※この作品はR-18です。

プリズマ☆エルヴァ 第三部 霊脈篇   作:炭団

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もう少し書き足したかったのですが、今回の大統領選でのディープステート絡みで、スイスやリヒテンシュタインが欧州貴族の貯金箱なのがネットであげられました。なので一旦切って、アップします。ですので文章が少し短いです。


171、闇の闇

 エルヴァやエルマが用意してくれた指輪をアイリにはめる時、その細腕で赤ん坊だったイリヤを左腕で抱きながら、右手で拳銃を握っていた姿を思い出した。彼女は自分と娘の未来のために闘った。あの闘いで僕も少しだけマトモになれたんだ。その昔、僕はイリヤを抱くのが怖かった。こんな血塗られた手で純粋無垢な存在を抱き上げるなんて。

 僕は自分の父親を殺した男だ。唯一の身内をこの手にかけ、姉のような存在を見棄てた腐った人間だ。だから怖かった。そんな僕の指にアイリが指輪をはめてくれる。ヴェール越しのアイリは微笑んでいた。

 君だけだ。僕の罪を最初から赦してくれているのは。人としてどこか穴の空いた僕を埋めてくれるのは。だから僕も微笑み返した。以前は引き攣った笑顔しかできなかったのに、今はこうして自然に笑える。それもこれも君が居て、イリヤが居てくれたからだ。今はクロエにエルヴァに、お姉ちゃんのエルヴァ、嫁いでいったエルヴァにエルマにトロンメル。そして目の前で司祭をしてくれているイリヤ……気付けば娘が8人だ。

 

『キリツグ、娘が増えたのも天の配剤じゃろ。もう、実行部隊から引退して儂のビジネスの方を手伝わんか?』

 

 僕も引退は考えていた。潮時だと自分でも思っている。だからアイリのヴェールを上げてキスする時に囁いた。

 

「僕は部隊から引退するよ」

 

 少し驚いた顔のアイリだったけれど、それはみるみるうちに満面の笑みに変わり、そして僕達は誓いのキスをした。その後退場となる訳だけれど……僕は娘達の拍手の中、この10年で僕が闘ってきた理由を思った。この世から悪を失くしたい、戦争なんてものを二度と起こさせない……そう考えてノイント老の下で動いてきた。

 だけど敵は、そんな簡単で単純なモノでは無かった。ある意味、総てが悪であり総てが善だった。その二面性と人との関わりや縁や恩……これらが忖度を産み、人を悪に走らせていた。そしてそこに付き纏うのは常に『金』だった。例えば『LUCRATIVE(より儲ける)思想』は悪と言い切れない。何十万という従業員を抱える企業なら当然の理念だ。だから、明日の食事に事欠く有様の人が金で悪に走るのも、同じように非難できないのだ。勿論、罪は罪として罰するべきろう。

 だけど世の中を……世界を知れば知るほど、個人レベルでの絶対的悪なんて存在しないのではないかと思うようになった。いつだって怖いのは集団であり、組織であり、国家だ。

 だからこそ、その何が悪で何が善なのかの線引きが難しい。例えば闇の政府などと言われる存在は『あちら側』の子飼いであり、先進国なら必ず存在しているものなのだ。中でもアメリカや英国では顕著だ。表立って知られるのは、外交問題評議会(CFR)や王立国際問題研究所(別名チャタム・ハウス)にビルダーバーグ会議などにも名を連ねる者達だ。だけどこれらの組織が必ずしも戦争を推進しているかと言うとそうでもない。第一次世界大戦前までは少なからずそうだった。ちなみにこの『あちら側』や『闇の政府』は、日本だと藤原氏や五摂政家などに置き換えるとわかりやすいかも知れない。言ってみればそれのワールドワイド版だ。

 ところがその第一次世界大戦を経て、戦争が『より儲かる』事に、一部の者は気付いてしまった。だから第二次世界大戦から東西冷戦までは、そういった泥沼の、儲けるための社会実験になってしまった。だからだろう、ゴルバチョフが『我々の実験は失敗に終わった』と残したは。それは決して共産主義体制の事だけではなく、『あちら側』に対する精一杯の皮肉だったのだと思う(と同時に彼は、ソ連崩壊の原因はチェルノブイリだったと話している。発電所の核はあくまでも平和利用の範囲だ。だけどコントロールできなくなれば、それは英霊で満たされた聖杯だ。辺りに放射能という名のこの世すべての悪が撒き散らされる)。

 そしてそれらは欧州のワイン屋とアメリカの地主屋との闘いでもあった。その一番わかりやすい例が、近年まで残る戦争が主に中東で起きていた事実だ。誰だってわかるだろう。即ち石油だ。天然資源は掘削などの元手は掛かるが、これが基幹産業や重工業を支えるエネルギー資源となればリターンは大きい。

 だから同じように近年にあった、旧ユーゴ各地で起きた民族独立戦争には利権的な背景がほとんどなかった。あったのは国家レベル、軍レベルの地政学上の問題だけだ。金銭に纏わるものはほぼ無かったと言えるだろう。ファンドの賭けの対象になったとは伝え聞くけれど。

 本当にわかりやすい。金にならない、儲けが見込めない、そういう国に『あちら側』は手を出さない。アフリカなんて南アのダイヤ、中部のコーヒー豆、西のチョコレート用カカオくらいしかない。だから独立するならどうぞと、そこを治めていた当事者以外の出資者は冷たかった。国民が貧困に喘ごうが、餓死者が出ようが見放す。ただ、輸出品は途絶えさせるなと厳命して。

 これが輸出品もない国だともっと悲惨だ。内戦が起きようが虐殺が起きようが無視だ。勿論、大衆から声が挙がると、持っている企業や出資している企業の経営陣や政府に対して、救済キャンペーンくらいはしろと促したりはする。何故ならそういう声が上がる中で、ボランティアの白人民間人が死ねば国連が動き、軍が動けるからだ。そして軍が動けば、それだけの数のレーションや燃料や弾薬が売れる。すべての事がこんな具合で算盤勘定で決まるんだ。しかもそれだけじゃない。

 

『そういう資源もない貧しいところで、新薬や、新しく開発したウイルスの人体実験をするんじゃよ。目に見える武器を使った戦争の時代は終わった。気象兵器なども相手の経済を貶めるには良いが使い所が難しい。それ即ち自分の損でもあるからな。そもそもあ奴らは、オリンピックのように定期的に戦争を起こしたがっとった』

 

 怒髪天を衝くとはこの事だったのかと思うくらい腹が立った。何故ならノイント老は、エボラ出血熱もヒト免疫不全ウイルスも、中国の鳥インフルエンザと同じく、そういうウイルス実験の結果だったと断定したからだ。だけど……淡々と話すそのオリンピックの経済効果だけは、数値で表すととんでもないものだったので驚いた。となると人の生死を考慮しなければ戦争が一番儲かるというのは嘘ではない。悔しい事に……。

 

『キリツグや? 現代はそんな戦争が無理な世の中になったんじゃよ。なら、どうすると思う?』

 

 ノイント老は言った。それがワクチンとセットになった細菌でありウイルスによる生物兵器を使った、先進国を含む全世界を相手取ったテロだと。そういうウイルスで世界経済をガタガタにし(リセット)、過剰な人口を抑制し(ワクチンに不妊薬を混入させたりする)、近未来の食糧問題を解決した上でワクチンを発表する。バカみたいな言い値で売れるのは間違いないだろう。パンデミックになれば、防疫グッズも勿論バカ売れだし、都市封鎖が起きれば交通機関の株価も下がる。そしてその株を底値で買い叩き、株価が上がる頃に売れば……。僕はノイント老から、そういうマッチポンプをしてでも儲けたいと思う者こそが真の悪だと教えられた。また、一部の者だけで、その他大勢の人を支配する共産主義思想と親和性が高いのも、その元となった本をマルクスに書かせたのが『あちら側』だったからだとも指摘もあった。

 

 

『戦争を失くしたいのなら、儂を手伝わんか?』

 

 そう言われてスカウトされたのが11年前だった。半ば拉致同然に連れて行かれた先に居た、映画俳優のような壮年の男性は『エーベルハルト・フォン・アインツベルン』と名乗った。あの時は死を覚悟した。『アハトの事がバレたのか?』『身内の復讐か?』『これは逃げられないな……』と、胸の内でアイリとイリヤに『さよなら』を呟いたものだ。

 だけど彼(ノイント老)は、本当に僕の腕が欲しかっただけらしく、何故戦争が起きるのかを3日も掛けてじっくりと教えてくれた。そして納得の上で仲間(部下)になる契約書にサインした────。

 

『奴らは虚栄心が大きいのでな、理念などをホイホイ一般人の目に入る場所に置きたがるんじゃ』

 

 バカな一般人にはわからないだろうとの意だ。その内の有名な石碑は、アメリカのジョージア州にある。エルバート郡に建てられたそれを、ジョージア・ガイドストーンという。10のガイドラインが8つの言語(英語、スペイン語、スワヒリ語、ヒンディー語、ヘブライ語、アラビア語、中国語、ロシア語)で刻まれていて、その内容は……。

 

 1、大自然と永遠に共存し、人類は5億人以下を維持する

 2、健康性と多様性の向上で、生殖を知性のうちに導く

 3、新しい生きた言葉で人類を団結させる

 4、熱情・信仰・伝統・そして万物を、沈着なる理性で統制する

 5、公正な法律と正義の法廷で、人々と国家を保護する

 6、外部との紛争は世界法廷が解決するよう、総ての国家を内部から規定する

 7、狭量な法律や無駄な役人を廃す

 8、社会的義務と個人的権利の平衡をとる

 9、無限の調和を求める真・美・愛を賛える

 10、地球の癌にならない - 自然の為の余地を残すこと - 自然の為の余地を残すこと

 

 ……と、こうなっている。

 これは新世界秩序に則った、一部の人間による人類統制に他ならない。即ち共産主義だ。それは皆んなで仲良く物を作ろう、農業しようという原始共産主義思想ではない。指導層という一部の権力専有者達が、大勢の人の生死まで決める歪んだ王制でしかない。そして伝統も信仰も破壊する奴らに、王を名乗る正当性も資格なんてものもない。

 だけど僕は唯一それに対抗し得る、驚異の魔術を知ってしまった。思想も信仰も捻じ曲げる『掌握』の魔術だ。北京で『エル君』の分身である『金髪のエルヴァ君』が、曹操や玄徳達が居並ぶ目の前で見せてくれた魔術だ。その効果の程は……玄徳をひん剥いて迫る関羽と張飛……思い出したくもない。けれども、あそこまでスムースかつ短期間に国が治まった事は紛れもない事実で、確かな証明でもあった。そしてそれが認められたからこそ、北への侵攻が決まったのだ。

 余談だけどこの北への侵攻は日本に恩を売るためと、国際社会に新政府は正義のために動くと信じ込ませるためだ。後で知ったが『金髪のエルヴァ君』は、この正月期間アメリカに行っていた。それは連邦政府と連邦議会を今後も掌握すべく、大掛かりな魔術装置を設置するためだった。そして彼女はその前に日本にも装置を設置済みだった。共産主義者がしそうな思想教育や裏工作、プロパガンダなんて無用だ。彼女の意思一つでアメリカも日本も新中国の味方であり、便利なATMだった。曹操が指摘する前に、彼女(『エル君』)の能力を高く評価したのが、彼女の義兄でもある、あのギルガメッシュ王だったという。さもありなんだ。今後新中国では、数世代に渡って性欲の減退が自然と起きる。薬を飲まされるのでも強制的に手術を受けさせられるのでもない。そして人は『徳』と『慈愛』の精神を尊び、勉学と勤労に励むようになる……。

『ラインの黄金』とはアハトのそれ(願望器)でなく、『エル君』の持つ物が本物だと以前聞いた。あちらは劣化版でしかないといった話だった記憶がある。となると……これは僕の考えだが、『エル君』のそれは『実現器』なのかもしれない。

 

 

『これにはな、テンプル騎士団の流れを汲む悪魔崇拝者なども混じっておるんじゃ。そいつらが最悪でなぁ。何世紀も前から子供を拐い、その生き血を啜ったり、脳髄を食っておったんじゃ』

 

 ノイント老の話は続いた。回想の中で回想するなんて僕も器用なものだ。それはさておき、その生き血も脳髄のどちらも不老不死を願っての行為だという。実におぞましく、吐き気のする残虐な行為だが、かつてのジル・ド・レェやエリザベート・バートリーなどが子供や若い女性ばかり殺していたのも、悪魔への貢物という意味だけでなく、これと同じ理由もあったために間違いないという。

 そして血を抜かれた遺体は、死徒やヴァンパイヤのせいにされる。脳髄まで切り開かれ、処理に困った場合は完全に死徒の犯行とされていたようだ。つまり彼らの仲間に魔術師や教会も居るという事だ。何故なら死徒の存在なんて神秘に関わる者しか知らないからだ。『この犯行は死徒の手口だな』で、僕達の世界では通ってしまう。重要なのはその棄てられた遺体を魔術師なり教会なりが、一般人に知られぬよう処理していたという事実だった。

 

『ハーメルンの話が今も謎なのは、そこにある。ペストの流行で健康な子供が手に入りにくい頃じゃった。なので大々的な児童狩りが断片的に漏れ、今もその恐ろしさが伝わっておるのじゃ。一部は確かに子供十字軍もあるじゃろう。しかしそれとて、奴隷として売られ、やがてはあ奴らの皿に乗る。それが『あちら側』の本質なんじゃ』

 

 脳髄というか松果体だ。その視床にこそ神秘が宿り、不老不死や遠見の能力が得られると昔から信じられているのだという。この松果体を縦に割ると『ホルスの目』に似た形が現れるのだそうだ。そこは偶然なのだと思いたいけれど、旧約聖書を軽んじる一部のユダヤ人(偽ユダヤ、フェニキア人の末裔)には、古くからその視床の神秘は不老不死の効果があると信じられていた。

 そしてその松果体は大人になると自然と萎縮するもので、子供の方が大きいらしい。更に、その子供に強い恐怖(苦痛やストレス)を与えると、その視床にアドレノクロムというホルモン物質を分泌する事が現代の科学ではわかっている。それこそが不老の源とされているのだった。

 

『儂らはとっくにそれを知っとった。じゃから、子供なぞ使わず、自分達で生成し服用していた時期もあったんじゃ。今はもっとその先を行っとるがな』

 

 子供でなくとも犠牲になったホムンクルスの数は追って知るべしだ。救いがあるのは本物の人間の子供を使わなかったところだろう。だから僕にアインツベルンもノイント老を責める気持ちはなかった。とは言え、御年150歳はゆうに超えるノイント老が、まだ40代にしか見えない真の理由はそれだった。

 そしてその苦痛の果てに抽出されたアドレノクロムは、目の周囲に数日クマが出るという副作用はあるが効果は抜群で、ほんの少量で2~30歳は若返って見えるという。なので近年の児童誘拐や人身売買は、かつてのような単純な労働力や性労働への従事を求めてだけでなく、アドレノクロム抽出用が増えているらしかった。

 

『現代で生き血を啜るような者はほぼおらんじゃろう。その犠牲者のほとんどは顔や容姿が良ければ性的愛玩用で、次が内蔵摘出用でありアドレノクロム抽出用じゃろうな。ソドムとゴモラのような悪徳はいつの時代も途絶えん。その悪徳の源は若く有りたい、生を謳歌したいという欲であり、それを成す資金の捻出にある。キリツグ。奴らは魔術師に成り損ねた者達の末裔でもあるんじゃよ』

 

 そういう事だった。若い間はその若さが永劫に続くかのような錯覚がある。それは肉体や脳の若さに思考が騙されるからだ。だけど間桐の妖怪のように肉や脳だけでなく魂までも老いて行くとなれば。こういう事をそいつらは感覚として知っていたのだろう。だから新鮮で強いストレスを受けたアドレノクロムを求めたのだ。小児性愛嗜好も嗜虐の一貫だと思う。

 

『ところでな、キリツグ。並行世界の『チビ(エル)』は、自分で精製したアドレノクロムに、人工的な依存性を持たせ、そういう輩に目の飛び出るような高額で売っとるらしい』

 

『エル君』とはそこまで話していたのか……。依存性を持たせるって……麻薬じゃないか、それ。しかも製薬会社が抽出し作り出したそれでなく、ホムンクルスの鋳造秘術などの神秘が上乗せされた、本物の不老物質だという。10代からそれを摂り入れれば、70代でも80代でも20代後半から30前後の若さを保つという。50代なら20代前半だという。どんな効果だ。

 更に『エル君』は、そういう者達に人工臓器を売り、人工の性器まで売っている……癌などの病から開放され、肉体も若く性も旺盛となる彼らに、この世に存在する性の快楽と退廃の総てを麻薬として売り、支配下に置きコントロールしていた……。それが『エル君』の考える平和への道だった。ノイント老は、その研究ノートやリポートのコピーをとっくに預かっているそうだ。そしてそれを使って『あちら側』を、ここでもコントロールしたいと考えているのだという。ゆくゆくはそれをエルヴァが継ぐのだろう。

 

『1000の人が居るなら、内1人は社会的道徳を無視して悪徳を愛でるサイコパスな者も必ず居る。そしてそういう偏った者ほど金儲けが上手い。つまり『チビ』にとっては良い金ヅルなんじゃな。それに『チビ』はあちらの長老達に隠れて、オーストラリアに全寮制の学校を建て、売られたり、虐待を受けた子供達を手の届く範囲で保護し、通わせておるらしい。それでもってあちらの儂が持つ財団と『チビ』の持つ財団で寄付しあって、税金をぐっと押さえておるとか……。抜け目が無いわい』

 

 正直、呆れて途方に暮れるしかない。圧倒的正義は、理性と善意を持った『あちら側』と同類かそれ以上だった。まぁ、魔術師だから仕方ないとも言えるのだけど……。どこか腑に落ちない……。あちらの僕とはどういう親子関係なのだろうか……? 実に謎だ。

 

 そしてこの『現象』だ。これもまた見えない『何か』だ。それってつまりは丸っきりウイルスだ。しかも僕やノイント老が戦って来た、『あちら側』が軒並み倒れ、麻薬などを扱う『わかりやすい悪党』までが倒れている。共産主義国家も中国の前政権を筆頭に、軒並み同じ目に会っている。つまり……そんな明るい未来に僕の出る幕はない。そこから更に良い世界にするのは2人のエルヴァを始めとする、娘達であり、まさに彼女達の時代が到来したと言える。なら、僕のようなテロリストもどきは舞台から消えよう。だから引退を決意したんだ。日本に帰ったら、猫でも飼おうかな……。

 そう言えば……あの夕日のマンハッタンで『エル君』が見詰めていたのは、スケート場の前に立つビルではなかったか? そうだ。方角的に思いっ切り真横になる。だから彼女の横顔がハッキリ見えたんだ。もう何らかの手は打った後なんだろうね。

 

 そして扉が開き大聖堂を出たところで拍手をしていたのは、その『エル君』だった。横には一応拍手はしているけれど、頬を膨らませ僕を睨んでいる『イリヤ』だ……。あの子は一体……?

 

 

 

 パパとママの10年越しって言うの? あ、違う違う、私らが11歳だから12年越しだ。そんな結婚式が終わると、お姉ちゃん達がお土産があるよってアイスクリームを出してくれた。外は雪で寒いけど、家の中は暖かい。だから美味しい美味しいって、皆んなでパクパク食べていたんだけれど、パミが夕飯の仕込みに行こうとするお姉ちゃん達を引き止めて尋ねていた。

 

「これ、スイスじゃ高いんじゃ?」

「それでも日本より安いですよ」

 

 うん? どういう意味だろう。これが外国の高級ブランドだっていうのは知っているけれど……?

 

「『Häagen-Dazs』ってアメリカのブランドでさ。アメリカじゃこのサイズが1ドルなんだよ」

 

 そうパミが教えてくれた。だいたい100円ちょいらしい。安い! それにあっちじゃアイスをガバっと食べる人が居て、パイントとかハーフガロンとか、もっと大きなサイズが4ドルとか7ドルで買えちゃうのだとか。このちっこいサイズだと最近は物足りないから、パミもそのパイントを買うそうだ。だからあなたそんなに背が高くなるのよ。

 

「でも、スラッとしていてカッコイイと思うなぁ」

「フフ……ありがと、イリヤ」

 

 クスッと笑うパミ。

 

「ねぇ、アメリカってどんなところ?」

「ザックリだね? 広いからなぁ。西海岸か東海岸かでも違うし、南部か北西部かでも違うし。あ、そうだ。エルヴァが言ってたね……アメリカは50の州じゃなくて、50の国が集まった連合国だと思えば良いよ。今のEUみたいな。カリフォルニアがスペインなら、フロリダがイタリアかな? 逆に言うとドイツがミシガン。そんな感じかな」

 

 私の質問に答えてくれるパミ。ホントは少し前まで私やイリヤに腹を立てていたらしい。『散々お世話になりながら、手紙の一つも寄越さないなんて』って。この気持ちはわかる。私達も気付いて、何とかエルマお姉ちゃんを通して出せていたので助かった。そこから何度かやり取りしている。だけど、こっちにもお姉ちゃんが居て混ざっているんじゃないかって、あっちのお姉ちゃんがパミを宥めてくれていたんだって。だからその事を会って真っ先に話した。そこからパミとは仲良くなれた。どうも私はパミから見ると、かなり面白いタイプらしくて、気に入られているようだった。

 また私もパミを気に入っていた。そんなだから、この説明はストーンと来た。そして海が近くてサーフィンし放題で、スケートボードのパークがあちこちにあって無料だとか、自然公園もたくさんあってキャンプ場もどこにでもあるし、ネズミーが思ったより近くて、もう3回も4回も行っているとか、映画のテーマパークも数回行ったことがあるって詳しく教えてくれた。

 

「私さ、フロリダのワールドの方にも行ってみたいんだよね」

 

 そういうパミにエルヴァが頷いた。ランドの数倍は広くて、本気で遊ぼうと思えば一週間は掛かるという。どんなだろう? モードレッドもエルヴァも行きたそうにしていた。

 

「エルヴァは、アメリカに行ったことあるの?」

「うん。西海岸とテキサスに1度だけ。だからワールドはまだ」

「良いなぁ~、行きたいなぁ~」

 

 イリヤだけでなく私も行きたいぞ。

 

「時間があったらパリに行けない事もないけど……明後日に帰るなら厳しいよね?」

「そうね。それは次のお楽しみだな。それに私とイリヤ、日本のネズミーもまだだし」

「そうなんだ?」

「と言うか、お楽しみに取ってあるんだ。高校生になったら、修学旅行で行くからさ」

 

 今にして思い返せば、この時にエルヴァは留学を考え始めたんだと思う。

 

「だけど……ヨーロッパよりアメリカはボサッとしていると危ないときもあるよ?」

 

 この時パミは、『自分の身は自分で守ること』『誘拐と銃には気を付けること』なんかを話してくれた。そこにエルヴァも頷くものだから、私とイリヤは驚いた。それがアメリカなんだとパミが言った。

 

「おまけに外食はジャンクばかりだし、ドリンクも大きいしね」

 

 これはお姉ちゃんのお手紙にもあった。家で食べないとホットドッグかハンバーガーばかりだって。でもそんなハンバーガーでもチェーン店によってぜんぜん違うらしい。

 

「ああ、確かに全然違うぜ」

 

 モードレッドはいっときアメリカに行っていたらしく、けっこう詳しかった。お姉ちゃん達との仕事で、アメリカをクルマで横断したという。良いなぁ。

 

「シカゴのピザと、ニューヨークのホットドッグは良いぜ。西海岸はハンバーガーと中華のイメージだな」

 

 けっこう色々食べているみたい。だから聞いてみた。

 

「モードレッドがアメリカに住むなら、どこが良い?」

「カリフォルニアの南部。つまりエルヴァやフンボルトの居るハンティントンビーチだ」

 

 即答だった。

 

「行きたいなぁ」

「夏休みがあるだろ。そん時に皆んなで集まりゃ良いさ」

「え? でも旅行費用が……」

 

 イリヤとモードレッドの話にエルヴァが割って入った。

 

「イリヤ、チケットを送るから。アメリカで皆んなで会おうよ。その代わり、ユリアーナも連れて行って良い?」

「いいよ、いいよ。皆んなでネズミーに行こう!」

 

 後でパパもママも賛成してくれ、空港まで送るから頑張って2人で行って来なさいって言った。それであっちのお姉ちゃんも、空港へ迎えに行くからと言ってくれた。そんな訳で6年生の夏休みは、私とイリヤだけで飛行機に乗って、アメリカに行く事に決まった。

 

 

 僕は食材の整理と下拵えでキッチンに向かうエルヴァから、念話で指令を受けていた。着替え終わったケリィやアイリスフィールと合流して『目』と『耳』を貸して欲しいとの事だった。またこれはエルと日本のエルヴァにも流すと言っていた。どうも何かがあるらしい。そこでケリィ達を探せば、予想通り大聖堂入り口横の控室に居た。そしてそこには『エル』とお嬢さんやイリヤにそっくりな少女が居た。

 僕は声を出さないで、自分の耳と目を指してケリィとアイリスフィールに同席を求めた。するとケリィが頷いてくれたので、部屋の隅にあった椅子に座った。

 

「イリヤちゃん……」

「お母様……。私はイリヤでもあるけれど、今はさっきも話したようにシトナイでもあるの。キリツグが私の知っている人とは違うのはわかった。違う世界の『イリヤ』なのに、お母様が心配してくれるのも嬉しいわ。だけど私は、こっちでヘラクレスと暮らしたい。『エル』が、もうエルヴァって子とノイントっていう人の許可を貰ったって」

 

『エル』も念話で、お嬢さんや会長と繋がって中継しているようだ。おそらく僕と同じように目や耳を貸しているのだろう。その『エル』が言った。

 

「彼女はこう見えて中身は私と同じ18歳です。イリヤちゃんやクロエちゃんの事も、士郎クンやセラやリーゼリットの事も、イリヤさんにエルヴァにエルマやトロンメルの事も全部話してあります。その上でこちらで暮らしたいと決意してくれた点を考慮に入れて下さい」

「子供達に悪い影響があるかもと?」

「はい」

「うん。今は『エル』が居るから良いけれど、この子が傍に居なくなれば、本人にその意思がなくても、ロウヒやフレイヤの分霊がまた私を依代にして出て来るかも知れないの。それを防ぐ結界は……アハトのお祖父様のお城が失くなったのなら、このお屋敷か森の館にしかないの」

 

 そういう事か。何となく見えて来た。この子はそのシトナイというのと、ロウヒやフレイヤが取り憑きやすい状態なんだ。いや、シトナイだけは残っているのか。だけどそちらは悪影響がなさそうだ。だから誰かが見守り、話し相手にもなれて、敷地内なら普通に暮らせるここを『エル』が推したんだ。どうやらそういう事らしいよ、エルヴァ?

 結局、ケリィが宥めた事でアイリスフィールも折れた。そうしてお嬢さんやエルにモードレッドは、シトナイと暮らす事に決まった。

 

 

 

 クロエちゃんやおチビちゃん達が借りている部屋のある棟────その棟専用の厨房でフォンデュの下拵えをしていた私はフンボルトの聴覚と視覚を借りつつ、エルヴァやエル達に中継していた。当然フンボルトの思考は私しかわからないようにしてある。おまけに『エル』もこのパスに割り込んで、シトナイから聞いた事、あの『イリヤ』に起きている事、これまでにあった事などの補足が流してくれていた。なので全員が、『エル』がここに預けると決めた理由が理解できた。

 

「お姉様。私、フォンデュって初めてですが、下拵えが串カツに似ていますね?」

 

 一同がホッとした空気の中で、エルマがあちらの私(エルヴァ)に尋ねていた。確かにフォンデュの下拵えは串カツの下拵えに似ている。大きな違いは、竹串(こんな便利なものは、海外だと売っていない)でなくフォークに刺すか、お皿にそのまま材料を載せるかだ。また高温で揚げるのでなく、溶けたチーズに浸して頂くので、そこは味付けでしかない点だ。つまり調理ではないので、火を通しておくべき具材は先に茹でておかなければならない。それがフォンデュの下拵えだ。

 

「ですから、フォンデュに二度浸けは厳禁です。もしうっかり浸ければ、『何しとるんじゃ、オドレ』って皆んなから叱られますから注意して下さいね、エルマ?」

「えぇ~~!」

 

 エルヴァも乗るなぁ。そうかエルマは串カツ屋さんに行った事が無かったんだ? となるとトロンメルもか。『エル』は一体どういう記憶と知識をこの子達に……?

 

「場末の立ち食いじゃ無いんだから、今時の串カツ屋さんなら、容器に入ったソースを自分で掛けるだけだよ。カレー皿になみなみと入ったソースを共有して、キャベツをボリボリ食べながらお酒を飲む時代が懐かしいなんて言う高校生が居たら、驚きを通り越して不気味だよ」

 

 エルの言葉だけれど、彼女だけは『エル』の記憶と知識を色濃く持っているのは間違いない。となると修学旅行の浅草で巫女の姉と入れ替わり、自分はお兄ちゃんや引率のアルトリア姉さん達とどて焼きや煮込みで一杯引っ掛けていた事や、ネズミーの日に生徒会長の姉とともに、交流のある学校を表敬訪問した記憶もあるのだろう。

 牛スジ肉の串を、味噌で煮込んだものがどて串やどて焼きと言われる食べ物だが、どちらかと言えば関西のもので関東では珍しい。逆に煮込み……スジ肉とコンニャクなどを煮込んだものは関東発祥と言うが全国どこにでもある。冬木にはJRのガード下にこれに木綿豆腐が入った、煮込み豆腐を出すお店があり、父や『エル』の好物だった。だから姉のイリヤは『エル』をオッサンといつも言っていた。懐かしいな……。

 

 中継を切っても、私はフンボルトとのパスを開きっぱなしだった。それは着替えのあるお父さんとお母様が、シトナイをフンボルトに預けていたからだ。だから私がアドヴァイスを送りながら、フンボルトには食堂へ付き添ってもらい、そこで待つ妹達にシトナイを紹介してくれるよう頼んでいた。そしてその後はお父さんと合流だ。

 お父さんはシトナイの人柄を理解した後、彼女とお母様に尋ねたのだ。『ラインの黄金』の事を。アハトの造る『ラインの黄金』しか知らないシトナイと、『エル』やエルマ達を知るお母様では、当然返って来る答えは異なる。そしてその答えは、お父さんを満足させるものでは無かったようだ。私はそれが気になった。お父さんは何かを掴み掛かっている。

 

〈エルヴァ。僕の考えだけど良いかい?〉

(何、フンボルト)

〈その『エル』の持つ宝具は『願望器』じゃないんだろう? だけど『願望実現器』でもない。それは何か法則が違うように感じるからね〉

 

 私は黙ってフンボルトからの念話を待った。

 

〈うまい言葉が思い浮かばないけれど、『願い』じゃない気がする〉

(『願い』じゃない? 続けて下さい)

〈ああ。僕は『祈り』だと思うんだ〉

(『祈り』……)

〈うん。だから魔術的な等価交換なんかがどこか違うような……〉

(アプローチが西洋のそれだけでなく、東洋のものも含まれると?)

〈うん、そんな感じ〉

 

 ナイス、フンボルト。それだ。『エル』のそれは、本質が『祈願成就器』なんだ。勿論、等価交換の原則を無視はできないだろうと私は考えているし、今の今までそう思っていた。『エル』の中に居た頃に使った『ラインの黄金』はそうだったのだ。だけどその真価はもっと奥深掛かった……。つまりそれは『願い』でなく『祈り』だったのだ。これは私の想像だが最初から『神』という宇宙(世界)の外の存在(システム)にアドレスが直結しているならどうだろう? それがあったから抑止を……英霊を制御する『世界のシステム』に、『現象となった彼女』はアクセスできたのではないか? そう考えると辻褄が合うような気がした。

 

 仕込みや下拵えが終わったので、飲み物を持って皆んなで食堂に戻ると、着替え終えたお父さんやお母様がニコニコと子供達を眺めていた。それだけでなくイリヤ姉さんにフンボルトまでがニヤニヤしている。

 

「だから何でも聞きなさいね。頼ってくれて良いんだから。私が皆んなの『お姉ちゃん』よ」

 

 シトナイが胸を張って子供達にそう演説していた。これは……和むなぁ。だかど『エル』の姿が無かった。きっと、お祖父様と話し合っているのだろう。




普段、日本のテレビや新聞しか見ない人には意味不明でしょうけれど、今回の大統領選は、中共のアメリカ工作の集大成で、凄まじい前代未聞の不正が罷り通り、なおかつ大手メディアやSNSなどは、買収済みだったりスパイが牛耳ってしまって、『まだ、大統領が決まっていない』事や、バイデン側の『選挙不正の数々の手口』が暴露され、暗躍していたCIA長官や、オバマにヒラリーが逮捕、もしくは拘束されている事をどこも報道していません。日本の米軍基地にも頻繁にアメリカから秘密裏に要人が来て、日本政府と密談を交わしているようです。
現状、ドイツを除く先進国は、この武漢ウイルスを中共が大統領選で大掛かりな不正介入を行うためのツールだったと看做しており、武器を使わない第三次世界大戦と考えています。
これはデタラメではありません。オーストラリアの新聞や、ロシアのスプートニクなども報道している事実です。つまり日本のメディアも中共に乗っ取られたか、傀儡となっているのです。
なお、児童誘拐やアドレノクロムの話は事実です。トランプ大統領は既に何千人もの子供を救出しています。そして彼が大統領になりエプスタインを逮捕(獄中で謎の死を遂げた)して以降、ハリウッドの俳優や有名歌手が一気に老けたのです(エプスタイン島という悪魔の場所がある。そこの常連客にそういうセレブやバチカンのトップ、某国の王子などが名を連ねています)。
中国では人権を無視した、DNA操作された強化兵士の研究が進められています。
全世界のセレブや金持ちが、若さや美貌、更なる儲けのために中共というナチスやスターリン以上の悪魔を育ててしまったのです。
しかし今の中国は、三峡ダムを守るための無茶な放水による水害と、蝗害で農業はズタボロ、経済締め付けで大手企業が次々倒産して国内の経済もズタズタです。
今、私達が考えるべき事は中国崩壊に拠る棄民や不法入国者の排除と、食料の確保です。私達の日本も武漢ウイルスで経済が困った状態なのです。そんな中で中国なんて構ってられない。いい加減に政府にも官僚にも気付いて欲しいです。
長野オリンピックであったように日本も中共のスパイだらけなのです。そこにベトナムや半島です。この危機が本気で見えないなら日本は終わります。

https://blog.goo.ne.jp/zaurus13/e/f355a3f72a32cac5628be3305631ed3c

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ほぼ、私の調査と同じ内容を発信している方のブログです。参考までに。
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