少し間を開けて、続きは短編か別のテーマで書きたく思います。
何故お祖父様がスイスに居を構えているのか。それは時の政情で黒い森から南下したからだけど、居座り続ける理由は少し違う。勿論、この国の成り立ちから暗部に潜む『彼奴ら』を押さえるためでもある。だけど1番の理由は、この国の景色をお祖父様が愛しているからに他ならない。そこには平凡な日常を送る住人や家畜も含まれていて、お祖父様はそれらを全部愛でていた。
だからスイス国内は全部儂の庭と言い切っていたし、3歳で私がチューリッヒからザンクトガレンのヴェルデンベルグに移ると言った時にも驚かれなかった。だけどこちらのお祖父様は、エルヴァちゃんを手元に置きたいようだった。そこまで過保護には思わないのだけど、エルヴァちゃんは私とは違うのだろう。ここに居た方が魔術の研究が進むと考える子なのだ。
「お祖父様。お祖父様はエルヴァちゃんに何をお求めになりますか?」
「ん? そうだな……若い頃の儂にできんかった事、その答えを出してくれると嬉しいが」
「シェルター論ですか? 『ラインの黄金』の?」
「……やはり知っておったか。そうじゃ、その通りじゃ。儂にはその答えが未だに見えん」
シェルター論とは核戦争を危惧したアルトゥルお兄様が、研究中だった『ラインの黄金』の設計に取り入れた空間拡張魔術の発展型だ。これがあるから私は、人類の半数を時間凍結して星の海へ旅立つしかないとまで考えたのだ。人類を5億人まで削減しろという『彼奴ら』のほとんどは、傲慢な鼻持ちならない奴らではあるけれど、これ以上の人口増加は地球を滅ぼし、人類という種だけでなくその他の生命まで巻き込んでの滅亡しかあり得ないのは事実だった。
その発展理論の次にあるのが『実態空間』と『仮想空間』だった。つまり『実態空間』では難しいが、『仮想空間』が第二、第三の地球となればどうなる? 魔力さえ確保できるのなら、いくらでも増やせるのだ。そしてそこでは体の不自由な人も、老いて身動きの取れない人も若く健康でいられる。本人の肉体が寿命を迎えても、魂を意識や記憶とセットで保管してしまえば、ほぼ永遠に生きられる────。
やがて人類全体をその『仮想空間』に収め、現実の地球は大自然の流れと意志に任せ、マナを管理する者だけを置く。ある種の『ノアの方舟』だ。やがて第三魔法を得た子孫は未来永劫、人類全体を宝具の中に抱えて太陽系が失くなった後も宇宙を好きに移動し、宇宙の終焉まで人類を守り続ける────。それがアルトゥルお兄様のお考えだった。
中の人類は争わない。コントロールされているからだ。おまけに仮想空間なので、私のように意識を分割して別の自分をアバターとして構築できる。つまり別の職業に従事したり、別人と恋愛したりできるのだ。だけど一見、理想郷や天国にも見えるそれは何だろうか?
「何かありましたか?」
「うむ。今後もコンピューターは発達し、人と変わらんかそれ以上の知能を持つじゃろう」
A.I.だ。
「やがて人はチップの一つに置き換わる日が来るやも知れん。そして人はやがて電子の世界で生きる」
マンガや映画の『攻殻機動隊』や『マトリックス』のようなものだ。つまり近未来は現実が、その昔にアルトゥルお兄様が夢見た世界になりつつあるという事だ。だけど科学では破綻する。絶対にだ。
「全人類を救済するにはエネルギー資源が足りません」
「じゃから、人口削減なんじゃろ?」
人類は宇宙開発を諦めてはいない。だけど100年経っても、ごく少数の人が月の軌道か火星の軌道を巡るコロニーで、科学の研究目的で生活するだけだろう。それが限度だと今の科学で、ほぼわかってしまった。だから『彼奴ら』の中の平和主義者は、火星移住などを本気で考えていたし、地球外移民こそ人類削減にもってこいの案だと信じていた。
だけどそれは金銭も掛かるし、効率が悪く、何より宇宙船が地球の資源の散逸であると判明した。外部から来た『マクロス』だから良いので、地球で超大型の移民船団建造なんて無理だったし、時間が掛かり過ぎた。加速度的に増える人類の増加は、そんなに悠長な暇を与えてくれなかったのだ。
「戦争なんて今更ですしね。危惧なさっているのは、ウイルスとワクチンによるマッチポンプですね?」
「うむ、それじゃ。あの『現象となったチビ』はその犠牲者なんじゃろ?」
「はい。前回私が話した通りです」
お祖父様はため息をつきながら話を続けられた。
「細々は言わんが……ウイルスの狙い(ターゲット)は、財産を溜め込み使い途のない高齢者や、生産能力の低い貧困層じゃろう」
貧困層と括ってくれるな、お祖父様。きっとそれでパンデミックを起こし、世界経済や人の生活をリセットするなんてダボス(ダボス会議/世界経済フォーラム)に集まる(クラウス・)シュワブを筆頭とした者達や、(ジャック・)アタリや(ヘンリー・)キッシンジャーに(ズビグネフ・)ブレジンスキー辺りが言い出しているのだろう。だけど、そういう彼らが見棄てる中小零細の町工場や個人商店……世の中の90%はそういうところのオーナーか、或いはそこの従業員なのだ。そんなところが、社会の構造がガラリと変わるパンデミックを乗り越えられるはずがない。
そして忘れてはならないのが、下町のそういうところで働く人達も『遣り甲斐』と『誇り』を持って働いているという点だ。そこにこそ国家の資本を注入した最先端の技術を超える職人技が残っているのだ。グローバリズムが共産主義的というのはこういう点にもある。奇跡のような、再現が難しい職人技が、大企業に飲み込まれて消えていく。それを是と思うのなら、それは味も素っ気も中身もない人間だと告白しているようなものだ。またそれは『文明の伸びる芽』を刈り取る愚かな行為だ。
別の観点から言えば画一的で、多様性を認めない方法だと言える。ところがこういうグレート・リセットを行いたい者ほど、多様性を声高に叫ぶ。夫婦別姓やら性の多様化だ。『彼ら』が目指す未来は雁字搦めの管理社会で、『1984』にあるような人々が家畜同然に管理・監視されたディストピアなのに。『彼ら』の言う『自由』や『平等』ほど嘘くさいものはない。『彼ら』が口にする『多様性』は対立構造を創るための方便だ。対立は人々の目を背けるにはもってこいの手法なのだ。冷戦構造、東西構造、南北構造……こういうのが起きている時はその後ろで何かが始まっていると考えた方が良い。
いつだって忘れてはならないのは、歴史を動かすのは時の政治家でも、その時の文化や文明を押し上げるのは名もなき個人の発明家や職人である。彼らは経済史を動かすような人では無いかも知れない。だけど……その積み重ねた数々の創意工夫が、大衆や庶民と呼ばれる人達に残した足跡は、必ず消えずに次代に受け継がれている。それはある意味、『お婆ちゃんの知恵』的なちっぽけなものかも知れないが、そういう恩恵があってこそ私達の文明はここまでになったとも言えると思う。そういう目に止まり難い『工夫』や『知恵』を見過ごしてはならない。
「なのに若い者にまで犠牲者が出たのなら……開発に関わったのが複数国で、それのどこかが……」
「バカな独自改良を加えて……ワクチンの効き難い、悪性のウイルスにしてしまった……?」
「そうじゃろうな。それが兵器として完成(対応ワクチンも完成)する前に漏れたのじゃろう」
私もそう考えている。そして数ヶ月か数年遅れで、そこに対応ワクチンが発表されたのだ。人口削減のために精子や卵子を破壊するDNA入りの。もしかしたら摂取済だと証明する、デジタルな刻印などが入っているかも知れない。きっとこれが人類には毒になった。特にホムンクルスやその血を引く者にはキツかったのだと予測される。
お祖父様は言う。この先の計画もあるだろうと。
「ロボット技術の発達に伴う義手や義足の高精度化は、やがてサイバネティックと融合し、メカによるアバターを造る事に成功するじゃろう。そして知能や知識のチップ化での延命……」
「予測時期は?」
「マッチポンプの後じゃ。『現象となったチビ』の世界ではここまで考える者が居らなんだのだろう。そしてそれは、『あ奴ら』が倒れたここでも無理となった。じゃから、魔法使いの仲間などに知らせてくれんか。『あ奴ら』の生き残る世界なら、マッチポンプが2020年頃、その計画の発動は2030年から2050年じゃ(※1)」
これは大掛かりな詐欺だ。アバターがどうとか、チップ化による延命なんて土台無理なのだ。その2030年になっても、精々集積回路を積んだドローンで、外出禁止令の出た地上をモニター越しに旅行するだけだろう。全人類に対して真なるアバターを造るには、神秘のチカラが必須なのだ。半分人造人間の血を引く私だからわかる。最上級の神秘を身に宿す私だからこそわかる────。
全人類ともなれば、これは成長したエルヴァちゃんでも、『現象』となった彼女が、例えそうならなかったとしても無理だろう。唯一私だけが可能だと思えるのは、その昔ドラゴンの肝を食べてしまったからだった。それが宝具と反応して私だけが異質(変)になった。一度死んだ47番を救けられたのも、対価は必要だったにせよ、それがあったからだ。
不思議なものだ。以前はこの宇宙に自分しか居ないと思っていた。そのもっと前は水槽の中で夢見る脳髄が自分だと思っていた。それが47番を探しに来た事で運気が変わった。並行世界存在のエルヴァちゃんい出会い、47番のエルヴァに至っては、三つ子の私に会っていた。そして今回の『現象』……。私は1人ではなかった。水槽の脳でもなかった。僅かだが存在する世界もあったのだ。それがわかっただけで、この一連の『出来事』には意味があった。
だからこのお祖父様のこの予測は大きかった。メカのアバター……それはいつまでが本当の『自分』だ? この意味がわかるだろうか? 老いてもパーツさえ取り替えれば、今までと同じように生活できる『自分』。A.I.のチカラを借りて、幾つもの作業を並行して行える『自分』。つまりその2030年だか2050年に漸く科学はかつての私に追い付くのか。だけど真に恐ろしいのはそこではない。本当の『自分』はとっく老衰で死んでいるのかも知れないという事なのだ。
自然に宿るのでなく(この方法もある)、真面目で勇敢だった者の良質な魂を保管し、それを使ってホムンクルスに植え付けている私達が言うなという話だが、全人類のロボット化までは考えていないぞ、こちらは。
私の世界でのお祖父様は、私がとっくに『彼奴ら』を掌握済みだったので、ここまで真剣な予測を立てていなかった。これはお父さんも同じで、私がこんなだし、一緒に冒険の1年を過ごした仲でもあるので『もう何でも来い』な性格だった。となるとここのお父さんと話すのも、違った感想が聞けて良いかも知れない。そう思ったので、お祖父様とのお話が終わると私は皆んなが集う食堂の方へ向かった。
廊下で私に反応しない(知らない)アサシンと擦れ違った。
「ハサン」
霊体化していた彼はギョッとしていた。
「こちらに」
私は手近な部屋に彼を招き入れた。
「…………」
「あなたはこの世界のお祖父様が召喚したハサンですね? 私も『百貌』を複数従者にしていますので、気配でわかりました。連携を取っているのはエーデルフェルトと、ミラビリスのハサンだと思いますが、エーデルフェルトは『普通の百貌』ではないでしょう? 正体は結構ですし声に出さずとも構いません。あれはある種の変形召喚?」
彼は観念して首を縦に振った。
「ごめんなさい。行ってくれて良いですよ」
彼は少し困った目をした後、立ち去った。私がお祖父様に『百貌』をお薦めしたのだけれど、エルマに2人、ミラビリスが1人、お祖父様とエーデルフェルトにもそれぞれ1人……。更にアオレアールに1人と、『現象』から押し付けられた13人……。そして私が1人連れて来ているので、合計19人だ。
この状態の最大の原因は、『現象』の彼女が元から『百貌』を従者にしていたからだと思う。つまり私とエルマ以外は、『現象』となった彼女から、彼女の『百貌』のコピーを借りている状態なのだ。そしてその『百貌』の座は彼女だ。だからきっと彼女が世界に満足して消えると、それらのハサンも消えるのだと思う。
〈エル? あまり長居はできんのだぞ? 来月の後半に卒業式だろう?〉
お兄ちゃんだ。確かにこれ以上はアオレアールに任せ、エルヴァちゃんやシトナイの事は2人のエルヴァとエルに頼むしかない。モードレッドもヘラクレスも居るし大丈夫なのはわかっている。
〈まだ懸念があるか?〉
(いえ。エルヴァ達と話したら日本に帰りましょう)
〈それが良い。時に……あの英霊のイリヤの中に居るのは……?〉
ん? 気付いていたのはわかるけれど、どうして今?
〈いや……宿題を全部片付けていたのでな。あ~、待ってくれ。もうすぐ出来上がるから〉
セイバーに何かを振る舞っていた最中らしい。宿題か……。それを1番喜んでいるのはお兄ちゃんでしょうに。またロケットで打ち上げて、アメリカのGPS衛星に使い魔と魔術装置を設置して来いと命令するぞ?
これからの時代は、アカシックレコードとは言わないが、膨大なデータベースを溜め込むサーバと、それらを演算するスーパーコンピューターにA.I.そしてそこに繋ぐ電子の目や耳が重要になる。衛星から様々な波長で地上を視認し、ネットで繋いだデバイスで交通や航空機の流れを追い、空間を飛び交う電波から電話やテレビの情報を追い、ネット内にある掲示板や動画もデータベースにしてしまう……そんな時代が必ず来る。それも5~10年以内に。ではその次は?
そのデータセンターを私は月のクレーターに置きたかった。太陽光発電で自給自足し、ディスクは並列に繋いだ人口の有機脳でだ。そうして太陽の寿命が尽きるまでにすべての人類も、電子内で復活させた過去の偉人もチップ化して、宇宙船に改造した月ごと異なる宇宙へ旅立つ準備をしておきたいと考えていたからだ。
何故なら宇宙に今の状態のまま出ると狭い月(宇宙船)に合わせた、こぢんまりとした異質な文化・文明に変化するのが目に見えているからだ。人によればそれはディストピアだろう。だけど私は今の文明を愛していた。例え地球が滅んでも、末永く残したいのだ。それが私の夢であり願いだった。
それはそうと……多分、あの人の小聖杯に囚われている『アーチャー』は、お兄ちゃんの分霊の可能性がある。だけど、そうでないなら……囚われたからこそ、妄執から逃れられたとも言えるのだ。それにそれを知って、どうにかしなければならないと考えるのは、エルヴァやエルマの役目だ。それで私は今まで知らない振りをしていた。そして2人のエルヴァは、間違いなく気付いている。となると日本にいるエルヴァ(47番)の役目だろう。
そうして食堂に入ると子供達が居らず、肝心のお父さんやお母様も居なかった。フンボルト君も居ないのにエルヴァは2人居る。という事は、フンボルト君とお父さんにモードレッド、プラス、ステッキ達の引率で、外に遊びに行ったのかも。屋内ならこの館で私が感知できないはずがない。何より私の分身とも言える47番とその複製なら『子供は外で遊べ(play)』と言うだろう。
遊び(play)とは、大人のマネから始まる社会勉強最大の理由からスタートする。その昔なら狩り(game)だ。それはおママゴトだったかも知れないが、獲物(prey)を分け合い、感謝の祈り(pray)を捧げた事だろう。これは日本に行っても同じだった。鬼ごっこやケイドロなどなどだ。人はそうして学んで行くのだ。そして身体を動かしお腹を空かせ、しっかり食べてしっかり眠る。それが子供の仕事だ。自分の妹達にも話しているのだが、やはり『チビ』な私より大きく育って欲しい。もう、横への成長しか望めない18歳ともなれば、白人種の顔をして153cmしかない身長はそれなりにコンプレックスでもあるのだ。
そんな希望ある子供達と同じように姿の見えないお母様は、お部屋でお休みなのかも知れない。そう思ったのは、ああいう緊張する式典は、私の母もそうなのだが、神経的にかなり負担が大きいらしいからだった。ママは平気なので、どうやらこの辺がアハト系ホムンクルスの限界なのだろう。
そして年頃の娘達が集まると、他人事(ひとごと)ながら、それはもう煩かった。姦しいとはこの事だった。この煩さからゾウケンは居ないと踏んだのだ。そして話題の内容は結婚式の写真に付いてだった。
「だからエルマ、どうしてアメリカの姉さんの写真をこちらの姉さんに持たせようと考えるの?」
「トロンメル。それはある意味、自分の写真だよ? 持っておきたいと思うのが普通でしょう?」
「バカ。万一、吉川先輩がそれを見て、姉さんの隣に違う男性が写ってるって勘違いしたらどうするの?」
「そん時は、バツイチって事で……」
2人のエルヴァは呆れたような困ったような、何とも言えない顔で、エルはお腹を抱えて笑っていた。これは私でも笑うぞ。何が悲しくて18歳でバツイチにならなきゃいけないんだ?
「あ」
「エル」
「エル様?」
私は立ち上がって頭を下げようとするエルマとトロンメルを手で制し、エルと2人のエルヴァに向かった。
「『ラインの黄金』の真実はエルマもトロンメルも知りません。それは敢えて教えていないし、知識としても与えなかったからです」
「どうしてですか?」
ピアスの穴が耳たぶにない方のエルヴァが問う。
「この子達はあなたの妹です。そちらに残したセイバーともども平穏に生きて欲しいからですし、モードレッドやシトナイにしてもそうです。ここはきっと……そういう世界になるからです」
5人の視線が私に集まった。
「それとですが、宝具の真実はエルが知っています。ただし、当然ながら軽々と他人に話せないよう、彼女にもプロテクトは掛けてあります。どうしてもと言うのなら、試してみなさい。その解除はあなた達なら可能です。ですが、その身に宝具(ラインの黄金)を持たないあなた方に、知的好奇心を満足させる以外に、知る意味はありますか? 私が話すべき相手はエルヴァちゃんだけです。そこは察して下さい」
2人のエルヴァは首を横に振り、静かに頭を下げた。エルマが驚いた顔をしていたが、それは一瞬だった。私がエルヴァ達の思考をパスから読んでいた事を理解したからだ。
「お父さんは外ですか?」
「あ、はい」
「なら会って少しお話をしてから帰ります。エル?」
「はい」
「シトナイを頼みます」
「わかりました」
日本のエルヴァが言った。
「先に冬木へ?」
「先も後も……アルさんと元の世界に帰ります。今回のこれはシトナイを送るだけでしたから。私も学園の卒業式が近いのですよ」
「……そうでしたね」
エルヴァはちらりとアメリカのエルヴァを申し訳なさそうに見た。その結婚指輪が輝くエルヴァは、ピアスのないエルヴァに向かって静かに首を振った。夕飯に誘われたが断った。空港で何かを買って食べるだけで良い。これで打てるだけの手はすべて打てたからだった。『現象』は『願っていた』。愛する人と結ばれ幸せになる未来を。その『願い』が今は『祈り』になっている。あなた達2人がそれを忘れず追い求め続けるのだから、この世界は大丈夫だ。
コートを着て表に出れば、子供達は陣地を作って雪合戦をしていた。おチビちゃん、クロエちゃん、パミちゃんのチームには英霊のイリヤとフンボルト君。エルヴァちゃん、ユリアーナちゃん、シトナイのチームにはモードレッドとヘラクレスが入っていた。審判はお父さんで、大人や英霊は雪玉を作る係に徹していた。つまり投げる役が3対3で、弾薬補給係がそれぞれ2名ずつだ。これだとまぁまぁバランスが取れる。と言うのは、この雪合戦という遊びだ。あるところにはあるが、無いところにはないからだ。
おチビちゃんとクロエちゃんは日本育ちなので、まずその遊びを知っている。また、美遊ちゃんの居た並行世界でも何度かしていた。だけどエルヴァちゃんとパミちゃん、そしてユリアーナちゃんは多分だけどやっていない。これは雪のあるなしでなく、育ちだと思って欲しい。その意味でシトナイも、シトナイとしてなら経験がありそうだが『イリヤ』としては無いはずだ。これは英霊のイリヤにも言えた。またモードレッドとヘラクレスも経験皆無だろう。だから弾薬補給係が合っていると思えたし、本人達もチカラをセーブして投擲に回るより、裏方として応援する方が合理的だと受け入れているように見えた。
この上手いチーム分けは、フンボルト君かお父さんか。どちらにせよ上手いと思った。しかも、時間を測っていた。作戦タイム2分、攻撃タイム3分、補給&休憩2分の7分で1セット。3セット・1ゲームだった。基本ルールは、とにかく投げ子の子供を砲台と看做し撃破した者勝ち。中てられた投げ子は、強制的にストップ。次のセットまで投げられない。生き残った人数で勝利が決まるそうだから、アツくなっている子供達には3セット終わるまで、どっちが勝者かわからないようだった。
とても楽しそうだったので、声を掛けそびれた。なので私はそのまま玄関前まで歩き、自分のクルマで空港に向かったのだった。こちらのお父さんの意見を聞きたかったが、あの幸せそうな顔を見たら『もういいや』と思った。この『世界』はもう大丈夫と思えたのだ。ここは『現象の彼女』が『夢見た世界』になりつつある。だから日本へ、冬木へ、そして自分の世界の冬木に戻る事にした。
その『圧』は魔法使いの凜はおろか、大魔導師の先生やシロウさんですら超えられないものだ。かつて凜が構築したゲートとは言え、そこを私が通れたのは、私が『現象の彼女』の同位体だからだった。それでも少し無理をした。かなり魔力を奪われたのだ。だけどここに入った途端、『彼女』がそれを補ってくれた。つまりこの世界の『守り』の外殻は見境なしに厳しいが、一度入った者が『身内』とわかれば妙に優しい。そんなところまで『私だな』と思うばかりだった。ただし、一度出て再度入る場合はどうなのか? こればかりは試してみないとわからないなぁ。
ゲートを抜けて自分の世界の円蔵山に出てみれば、バッグから取り出した時計のカレンダーは、12月の25日だった。何とかクリスマス・パーティーに間に合った。さすがに終業式は間に合わないのが事前にわかっていたので、これはミントに行って貰った。『ミント』って誰だって? アルトゥルお兄様の遺産を一緒に見た31番の事だ。あの時、47番は身代わりにサロンへ返したので見ていない。なので、遺産の事は私と31番だけの秘密だった。またミト(29番)と同じくイケイケな彼女が私とともに日本に残ったのは、この秘密の重さがあったからだった。
ちなみに『31番→アイス→チョコミント味』と来て、『チョコ』か『ミント』で迷った末に本人が『ミント』にしてくれと指名してきたのだ。
〈二者択一なら『ミント』がマシだと言っただけです。指名もへったくれもありますか!〉
繋がった念話は少々お冠のようだ。
〈当たり前でしょう! このギリギリまで出て行ってしまって。テストも全部私が受けたのですよ?〉
こちらの学園はあちらと違って2学期制だ。なので期末考査は10月にある。ミントの言ったテストは期末でなく、何度かある中間考査の事だ。
(何位?)
〈2位。姉さん(イリヤ)に5点差で負けました〉
(何をやって……)
〈古典を含めて〉
(もしかして総合で5点差?)
〈そうですよ。古典以外は点差無しです〉
さすがはミント。理数で5点差かと思いきや、トータルだった。私は私の分割思考の誰もを信頼しているが、中でも第四次を一緒に潜り抜けた人達は別格だった。ミントもエルヴァやパミにミトと並ぶ大切な存在だ。何より彼女は私がストックしている人格の中で47番並みのストイックさを持っていた。イケイケな21~40番の中の1人なのに。ちなみにナンバーズの構成は現在こうなっている。
1~20 メイン/表(自己) [2 3 5 7 11 13 17 19] 自分自身であり私のメモリバンクでもある。
21~40 メイン/裏(肯定) [23 29 31 37] 何パターンかあるイケイケな私。ミトもミントもここ。
41~60 サブ/予備(反対) [41 43 47 53 59] 自己懐疑的な私。エルヴァやトリンキンがここ。
61~80 サブ/予備(賛成) [61 67 71 73 79] 自己肯定的な私。普段は封印してある殺人も辞さない私。
81~100 サブ/調停(中立) [83 89 97] 何事にも中庸な、おそらくお祖父様が介入した人格。
なお、[]内は素数。外に出す場合は、験担ぎ(げんかつぎ)でこの素数番号の人格を使っている。上記の通り、パミのクールさはお祖父様の好みだろう。言ってみればお祖父様の中での理想の私だ。また、100番台は101番のエルマから始まって、今は200番まで存在する。内訳はこう。
[101] [103] [107] [109] [113] {127} [131] [137] 139 149 151 157 163 [167] [173] [179] 181 191 193 [197] 199
100番台は1~100番の改良型なので人格が安定している。[]は特に安定しているタイプだ。101番はエルマ(時計)、103番はトロンメル(太鼓)だ。102番(ヴンダー)が無いので驚くだろうが、あの子はエルマを基に、姉さん(イリヤ)向けに味付けした人格なので素数を振っていない。
私はホムンクルスとしてでなく、新たな人間として、精神の安定した新造人間を造りたいと考えていた。つまりロボットでなく生殖機能があり、悩んだり悲しんだりもするが思いっ切り笑えるタイプをだ。なので敢えて、101、102、103と連続して癖を持たせたり、精神に瑕疵を与えたりした。トントの心の傷をシミュレーションするために造ったトロンメルなどがそうだ。
だけどそれは間違いなく不安定さを増長させる要因になる。しかし計算はあった。それを乗り越えた時に『人』はより人らしくなるのだと。その答えを見事に47番のエルヴァが出してくれた。だから、{}で括った127番を造れた。名は『エル』と名付けた。『エルヴァ』を縮めた愛称の『エル』でなく、最初から名が『エル』だ。モデルは47番寄りの私。そう、モードレッド達とあちらで過ごす彼女がその127番だった。
そのボディに内蔵した宝具も、私のを洗練させた上でリミッターを掛けたエルマやトロンメルのものと違い、完成度はピカイチだ。これと同じモノをアオレアール用のボディにも与えてある。またカードと同化した47番のようなボディに、分割した思考を容れる専用のボディ(シュラムとボーデン)も彼女には与えた。
なお、こちらに居るシュラムとボーデンは1~20番を造る頃のプロトタイプを改良したもので、私の右腕的存在だった。
おそらく終業式に参加しているのであろうミントと頭の中で会話しながら、私は新都の自宅ビルに向かわず、深山町の武家屋敷街に足を向けた。これは先生とシロウさんへの報告を優先したからだ。
かつての自分の家の呼び鈴を押すとおかしな気分になるが、返事とともに義弟が引き戸を開けてくれた。
「お帰り、エルねえ。無事だったか?」
「ただいまです。ええ、私は大丈夫ですよ。あちらの人々もね。先生は?」
「奥にいるよ。シロウさんは卸売市場だ。俺ももうじき出るよ」
「そろそろお節の仕込みですものね?」
「ああ。シロウさんはそれの仕入れもあってさ」
「なるほど。アーチャーさんが先に?」
「うん。もう店に入っていると思う」
「じゃ、頑張って。上がらせて貰いますね」
「どうぞ」
義弟となった『衛宮士郎』はこの家の離れに居候している。同じ世界から来たイリヤ(ちぃイリヤ)は新都のビルで私達と暮らしていた。同じく凜と桜は、魔法使いの凜の父親である時臣小父様の計らいで、深山町の外れに建つ3LDKのマンションで暮らしていた。遠坂の持つ分譲物件らしく、窓を覗けば眼下に未遠川河口が広がり、冬木大橋越しに新都が一望できるという。その見事な眺望の一番手前にウチの自宅ビルが建っているので、『並行世界だなぁ』と毎日思い知らされると、凜も桜も話していた。その凜と先生が、いつもの居間で待っていた。
ちなみにこの居間は『いつもの』ものより少々狭い。それは業務用冷蔵庫や冷凍庫を置くために、キッチンが和室側へ拡張されているからだった。大家(土地も家もウチのもの)の許可も取らず、勝手に改造なんかして……。でも、微妙な改築などをしないと、冬木市から歴史建造物に指定されてしまう。それは魔術師の家としてかなりマズい。そこで泣く泣く一部改築したというのが真相だった。
「戻りました、先生」
「お帰り。守備は?」
「できる限りの手は打ちました。後は47番とその複製に期待です。政治と国際情勢はアオレアールと『現象』が彼女に用意した『百貌』にお任せです」
「『現象』はアサシンを何体?」
「13体です」
「まぁ、大盤振る舞いね?」
「はい。あれだけの人数を日本だけに投入ですから、世論は型にはまったと言って差し支えないでしょう」
「少々強引だけど、その方が動きは良いか……」
「はい。特に複製の方は『現象』と独自のルートを確立したようですから、これが正解かと」
「そうね」
先生と凜は、食後のお茶を喫しながら私の報告を聞いていた。
「やっぱりあのエリアで起きていた『座の風』って……?」
凜の疑問だ。
「ええ。全部が全部とは言いませんが、『現象の彼女』の仕業(しわざ)もあったと思いますね」
そうなのだ。47番が剥離したのもそのエリアで起きている、通常より圧の高いそれを調べに行った時なのだ。私達は、その『座の風』の急激な密度の高まりを調べていた。そしてその原因が『現象となった彼女』、即ち昇華した並行世界の私の成れの果てによるマジック・ドレインにあった。『彼女』は自身の肉体が崩壊するのも恐れず、英霊達の座をその身(宝具)に取り込んだのだった。先生が私を恐れ、『世界』が私の抹消を幾度となく試みる遠因もここにあったのだ。『世界』を運営するシステム丸ごとを取り込む魔術師。我ながら凄い。
「でも何とかなったわね。結局アンタはアンタか」
先生がウインクした。
「ご迷惑をお掛けします」
「フフ……今更よ」
その昔、私が先生やシロウさんに核を使った事を凜は知らない。多分、魔法使いに至った愛弟子の凜(現在彼女もミントと同じく学園だろう)にも、先生は話されていないだろう。
「もう、大丈夫そうね?」
「はい。後は周辺の世界への影響をどう正すかですが」
「そっちは凜(魔法使い)が中心になって、他の弟子とともに修復してくれているわ。あなたが居ない間に旦那もセイバーも動いてくれたから」
そっか。なら安心か。そこで私は先生に、宝具の中で待機して貰っている『セイバー』の事を話した。
「まさか……『アルトリア』の可能性があるって言うの?」
「はい。ご確認されますか? 元マスターなら」
「そうね。パスから確認できるわね」
そういう事で先生を宝具の中へ誘った。ただし見送るだけで、後は中で待機しているお兄ちゃんに任せた。何故なら現実世界の家には弟子の凜しかいないからだ。彼女がこんな朝っぱら(と言っても10時くらい?)からここに来ている理由は、徹夜で工房に入って指導を受けていたからだろう。仮眠を取ってシャワーを浴びたとは思うが、衣類が微妙に薬品臭い。何より早く帰って一眠りしたいと思う。
「お留守番は引き継ぎますから、家に帰って休めば? 先生には言っておきますから。どのみちお茶を飲んだら帰るつもりだったのでしょう?」
「うん。甘えていい?」
「どうぞ」
そうして凜は帰っていった。今日が終業式なら姉も妹達も、学園から戻るのはお昼過ぎだろう。タイムリミットはお昼までだとお兄ちゃんに念話を送った。その後はあちらでも綴っていた、今回の件に関してのリポートを仕上げ、私なりの考察を添えた。
この間にも、世界中に散った『百貌』の各リーダーから報告の念話が届いている。それを並列化した思考で聞きながら、対処や処理方法を分割した人格から命令として発していた。そんな事をしながら、同時にこのところミントと考察していた『失われた巨人文明』を頭の隅で考えていた。
『失われた巨人文明』とは私達人類の遠い遠い祖先とされている。この論を推す人達に言わせると、厳密には彼らが遺伝子操作でこの地球に残した人口生物の末裔が私達だという。巨人文明とは巨石文明でもあった。今の私達には到底不可能な、巨大な建造物や遺跡も彼らの残した遺産だという。
そんな叡智を持つ彼らにも対立があったそうだ。ラットかゴキブリのように増える一方の私達をコントロールしないと、この美しいみどりの地球が失われると危惧した『黒の一族』と、猿にも等しい私達を導けば、いずれは彼らのような叡智を得て、正しい道を歩んでくれると信じてくれた『白の一族』だ。
『黒の一族』は、目を離すとすぐに我欲に走る人類を見棄て、破壊工作目的で特に傲慢な私達を造って、どこかへ旅立った。一方『白の一族』は私達に寄り添い、様々な事を指導してくれつつも、ある理由からユーラシア大陸を東へと移動していった。
その理由が『黒の一族』の下僕である、残された破壊活動用の種族だった。彼らは『神に託された』からと、平和なカナンの地を襲った。これを危惧した『白の一族』の教えを護る、当時一番の勢力を誇った王が、彼らを蹴散らした。それがユダヤの離散であるという。
では『白の一族』はというと、一時は栄えたが、やがて社会構造を変革した彼ら破壊活動者達に追われ、とうとうシベリアにまで追い詰められた。その地はツングースカ大爆発が起こったところだという。それ故に当時にはあり得ない核で滅んだという説もある。また怪僧ラスプーチンが、その実人徳者で平和主義者だったらしいのは、先の『白の一族』の教えを護っていたからだという。
『白の一族』は最初、アラビア半島に居た。それが西や北へと広がり、エジプトや、トルコを越えてギリシアを含むバルカン半島や、イタリア半島にまで遺跡を残していた。ローマの神々もオリンポスの神々もこの『白の一族』であったという論者も居る。またシルクロードを通って、宗教や文明だけでなくその自然観までもが遠く日本に伝わったという。奈良の大仏殿はその証だというのだ。
ところが『黒の一族』の残した破壊活動者達が『白の一族』をクリミアやサンクトペテルブルグにまで押しやった。
『だからあんな変な建物があるんだよ』
『マジで?』
『うん。調べたいんだ。『エル』行こうよ』
それがパミ(83番)だった。そしてサンクトペテルブルグの街に行き、不思議なものをたくさん見た。エルミタージュ美術館や聖イサアク大聖堂の巨大な石柱。名刺も刺さらない大理石の床模様。何かの爆発で1階部分が埋もれたかのような一般家屋。まるでシェルターのような広大なカタコンベ。これらはサンクトペテルブルグだけに限らない。他の古いロシアの街も皆んなそうだった。放射能を撒き散らさず、建造物をほぼ破壊せず、粉塵だけを5~6mも積もらせた『何か』。そしてそれは18世紀前半とそれより昔の15世紀頃に起きていて、痕跡はローム層として世界中に残っている。
火山ではないし、核兵器でもない。ただただ泥層が堆積しているだけだ。だけど数万年ならともかく、数百年で積もる量ではない。私が出した結論は魔術だった。そして私達に魔術を残したのが『白の一族』であり、世界の闇で暗躍する『彼ら』こそが『黒の一族』が残した、破壊活動者達の末裔だとパミが教えてくれた。更にはその『白の一族』が、最初に指導した人類がアインツベルンの祖先だというのだ。
『西欧に黒魔術が多く残り、ロシアにほとんど残っていないのはソ連の問題だけでなく、元々『黒の一族』が黒魔術を使っていて、『白の一族』はそれ以外の白魔術……ヒーリングや人体形成を得意としていたからだと思うんだ』
『嘘でしょ?』
『まぁ、私の思いつきもあるんだけどね』
この説はお祖父様ですら信じていない。どの並行世界のアインツベルンより蔵書が多いと自負している、チューリッヒの館にある図書室にも、そんな文献はないし、どんな古文書にも載っていないのだ。
『でも、ロシアの書店にこういう本は結構あるんだよ』
中学生の頃、モスクワで落ち合ったパミは大量の本を抱えていた。それらがこういう内容の本だった。ムーみたいなオカルトの類じゃないの?
『でもさ。スラヴ神話はあるのに、それより西には神話がないんだよ。そこも変だよね』
スラヴとは土地の名ではないが、概念的に黒海とカスピ海の間を指す。言語としてはそこから北東へと広がっている。そしてそれは神話も同じで(口伝なら当然だ)、イラン北部(カスピ海南部)には伝わっていなかった。これは宗教上の問題だけではないと思う。当時としては知識人である『百貌』のリーダーが知らなかったからだ(彼らのアジトとなった山砦はテヘランの北外れ、カスピ海南部の山にあった)。
また、この黒海がかつては巨大な湖と盆地だったとパミはいう。クリミアに移った『白の一族』が街を築く際に、地中海と繋がり塩水となったのだとか。現在もそのクリミアには垂直に切り断った山が多い。これらが人工的な居住区の跡地だというのだ。
魔術師がオカルトめいたこんな話を真面目に調べている……。だけど、パミは変わっているというだけでは済ませられなかった。何度もロシアに足を運んだ経験のある私だ。パミの説を半ば信じていた。矛盾点も多いが、理に適う点もまた多いから、全面的に否定しづらかったのだ。ましてや『あちら側』の存在を知り、その徹底した(それでも魔術師ほどではない)隠蔽工作と戦ってきた身としては。
『旧約聖書のユダヤ教にしても、新約聖書のキリスト教にしても、派生したイスラム教にしても人を殺し過ぎなんだよ。中でも子供を全部殺せってのは、決まってユダヤ教じゃない。アドレノクロムを求めていたのもアイツラでしょう?』
私達はそれとは違う方法で寿命はあれど、ほぼ不老を確立していた。そしてそれは『白の一族』も同じだったという。
『ラスプーチンが性欲旺盛だったのも、彼らと接触したかだと思うんだ』
紀元前から栄え、神話の元にもなった人々の末裔が、ほんの数百年前までロシアで生きていた。そしてそれらを隠蔽したいがために『あちら側の彼ら』はロシア革命を促したと、パミはそう断言している。いくら何でもそこまでするかって思うけれど、そういう事をするのが私達魔術師でもあるので、私の中では本当に謎が謎を呼ぶ状態だった(※2)。
ちなみにパミから……という訳ではないが、お祖父様はパミを9歳から毎年型取っていて、13歳までそれは続いた。またそのボディに意識を移し、『彼ら』やライバル企業の幹部にスパイ活動をしていた。これにはミトも参加していた。それを知ったのがあのモスクワの夜だった。パミもミトもやはり私だ。お祖父様を慮って、自分からそういう活動をしていたのだ。だから『汚れてないよ』と彼女の型の人形を抱いた。本体は綺麗なままドイツだったけれど、私と同じで心まで汚れた気分になったのだろう。
見知らぬオジサンから情報を得るために、そのようなボディを使い、口腔も膣も肛門も犯される……。私もお祖父様やママに隠れて6歳頃からそういう事をしていたが、まさかパミもだったとは。それはミトが止めていると思っていたのだ。
『薄々気付いていたでしょう? 81番から後ろの番号は何か変だって。実際にあなたが出力するのはいつも素数の83番である私と、89番に97番だった。なら、あなたと同じ竜の肝を食べて死なない体になった私が立候補するしかないじゃない』
『ミトが止めてくれているものとばかり……』
『便宜上『パミ』だけどさ。私もあなたと同じ『エルヴァ』だからね』
そう言って彼女はベッドで笑ったのだ。2人のママには絶対に言えない私達だけの秘密だった。
先生とお兄ちゃんが、『アルトリア』を伴って出て来た。圧をそこまで感じないので先生が何かをしたのだろう。
「どうでした?」
「大当たり。シロウが偶然召喚し、私が後にマスターになった……あのアルトリアで間違いないわ」
「では、ここで?」
「ええ。私とシロウとで責任をもって預かるわ。本当に何ていう奇跡……ありがとうね、『エル』」
こちらの事は大雑把に話したそうで、足りない分はおいおい詰めて話し合うらしい。ペコリと頭を下げる何とも神々しいセイバー。私のセイバーと会えば、また揉めそうだけど、取り敢えずは残して大丈夫だろう。
なので私は先生にお暇を言って、玄関前で日本ナンバーが付いた古いジムニー(と言っても4サイクルになったインタークーラー付きターボモデル)を出した。スイスではドイツナンバーの、北海道では日本ナンバーのゲレンデヴァーゲンだったが、冬木で冬に乗るのならジムニーに限る。地熱が高いので雪は積もらないし凍結もしない冬木だけれど、この街はとにかく坂が多い。また深山町は区画整理がなされていない地区もあるし、極端に道が狭いところもあった。そんなところに安心安全の四駆の軽自動車は大変便利なのだった。
狭い室内はエアコンもよく効く。と言っても暖まり始めたのは冬木大橋の上だったけれど。橋を下ると二つ目の大きな交差点で左折だ。左に我が家のビルが見えるが、広い敷地をぐるっと廻って、裏に行かないと地下駐車場の入り口がないのだ。表通りにある駐車場入り口は、6階から45階までのホテル専用だ。自宅はメイドが49階で、50階と51階の3フロア。48階と47階は間桐家で屋上ガーデンの真ん中に建つ塔のような5階建ての小さなビルが、アルトリア姉さんと王様の家だった。なお46階はない。機械室やポンプ室だからだ。
また1階から5階まではロケットの台座のように十字になっていてホテルのバンケットや、大小の市民ホールに貸し会議室、スイスの領事代行事務所などが入っていた。これは私のパスポートのためだ。平素は暇なので呼び鈴を押す。するとウチのメイドの誰かが降りて来る。なんとものんびりしたところだ。そこに並んで冬木市の市役所出張所も入っていた。ここがホールや会議室を管理しているのだが、住民票も取れるので深山町から来る人には結構便利だと好評だった。
また1階の通りに面した建物にはベンツェのショップが入っていいる。これはお母様のためにと、お祖父様が強引に入らせたものだった。無茶な株主である。この十字部分の一画に何軒か飲食店やスーパーが入っていて、市民の利用者も多かった。そんな飲食店の中にシロウさんのお店『割烹 凜』がある。
両側に店舗が並ぶ地下街を歩けば、雨の日でも駅まで傘いらずで行けるし、ビルから伸びた歩道で未遠川の堤防にもアクセスできた。そこから階段を使って堤防内の河川敷に降りれば、サッカー場や野球場にテニスコートが並んでいる。橋の下は管理人の居る有料のバーベキュー広場だった。
このビルは地下5階まであって、地下の2~4階は警察も違反車両の一時置き場に使う広い駐車場だった。何故ならビルは広大な敷地の大通りに面した一画に建っていて、残りは築山のある公園と市民ホールとは別の冬木市コンサートホール(別名アインツベルン・ホール。その大ホールをエルヴァ・ホール、小ホールをイリヤ・ホールと名付けられていた。お母様の仕業だ)や、冬木市立図書館などが点在し、バス通りとは反対(自宅駐車場入り口のある方)には、私が経営するコンビニやスナック販売店も建つほどの面積を確保していたからだ。
これが間桐慎一が膨大な借金を父親に抱えてさせてまで買い取った、『並行世界で街が焼ける』何倍もの広さがある土地だった。彼も私と同じで『夢見』をする。きっと一番最悪の夢を見たのだろう。それで父の鶴野小父様を説得して土地を買った。それを聖杯戦争後に私が買ったのだ。だってそうしないと間桐は破産だったから。
夢見を根拠に親を動かす慎一さんも大概だけれど、当時小学生だった息子の言葉を信じて、間桐の屋敷を手放してでもこんな大規模な土地買収をしていた小父様も大概だ。だけど私はそんな小父様や慎一さんに感銘を受けた。だから聖杯戦争後、それらの土地を全部買い上げ、新たな拠点となるビルを建てた。冬木市内で一番高いビル。これ以上の高さのビルは条例で建築できない。市長は良い仕事をした。
駐車場にクルマを止めて当家専用のエレベーターに乗れば、地上階で停まった。制服姿の姉とミントだった。
「お帰り、『エル』」
「今は横に立っている方が『エル』ですよ?」
「ううん。校門を出たところから、この子はミントよ」
そうして3人で家に帰ったのだった。
第三部 霊脈篇 完
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※1)この手の計画は、現状仮想空間に於ける第二の社会創造が第一段階で(仮想通貨もここに絡む)、第二段階がA.I.の補助を受けたロボット(アバター)の遠隔操作となる。問題は『病人でも寝たきりの人でも参画できる』という甘言にある。要はそれらがキチンと稼働し、大衆サービスが滞りなく行われるのなら、『中の人』の生死を気にする人が居ない点なのだ。今回の米大統領選のようにメディアまでがグルだと、大衆は絶対に気付かない。つまり闇から闇に人が葬られても、◯◯さんのアバターは問題なく動いている、だからあの人は元気だと思い込まされる点にある。
何をそんなSF映画みたいな、荒唐無稽な事をと仰る方も居られると思いますがカウントダウンは始まっています。
『ムーンショット計画』
https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/sub1.html
日本政府の内閣府が正式に発表しています。バカと間抜けと貧乏人は死んで行けと。
1、人々を善ではなく、悪に向かわせろ
2、リベラリズムを説け
3、「自由」の概念を使って階級闘争を起こせ
4、目標達成の為なら、どんな手段も惜しまないこと
5、DSの権利は力の中にある
6、我々の富の力は表面化しないように保たなくてはならない
7、群集心理を掴んで、大衆を操作しろ
8、麻薬、退廃的モラル、あらゆる悪徳を使って若者のモラルを組織的に低下させろ
9、どんな手を使っても不動産を没収せよ
10、心理戦争として「自由、平等、博愛」などのスローガンが大衆の口から出るようにさせろ(LGBT運動、フェミニズム、SDGs)
11、戦争を仕掛けよ。どちらの国も負債を抱え込むよう戦争を実行させよ。又、和平会議では双方が領土を獲得しないようにせよ
12、我々は財を活用して、要求におとなしく従い、陰で操る者たちのゲームの駒となる候補者を議員に選ばなければならない(オバマ、ヒラリー、バイデン、カマラ・ハリス)
13、メディアを支配せよ
14、DSのエージェント(A・ファウチ博士)はトラウマを生む扇動しながら、終わった後大衆の救世主として現れる(実際はその逆で大衆の殺戮に関心を抱く)
15、不況、金融パニック、失業、飢え、食糧不足を引き起こし、これらを大衆コントロールに引き寄せよ。
16、生意気な邪魔者は暴徒(アンティファ)を使って一掃せよ
17、組織的な目くらましには価値がある。理想の高いスローガンや言葉を使用し無理と分かっていても大衆には太っ腹な公約をせよ
18、決議の計画を詳細に立てよ。大衆を速やかに服従させるには「市街戦」が必要(’92年ロス暴動、BLM全米暴動)
19、戦争後にはDSのエージェント(国連)を使って、背後から助言してもらえ。支配を手に入れるために密使を使った外交活動をせよ
20、世界統一政府につながる。巨大な独立支配(G.A.F.A)を樹立せよ
21、原材料のコントロールによる経済破綻を導くために、高い税率と不公平な競争を用いよ。労働者同士の間に争いを起こし競争相手に補助金を与えよ。(GATT、NAFTAがこれに当たる)
22、我々の利益を守るのに足るだけの武装警察・兵力を蓄えよ(BLM系武装集団、在米中国人武装ゲリラ)
23、嘘と分かっている理論や原則を教え込むことで社会の若い構成員を騙し、混乱させ、腐敗させろ
24、社会・政府のすべての階級の中に潜入せよ
25、国内法、国際法は文明を破壊するために使う
26、世界人口を5億人まで、米国の人口を2千万人まで減らせ(新型コロナ&コロナワクチン)
DS(ディープ・ステート)=核心的権力層
(米ウォール街、英シティ、国際金融資本、政界エリート層)
※2)この『巨人伝説』は本当に今もあり、研究者も居ます。ロシアではネットで放送されたりしているようです。
https://www.youtube.com/watch?v=laA-Gjlxw08&list=PLme_dQnnBUgfraCiBz5kPhJ_yKVGjo_yg
こちらのチャンネルがそれらを翻訳しながら解説してくれています。
これにて『プリズマ☆エルヴァ』本編は一度終わります。
お付き合い頂いた読者の皆様、ありがとうございました。
しかしまぁムダに長いダラダラした話でした。ですが描きたかった世界観は描けたと思います。
『正義とは何だ?』
それがテーマでした。そこに纏わる矛盾と私が知り想像できうる限りを描けたと思います。
ですが、まさか『リアル』が、もっと醜悪な形で追いついて(明るみに出て)来るとは思いませんでした。
少し間を開けて、この世界観のまま短編(補足的なものや、他の世界、その後の事など)を描きたいと思います。
再度、読者の皆様にお礼を申し上げます。ありがとうございました。