桜に起こされたのが9時だった。昨夜は就寝が遅かったので、この時間にしてあったのだ。洗面を済ませた私達はお婆ちゃんにお願いして、再び着物の着付けを頼んだ。今日は桜も髪を下ろしている。用意を終えて居間に行くと、既に着物に着替えていた衛宮君が、御節料理の前で私達を待っていてくれた。
「おはよう、衛宮君。お待たせ」
「おはよう」
「おはようございます。軽いですね、先パイ? 元日の朝なのに?」
「元旦の挨拶は昨夜しただろ」
そうして笑い合う私達。お婆ちゃんも交え、御節を前にしてお雑煮を頂いた。
お婆ちゃんは母の母であり、禅城の定めを知る人だ。なので神秘の事も、魔術師の存在も、遠坂の家の事もご存知だった。そして間桐へ養子に出た桜も、神秘と魔術師の存在を知っている。だけど、この中で衛宮君だけがその事を知らない。なのでお婆ちゃんとは前もって打ち合わせしてあったし、桜にもお婆ちゃんがそういうのを知っている事を伝えてあった。
重要なのは記憶を失い、遠坂の事や、私達姉妹を可愛がってくれた禅城の祖母や祖父の事も忘れていた事だった。だけど桜は記憶を失っているという事のみは自覚していた。それがあって、同じように幼い日の記憶が失くなっている衛宮君と話し合う仲になったのだ。昨夜は再会の歓びを分かち合った後に、そういった話から思い出話に移っていった。こういう時に疎外感を感じないよう、衛宮君を気遣いながら話せるお婆ちゃんはさすがだ。何より桜が記憶を失った原因を、幼い日に親元から離れてしまったからだと一方的に断定しちゃって、桜の人柄をみて『良い家で良かったね』と言ったのだ。そして同じように衛宮君にも『立派なご両親だってあなたを見ているとわかるよ』と言った。もうそれで良いじゃないかと、それ以外の情報なんて要らないじゃないかとさえ思った。年の功って凄い。
そんな風にして、私達はお昼過ぎまで穏やかで暖かな時間を過ごした。その後、お婆ちゃんに見送られて私達はタクシーで家に戻ったのだった。新都のマンション前で先に桜を下ろし、私と衛宮君が深山まで。
「遠坂、ありがとう」
「え、何?」
「だから……上手く言えないけど、桜の姉であってくれて。あいつを諦めないでいてくれて……」
私は首を振った。
「衛宮君、何があっても姉妹だもの。そっちもそうでしょう? 何かがあったとしてさ。そうなった場合にイリヤやクロエを見捨てられる?」
「そうだよな。それにそんな男だったら、遠坂に呆れられる前に親父に殴られ……」
「怖いお姉さん(エルヴァ)に叱られるわね?」
「ハハッ、まったくだ」
その屈託のない笑顔は、彼がこの瞬間をとても幸せに感じている事の現れだった。あ、あれ? となると私とイリヤやクロエ……それにエルヴァって、将来は義理の姉妹? あ、従姉妹だからエルヴァにエルマにトロンメルやイリヤさんは親族になるんだ。結婚しちゃったエルヴァはどうしているのだろう? それにルヴィアは元気かしら? あっちも結婚が早そうだなぁ……。
その後、衛宮君とわかれ、門の脇の勝手口を開けると、何だか寂しかったこのエーデルフェルトの家に活気を感じた。玄関の扉を開け、いつもの食堂に行くと『エル』が『イリヤ』と仲良くお喋りしていた。どうゆうこと?
例え世界有数の眠らない都市ニューヨークと言えど、その年のピークは31日の深夜12時までで、翌日の1月1日は静かなものだ。私(アオレアール/王一诺)とハサン達(百貌と呪腕)は『エル』から充てがわれ泊まっている、『世界の切り札塔』という名のビルから出て、人通りのほとんどないタイムズスクエアを歩いていた。
昨夜は予約してあったブルックリンのピーター・ルーガーで、熟成されたポーターハウス・ステーキとワインを楽しんだ。その帰りにマルガリータ似の彼女に誘われ、夜のウィリアムズバーグ橋を渡ってミッドタウンの方へ戻りつつ話したのだ。そこで聞いた話をもう一度考えた。
『スイスに戻られている褐色の彼女……。ええ、新婦になられたあの方です。その方とそのお相手の方との愛が、この世界の神を動かす原動力となっています。ですからあなたがアメリカでやりたいと考える事の中に、彼女達の幸福も織り込んでいて下さい。アインツベルンとエーデルフェルトの押さえるロシアと東欧・中欧に北欧。中国と南アジアを押さえんとするあなた。そしてアメリカとの三竦み(すくみ)で膠着状態を作り、その間に中東や南アメリカを鎮めるお積もりでしょう。ですが南アメリカは私どもが動きます。ロシアルートでベネズエラを押さえに掛かったアインツベルンはさすがですし、あなたもヘロインのルートから『現象』によって壊滅された南米に注視していたのはわかります。ですが見えない人道支援はこちらのアサシンが行います』
何故彼女がフロリダに入っていたのか、何故この後ベネスエラに向かうのか。この時の私はその理由が皆目わからなかった。この理由がわかったのは2006年に入ってからだった。それらは全部、アメリカやベネズエラにアルゼンチンの大統領選挙にあったのだ。彼女は4年前の大統領選や99年のベネズエラ大統領選に、昨年のアルゼンチン大統領選を調べていたのだ。
しかも『エル』の指令で私がワシントンDCで行った事までもが、マルガリータ似の彼女の推測を裏付ける一貫だった。また彼女と『エル』は共謀していて、この大統領選に大金を賭けていた。そういう賭博場が倫敦やシカゴなどあちこちにあるのだ。それもこのアメリカのエルヴァ名義で賭けており、この月末にエルヴァは預かり知らぬ莫大な勝ち金を手に入れていた。振り込みだったので腰を抜かしていたという話を、私の息が掛かったこちら(新中国)の間諜が報告してくれた。あの子、何も知らないものなぁ……。
「アオレアール殿、あの者の事をお考えに?」
「ええ」
「本当に敵ではないのですか?」
「敵ではありません。最終目的は違いますが、それも共存可能な話です。結局、彼女達も私達も……『神』の意志には逆らえないのですね」
結局はそういう事だ。この世界とおそらく近隣の幾つかの並行世界群の『神』となった『現象の彼女』。私達はその神意(みこころ)のままに動くだけだった。そして……そう話しながら、私も『包囲網』の一翼を担わされていた事に改めて気付いた。これは『エル』でもある『私達』だけの考えじゃない。『現象の彼女』と『エル』は、一度ブロンクスで接触しているた。その後に出された私が知らないだけで、今も何らかの方法で交信しているものと思われる。マルガリータ似のあの人がエルヴァとフンボルト君の愛とか言うものだから、必然パミのルートが真っ先に頭に浮かぶが、『エル』はあれ以外のルートもその後幾つか確保してあるのだろう。
カルタゴの雷光・ハンニバル、テーバイの賢将・エパメイノンダス、そしてギリシア半島の覇王・ピリッポス2世……。後見人となった大王は『エル』に、その3人が取った戦略・戦術・陣形・教練法・指揮法を伝授していた。推測するに、私は彼女と『彼女』の策に於ける、陣の左右を守る騎兵にされていたようだ。戦場を俯瞰して動いている積もりが、もっと上から鳥瞰され駒の一つにされていた。おそらく複数いるミラビリス達もそうだ。私が表立って攻めるヘタイロイ騎兵(主攻)なら、『彼女』直の英霊やミラビリスが精鋭歩兵(助攻1)であり、専属の軽装歩兵(助攻2)だ。私自身が百貌の一部を主攻と考え、呪腕を精鋭歩兵のように動かしている。ただし戦場がコンクリートジャングルなので、陣形は変わっているが。
ともあれウォール街まで行った私達は散開し、オフィスの中に潜り込んだのだった。
『今後も残るアオレアールのために舞台を用意した訳ですが、あの子は裏の裏まで行けると思います?』
『大王を大統領選に出馬させる必要がないこの世界でそこまで?』
『膿が全員入院してくれているのですよ? これは絶好のチャンスです』
『そこまで必要ないと思いますが……まぁ、あの人なら大丈夫でしょう。それに何より、■■■を奪うだけで十分です』
『欲がないなぁ……。DCまで行ったのなら、対岸のヴァージニア……アーリントン(ペンタゴン)やラングリー(CIA)にも結界を張るべきでしょうに。ましてや中国側で今後も動くのなら』
『そこはフェアでありたいのだと』
『甘い。まぁ精々、シェビーとスープラ分は働いて頂きましょう』
『エキシージは?』
『あれは彼女が自分で買ったものです。支払いは本人にさせますよ』
着物を着たまま食堂の2人に声を掛ければ、『エル』は立ち上がって新年の挨拶をしてくれ、振り袖を褒めてくれた。
「良い柄ですね。こういうのだと時代の流行り廃りに左右されず、母娘何代にも渡って使えますね」
それはもう詳しい。正絹がどうとか縫製がどうとか、帯や防寒の外套まで褒める褒める。マシンガンのように褒めるので、私と話したそうにしている『イリヤ』が口を挟む隙きもない。だけど彼女の言葉で今着ているこの振り袖が、どうやら母のものだというだけでなく、お婆ちゃんも娘時代に着ていたものだというのがわかってきた。おそらく帯と帯締め、小物の巾着などを母の代で新調したのだろうと。それとこれだけの格を滲ませる家なら、これは本当に成人前の着物で、成人式用に誂えた振り袖は別にあるのではないかという話だった。
「このタイミングで桜ちゃんと訪問できたのは良かったですね?」
私はもう詠鳥庵に予約してあった。つまり『エル』が言いたいのは、お婆ちゃんは境遇のわからない桜のために、母の振り袖を残しているだろうという意味だ。それを理解した瞬間に、目の前の『エル』は滲み、無意識で抱きしめていた。
「これこれ。せっかくの振り袖がシワになりますよ?」
そして桜の事でお礼を言おうとしたら、口に人差し指を当てられた。何も言うなって意味だ。そしてお向かいの家の方角を肩越しに親指で指して、『ずっと友人でいてあげて』と言われてしまった。こちらこそ。願ってもない当たり前の事だ。だから私は、ただただ無言で頭を下げるだけだった。
ほとぼりも冷め、落ち着いたところでアーチャーがお茶を運んで来てくれた。それを入れてくれたのはアーチャーでなく、カウンター越しの厨房に居たマルガリータさんだった。彼女は私にウインクを送ってくれた。『似合うね』って意味だ。だから私も目でお礼をした。
「それを飲んで落ち着けば、裏庭に行って見給え。その『イリヤ』の事などもわかるだろう」
ソーサーとは別皿で小袋に入った、『バ』『成』『タ』……なんだコレ? そんなのと一口大のチョコかな? え~と……ロイチェ? ロイス? そんなロゴが入っている。それとは別に『アサシンからだ』と、ビタミン・カステーラなるものを手渡された。どこかに行っていたお土産のようだ。
それはさておき、私はそんなアーチャーを見、次いで『エル』を見た。2人は頷き、『イリヤ』も頷いてくれた。裏庭に行く方が早いという意味だ。なので温かなお茶と、思いの外美味しかったチョコと『バ成タ(変な名前だ)』を頂いた後、4人で裏庭に行った。寒いので正面から回らず、厨房横の廊下を使って屋敷の裏(勝手口)から裏庭に出た。夏は木漏れ日すら暑かったのに、葉の落ちた今はお陽様も弱々しく寒々しい。だけどこのバーベキューコンロの置かれた場所だけでなく、目に入る範囲の樹々の幹には防寒の藁が巻いてあった。それらはランサーやランスロットが居ない間に、アーチャーが残ったメイド達に手伝って貰いながらやった事だった。
ほとんど白樺とエゾマツみたいな木しかないフィンランドと違って、冬木には冬を越すために人が手を加えないといけない樹々もある。生前にあの武家屋敷の木を1人で養生していたのだ。そしてそれは美遊の衛宮君も同じだった。彼も秋からずっと自分の家のそれをやっていたのだ。
そして裏庭の奥にある小屋が並ぶところまで行けば、ランサーやランスロットに2人のヘラクレス(!)と、はじめましての東洋系の英霊が2人いた。この他に『エル』のアサシンも居るらしいが、そちらは日本に残っているエルマのアサシン達と森へ行ったそうだ。
「ほぅ~。そいつがこの国の民族衣装か? 似合うじゃねぇか」
「ですね。お似合いですよ、リン」
人懐っこい笑顔で迎えてくれる旧知の2人。そんな彼らの説明で北海道に行っていた事を教えられ、新しい人達を紹介され挨拶を交わした。そうか、あれは北海道のお土産だったのか。その後、『イリヤ』の事も段々とわかってきた。丸井さんで服を買ったとかどうとか要らない説明も多かったけれど。
「『イリヤ』であって『イリヤ』じゃない?」
「表層はイリヤですが、構成要素はシトナイです。そのシトナイが補ってくれているから、イリヤが消えずに残っていられるのです」
実はこの時、彼女の宝具の中に新たなセイバーと、2番目のアーチャーが居た事を私は知らなかったし気付けなかった。ただただ目の前の『イリヤ』と、ここに居る他の英霊に目を奪われていた。
「それで、『エル』が連れて帰るの?」
「いいえ。彼女の希望はヘラクレスさんと暮らす事にありますので、スイスで預かって頂く積もりです」
私は見逃さなかった。『エル』はチラリとアーチャーを見たのだ。だけどイリヤ成分がほとんどシトナイで補われている彼女にとっての『シロウ』は、後で見せてくれた真っ白な熊だった。あの『ちぃイリヤ』達とも似た幼さの残る彼女だけど、その芯の部分はどこか違っていた。声も仕草もイリヤなのだ。聞いた生い立ちも『英霊のイリヤさん』や『巫女のイリヤさん』と同じで、『聖杯を閉じたイリヤ』だった。だけど『エル』は……この子をイリヤとは呼ばす、シトナイと呼んでいた。そこで気付いた。彼女をイリヤと呼んでいるのは、片方のヘラクレスだけなのだ。
それで悟った。これは融合した状態でもう元には戻せないのだ。だけどそれが悪い事とは私には思えなかったし、『エル』も他の皆んなもそう考えているようだった。あるがままを受け入れている。何よりしっかり聞けば、ここに存在している事が既に奇跡だ。そしてこの子をイリヤと呼ぶヘラクレスが、その昔どこかの世界でこの子のサーヴァントだったと知れば……。これ以上の奇跡もそうそうない。例外は先生と4番目のアーチャーであり、その彼と『エル』のセイバーだろう。だけどこれは『強運の上の豪運(私判定)』を持っていそうな『エル』が居てこそだと思う。
「それで結局、ランサー達はいつまで?」
「仕事か? 明後日には出発して、お役御免になるのは来月の半ばだって聞いてるな」
「そうなんだ」
私は『イリヤ』改めシトナイを見た。
「私は一度、この子とチューリッヒに向かう。その後に中国だな」
スイスの小さなエルヴァがマスターのヘラクレスの発言だ。『の』の多い不安定な言葉だけれど、そうとうしか表現できない。それはともかく、彼の元マスターはシトナイに救われた『イリヤ』だった。こういうのを見逃せないのは、大きなエルヴァも小さなエルヴァも同じだ。敷地も広くて、熊を外で飼えるだけあるという。なら、それが正解だろう。
「君らはどうするね?」
そうシトナイのヘラクレスが『エル』に訊ねた。
「私とヘラクレスさんは三賀日を過ぎたら、元の世界に戻ります」
「え? ルヴィアには逢わないの?」
「もう、先に逢っていますよ」
そこで私は彼女がフィオレさんを治してから、もう1人のエルヴァの結婚式に参加し、その後に北海道に行ってランサー達と合流した事を知った。そのフィンランドに渡る前も北海道だったそうだから、どんだけって感じだ。だけど彼女は次に来る時は、師匠と一緒に来ると約束してくれた。ただ、いつになるかは確約できないとも。どうもこの世界全体に起きている事と関係あるらしい。
この後、年始の挨拶にセイバーとアルトリアが訪ねて来てくれた。これ以上はさすがに寒いので、皆んなでマルガリータさんが待つ母屋に入ったのだった。
朝起きると、腰が少々重かった。あの空間で彼女とともに後ろをフンボルトに捧げた記憶はあれど、余韻というかダメージはない。だけど外に出ても、私とフンボルトは盛っていた。これがエーテルでアバターを出す弊害なのかも。だから男女に戻っても、興奮冷めやらぬ私達は、3回ほどセックスした。この部屋には備え付けのキッチンに、ダイニングテーブルもある。その上に乗る事で高低差を稼ぎ、四つん這いになった私は、後ろからフンボルトに挿入って貰った。途中、彼は挿入れたまま私を抱えあげ、例のシーシースタイルでダイニングをグルグル廻った。そこでまずは1回。
次にベッドで仰向けになり、愛のこもったクンニの後に膝立の彼と正常位だ。胴の長さの違いが大きいので、お互いの顔は、フンボルトが腕を伸ばして上半身を支えるか離れるかしないと見えない。肘を曲げて覆い被さると、チビな私は彼の胸しか見えないのだ。フンボルトにしても私の頭の上に顔が来るから、私の喘ぎ声がなければ妙なグッズで楽しんでいるようなものだろう。なのでこの体位はすぐに終わって、フンボルトは私を抱えてベッドに腰掛けた。つまり対面座位だ。これだとベッドに足をついたり、彼の首にしがみつく事で高さ調整ができるので、彼の顔を眺められるし、挿入具合も調整できた。ここでかれは今夜初めての射精をした(アバターだと仮想なので)。
子宮の入り口で彼の温かな赤ちゃんの種を感じた。3回、4回……ピューッと来る度にアフンとなっちゃう。気絶こそしなかったけれど、素晴らしい快感だった。荒い息のままお互いの舌を絡めあった。私の『チンボルト』は萎えても大きいので、私の中から抜けずにいた。
「エルヴァ、好きだ。愛しているよ」
「私も、フンボルトが好き。愛しています」
そんな事を囁きあっているうちに『チンボルト』が膣内で大きくなった。そしてそのまま3回目に入った。この時に少し思った。あの初夜で彼が彼女にした側位。あれを私はまだ体験していなかった。だからして欲しいなって。だけど彼女がこっそり教えてくれた事だけど……。
『あれは見せる体位かな。彼も私も腰の負担は少ないですが、彼には浅すぎるかも』
浅いけれど、その分気持ちは良かったそうだ。だからすぐにイケたとか。でもGスポットばっかり擦られるから、慣れると飽きるかもだって。そもそもフンボルトが気持ち良くないだろうとの感想だった。う~ん……ものの本に拠ると側位ってかなり気持良いらしいけれど、合う合わないは当然あるだろうし、どういうペアかに懸かっているのも想像できる。だからそういうのはあるだろうなと素直に思った。
ピロートークでそんな事を話したら、優しく笑いながら……。
『そういや、君にあれはしていなかったね。でもあれ以外の旅先で静かに楽しむ方法とか、木や壁に委託して君を楽しませる体位も考えてあるから待っていて』
な~んて言われた。膣からプピュッと赤ちゃんの種が溢れた。
そんなちょっと恥ずかしい記憶を振り切り、まだ眠っている彼の腕をそっと退かして、私はシャワールームに入った。身体は念入りに洗った。あのまま眠っちゃったので、お股がカピカピしていたのだ。歯も磨き終えて、上がって髪を拭いていると、のそりと彼が起きてきた。
「おはよう~」
「おはようございます。腰は大丈夫?」
「うん? ああ、大丈夫だよ。僕もシャワーを浴びるね」
「はい」
そうして先に着替え待っていると彼が出て来た。暫く経って着替え終えた彼と手を繋いで食堂に向かった。勿論、お年玉は忘れずに持っている。
「Prosit Neujahr!!」
直訳すると『新年に乾杯』となるが、これがドイツ語圏での新年の挨拶だ。だから皆んな口々に『Prosit Neujahr!!』と言葉を掛け合った。
ところがここで『Here's looking at you,kids』と言って来たのがエルだった。これは単なる米英語の古い慣用句で『乾杯』という意味でしかない。だけど映画『カサブランカ』で日本人はこんな訳を入れた。『君の瞳に乾杯』と。明治の頃の『月が綺麗ですね』くらい意味深ではないし、ここは匂わせているだけでストレートな告白でもない。だから『今ならきっと(月に)手が届くでしょう』や『私にとって、月はずっと綺麗でしたよ』とか『あなたと一緒に見るからでしょう』なんて返す言葉もなければ、『死んでもいいわ』なんて決意もない。要はからかっているのだ。
だから私は日本語で、『新年あけましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします』と返した。そこからこの意味をフンボルトやパミちゃんにエルヴァちゃん達、日本語のわからない人に教えてあげた。
この後、フンボルトが子供達を呼んだ。そうだ、家長たるフンボルトが配るのだ。袋(封筒)は私が横からフンボルトに手渡し、受け取る相手にお年玉の意味を教えた。順番は逆で年下の子から。ママを通してエルヴァちゃんにも伝えてあったので、今朝はユリアーナちゃんとそのご家族もこちらの食堂だった。そこからレターセットに入ったお年玉を配っていったのだけど、年少に配り終わったところで順を入れ替え、今度は先にイリヤ姉さんに渡した。すると姉さんは、なんと『お年玉』というものを知らなかったのだ。
「な、なにこれ? お金? どうして? お小遣い?」
「だから年下の子にも説明していましたが、年の初めの最初の小遣いではありますが、お祝いでもあるんです。どうぞ、ご遠慮無く受け取って下さい」
「え、え~っ」
ちなみに姉さん用の封筒には『御年玉』でなく『御年賀』と書いてある。これはこの計画を嗅ぎつけたエルが教えてくれたのだ。『目下の人に配るのが御年玉。目上だと御年賀だよ』と。年賀状の由来と同じで本来は目上の人、或いはお世話になった取引相手に送るものなのだとか。だけど金銭だと嫌らしいので半年ごとのお中元、お歳暮となり、年始の年賀状となったのだそうだ。会社同士なら『結構なものを頂戴致しまして』とその都度お礼状を出すところだが、親しい場合は年賀状に一筆添える事でお礼状を兼ねるらしい。勿論、お礼を言った。もう日本で暮らす事はないだろうけど、カリフォルニアにも日本人は居る。主婦として知っておいて損のない知識だと思ったのだ。
「それでお菓子でも買って、妹さん達に配ってよ」
「あ、そうだね」
姉さんは、フンボルトのその言葉で納得した。勿論、私の入れ知恵だ。次に高校生の3人と行きたいが、モードレッドとエルも入れて5人に配った。
「私まで!?」
と驚いたのはエルとエルヴァで……、
「やったぜ!」
と喜んだのがモードレッドだった。ちなみにこの時、私はフンボルトの横顔をチラチラ見ていた。そんな事はないと知りながら、エルヴァにどういう態度を取るのだろうと気になったのだ。だってフンボルトは私を通じて、ある意味彼女のすべてを知っている。何が好きで何が嫌いか、どういう風にすれば歓び、どうすれば感じるか……それら全部だ。
そしてその事を彼女も察している。だけど彼女は態度に一切出さない。彼女が話さなければ、今後も吉川クンは私を知らないままで問題は起きないのだった。でもフンボルトが知ってしまっている事を、彼女も私も知っている。私が気にし過ぎなのかも知れないけれど、とても緊張した一瞬だった。
それだけにエルマとトロンメルが素直に受け取ってくれたので嬉しかった。中は100スイスフランだから、日本円で1万円ちょいだ。おまけにお祖父様が持ってくれているので、なんだか申し訳ない。だけどスイスの物価だと、このくらいあっという間に消えてしまう。日本組の子達は学園もあるので、3日と4日にお土産などを買い揃え5日の午前中に帰るそうだ。ならその時までに追加でお小遣いを渡しても良いだろう。私達も今日か明日ミュンヘンに電話を掛け、早ければ4日の午後に出発する積もりだった。ホテルの予約を頼もうとするとフンボルトが、『君とパミは、もう家族だよ? 実家に泊まっていきなよ』と言われてしまった。ご迷惑にならないかなぁ……1~2泊なら良いのかな……?
朝食後、ユリアーナちゃんのご家族(ご両親)が私達の席にやって来た。お年玉のお礼と、同じように返礼すれば作法に適うのかという確認だ。だけどこれはキチンと説明した。
「気になさらないで下さい。私達夫婦の結婚式にわざわざここまで来てくれた従姉妹に、日本育ちの子が5人も6人も居ますので、楽しんで貰おうとしただけです。ただこのイベントにユリアーナちゃんが参加できないと寂しいだろうなと思いまして」
「ありがとう。その心遣いに感謝するよ」
「ええ。お若いのにしっかりなさっているわ。ノイント様がここから出すと仰った意味が良くわかりました」
「だね。2人とも本当にありがとう。娘も喜んでいるよ。今後も何かあったら遠慮なく声を掛けて欲しい」
そんな風に言われてしまった。だけど私も元は『エル』だ。ユリアーナちゃんの名と、その見た目がどこから来ているのかわかってしまう。そして『エル』がどんな気持ちであの子と接したのかも。
そんな会話が済んだ少し後だ。あちらのエルヴァがエルマとトロンメルから質問攻めにあっていた。チラチラ聞こえてくる内容から察するに、彼女が昨日出ていた事に関してらしかった。こんな雪の中を半日帰らなかったとか。だけど私は何となくわかった。マルガリータさんじゃないミラビリスとあっていた可能性がある。それも『エル』が言い残して行ったか、エルの手引きで。
実は私とフンボルトが今暮らしているハンティントンビーチは、日本人もチラホラ住んでいるが基本は白人の多い保守的な街だった。カリフォルニアは政治的に言うと民主党支援者の多いリベラル・ステート(州)とされるが、これもカウンティ(郡)で結構違う。そしてそのカウンティの中の街ごとでも支持政党が異なっていたりする。それは〇〇人街といった具合に、住んでいる人の構成がストリートごとにガラッと変わるからだ。アメリカは東西の沿岸部にリベラルが多いと言われるのはそこにある。つまりは人種の坩堝(るつぼ)なのだ。カナダの都市も沿岸部はこんな感じで、あっちはインド人やアラブ人も多いから、もっと坩堝だと思う。
家からちょっとストリート(繁華街)に出れば、メキシカンを含むヒスパニッシュ系にベトナムやコリアンといった東アジア系がよく目につく。そしてそれと変わらないくらいチャイニーズも多く、アジアンの数はアフリカン・アメリカンよりも多く感じるくらいだ。これはハンティントンビーチというより、オレンジ・カウンティの特徴だった。ここまでのアジアンは、内陸の農業地帯ではまず見ない。なので保守の共和党は内陸部で人気が高いとされている。だから民主党は『共和党は田舎者』というイメージを植え付けようと躍起になる事が多かった。昨年(2004年)は大統領選だったので秋は煩かった。でも現知事は共和党で、あのターミネーターだった。つまり保守層も多く住んでいる。
だから選挙人の総取り制なので見えて来ないが、多分、カリフォルニア全体の共和対民主は48対52くらいのものだ。その中でもオレンジ・カウンティはやや保守寄りで、私達の住むハンティントンビーチは圧倒的に保守が多く感じる。というのはビーチに行くと星条旗のビキニの子がやたら多かったからだ。あまりに目立ってカッコ良く感じたから、私とエルとモーレッドも持っていたりする。
これの意味するところがわかるだろうか? つまりは魔術師が住み良いと選ぶ土地は保守的なところが多いのだ。そして世界を牛耳りたいと願う者は、決まってリベラルの仮面を被る。言ってみれば共産主義者なのだが、アメリカの経済を支配する層は日本や中国のそれとは違ってもっと奥が深い。彼らは悪魔崇拝者なのだった。だけどそれは神秘に憧れても神秘を操れないジレンマから来ていた。
そんな事をあの空間で『現象の残滓』の彼女が教えてくれた。だからエルヴァに接触してきたミラビリスも、それをレクチャーしていたのだと思う。日本も今は大変らしい。いくら日本人が多くても、日本のニュースなんて私の耳には入って来なかったし、ここチューリッヒで新聞を買ってもアジアのニュースなんて滅多に載らない。なのでマルガリータさんを他のミラビリスが、エルヴァやエルマを『エル』がアンテナにしている可能性は高い。そして私もアメリカ担当のアンテナに間違いない。
これはカンだけど、私やフンボルトだけでなく、リンさんやシロウさんにミアータさんやモニカさんも護られている。それはお祖父様のエージェントだけではないだろう。私はお祖父様も『百貌』を数騎持っているのではないかと睨んでいるのだけれど、どうだろうか? そしてエーデルフェルトも何らかの英霊を、今回の『現象騒ぎ』を利用して召喚している気がしていた。そしてお祖父様と連携して動いている……そんな気がしてならなかった。
年始早々の大掛かりな仕込みを終えた私達は、昼食を求めて午後のマンハッタンを歩いていたのだが、そこに偶然、私達が宿にしているビルのオーナー家族が歩いていた。レストランから出て来たところなのだろう。言わずと知れた『Mr.Fired』だった。そんな有名人とすれ違う瞬間だった。
「ハッピーニューイヤー、レディ。私のところで務めないか?」
それ、『採用』って意味ですか? ミスター『クビだ』さん? 少し嬉しかったけれど、私は新年の挨拶の後、丁重にお断りした。彼はため息を吐いて『残念だ』と言い残して家族とともにやって来たクルマに乗って消えて行った。忙しい人だなぁ。今年はフロリダじゃなかったんだ。
「誰ですか?」
「有名な事業家で、不動産王ですよ」
「ほぅ、それで。雰囲気がありましたな」
こういうオーラはハサンにもわかるようだ。ああいう商売がわかっている人が大統領にでもなってくれたのなら、こっちもロシアも楽なんだけどなぁ……。
とは言え現実はそんなに甘くない。甘くはないけれど、何としても国を改革する資本が必要だった。実は孔明さん達に散々イヤミを言われるが、あの旧中国共産党幹部から奪い取った隠し財産はほぼ全て『エル』のものとなり、スイスやリヒテンシュタインにあるお祖父様の銀行に預けてあるのだ。となると私は別な方法で当面の資本を手に入れないといけない。
一部は使えたので日本で投資した。ただしそちらは『エル』と共同だし、表立つ名義はもっと別の『完全掌握した』日本人だった。それが1つ目の手。もう1つは今後新しく発行されるであろう新貨幣の為替レートを上げる事だ。だけどこちらは時間が掛かる。そこで目を付けたのがアメリカに於ける闇社会の資本だった。
ご存知のようにイルミナティやユダヤ資本と言われているあそこの家や、マンハッタンに冬は目の前がアイススケート場になるビルを持っている家などは、『現象の意思』によってほぼ壊滅状態だった。なのでこちらは『エル』とお祖父様が競い合って金ヅルの企業や銀行を奪っていった。もう彼らが生命維持装置で余生を過ごす最低限の利益しか産まないものしか残っていないのだ。
だけど私はそれとは別のものを改めて発見したのだ。それは旧共産党が持っていたある機密情報と、整理された文章だった。新世界秩序やグレートリセットを謳う闇の存在とはまた違う闇だ。敢えてえ言うなら裏の政府、影の政府だろうか。奴らは比較的新しい。その存在の核を作ったのはトルーマン大統領だった。
疎い人にはピンと来ないだろう。ましてや仮初の与えられた平和を疑問も抱かず享受し、新聞やテレビのプロパガンダをそのまま鵜呑みにする人には。だけどどこの国の、どの政府にも諜報機関は存在する。それは性善説も性悪説もプロパガンダで、人間なんてケダモノ同然だと知っているからだ。それがわかっていないと政府として国家を運営できない。だから国内ならあらゆる層の国民を、国外なら諸々の外国を調べてデータを集めるものなのだ。
情報は値千金だ。なのでどの国も機密情報を扱う政府機関がやたら多い。中でも多いのがアメリカだろう。ざっと挙げるとCIA(中央情報局)、NSA(アメリカ国家安全保障局)、国土安全保障省、FBI(連邦捜査局)、国務省、財務省、国防情報局、空軍情報局、陸軍情報局、米海兵隊情報局、沿岸警備情報局、エネルギー省、国家偵察局、麻薬取締局、国家地理空間情報局などなど、その名を聞けば扱う情報が『あ、単なるヒミツ程度じゃない』とわかるだろう。ところがこの複雑な組織の2トップがCIAとNSAだと理解すれば、他は傘下であり他部門のようなものだと理解できる。
ある若者が居た。父親は銀行家であり元老議員(上院議員/コネティカット州共和党の財務部長)であり、兄もやり手のビジネスマンだった。やがて第二次世界大戦が始まり、彼は大学に行かず海軍のパイロットとして艦上攻撃機を操縦していた。そこで着々と飛行経験を積み腕を磨いた。そんな彼は2度も日本軍に撃墜されていた。特に2度目は生き残ったのは自分だけ、サメも多い海域で数時間に渡り漂流し、味方の哨戒機に救助された。そこで彼は何故自分は生き残れたのだろうかと考えるようになった。5回も勲章を授与された後に戦争は終わった。
戦後彼は父や兄と同じイェール大学に進み、楽しい仲間とサークル活動をしたり、怪しいクラブに入ったりして青春を謳歌した。しっかり恋人と在学中に結婚し、6人も子供を儲けている。なお彼は大学を2年半で卒業し、経済学の学士号を取得している。元から賢い人だった。卒業後はその怪しいクラブで知り合った先輩の紹介で、石油会社に務める傍ら、CIAの外部エージェントとしても働いた。そこで積み上げた知識と人脈を活かしながら彼は政治家を目指した。
この上院・下院時代は挫折を味わいもしたが、彼は時の政府を預かる共和党の重鎮達の覚えが良く、ニクソンの命で中国に赴き当時の共産党高官とも交流を深めた。結果、生前の毛沢東と2度も会見したりしていた。やがて本国に戻った彼はCIAの長官に任命され、その任期後に彼は副大統領にまで登り詰めた。その時、二期8年も仕えた名大統領の名がロナルド・レーガンだった。
そこでは本当に真面目に勤めたようだ。レーガンの信任も篤く、彼は次期大統領に立候補するよう薦められた。前任のレーガン人気もあって、その頃は共和党の絶頂期だった。だから彼もあっさりと大統領になった。彼の名はジョージ・H・W・ブッシュだ。パナマ侵攻で麻薬撲滅を狙ったり、副大統領時代に行ったフセインの後始末を付けようとしたり一応頑張った。だけどソ連崩壊後のオリガルヒやネオコンを受け入れたり、サウジとの関係やフセインの関係から湾岸戦争は中途半端になってしまった。
彼は表舞台の人でなく、影で暗躍するCIAの人だったのだ。そして彼はトルーマンが築いたCIAのもう1つの顔、『Gold backed CIA』という、敗戦国から奪った膨大な金を管理する存在を知っていたし、かつてはその組織の一員でもあったのだ。そんな彼がイルミナティなどの存在を知らないはずはない。そこで彼は自分だけのCIA内部CIAを創った。それが『Bush CIA』だ。そんなパパ・ブッシュの影の力に魅入られたのが次代のクリントンであり彼の妻だった。この夫妻はCIAの裏の顔を徹底的に利用し、強化し、我がものとした。それをパパの息子が取り戻しているのが今のアメリカだった。
私の狙いは、その『Gold backed CIA』がフィリピンやスイスに隠し持っている資産であり、同じくそれを狙っている『Bush CIA』の動きを封じ込める事にあった。だから『Bush CIA』の番頭でもある、色の革命を影で行ったウザいジジイ投資家を一文無しにしたのだ。それだけでなく、今『Bush CIA』を封じ込めないと、あそこがFRB(連邦準備銀行)を完全に押さえてしまう可能性が高かったからだ。そしてそれは歴代大統領の悲願でもあった(ケネディ暗殺の最大の理由はFRBを政府の管理下に置こうとしたからという説もある)。だけど私とお祖父様はその貨幣発行権をこそ、アインツベルンのものにする積もりだった。
何故ならそこを上手く誤魔化しFRBをじわじわ締め付けようとしている影のCIAの存在に、私も『エル』もとっくに気付いていたし、『エル』が事前に手を打っていてくれていたからだ。今後はあのワイン屋の家が看板と成り下がり、アインツベルンが利益のみを得るだろう。そしてそこに噛む事で、その権利をお祖父様に委譲すれば? その見返りは即金となって返って来る。私としては英国を締め上げスタンダードチャータード銀行と香港上海銀行を押さえておきたい。その資金が欲しかったのだ。残る中国銀行は現政府が確保済だった。以上の銀行三行が香港ドルの発行権を持っているのだった。
独裁でも構わない。暴君でも構わない。だけど自国の民を餓えさせ苦しませる政権は要らない。歴史から学ばず、自分の利益だけを追う者は必ず滅びる。だけど民から愛される暴君は、決まって後世からも讃えられる。たとえ借金であってもその集金力も『黄金律』になりはしないか? それはないか。とは言え自国の民を食べていける環境だけは作っておくのが、為政者に必要な最低限の能力だろう。
現代風に言うなら、それは低失業率と労働力の低インフレ維持だ。求人が多ければ多いほど失業率は下がり、ブラックな仕事は淘汰される。つまり景気を上に向けられない政治家は無能なのだ。それが私の持論だった。
「冗談抜きで国内はペリカで回さないとなぁ……」
その貨幣価値は元の十分の一でも高いだろうか。内陸中心に考えると百分の一以下かも知れない。本当にハリボテでポンコツな国だ。
起きたら窓の外がかなり明るい。
「起きたか、凛」
「ン……士郎……、今何時?」
「もう10時半だ。そろそろ、な?」
「……うん」
シャワーを浴びて目を覚まし、歯を磨いて服を着た。昨夜と言うか今日の午前2時頃までモニカさんやミアータさんと話しながら飲んでいたのだ。
「2人は?」
「朝の運動の時はまだのようだったけど、今はもう起きているよ。元日なんで今日も休みだけど、明日からは通常だからな。身体を慣らさないと」
ホント、アメリカ人はタフだ。始業が4日からとは行かないのね。まぁ、欧州もそうだったけれど。階下に降りてお2人と挨拶を交わした。ブランチの用意ができていた。
「はぁ~、目が覚める。コーヒーなんて以前は飲まなかったのになぁ」
エルヴァやフンボルトの影響だろう。お2人さんは7日頃に帰ると言ってたけど……とうとう私らと同じで夫婦かぁ。あの子はまだ18歳だから早かったなぁ。それでも仲睦まじいのは間違いないから安心だ。しかし士郎の『凛』は違和感ある。本人が言い慣れないからだろう。ま、これも時間だろうけど。
プレートの上にはクロッサ~ンとサニーサイドアップにベーコンと少々のサラダだ。クロッサ~ンは何だって? クロワッサンのこと。英語だと『サ』にアクセントが来てこうなる。サニーサイドアップは目玉焼きだ。メイドの2人は私が食べる量をしっかり把握しているから無駄に作らない。これが実にありがたいのだ。士郎は男性で食べるから、クロッサ~ンが2個にバゲットも付いている。その分、サニーサイドアップも2個でサラダも多い。それらを牛乳やオレンジジュースで頂くのだ。
ちなみにこれらのパンはほとんどモニカさんが焼いている。バターたっぷりで風味がよく、とても美味しい。ただカロリーが高そうなので私とエルヴァは毎回1つだけだった。その分、彼女は士郎並みにサラダをよく食べていた。この家はスイス・ドイツ系なのでジャガイモもよく出るが、元々モニカさんとミアータさんがバランス良い食事を作る人達なのもあって、他のアメリカの家庭と比べるとかなり野菜が多く出ていたようだ。ところがそこにエルヴァやエルが加わって、もっと野菜が増え、ヨーグルトも出るようになった。これが実に嬉しいのだ。
なお先月(昨年12月)から、私は士郎との2人分食費を出していた。本当は家賃も払うべきなのだが、それはお2人に断られたのだ。投資や投機も上手く行きつつあって、先月はかなり儲かった。エルヴァの資金を預かって、まずは彼女の指名した短期に投入した。すると一発で当たった。今月からは中・長期の株式銘柄に分散しつつ、少しだけ短期に回そうと考えている。それと先月末に投機した分が今月どう出るかだ。
窓の外の日差しは柔らかく、ダイニングから見える裏庭の樹々もすっかり葉を落としていた。それでも冬木より暖かい。アメリカ大陸は同じ緯度でも西が温暖で、東が冷寒となる。街が凍るほどの寒波も東海岸にしかやって来ない。だから南へ南へとリゾートが開発されたのだけど、そちらはそちらでシーズンオフになると、日本の台風なんてメじゃないハリケーンもやって来る。エルヴァが西海岸、中でもカリフォルニアのここいらが好きだというのがよくわかる。こういう言い方は何だけど、あの子の肌ととても似合っているのだ。合流して間もない頃に一緒に行ったビーチで、彼女は眩しかった。記憶に残る……あの森の中の城で殺されてしまったイリヤ……。あの子が健康でちゃんと成長できたなら、エルやエルヴァのようになっていたのだろう。
だからだろうか。化け物染みた超一流の魔術師でもあるエルヴァが、実は思いの外、真っ当で思慮深い子だとわかった時の驚き。そして一緒に暮らすようになってわかった、あの子の実に家庭的で柔らかく暖かな雰囲気。それらを私は愛でていたし、士郎も癒やされていた。今の混然とした世界のせいだと思うが、結局『魔法使いの凜』は年末までに来なかった。彼女から受け取った課題は私なりに解いたが、採点されないままだ。もう、元の世界に戻れないのかも知れない。桜の事は諦めきれないものがあるけれど、帰る手立てがないのなら祈るほかはない。その悶々とした気持ちも私はエルヴァに癒やされていた。だから……早く戻らないかなと、玄関の音に妙に敏感な今日このごろだった。
『女、三人寄れば姦(かしま)しい』とは言うが、ホレ、1本でも喧しいのがルビーじゃ。そこにもう1本と、エルマまで参加しておる。
「お姉様、綺麗だったよね? で、どうだった?」
『バッチリですよ、エルマちゃんの理論。亜空間から有機レンズのみを突き出し撮影……実にお見事でした』
「じゃ、式は支障なく?」
『はい。全部録画できています。画素数も大きいですから、かなりのアップに耐えられますよ』
「じゃ、ウエディング姿のお姉様を抱き枕に印刷して……」
もう儂には、何を言っとるのかわからん領域に入っておった。しかし、おかしな場面がある訳でもないので、盗撮は事後にあちらのエルヴァから正式に許され、許可を貰った上で妹の方のイリヤのルビーに『だびんぐ』とやらをしとるのが今じゃった。なお、ここまで遅れたのは、あの『エル』が使い魔で撮影しておった分を、エルマのルビーが盗撮しておった分と交換しておったからじゃった。
まぁ、お祝い事でもあるしの。両親も姉妹も楽しみにしておるので誰も文句は言えんかった。ただ、初夜にルビーを潜り込ませて撮影しようとしておったのは必死に止めた。あれは絶対に折られるぞい。そもそもバレんはずがない。じゃと言うのに、イケると思うところが恋なのかのう? 同性の姉の、しかもその複製にまで範囲を広げた恋……トロンメルでなくともドン引きじゃ。儂は思ったぞ。間桐って、思ったよりマトモだったのではないかと。
「ナイナイ。それはナイから」
『そう、バッサリ言わんでもええではないか、トロンメルや』
「馬鹿にはしないけどさ、ゾウケン君がそれを言うのって思うよ?」
『そうかの。まぁ、そうじゃな。なので同性への恋は否定せんよ? しかし魔術師としてはどうなんじゃとは思うぞ』
「そこはね。子孫も望めない訳だから。でもそのうち何とかしようと思うのも魔術師だよ」
『確かに雌雄同体や性転換は自然界にあるものじゃからなぁ』
これも『自然の触覚』の本能なのかの? エルマを以前より深く知り、トロンメルとも接するうちに儂の記憶の中のユスティーツァの肌が『褐色』になりつつある。主であるエルマの『思い』がパスで伝わり染まっとるのかのぅ。それでええじゃないかと思うようになっとる。困ったものじゃ。
お姉ちゃん達からお年玉を貰って嬉しかった私達だけど、私とイリヤは空港でもパパからお小遣いを貰っていた。だから結構お金がある。だけど道には雪が多いし、年末年始だからって理由で、前とは違って誰も街に行かないのだ。なのでお小遣いがそっくり残っていた。明後日、お土産を買いに街に出るからそこで使うしかチャンスがない。でもお留守番してくれている、お兄ちゃんとセラやリーゼリット、後は凛とマルガリータにアーチャーのお兄ちゃんにセイバー達が摘めるちょっとしたお菓子くらいしか買わないだろうなぁ。
そんな風に思うのは、ここがあまりにも居心地が良いからだ。飲み物は部屋の冷蔵庫にあるし、電気ポッドがあるのでお湯も沸かせる。メイドに言えばお菓子でもケーキでも何でも用意してくれるし、外に出なくても遊ぶ場所に事欠かない。だから、この私がイリヤみたいにのんびりさんになっていくのが自分でわかった。
「たぶん、冬の間はルヴィアさんもそんなものだと思うよ」
エルヴァがそう教えてくれたけれど、そうよね。あっちも寒くて雪が多いだろうからね。ルヴィアの家もここみたいに街から離れていると思うし。美遊の話だと、コンビニが大きな街にしかないらしく、それでルヴィアは日本のコンビニの多さに驚いて……そこで出逢った水ようかんにハマったのだとか。
前の私じゃわからなかった。でも、今はわかる。チューリッヒは3回目だし、ルーマニアの後に寄ったときは、スイスを結構観光したからね。どこも綺麗で自動販売機やコンビニなんて駅のような施設のある場所か、大きな街にしかない。これはルーマニアもそうだったし、スイスもそうだ。住宅街にまで自動販売機やコンビニがあって、ごちゃごちゃしている日本がヘンなんだって思うようになった。
「日本ってどんなところ?」
これはエルヴァの親友のユリアーナ。知りあって数日だけどすぐに仲良くなった。静かでおとなしいのに、ゲームをすれば強気な面もあって……美遊やエルヴァにも似ている。見た目は親戚だけあってエルヴァやイリヤに似ているけれど。だけどモードレッドが言うには、エルヴァに強烈な対抗心があるらしい。マアエモさんが言うには、それがお互いを刺激していて、お互いの良い面が出ているってコトだけど。私もそう思うなぁ。
それに何より、エルヴァってイリヤが着いていけないほど賢いでしょう? それって学校で浮いたりしないかなって、私もイリヤも心配していたんだ。だから同じように話せる友達が居ると知って安心した。本当は前回ここに来たときに逢わせたかったそうだ。でもユリアーナは海外旅行で、こっちに来る機会がなかったらしい(この子の家も大金持ちだそうだ)。
「面白いよ。ぜんっぜん、ヨーロッパとは違うから」
「へぇ~」
また、ユリアーナとエルヴァは同じ学校だけど、ユリアーナはドイツ人で、家はフランクフルトに近いマインツというところなのだそうだ。なんでも年の離れたお姉ちゃんが6年ほど前に病気で死んじゃって、それで落ち込むユリアーナの環境を変えようって事で、親戚で同い年のエルヴァが編入する予定の学校へ一緒に入ったのだとか。イリヤにはちゃんと言っていないけれど、エルヴァは調整期間が長くて学校に入るのが遅れている。だけど賢いので問題なかった。そしてユリアーナも。つまりユリアーナも相当調整されているのだと思う。こっそりパミに聞くと、私の考えと同じだと言ってくれた。
『うん? ああ、調整……? そうね……母体にいる間の調整は、主に脳や魔術回路の活性化だけなのよ。それ以外は普通はないわ。そのパミちゃんが言う、学習装置みたいなのを使う家もあるにはあるらしいけれど……それでも2歳から5歳頃までかな?』
イリヤお姉ちゃんのお話だ。これを私が尋ねた理由は、なんでこうも私とイリヤはエルヴァよりバカなのと思ったからだ。
『恨むなら、アハトを恨みなさいな』
その人、ここだと滅んじゃったんだってば。文句も言えないよ。パパはマイナス20点だ。
『ママは?』
『マイナス30点』
『今も怒ってるの?』
『もう、怒ってないけど。マイナスはマイナス』
そう言えるからクロエちゃんは可愛いって、お菓子をくれるのも何かヘンだ。でもそこがイリヤお姉ちゃんで、私が私のままだったら、こんな人になるのかなって不思議な気分になる。でも、でも。エルヴァお姉ちゃんや『エル』お姉ちゃんのイリヤお姉ちゃんは、とってもオトナだったよね? やっぱり姉妹の関係で影響が違うのかな?
「クロエ、何を考えているの?」
「え? ああ、ごめん。イリヤお姉ちゃんの事を考えてた」
「ああ、あの人。楽しいよね? 私は好きだな」
これはパミ。1歳違いだけど、対等に話してって言われているのでお互いに呼び捨てだ。もう1人のエルヴァお姉ちゃんの妹ってコトになっているけど、戸籍上はお姉ちゃんとフンボルトのお兄ちゃんの養子になっている。どういう事だと思えば、パミも並行世界のアインツベルンで、その世界から流されてお姉ちゃん達に保護されたんだって。どんな偶然だか奇跡なんだか。ラッキーとしか言いようがない。でも他人には話すなってお祖父様やお姉ちゃん達からも言われている。それはヒミツにしないとね。
ところで、今、私達は日本語で話している。それはエメラルドを使っているエルヴァだけでなく、パミもユリアーナもだった。驚きだけれどパミは少しだけ日本語が話せるし、ステッキを4本も持っていた。それで自分のエメラルドをユリアーナに預け、新しくサファイアを起動してこうして話せている。それも凄いのだけど、その起動する時の呪文がかなり重要らしく、これを間違ったりすると言うことを聞かなくなったりするのだとか。絶対に凛もルヴィアもそれを知らなかったんだと思うなぁ。
イリヤもこれを知った時、かなりブツブツ言ってた。だけど私はあんな性格のルビーが一番イリヤに合うと思っている。だってあのルビーはエルヴァお姉ちゃんが手懐けたのもあるし、何だかんだ言いながら、イリヤと仲がとても良いからだ。とは言ってもパミの持つ4本のステッキは珍しいから、仮マスター登録して貰い、皆んながエメラルドとルビーにサファイアを試してみた。
ルビーは明るくて元気なのはどれも同じだけど、確かにイリヤのルビーやエルマお姉ちゃんのルビーに凛のルビーとも違っていた。賢いとか、大人っぽいとか、ルビーとは思えないような感想を持った。そして転身の衣装もバリエーションが豊富で、こういうのが良いとかああいうのが良いとか言えば、だいたいそんな風にしてくれる。この辺はサファイアやエメラルドも同じだけれど、個性は違っていた。
だけどサファイアは美遊やルヴィアのと、そう変わらないと思う。しいて言うなら親切で優しい。エメラルドは少しだけ子供っぽく、お友達って感じ。だからエルヴァに合うと思うし、パミも普段はエメラルドがメインなんだって。で、残るダイアモンドだけど……。イリヤが握ってもウンともスンとも言わない。私が握っても同じ。そこで何か決意したエルヴァが握って、ようやく会話ができたけれど、『まだ早い』とダイアモンドに言われてそこまでだった。
「どういうコト?」
「これも同じのが家にあるけれど、お祖父様から使うなって……」
「パミ?」
「リミッターがあるから安全なんだけど、魔力をゴソッとね。私で半分は持って行かれちゃう」
この4本のステッキは、同じ性能じゃないらしい。エメラルドが20とすると、ルビーとサファイアは40くらい。それでダイアモンドは100もあって、おまけに術者の魔力をかなり必要とするのだという。
「そんなのなんだ?」
「エメラルドってそんなに弱いの?」
「それはエルヴァが使うからだよ」
パミはエルヴァが未熟と言っているのではなかった。その意味はエルヴァが使うから、ルビーやサファイアに匹敵する性能が出せているという意味だった。そしてこの数値は魔力の出力で、言ってみれば攻撃力だった。そこで教えてくれたエメラルドの防御力は60だった。ルビーとサファイアはそちらも40なのでかなり違う。
「わかりやすいかなって防御力って例えたけれど、エメラルドは学習能力や探査能力が高いんだよ。それで最高性能を求めて使う人のことを考えずに作られたのがダイアモンドなんだ。もしエルヴァが、お祖父様の魔術刻印を受けたなら使えるようになるかも」
なるほど、そういうのだったんだ。そしてルビーとサファイアを、たぶんかなり強引に売って貰い、聖杯戦争でアハトは凛のご先祖やルヴィアのご先祖に奪われたと……。滅んで当然だったのね。
2016年の選挙ラリーより。
『 この闘いの目的は、現在の堕落し、腐敗しきった古い政治体制を、アメリカ国民であるあなた方が創る新政権で一新する事にある。
ワシントンDCの職員や、彼らに資金提供している金融機関や、そしてメディアなどの企業に勤める者達は────ただ『既得権益を死守し、自分達だけがもっと豊かになる』という目的を達成するために生きている。
ワシントン(DC)の政治家を牛耳り、世界中の特別な利権(既得権益)を貪っている黒幕は、この選挙の結果に拠っては何兆ドルもの大金を失う危機に直面している。
彼らは────あなた方アメリカ国民の幸せの事なんて、これっぽっちも考えていない者達と手を組んでいる。今回の選挙は、未だ嘗て例を見ないほどに、皆さんの生存そのものを脅かしかねない。
これは────今までの4年毎に行われる大統領選挙とは訳が違う。我々の文明の歴史の大転換となる。アメリカ国民が現政府の横暴を止め、権力を奪い戻す事ができるか否かを決定する一大イベントだ。
我らアメリカ国民の勝利を阻む政府の人間は、とんでもなく不利な条件の貿易協定や、大量の不法移民の流入により私達の祖国を傷付け、干上がらせてしまう程の酷い経済外交政策をしようとしている奴らと同じ仲間だ。
ワシントン政府の者達は────工場や雇用をメキシコや中国、更には世界中に流出させる事により、アメリカ経済を破壊へと導いた。世界経済の意思決定は世界権力に委ねられてきた。
彼らは────労働者階級から搾取し、アメリカの富を奪い、ほんの一握りの巨大グルーバル企業と政治団体だけを肥え太らせ続けてきた。
これは我が国の生存を懸けた闘いであり────、アメリカにとって最後のチャンスとなるだろう。
この国が自由を取り戻すか────、それとも民主主義が幻と消え、社会システムを自分達に都合良く変えてしまう、ほんの一握りの世界権力にアメリカがコントロールされてしまうかは、(総て)この選挙に懸かっている。
(現在の)社会システムは、既に奴らに拠って都合良く変えられてしまっている────。これがリアル(現実)だ。
あなたも────『彼ら』も────私も────、そして世界中の人々が、この事実に気が付いている。
この世界権力の中枢に居座るのがクリントン一味だ。ヒラリー・クリントンが国際金融家達と会い、その『特別なお友達』と『彼女の支援者達』の利益のためだけに、アメリカの主権を崩壊させる計画を話しあっていたその証拠は、ウイキリークスの書類でじかに確認する事ができる。
正直に言って────ヒラリー・クリントンは刑務所に収監されるべき人物だ。
クリントン一味に拠って展開される最も強力な武器はメディア企業────マスコミだ。
ここで一つハッキリさせておこう。この国のメディア企業は、もはやジャーナリズムの機能を果たしていない。『彼ら』は────ロビイストやその他の金融団体と同様、政治的な利権関係により、政治的アジェンダのためだけに仕事をしている。
彼らの強力なアジェンダには、あなた方アメリカ国民の利益など、これっぽっちも考慮されていない。自分達の利益オンリーなのだ。
『彼ら』のコントロールに逆らおうすれば、『性差別者』だの『人種差別主義者』だの『外国人差別』だの、いちゃもんをつけて大騒ぎする。奴らの口から出るのは────嘘、ウソ、嘘ばかり。次から次へと悪事を働く。
忘れないで────クリントン一味は犯罪者だ。奴らの数々の犯罪はちゃんと記録にも残されている。奴らを護っている犯罪者仲間は、クリントン一味のチカラを維持するために、国の機関やクリントン財団の世界規模な犯罪活動を隠蔽している。
奴らは────私や私の家族、友人に対する誹謗中傷を、自分達が嘘を吐いていると十分承知の上でやっている。その人間として最低な行為の数々を、奴らは止める積もりなんてサラサラないのだ。
矢でも銃でも持ってくるがいい。どんな攻撃であろうと喜んで受けよう。このムーブメントのために、そしてこの国をアメリカ国民の手に取り戻すために、この日が来る事を私は識っていた。単に時間の問題だった。
そして私は皆さんが立ち上がり、ご自分達に相応しい未来のために投票してくれる事も知っていた。この腐った犯罪一味を止める事ができるのは、人々の強い『チカラ』だ。あなた達────勇敢なアメリカ国民だけが、これら腐った権力者達を落選させる事ができる。私達の素晴らしい文明は今、破滅寸前だ。
そもそも私はこんな風に立候補する必要はなかった。私は素晴らしい会社を経営し、素晴らしい人生を送っていた。経営は成功していたし、私も私の家族も、こんな風にテレビの画面上で悪意のある嘘を吹聴されたり誹謗中傷される事もなく、一生涯優雅な暮らしを過ごす事ができていた筈だったのだ。こんな(謂われのない)攻撃、誰が好き好んで受けたいだろうか?
でも私は敢えてこの(政治の)世界に飛び込んだ。それは私がこの国の『恩恵』を十分に受け、今こそこの愛するアメリカに『恩返し』をするべき時だと強く思ったからだ。
私は人々のため、この運動(ムーブメント)のため、この国をあなた方国民に取り戻すために────アメリカ大統領になる事を決意したのだ。
────偉大なるアメリカよ、再び! (Make America Great Again!) 』
なお、クリントン夫妻に関わった人達の死者は、わかっているだけで47人である。