青藍島のメリークリスマス!~性の六時間作戦~ 作:みころ(鹿)
オリジナル要素とかぶちこみすぎて原作ガバアナー・シリニコフだけどうるせぇそれでも俺はやるぞ。はいほんへ。
・・・
――――ちゅんちゅん…ちゅん…
朝。
清々しい空気の中、俺こと橘淳之介は目を覚ます。
布団から身体を起こすと、軽く伸びをして眼鏡を手に取った。
昨晩も遅くまで作業をしていたが身体は健康そのもの。いつも通りの時間に気持ちよく起きる事ができて気分も爽快だ。
窓から差し込んでくる朝光は少し眩しいくらい透明で、聞こえてくる鳥たちのさえずりも、まるで今朝を祝福してくれているように感じ――
――――ちゅん…あんっ♡…ちゅんちゅん…あんあんっ♡…
「…よしっ!」
混じりだした水音を深く考えないようにするため淳之介はベッドから飛び起きる。
軽く身だしなみを整え制服に袖を通すと部屋の外に出たのだった。
・・・
パックご飯と作り置きの味噌汁(奈々瀬製)を温めると淳之介はまだ起きていない妹の部屋に向かう。
アサちゃん職人の朝は早い。橘淳之介の朝はいつも可愛い妹を起こすところから始まる。
「アサちゃーん、入るぞー」
不肖女の子の部屋ではあるがいつものことなので特に躊躇わず、淳之介はカーテンが引かれた暗い部屋の中に入る。
女の子特有の甘い匂いとかは一切しない部屋の中でまず目に入るのはピカピカとブルーライトを放つ、つけっぱなしの高性能パソコン。そしてその前のデスクには突っ伏して眠っている妹、橘麻沙音の姿があった。
「アサちゃん起きろ朝だぞ~」
「んあー…んごぉぉ」
キャミソール姿の妹の肩を揺すってみるが豚のような声をあげるばかりで起きそうにない。
おおかた夜中ずっとFPSでもして外国人にfaxfax叫んでいたのだろう。いつも通りのことだがそのせいでアサちゃんは朝が弱い。このままでは学校に遅刻してしまう。
「おーい…ん?」
アサちゃんの身体を無理やり起こそうとしたところでふとモニターの異常に気がついた。
いつもならゲームか(炎上した)2chが映っているはずのパソコンの画面に、何故か今日は『女の子』が一人立っていた。
ぴかぴかと発光する画面の中。どことなくギルドの受付嬢を思わせる緑色の服を着たピンクロングヘアーのお姉さん…の3Dモデルがこちらに微笑みかけてきていた。
一瞬ビデオ通話かな?と錯覚してしまうほど精巧なモデルもさることながら、どことなくその立ち振る舞いは『知性』を感じるような気がする。
画面の中の彼女と目が合う。すると彼女は白い手袋をはめた手を控えめに振ってくれた。
あやふやにその手に振り返しながら淳之介は首をかしげる。
「これはいったい…?」
「せ…説明しよぉっ!」
「うおっ!?」
そこで寝ていたはずのアサちゃんが突如として跳ね起きる。
片目を前髪で隠した自称『童貞オタクでも気兼ねなくしゃべれるようにデチューンされた存在』こと美少女アサちゃんはパソコンの前に立ちはだかり、どこか寝ぼけたような様子で鷹のポーズを取ると声を張り上げる。
「これ一台で日々のオナ病み解決!アリアドネシステムを応用し作り出した『エロ画像検索プログラムAI』!その名も…オッナドール―Z!」
「オッナドール―Z!?」
オッナドール―Z!
その名を聞いた淳之介は目を見開き、そして思わず天を仰いだ。
「ついに出来あがったのか、あのシステムがっ…!」
「ふっその通りだぜぇ兄ぃ!この人工知能は使用者の日々の『オナネタ』をデータ収集!使用者の好みを学習し自己で分析成長、最終的にはその日の気分に合わせた最高のオナネタを提供してくれる夢のシステムなんだ!」
「くっ流石アサちゃんなんて悪魔的発明だ!ノーベル賞も夢じゃないぞ!」
SSからの逃亡のため作り出されたナビゲーションシステム『アリアドネプロトコル』。
天才的なプログラミング技術を持つアサちゃんが作り出したこのシステムは状況分析に優れ、即座に敵の位置や逃走経路を割り出すことができる。
そしてそれはオナニーのネタを即座に割り出す事もまた可能だった。できちゃった。
オッナドール-Z。一見くだらない発明に思えるかもしれない。しかしこれさえあれば毎日のオナネタ探しのもどかしい時間は短縮され、より純粋なオナニータイムを楽しむことができるだろう。なお過程を楽しみたい場合は知らないものとする。これはオナニーがはっかどるなぁ(すっとぼけ)
「で、このお姉さんは?」
「あぁイメージガールのオッナドール一号ちゃんだよ。今回は私自らモデリングしたってわけよ、どや?」
「完璧だよアサちゃん、君という才能が俺には怖い」
年上お姉さんにオナネタを探してもらうという気恥ずかしさがアクセントになってまた良い。
淳之介が視線を向けるとオッナドール一号ちゃんはぺこりと頭を下げてくれた。ボイスはついていないようだがこれはこのままでいいだろう。あくまでオナニーとは独りで楽しむものなのだから。
素直に射精…じゃなく感服していると説明を終え力尽きたらしいアサちゃんは椅子に崩れ落ち、そのまま突っ伏すと満足げに目を閉じた。
「へへ…というわけで完成するのにほぼ徹夜だったし今日は学校休むねおやすみ」
「いや起きろよ」
確かこれは世界革新レベルの発明かもしれないがそれとこれとは話が別。せめて四則演算ができるくらいまでには学校に行ってもらいたい。両親との約束だ。
無理やり起こそうとした淳之介に椅子に張り付いたアサちゃんは抵抗の意思を見せる。
「い、いやじゃ~~~~!!これを一般に販売して童貞どものオナニーで築いた財産を使って悠々自適に生きていくんじゃ~~~~!」
「そんな精子臭い余生嫌じゃない…?」
その後色々あったが何とかアサちゃんを机から引っぺがし登校することができた淳之介であった。
・・・
若干遅刻気味の通学路をひた走る。
寝ぼけ眼のアサちゃんをエスコートしなくてはならないということもあるが、そもそも淳之介の通学は『いつも』障害が多いのだ。
「この時間ならまだヌーディストビーチ行けるか…?」
「んんーギリギリー…」
走りながら進行方向を変更。近道ができる浜辺へと足を踏み入れる。
しかし広がった景色に早くも後悔することになった。
「くっ遅かったか!?」
「いやまだ間に合…んごぉ」
「寝るなアサちゃん!」
そこに広がっていたのは裸、裸、裸!
南国を思わせるここはヌーディストビーチ。服を脱ぎ去った男女が行き交う肌色の砂浜。
しかしここはただのヌーディストビーチなどではない。その理由は――
「んほぉぉぉぉぉぉぉっ♡サーファーちんぽしゅごいのぉぉぉぉ♡快楽の波が行ったり来たりしてるのぉぉぉぉ♡」
「くっなんて白濁の勢いだ!それでも俺は乗りこなして見せるぜっこのビッ↑クウェーブ!!」
至る所で行われる…セックス!
汗と嬌声が混じり合った裸の性殖者たちが群れ成す危険地帯。
性乱島の人気観光スポットであるこの砂浜は学校への近道であると同時にもし足を止めれば即パコ待ったなしのドスケベデンジャーゾーンなのだ。
(10…20…23セックスか…!)
しかし早朝という事もありその数はまだまばら。
行われる性交の合間を走り抜ければチャンスはある。分の悪い賭けではなかった。
「よし行くぞ!走れ!」
「んぉ…!」
アサちゃんの腕を引いて淳之介は走り出す。
目指すは海岸線の反対側。淳之介は軽い身のこなしで正常位の種付けプレスを飛び越え、後背位わんわんセックスの下を潜り抜ける。
幸い交尾に夢中な人々は二人の全力疾走を歯牙にもかけない。
「あっ…!」
「アサちゃん!」
しかしいかんせんここは砂浜。
砂に足を取られたアサちゃんが転ぶ。慌てて駆け戻った淳之介は手を貸そうとする。
「…あれ?ちょっと待って兄」
「何やってるんだアサちゃん、急がないと!」
「あぁうんそれは解ってるんだけど…これ」
そう言って麻沙音が指さしたのは砂浜に刻み込まれた深い溝。
どうやら麻沙音が転んだのはこの溝に足を取られたかららしい。波打ち際から続く溝は砂浜を通り、そのまま島内部まで続いている。
「うーん何の溝なんだろ…山まで続いてるみたいだけど」
「さぁ…誰かが掘ったんじゃないか?」
「セックス専用ビーチで素直に海遊びしてるような能天気がいたら逆に見てみたいもんだけどね…」
「それもそうだな…って早くいかないと遅刻する!」
「おぉ」
そして再び走り始めた橘兄妹は何とか誰にも声を掛けられずヌーディストビーチを抜けることができたのだった。
・・・
アーケードを通り抜けて五分。
ここまでくれば校門まであと少し。無時に遅刻圏から脱した二人は登校中の生徒に混じり学校へと向かう。
「ら、らめぇ♡わらわの大地かきまわされていくぅッ♡」
「何が大地だよテメェのは既にグズグズだろうがこのユルマンが!解ったら我が天ノ沼矛で孕めオラッ!天地開闢ッ!」
途中道端で国造り系男子と国生み系女子がセックスしていたがこのくらい通学路の日常風景だ。元気だなぁという感想しか出てこないあたりだいぶ感化されてきたといえる。
そして見えてきた校門ではどうやら今日はSSによる持ち物検査が行われているようだった。
「持ち物チェックしまーす…あ、そのあいだおまんこ使ってもほぉおおおおおっ♡」
「コラッ!なんですかこの勃起は!?ちゃんと処理しなきゃダメでしょう!?すっとこフェラ失礼しますジュポポポポッ♡」
…一部性交しているSSもいるが。荷物検査自体はいたって普通のものだ、アダルトグッズが許可されている点を除けば。
そしてドスケベ条約に反旗を翻すNLNS――No Love No Sex、淳之介たちが脱出アイテムをアダルトアイテムに偽装することで通過できるようになったことは記憶に新しい。
今日は特に疑われるアイテムは持ってきていないので問題なく通り抜けることができるだろう。だいぶ目の覚めてきたアサちゃんと共に校門に向かうと、目の前にSS風紀委員長である『糺川礼』先輩が現れた。
「おはようございます礼先輩!」
「あぁ橘かおはよう、今日も良い朝だな」
痴女のような格好をした礼先輩が日差しを手でさえぎりながらはにかむ。
現在SSに潜入している淳之介は彼女とそれなりの仲の良さを保っている。それもこれもNLNSの目的のためだが、SSの訓練などは淳之介のレベルアップに繋がったと言える。
「さてお前なら大丈夫だとは思うが荷物検査だ、見せてみろ」
「はい」
「よし、教科書に筆箱に…はっはっはっいつものオナホールだな。それとこれは…USBか?」
鞄を漁っていた礼先輩がピンク色のUSBを見つける。
「あぁそれは友達に渡す予定でして」
「…まぁこのくらいは良いだろう。じゃあ次は橘妹!隠れようとしても無駄だぞ!」
ツラ―っと何事も無く門を通り抜けようとしていた愚妹を礼先輩が呼び止める。
ビクッと足を止めたアサちゃんは若干震えながら首を振った。
「いやっ…私は良いんじゃないですかね?兄もそう思うでしょ?」
「アサちゃん…学校にゲーム持ってきちゃダメでしょ」
「あぁん殺生なぁ~」
数分後アサちゃんの鞄からは無事にゲーム機が没収されましたとさ。
・・・
午前の授業が終わりお昼休み。
授業中は性的なことは一切行われない青藍島の学校だが、休み時間には校内の至る所で生産的行為が行われる。教室はもちろん廊下や食堂でも行われる大乱交は反交尾勢力にとって逃げ場がないことを示唆している。
「はぁ…はぁ…」
そういうわけで今日も今日とてセックスから逃げる淳之介は廊下を走っていた。
いつもならロッカーなどに逃げ込んでしまうのだが今日は清掃委員(※ロッカーに入っているちんぽの清掃委員の事)が多く、いつだったかのように飛んで火にいる夏の虫みたいなことになりかけた。
授業が終わり青藍島の肉食女子から逃亡する事はや五分。流石にもうそろそろ追ってこないようで、振り返ってみても誰もいない。
しかし後ろに注意を向けたせいで前から歩いてくる人影に気がつかずに淳之介は誰かとぶつかってしまう。
ぼいーん
「おっ…大関っ…!?」
ああっと淳之介くん吹き飛ばされたー!
それは柔らかでいながらとてつもない反発力で淳之介を弾き返す。とても人の身とは思えぬその力にまさか伝説の生物「RIKISI」かと錯覚する。
しかし、なぜこのような廊下に野生の力士が?と回転する目線を向けた淳之介の前にそれはいた。
「ごっつあんです…って誰が相撲取りですか誰が!」
奴の名を畔美岬。
青い髪の毛にアホ毛を生やしたネタキャラと言えばもはや彼女以外にいるまい。
そして淳之介と同じNLNSの仲間でありながら、性乱島基準(ドスケベスタンダード)な価値観を持つ異色な存在ともいえる。
「いやすまない畔…しかし…」
「えっなんですか人の身体をジロジロと舐めるように視姦して、なんですか合意ですか?」
単純に淳之介は彼女の身体のどこからあんな反発力が出てくるのか解らないでいた。
良くアサちゃんにデブだと弄られている美岬だが淳之介の感覚として普通の体型そのものであり、だからこそ先ほどのような力が出せるとは到底思えなかった。多分ギャグ補正だと思うんですけど。
「あぁそうだ、後で渡そうと思ってたんだけどコレ」
「あれ、何ですかこれUSB?」
そう言って淳之介はポケットからUSBを取り出すと美岬に手渡す。
それは朝礼先輩に見つけられたピンク色のUSBであった。
「ついにアサちゃんが完成させたんだ、例のあれを」
「…はっ!?ま、まさかアレが!?」
あれとはすなわちオッナドールのこと。
影が薄く誰からも相手にされないためハードなオナニストになった美岬と生粋のオーナーである淳之介にはたまにオカズを交換する秘密協定があったりなかったりする。
そしてそんな二人の会話の中で着想が得て生まれたのがオッナドールであり、実際に作り上げたアサちゃんを除けば、ある意味このプログラムの完成を一番待ち望んでいたのは彼女かもしれなかった。
ちなみに美岬にオッナドールを渡すことはアサちゃんには秘密だ。いくらアサちゃんが美岬を嫌っていてもオナニーに貴賤は無いのである。仕方ないね。
「ふっふっふ…こんなこともあろうかと!」
そして美岬が取り出したのはこれまたピンク色の…ディルドだった。
「そしてこれを…こうじゃ!」
ディルドの根元の部分に美岬はUSBをズブッと突き入れる。
そこで淳之介は初めてそのディルドがちんぽ型USBであることに気がついた。ちんぽ型USBって何だよ(恐怖)。なおUSB同士で連結することでデータを移送することができる優れものだとか。つまりセックスだよセックス。
「ぬへへへ私のオナネタデータベースは既に構築済み!一万件以上のエロ画像エロ動画エロ小説の海へウェルカム…!」
「頑張れオッナドール一号ちゃん…!」
多分考えうる限り最悪のマスターだと思われるがそこはそれ。どうやらあのちんぽ型USBには美岬の今まで使ったオナネタが集積されているらしい。
かくして美岬のオナネタビッグデータにオッナドールは結合されたのだった。
・・・
放課後。
言わばこの時間がNLNSにおけるもっとも本格的な活動のタイミングである。
その目的とは「無事に家に帰る事」。SSと多数の性植者からの性的被害を回避し、安全な家へと帰ることこそが橘淳之介の作ったNLNSの本来の目的なのだ。
学校にあるエレベーターから本来は存在しない地下へとボタンを押す。ゆっくりと下降していく鉄の箱で待つこと数秒、プシュと扉が開きNLNSの地下秘密基地へと入ることができる。
「あっ来たわね、淳」
「よぉ奈々瀬」
やけに近未来的な秘密基地をNLNSの最古参メンバーでもある片桐奈々瀬が掃除をしてくれていた。家庭的で器用な彼女にはいつも助けられている。
ポンポンとはたきで肩を叩いた奈々瀬がニコリと笑う。基地内には彼女以外に人はいない。
暫く基地内でくつろぎ待っていると再びエレベーターが到着し、残りのメンバーがぞろぞろと入ってきた。
「ああーやっと豚骨臭さから解放されるー」
「ひどおっ!?たった十秒同じエレベーターにいただけじゃないですか!」
「うるっさいな黙れよこの人間シュールストレミング」
「事実無根かつ残虐なあだ名ァ!?」
まず見えたのは美岬とアサちゃん。
そしてその後ろからとことこと歩いてきたのは渡会ヒナミ。ピンク髪のロリにしか見えない彼女だがこんな容姿でも淳之介の一つ上の先輩でもある。まぁ行動がいちいち子供っぽいので間違われても仕方がないのだが。
「おっはよう淳之介くん!今日はいい天気だねぇ」
「おはようございます先輩、今日もかわいいですね!」
「おっおう…淳之介くん、開口一番女の子にかわいいって言うのは私どうかと」
「ちっちゃい先輩は可愛いなあ!」
「ロリじゃないですけどぉ!?」
ともあれこれでNLNSのメンバー全員が集合した。
準備が整いしだい下校作戦開始。バイザーを装着した淳之介が仲間たち全員を確認し、頷きあう。
「よし、今日も無事に家へ帰るぞ!」
「「「「おう!」」」」
全員でエレベーターに乗り上へ。
ゴウンゴウンと運ばれていく狭い個室の中、携帯情報端末を確認したアサちゃんが敵の位置を報告する。
「校内のSSの数は想定以内。配置は3―2―2―1、プランBからCの複合作戦を立案…オールオッケー。いつでもいけるよ、兄!」
「ありがとうアサちゃん!行くぞ、エンゲージ!」
そしてエレベーターの扉が開くと同時に――
『アリアドネプロトコル、起動!』
バイザーに映し出されるアリアドネの文字。
流れ出す情報群を目で追いながら淳之介は廊下へと駆けだす。アサちゃんの簡易ナビゲートに従いながら、できる限りSSの少ないルートを突き進む。
「右前方階段から接近3!」
「奈々瀬!」
「任せて!」
走り出た奈々瀬がオナホール型スパイアイテムを廊下の角に先んじて投げつける。
衝撃によって破裂したオナホールの中身はフラッシュバンとなっており、瞬間階段の踊り場を強い光が満たし濃い影を映し出した。
その勢いのまま廊下を曲がると呻き声をあげて転がる三人のSSの脇を通り抜け階段を駆け下りる。
音と衝撃に反応したSS生徒たちがわらわらと集まってくる。淳之介たちは互いに協力しながら校内を逃亡。アサちゃんがナビゲート、淳之介が現場指揮と前衛、奈々瀬がスパイアイテムでそれを援護し、ヒナちゃん先輩はパイプ椅子のラッキーパンチでSS生徒を沈めていた。美岬?知らない子ですね…。
「反交尾勢力だ!捕まえろ!」
学校で銃を使うSSはいないが戦闘訓練を積んだ彼らと正面から戦うのは危険だ。加えて数が多いのでいちいち相手をしていては体力ももたない。
校内を駆けずり回りようやく一階にまで辿り着いた五人。あとは廊下を一本進めば正面玄関から校舎の外へと脱出することができる。無論SSも先回りして何人か待機しているようだが数人、残りの装備で充分に突破できると麻沙音は判断していた。
息を切らして全員で廊下を駆ける。しかしその先の教室の扉ががらりと空き、中から人が出てきた。
「おっ?なんだお前ら、指導するぞこの野郎」
「先生」
白いワイシャツを着た太った教師が目の前に立ちはだかる。こういってはなんだがその見かけはすごく種付けおじさんっぽい。
「あっお前らあれだろ、最近うわさの反交尾勢力ってやつ。ダメだぞうちの生徒ならしっかり生産的行為に励まなきゃなぁ」
「くっ…アンタに何が解る」
「解るも何も現役JKと合法でセックスできるこの環境を楽しまない方が…」
「クズ教師撃滅拳ーー!」
「ぐわっーーー!?」
妙な迫力に足を止めてしまったがただの変態だった。
ロリコン死すべし慈悲は無い…が、性人済みなら手を出していいのが性乱島だ。
「ってまずいよ兄!後ろの階段からSSが来てる!数4!」
「すまん、急ぐぞ!」
前後を挟まれる状況は非常にまずい。
再び走り始める五人。正面玄関の前に辿り着くと情報通りに数人のSS生徒が出口を守っていた。大きく踏み込んだ淳之介は走る勢いそのままに突撃する。
「うおおおおおっ!」
「何ぃもうここまで来るなんて僕のデータにはないぞー!」
穿き丸による一閃で名前の知らないデータキャラを吹き飛ばし返す刀でもう一人を気絶。
残るもう一人は美岬がこっそり背後を取って羽交い締めにし、がら空きとなったボディをヒナミのパイプ椅子が強打し無力化した。
「よし後は外にさえ出れば――」
こっちのもの。そう言おうとした淳之介の目と鼻の先を鈍色の刃が切り裂いた。
意識外からの突然の奇襲にぎゅっと胃が縮まる。生唾を飲み込み貫き丸を握りしめると剣を振るった相手を見る。
「あはっ!そう簡単にはイカせないよ~?」
「お前は…女部田!」
SS一番隊隊長、女部田郁子。
戦闘部隊の中でも随一の格闘能力を持った彼女は得体のしれない技を使う生徒会長を除き、NLNSにとって最も厄介な相手と言える。
ただ五人で戦えば勝つことは可能かもしれない。しかし後ろからの増援を考えれば悠長にことを構える時間もない。
五人で顔を見合わせる。ここで取れる最善の選択は一番直接戦闘能力の高い淳之介が殿を務めることだった。
「四人は先に行ってくれ。大丈夫だ、すぐに追いつく…!」
「それ死亡フラグだよ兄…」
「じゃああれだ、別に倒してしまっても構わんのだろう?」
「死ぬじゃん!死ぬ気しかないじゃん!」
「はいはい、じゃあ頑張ってね淳之介―!」
奈々瀬に抱えられたアサちゃんと締まらない今生の別れを済ませ、四人が校舎の外へ駆けていく。大きく手を振った淳之介は苦笑して女部田に向き直った。
するとちょっと驚いたようすでいた女部田は、いつものような妖艶さのない素直な笑顔でくすりと笑って見せる。
「仲…良いんだね」
「まぁな」
「ふーん、ちょっと妬けちゃうな」
いったい今までどれほどの人間が戦場で相容れずにいられただろうか。例え国は違えど同じ人間、解り合う事は簡単なはずなのに。
淳之介は女部田の笑顔に初めて彼女のことがほんの少し解った気がした。もし立場が違えば友達にだってなれたかもしれない。
しかしお互いきっとかけがえのない信念のために戦っている。そう思うからこそ淳之介は武器を構えたし、示し合わせたかのように女部田も得物である日本刀を構えた。
「手加減はナシだぞ!」
「もちろん真剣勝負!それに――」
「それに?」
だが淳之介は忘れていた。この島にマトモな感性の人間など一人もいないことを。
「――反骨精神バキバキにへし折ってからの粛清逆レイプってめちゃくちゃ気持ちいいしね!」
「やっぱり解りあうなんて不可能じゃないかクソォ!」
…人間は解り合う事ができる。
表面上ではな!
・・・
「ひどい目にあった…」
精神的にも肉体的にも。
結局その後女部田との戦いは相打ちに終わり、SSの増援が到着すると同時に「飽きちゃった」とか何とかで女部田は去っていった。
それからはSSの大群に追われ、島中を東に西に駆け回り今さっきようやく最後の一人を巻いたところだった。
淳之介はクタクタの身体で島のメインストリートを家のある方向へ進む。外したバイザーをポケットの中に入れると額にかいた汗を手の甲でぬぐった。
(曇り空に夕焼けが綺麗だな…)
疲れていると妙にセンチメンタルな気分になる。ならない?ああそう…。
天を満たす薄い暗雲が、彼方に沈んでいく太陽のまわりだけ夕焼け色に染まっていた。
メインストリートを行き交う人々はざわざわと帰路を急いだり、店で買い物を楽しんだりしている。ここだけ見ればただのリゾート地だが取引されている品がだいたい性的な島なのでやはり性乱島か。
歩きながらスマートフォンを取り出した淳之介は歩きながらアサちゃんに電話をかける。数回コールがかかり通話が繋がると勢いよく声が聞こえてきた。
『もしもし兄!?』
「アサちゃん!俺はフラグに勝ったぞ!」
『お゛お゛お゛お゛兄゛~いぎででよがっだぁ~~』
同時に電話の向こう側が僅かに騒がしくなる。どうやら他の面々も同じ場所にいるらしい。
聞こえてくる歓喜の声は少し大袈裟だと思ったがそれだけ心配してくれていたのだと考えなおす。歩きながら淳之介は暫く声が戻ってくるまで待つと再び声をかけた。
「それであの後は大丈夫だったのか?」
『うん、何回か追われたりもしたけど全員無事だよ。今は家で兄のことをみんなで待ってたところ。兄はどう?帰ってこれそう?』
「ああ、今家に向かってるところで――」
その時だった。
視界の端に白色が霞む。はたと立ち止まった淳之介は雑踏の向こう側にそれを見た。
「あれは文乃…?」
透き通るような白い髪と手折れてしまいそうな小さな後姿。
琴寄文乃。NLNSのスポンサーから情報をもらったドスケベ条約を潰すカギとされる少女。
そして今まで何度かコンタクトをとり彼女が毎夜ヤクザたちと戦い、彼らの起こす犯罪から青藍島を守っている事を知っていた。
だがそのせいで彼女は人通りのある場所にあまり出てくることができない。特にこういったメインストリートを文乃は避けて通るはずだった。
『兄?どうかした?』
「あぁいや、今文乃が…」
人ごみの向こう側、遠くの後姿が路地裏へと入って見えなくなる。
どうして彼女がここにいるかは解らないが何か必要なもので買いに来たのだろうか。
何にせよ淳之介に今それを確かめる手段はないし、女の子のプライベートをあまり詮索するべきではないのかもしれない。
(だけど…)
たった一つ気になること。
それは先ほどの後姿に感じた違和感。
(どうして、文乃は“マフラー”なんて巻いていたんだ?)
紫色のマフラーが背中で遊ぶ後姿。
しかしここは常夏の島。そんな道具があることは理解不能というか、きっと何かと見間違えたのだと淳之介は思いなおす。
アサちゃんに帰る旨を伝え電話を切る。再び雑踏を歩き始めてすぐに淳之介はふと何かが頭にかかったような気がして空を見上げた。
「え…?」
陽光の消え去った曇天は黒く濁っていて、だから数多に降り続く白いそれは良く映えた。
あまりに非現実的な光景に淳之介は言葉を失い、行き交う人々もまた異変に気がついたのかメインストリートの喧騒はどよめきに変わっていく。
「何で、雪が…!?」
その日、青藍島に初めての雪が降った。
・・・
Q時間軸は原作のどの辺りですか?
A基本的には文乃ルートだけどSSに潜入したりしてるのでほとんど独自ルート。まぁ誤差だよ、誤差!