど、エンジンは別注でピストンもコンロッドも鍛造の強化品だ。そしてその巨大化されたインタークーラーで冷やされた空気は、二つのタービンで強引にエンジンに押し込まれ、実に700psもの馬力を絞り出していた。
その横にはスーパーレッドVのMR-S。これはモードレッドのだ。ナンバーはお祖父様が部下に手配していた。更にその横にはブルーマイカのMR-S。こちらは2ZZ-GEに積み替えられたエルのだ。マアエモ・ママのはきっと、まだ洋上だろう。
そのママとエル(白い方)は屋内で過ごしていた。
「先に赤いのから乗られた方が面白いと思います」
「そうか」
そう言ってシートを直したお祖父様が発進した。横にはエルヴァちゃんが乗っていた。本日はお祖父様の希望により、日本製スポーツカーの試走だった。20分ほどでお祖父様は戻られた。
「ふむ。遅いが面白いな」
そして青い方へ乗り換えられ山を下って行った。今度はエルヴァちゃんが残っていた。
「どうして行かなかったの?」
「お祖父様、結構楽しんでいらっしゃるご様子なので」
なるほど。敢えて一人にしてあげたのか。
「しまった! オレが横に乗ればよかった」
「次、乗せてもらえば?」
「そうだな」
やがて戻っ来たお祖父様は、エルヴァちゃんの口利きでモードレッドを横に乗せて走って行かれた。
「お姉様? モードレッドって操縦がヘタなんですか?」
「そうですねぇ……。下手って事はありませんが、反応が早過ぎるのかな。クルマは重く、必ず慣性があります。また、ゲームパッドではありませんから、幾ら早くアクセルを開けても、タイムラグは絶対に生まれますでしょう? そういうギャップが、最近自分の中で折り合いがついてコントロールできるようになって来たというか。それにまだまだタイヤの性能を使い切っていませんからね」
普通に走る分にはかなり上手いドライバーと言える。ましてや千年以上も前の人と思えば破格の巧さだ。だけど蹄鉄とタイヤが違うように、入って来る知識と現実とのギャップで戸惑う時があるように思う。
また、セイバー以上に自制の効かないイケイケな性格が、足を引っ張ってしまう場合もあったのだろう。そこをエルヴァちゃんが諭したのか、自分で気付いたのかは知らないけれど、日本で再会したモードレッドは少し変わっていた。
それがあの円蔵山でよく出ていたと思う。もしクルマを通じて自分で気付けていたのなら、この先はもっと変わるだろう。アルプスの山々にエグゾースト・ノートがこだましていた。
「お館様は本当に楽しそう」
お茶の入ったカップをソーサーに戻して、ママが呟いた。視線は窓の外だ。
「ママのクルマはまだまだ届きそうにありませんか?」
「ええ。まぁ、それを待つのも楽しみです」
窓の外には屈託ない笑顔のモードレッドとエルヴァにエルヴァちゃん。
かつてのブリテンには十三の宝があったという。決してねぎ焼きや酒饅頭に十三焼きではない。外套やクッキングナイフ、角笛、指輪など、ラインナップはその時々で入れ替わるが、カリバーンだけはどの伝承でも共通している。
元はカリブルヌス。その前がカロドブルフ、つまりカラドボルグだ。アーチャーが『Ⅱ』としたのは改造したからでなく、そこに『想い』を込めていたからだ。これをランサーに教えたのがエルマだと聞いた。勿論、エル様の知識だ。
かつては王位を求めたモードレッド。その彼女に『燦然と輝く王剣(クラレント)』を置かせたのはエルヴァちゃんだったのか、投影したエルヴァだったのか、それとも最初にグラムを預けたエル様だったのか。
要因は複合的なのだろう。今の彼女は自分だけの『宝』を揃えつつある、そんな風に私は思った。