『もうあなたにしか頼めないの。『他の地方』の人間に頼むだなんて、随分虫のいい話だとは思うけれど……』
申し訳無さそうに、向こう側の声が響く。
『彼女』は、静かに頷いた。
『ありがとう。詳細なデータを送るわ』
こちらこそ、と礼を言い、彼女は気になっていたことを問う。
『え? 四天王を降りる理由? カントー地方の四天王のことなんて、そちらには影響ないことでしょうに。……いえ、別に隠す必要もないわ。私は単に故郷へ帰ってやりたい仕事があるし、キクコのほうも思うところがあるみたいよ。オーキド博士がどうとか言ってたけど、詳しくは知らないわ』
それから少しだけ話をした。
カンナが始める仕事の話など差し障りないものだった。
『敢えて』そんな話をした。
カンナの心に傷がないかどうか。
電話を切ると、彼女は白い身体の戦友を撫でる。
戦友はキュオンと鳴いて、その翼を大きく広げる。
トゲキッスの背に乗った彼女は、凄まじい速度でシンオウ地方を離れた。
――
トゲキッスの背から一人の女性が降り立った。
金色の長い髪を垂らした、黒装束の妙齢の女性は、トゲキッスをボールに収めると目を眇めて洞窟を探していた。
カンナから聞いた場所はおおよそこのあたりだ。
近くから野生ポケモンの気配がするが、どれも特筆すべきものだとは思えない。
「少し歩いてみようかしら」
のんびりしたような口調ではあるが、その実、その足並みに淀みはない。
ためらうでもなく、戸惑うでもなく、勇むでもなく、力むでもなく。
ただ悠然と歩を進める。
それはシンオウチャンピオンとしての経験値がそうさせたとも言えるし、長い間考古学を学ぶついでに旅を続けてきた経歴がそうさせたとも言えた。
どんな相手が出てこようとも、全力を以て迎え撃つ。
そんな日々を毎日のように繰り返してきた彼女だからこその境地であった。
「――ッ! ここね……」
彼女は息を吐く。
わずかに感じた気配は、今までに感じたことのないもの。
一瞬で掻き消えてしまったが、気の所為ではない。
間違いなく、ここにいる。
シンオウのチャンピオンは不敵に笑った。
自身の勝利を確信しているわけではない。
敗北を恐れていないわけではない。
未知への対峙こそが、己の本分なのだと、彼女は理解していたからだ。
「さぁ、行きましょうみんな」
そうそうたる顔ぶれのポケモンたちをボールに収めたまま、彼女は洞窟へと這入って行った。
メタモンの洞窟、最後の侵入者となるシロナが、足を踏み入れたのだった。
――
足を踏み入れてしばらくすると、現れたのはアンズのあられのない姿だった。
「あうぅん! んぅうう!」
身悶えるその姿は事前にメールで貰ったアンズの写真そっくりだった。
「あら。アンズさんそっくりにへんしんできるのね。……それに喘ぎ声まで……。確かに普通のメタモンとは一線を画しているわ」
メタモンがへんしんできるのは、性能か形状くらいなので、相手の記憶や言葉までは使いこなせない。
つまりこのメタモンのへんしんは、全く別の技になっていると考えたほうが良いだろう。
当然、それを使いこなすこのメタモンも変異体。
言うなれば全てが特殊。全てが異常。全てが特異。
「面白いわね。なら、見せてみなさい。貴方の技を! 貴方の思惑を! 貴方の性癖を! あたしはその全てを受けるわ! そして見せてあげる! シンオウチャンピオンの真の姿を!」
その台詞を宣戦布告と受け取ったのか、部屋そのものにへんしんしていたメタモンがその姿を変える。
もとの粘体へと変じたメタモンはシロナの両手両足を絡め取り、衣服を剥ぎ取った。
口と秘所へ触手が伸びてきて深々と挿入されるが、シロナはそれをただ受け入れるのみだった。
そして数分の抽挿を受けたあと、何事もなかったかのようにその拘束を逃れた。
「な――なんで……ッ?!」
「へぇ、驚いた。そこまで言葉を使いこなせるのね」
シロナがメタモンの触手を躱して、アンズの姿のオブジェへと近づく。
「ここまで人の姿を模しているということは、ほとんど人と同じ感覚神経を持っているということよね。……でもそれはつまり――」
シロナはアンズの股から伸びる肉棒を掴んでいた。
「人間では耐えきれない快楽を、あなたは享受しきれるのかしら」
ぬるり……と、突起物の先端に指を這わした。
それだけでアンズの姿をしたメタモンは身を震わせる。
「こんな巨大なク○ト○○、攻めてくれって言ってるようなものでしょ」
くにゅくにゅと蠢くシロナの指が敏感な部分を執拗に刺激してくる。
今までに感じたことのない悦楽に、メタモンはビクビクと震えることしかできない。
「貴方がこの部屋を埋め尽くす巨体だとしても、こんな高度なへんしんをしている以上、全体のコントロールはそれほど丁寧には行えないはず。だったら触手の動きも大雑把だし、フェイントを入れて抜け出すことは簡単」
シロナのもう一方の腕が伸びる。
もうひとつの秘所へ。女性の花園へ。
メタモンは先端を弄られながら、内部へと指を挿れられた。
「高度なへんしんができるということはその分、弱点を増やすことと一緒なのよ? ほら、こんなふうに。気持ちいい? じゃあ、もっといっぱい気持ちよくしてあげるわね」
メタモンは絶叫した。
感じたことのない快感に、沸騰しそうな脳みそでただひたすらにこらえるしかできなかった。
負けたくない。何に対してなのかは分からなかったが、メタモンはただそれだけを考えて意識を保ち続けた。それがさらなる快楽の渦へ誘き寄せるとも知らずに。
「可愛いわ、アンズさん……。いつか本物ともしてみたいけれど、今は貴方に集中させてね……」
そう言うやいなや、シロナはアンズの唇を奪い、その細い舌を絡め取った。
口内を舐り、アンズの唾液を飲み下すと、再び両手に意識を戻した。
棒を上下に扱き、穴に突っ込んだ指は執拗に敏感なスポットを狙い撃つ。
チカチカと混濁する意識のなか、メタモンは必死に意識を保ち続けた。
目の前の美しい女性の激しい愛に飲み込まれ、メタモンは沸騰する脳内でただ、敗北するまいと足掻き続けるのだが……。
「ふふ、まだ意識を手放すのは早いわよ。人間にはね、文明の利器というものがあるの」
シロナがそう言って取り出したのは棒状のもの。
妙に艶めかしい形状のそれをシロナは舌で舐めながらスイッチを入れる。
途端にブブブブ……と、振動音が響く。
それは何なのか。何に使うものなのか。アンズから得た知識でも、メタモンには答えが出せない。
「クスクス……、怯える必要はないのよ? とっても気持ちよくしてあげるだけだから」
めきょ。
そんな音が聞こえた気がした。
無理矢理突っ込まれたそれが肉圧で押し返されそうになるが、シロナはグイグイとそれを押し込んでくる。
裂ける。裂けてしまう。
そんな悲鳴は言葉にならない。
目尻に浮かんでいたらしい涙を、シロナは舌ですくい取る。
――ダメだ。それ以上はダメだッ!!
そう抗おうとしたメタモンだったが、シロナは止まらなかった。
ズリュ!!!!
そんな耳をそむけたくなるような音とともに、それが深々と突き刺さっているのが見えてしまう。
「気持ちよくなるのはこれからよ。……今日はめいっぱいイカせてあげる」
途端に振動し始める棒状のそれが、アンズ(の外見をしたメタモン)の内部を激しく掻き回す。
グリグリと執拗に奥を攻め立てられ、メタモンはただ歯を食いしばって耐えるしかできない。
そんな姿に更に興奮したのか、シロナはアンズの乳首にむしゃぶりついた。
せわしなく動き続ける舌に再度頭が沸騰するような快感が襲うが、シロナはまだ全力ではなかったらしい。
「腕はもう一本空いてるもの。ちゃんと相手してあげるわ」
今度はアンズから生えた竿へ。
濡れた先端を撫で回す腕の動きは凄すぎて、もはや別の生き物のようだった。
逃げ場のない快楽。
さらには最奥を痛打する棒にすら快楽を感じ始めてしまっていた。
徐々に蒸発する理性のなか、金髪を振り乱す妙齢の美女が視界に映った。
その美しい姿にメタモンは畏敬を感じた。
それは生涯忘れえぬ光景となった。
――
翌日、メタモンはへんしん前の姿で横たわっていた。
心は妙に清々しかった。
元々は妙に高ぶった性欲を処理しきれなかっただけだった。
たまたま見つけた少女にそれをぶつけただけだった。
けど、それは間違っていた。
いや、彼(彼女)にはまだ上手く言葉にできない。
ただ、それはもっと大切な行為であって、もっと大事に行うべきだったということだけだ。
それだけが後悔していることであり、反省していることでもあった。
「やるからには全力よ。でないと相手に失礼だもの」
朗らかに笑う女神に、メタモンは笑みを返した。
そして、もう一度だけへんしんをした。
「神様、僕は貴方になりたい」
その姿はシロナを象ったもの。
けれど、どうにも身体が小さい。まるで10年以上前、初めてポケモン図鑑を手にしたあのときのシロナのような姿。
「僕はいつか貴方になりたい。貴方のような深い愛を抱きたい」
それは実に尊いことだとシロナは思った。
「ええ。また、逢いましょう」
トゲキッスの背に乗って飛び立つ彼女を目で追いながら、メタモンだった彼(彼女)は決意を新たに拳を握りしめる。
シロナの去った西の空をいつまでも見ていた。
その姿が見えなくなっても、ずっと。
その姿を焼き付けるように、ずっと。
長らくかかりましたが、とりあえず完結です。
ご閲覧ありがとうございました。
なんとなく最初から考えてあったプロットでしたが、実際書いてみると思いの外大変でした。
書ききれたのはPV数の多さや、ブックマーク数など、期待に答えるためでもありました。
最後の展開は好みが分かれるかもしれませんが、楽しんでもらえたなら嬉しいです。
一応このあとのメタモンくんはプチシロナとして世界を旅してポケモントレーナーを目指すことになると思うのですが、書くことはないと思います。
シロナさんの扱いはこれで良かったのかと思われるかもしれません。
でも、僕の中でのシロナさんはこういう人だったので、そのまま書きました。
あと、設定上は、アンズとカンナさんも新たな性癖に目覚めただけで深刻な精神異常は起こらないと思われます。
いわゆるハッピーエンドです。(どうだろ?)
また何か思いついたら他のゲームか何かで二次創作するかもしれないので、そのときはまたよろしくお願いします。
ではでは~。