※この作品はR-18です。

万能細胞を使ってIS学園を洗脳・改造・侵蝕・ハーレム!   作:地球最適化プログラム

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第十四話 歪(ひず)み

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の朝。食堂で俺は朝食を口にしていたのだが(尚、簪は弁当を持って何処かへ雲隠れしてしまった)、不意に声がかかった。

 

「隣、いいかな?」

 

 昨日、休み時間に絡んで来た、同じクラスの布仏らの三人組だった。

 特に断る理由は無かったので、三人をテーブルの向かいに座らせる。

 

 ただ、女子三人と俺一人、そこから二、三メートル離れてグルリと囲む、飢えた女子の群れ。これが問題だった。

 食事をするでもなく、ただ突っ立って囲んでいる。

 ……ここは食堂だぞ。食事をしろ、食事を。

 女子三人もプレートを置いて座ったのはいいものの、衆目に晒されて、朝食を取るでもなく、縮こまっていた。

 

「……あんまり気にしない方がいいですよ。何も出来なくなるんで」

 

「う、うん。そうだね……」

 

「キョウジ君って、メンタル強すぎ……」

 

 俺が小声で促してやると、ようやく三人は食べ始める。

 

 ただ、周りのコソコソとした声は、俺が喋ったことなのか、ざわめきを増していた。

 

 ──五月蝿いな。

 

 仕方がないので睨んでやる。

 そうすると、こちらの威圧に気付いたらしい、蜘蛛の子を散らすように退散していった。

 

 所詮、IS学園しか世界を知らない女子共に過ぎん。

 

「えっと……なんか、一斉に解散していくんだけど……」

 

 異変に気付いた相川清香が、こちらに訊いてくる。

 

「さあ? ……飽きたのではないですか?」

 

 俺は適当にあしらうことにしたが、彼女らは何となく気付いてるらしかった。

 

(……私達は今、とんでもない相手と対峙している。そうは思わないかね布仏参謀?)

 

(そーだねー)

 

(眩しいっ、前方が光に包まれて見えませんっ!)

 

(そーだねー)

 

 ……このまま会話がストップするかと思われていたが、以外にも話のタネが降ってきたのはすぐだった。

 

「キョウジ君は朝食の量少ないね」

 

 話題を振ってきたのは、おさげの少女谷本癒子。

 

「そうですかね? 別に普通だと思うんですが……」

 

 今日の朝食は、お刺身定食。真鯛とマグロとイカの刺身にご飯と味噌汁がついた、定食シリーズのなかでもちょっぴりお高めの一品だ。

 この国では生の魚をよく食べると聞いていたが、束に進められて食べた時以来病みつきである。

 日本の和食文化というのはつくづく素晴らしいものだ。

 

「でも、織斑君は凄いよ。あれだけご飯大盛りにして」

 

 彼女が指差す先には、篠ノ乃箒と、朝食にがっつく織斑一夏の背中があった。

 ……なるほど、一回り大きいお茶碗に、ご飯が山盛りに盛り付けられている。

 そういえば先程、食堂のおばさんから「もっと食わないのかい?」とつつかれたが、一夏があれだけ食べていれば俺もこれくらい食べると思ってもしょうがない。

 

「……僕はそこまで食べませんよ。あまり食べ過ぎたら食べたものの重みで活動出来なくなりそうですから」

 

 けど、と俺は続けた。

 

「谷本さん達はそんな朝食で大丈夫なんですか? それだけだとエネルギーが十分に補給されませんよ」

 

 三人のプレートにはそれぞれパンが一枚と飲み物が一つ、そして小さな小皿にちょこんと乗ったおかずしかない。

 

 人間辞めちまって本当は食事も何も必要ない俺ではあるのだが、食事は日頃から規則正しく、適切な量を取った方がいいということには共感する。

 調理された美味しい食事を取ることが出来るのは、我々だけの特権だ。

 

「わ、私達は、ねぇ?」

 

「大丈夫、かな?」

 

 う〜ん、と心の中で呟いた俺だったが、まあいいか、と心の中でとりあえず切り替えることにした。

 そして、真鯛の刺身を醤油に晒して、舌鼓する。

 白身魚のコリっとした感触とさっぱりした味が、やはり絶品である。

 

 

 

「そういえば、キョウジ君は何か知ってる?」

 

 合掌してご馳走様を言った後、急に谷本がまた話題を振ってきた。

 

「何かとは、何をです?」

 

「……実は、昨日の消灯前に──」

 

「いつまで食べている!」

 

 何かを言おうとした谷本だったが、大声がそれを遮った。

 

「食事は効率よく迅速に取れ。遅刻したらグラウンド十周させるぞ!」

 

 食堂の出入口で、織斑センセが手を叩く。

 

 あれだけよく通る声、そして恫喝。鬼軍曹は伊達じゃない。

 因みにグラウンドは一周五キロ近くあるので、常人だったら三時間は走らされる計算になる。マラソンランナーもびっくりだ。

 

「谷本さん、話は、また後でしましょうか。それでは」

 

 俺は食堂を後にして、一旦寮部屋に戻る。

 今日から楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

「おはよう、キョウジ」

 

「おはよう、一夏」

 

 俺が教室について、授業の準備を終えたちょうどその時に、やっと織斑一夏が入ってきた。

 遅刻ではないが、IS学園はHRに悠長な時間をかけない。チャイムが鳴ったらすぐ授業。

 だというのに、流石にこのギリギリの時間は、看過しかねる。

 

 まあ、俺にとっちゃ知ったことじゃないんだが。

 

 ──だが、虫唾は、走る。

 

 早く、消えて欲しい。

 

 俺の理想郷に、二人も男はいらない。

 

 こんなナヨナヨした男に、箒や他のクラスメートが気を向けるなんてこと、あっていい筈がない。

 

 ──だが、今はその気持ちをグッと押し留める。

 

 その気になれば織斑一夏など簡単に捻り潰せる。

 だが、まだ織斑センセに決定打を刺せない今、下手に一夏に手を出せば、織斑センセの逆鱗に触れる。

 そうすればどうなるか分かったものじゃない。

 

 だから、抑えるんだ。今は。今はまだ、その時じゃない。

 

「……キョウジ?」

 

「え? どうかしましたか?」

 

「いや、ずっとお前が何も言わずに俯いてるから……」

 

「ちょっとした考え事ですよ」

 

「悩み事だったら、俺が相談にのるけど。大丈夫か?」

 

「そんな御大層なものではないから、大丈夫ですよ。それにしても、一夏の方が考えるべきことはいっぱいあるんじゃないですか?」

 

「え? あ、ああ……まあ、そうだよな。セシリアに何とかして刃向かえられないか考えなきゃいけないしな。キョウジも戦うんだろ? なんかいい案持ってないか?」

 

 ほら、キョウジは俺と違ってIS詳しいしな、と続ける織斑一夏。

 

「何かいい案ですか……。あるにはあるんですけど」

 

「そ、そうなのか!? 教えてくれ」

 

 ほぼまっさらな状態で、決闘に挑むことになった織斑一夏からしたら、付け焼き刃でもいいから勝ち筋に縋りたいものである。

 

「でも、とりあえずISの動かし方を先に覚えておいた方がいいと思いますよ、僕は。オルコットさんに勝つには、最低でもISの機動力と繊細な操縦能力を両立させる必要があります。基本的な空中機動動作を覚えずして、彼女に勝てると思ったら大間違いじゃないんでしょうか?」

 

 ただ、俺がそう簡単に必勝法を教えるか、ばーか。

 

 そもそも俺は織斑一夏とは違って、ある程度──篠ノ之束レベルの知識がある。実力は流石に伴ってないが、そこは自らの策で補う。

 無策で縦ロに挑む訳ではない。入念に計画を立てて、効果的に縦(・)ロ(・)を(・)堕(・)と(・)す(・)算段を考えているのだ。

 代表候補生とはいえ、あの様子から見て戦闘自体は余裕であろうというのが俺の推測だ。こちらには束製ISも控えているから、いざとなれば性能差でごり押せる。

 

「むう……それは、そうだよな」

 

「僕もあんまり言えたことではないんですけどね。僕だってIS動かすのはまだ二回だけですし、知識もただ持ってるだけですからね。知識を実際に活かせなければ何の意味ないでしょう」

 

 ただ、俺は、「あっ、そうだ」と続けた。

 

「でも一夏って、実績はあるんですよね? 教官倒したって」

 

「あ、いや、あれは……」

 

「マグレだったのかも知れませんけど、運は間違いなく一夏についているんじゃないんですか? 一夏には織斑先生もついているんですし、もっと自信持った方がいいとは思いますよ」

 

「あ、ああ……そうだな」

 

 何故かオロオロとした表情をする一夏だったが、勿論これは俺が揺さぶりをかけた結果である。

 

 俺は一夏の入学試験のデータを見ている。実力ないしは潜在能力を測ろうという魂胆で見ていたからだ。

 

 肝心の映像というのは……『上がり症の山田先生が開始早々壁にぶつかり自滅』という呆気ない顛末でそのまま締めくくられていたというオチ……ではあったが。

 本筋に関しては是非もない。

 

 ただ、縦ロの実力が、また織斑一夏自身の実力が如何にしろ、一夏には完膚なきまでに負けて欲しいものだ。

 とりあえず勝って貰っては駄目だ。

 

 あまり表立って汚い真似は出来ないが、自分の評価を上げて、織斑一夏の評価を下げる。そのためだったら俺はなんでもやるつもりである。

 

「と、とりあえずそうだな、俺は──」

 

 授業内容を理解出来るように努めるよ、とでも言おうとしたのだろうが、頭上から漆黒の出席簿が振り下ろされていた。

 

「早く席に着け。授業が始まる」

 

「はい……」

 

 いつの間にか背後にいた織斑センセにそう言われ、渋々席に戻る織斑一夏。……まあ、俺は来るの気付いてたけど。

 ざまあないね。

 

 ただ……。

 

「────っ」

 

 織斑センセが通り過ぎる瞬間。

 

 ──一瞬。ほんの刹那だけだったが、確かに確認した。

 

 織斑千冬がこちらを睨むのを。

 

「それでは授業を始める」

 

 その後というのは特に変わった様子というのは無かったのだが。

 だが、奴は俺がとんでもないバケモノだとは知らずとも、篠ノ之束とつるんでいることは承知だ。あの二人に因縁が存在している今、警戒するのはごく自然な発想だ。

 

 それは、俺に向けられた警告。

 

 だが、そんなもので折れる俺じゃない。女の花園に足を踏み入れてしまった以上、退路は断ってある。

 

 オーケイ。乗ってやるぜ。

 

 教壇で解説を続ける山田先生を傍らで補佐する織斑センセに向けて、俺は内心でほくそ笑む。

 ……仕方ないよな。だって、今から俺がすることは、元を辿れば彼女の身から出た膿みたいなものなんだから。結果がどうなろうと、彼女は受け入れるしかない。

 

 ──だが、肝心の結果というもの、このままこちらが負けてしまえば、俺は本当に膿として、よくて摘出されちまった癌細胞で終わってしまう。

 

 それだけは、避けなければならない。

 

 胸にそんなことを秘めながら、ノートをとる俺であった。

 

 教壇では、山田先生がISの操縦者保護機能についての説明を続けている。

 

「……ということで、ISは宇宙での作業を想定して作られているので、操縦者の全身を特殊なエネルギー・バリアで包んでいます。また、生体機能を保護する役割もあり、ISは常に操縦者の肉体を安定した状態へと保ちます。これには心拍数、脈拍、呼吸量、発汗量、脳内エンドルフィンなどが挙げられ……」

「先生、それって大丈夫なんですか? なんだか身体を弄られているみたいで怖いんですが……」

 

 クラスメートの一人が不安そうな面持ちで訊ねる。

 ──確か、ISを装着した時、人間の場合は独特の一体感を感じるらしい。四肢欠損の人に神経接続の義肢をつける時の感覚と似たようなものだろうか。

 元々人間の身体というのは人間の身体以外は自由に動かすことが出来ないという思考が前提として働いているから、身体が拡張した時にそのような違和感を感じてもおかしくはない。

 俺もそうだ。

 篠ノ之束の動きを封じるために初めてDG細胞を使った時は今まで感じたことの無いような感覚が走った。

 伸びた腕だけふわふわとした感覚が走っていて、まるで夢の中で空を飛んでいるようにも錯覚した。

 今ではそれにも慣れて、自由自在にDG細胞を使えるようになったが。

 

「そんなに難しく考える必要はありませんよ。皆さんはブラジャーをつけていますよね? あれはサポートこそすれ、人体の悪影響を及ぼすことはないわけです。もちろん、自分に合ったサイズでなければ、型崩れしてしまいますが、ISは自動で操縦者に合わせてくれるので、そういう心配はありません」

 

 そう意気揚々と話していた山田先生だったが、織斑一夏と目があった瞬間に、ボッと赤くなった。

 

「え、えっと、そ、その、おおお、織斑君はしていませんので、分からないですよね、その例え。あはは……」

 

 山田先生の誤魔化すような笑いは、しかしクラスメート全員に看破されていた。

 

 周りは山田先生の失言で段々と冷えた雰囲気になりつつあったが、俺はそんなことには目もくれていなかった。

 山田先生が他の男に顔を赤くしている時点で気に食わないところではある。

 

 しかし、ISに関しては開示されていない情報がとても多い。

 

 確かに不用意に身体を弄ったりはしない。普(・)通(・)に(・)使(・)っ(・)て(・)い(・)く(・)限(・)り(・)は(・)にはIS側が装着者のコンディションに合わせて調整を行い、『装着者の実力を100%引き出す』という装着者主体のコンセプトでISは出来ている。

 だが、ISはブラジャーとは、はてまた単なる拡張義肢とも違う。コアには人間以上のスピード誇る演算能力と、そして独立した『心』がある。

 ここからは篠ノ之束などのごく一部しか知りえぬ話だが……ISは使用されていく過程で、もっと効率的な稼働を行うためにはどうすればいいかを考えていく。

 そして、遅かれ早かれその心は、一体となっている装着者の『心』へと辿り着く。

 そこで他人の『心』への接触を行うのか、傍観を決め込むのかはそのISコア次第だが、肉体を介さない『心』同士の接触というのは、とても危ういものである。

 俺は一度、コア・ネットワークへの侵入を試みたことがあるから、よく分かる。

 心象世界での『心』の触れ合いはほんの些細なことで『心』は傷付き、消滅することもあれば、他人の『心』の影響を受けて容易く自分の『心』が塗り替えられることだってある。『心』同士が溶け合って、歪な一つの『心』になってしまうことがあったとて、不思議ではない。

 

 とどのつまり、『身体』が弄られる可能性は限りなく低いが、『心』が弄られる可能性はある、ということだ。

 精神力で跳ね除けることは可能だが、『心』を弄られてしまっては、もう身体がどうとか言ってる暇はない。

 

 心の弱いものは、容易に心に付け込まれるのは想像に容易い。ア(・)イ(・)ツ(・)が言っていた彼の日の箒は──篠ノ之束が全てを知りながらそれを渡したのかは知らないが──ISに乗ったことによって半ば暴走状態に陥った。それは長きに渡る篠ノ之束と織斑千冬の確執が始まった瞬間でもあった。

 

 ア(・)イ(・)ツ(・)が箒のことと同時に言っていたISの『本質』も加味すれば、普通の人間は、本当はISに背中を預けるのは極めて危険であろう。

 

 ……と言っても、今のところは箒を除いて明確な実例はなく、よっぽどのことがあってやっと理論的に起こりうるものであることを付け加えておく(更に言えば、俺は逆にコアの心象世界に土足で踏み込み、挙句相手のコアに対しての精神汚染を成功してしまうという偉業まで達成してしまった)が。

 

 ただ、俺はこの危険性には多大な利用価値があると見ている。

 確かに人間がISの奥深くに踏み込むのは危険性が高いが、俺の場合だったら全部DG細胞で屈服させてしまえば済む話だからだ。危険性なんてないに等しい。

 

 例えば、対象をDG細胞を使わずに精神汚染が行えるかもしれないという点が大きい。

 DG細胞を使いたくない場合が来た時に、標的の心と予め服従させておいたISコアを繋げば、あとはコアが勝手に精神汚染を済ませてしまう、言わばISを用いた自動洗脳装置(女性限定だが)等に応用が可能ではないだろうか。

 もし敵の勢力がDG細胞とそれ以外を見分けられる方法を見つけた場合などに、スパイを忍び込ませたい時などに使用するのが考えられる。

 そこまで追い詰められることはないと信じたいが、備えあればなんとやら、である。

 

 ISというのは、戦闘以外にもとても便利な代物だ。

 ISを使わずに世界征服しろと言われれば、かなり悪戦苦闘するに違いない。残念ながらこれはゲームであっても遊びではない。世に言う縛りプレイなんてやってる暇はない。

 それに、ISコアの人格というのは可愛い女の子なのである。それはISを身につけていればいつでも心象世界で彼女らと交わることが出来ることに他ならない。無料(タダ)でいつでも使えるラブホなのに利用しないなんて損している。

 

 ……閑話休題、俺がそうこう考えている間に教室が浮ついた雰囲気になっていたが、織斑センセの咳払いがそれを絶った。

 

「んんっ、山田先生、授業の続きを」

 

「は、はいっ!」

 

 教科書を落としそうになりながらも、山田先生は説明を再開する。

 眼鏡が少しズレているが。

 

「それと、もう一つ大事なことは、ISにも意識に似たようなものがあり、お互いの対話……ええと、一緒に過ごした時間で分かり合うというか、操縦時間に比例してISも操縦者の特性を理解しようとします」

 

 それは俺が先程言った通りのことだ。

 ただ、やはり理解しようとすればするほど、お互いの不可侵であった領域に踏み込んでいき、いつの間にか操る側から操られる側へ回る危険性がある。

 

「それによって相互的に理解し、より性能を引き出せるようになるわけです。ISは道具ではなく、あくまでパートナーとして認識して下さい」

 

「先生ー、それって彼氏彼女のような感じですか?」

 

「そ、それはどうでしょう。私には経験がありませんから……」

 

 経験がないのはラッキーだな。確かにISに携わる者はといえば、女性しか動かせないものだから女性主体の環境の中で生きているものだから異性への接触は少ないと聞く。

 ホテルで身元確認を行っていた時に、珍しく束が山田先生の豊満なおっぱいを羨ましがっていたが、過去も未来も永劫この身体は俺が独り占めできる。

 

 クラスの女子はキャッキャキャッキャと騒ぎ出して談義を始めている。

 別に談義などして想像を膨らましていても、最終的には俺が全部貰ってやるのだけどな。

 今年入学出来たのはとても運がいい。

 

「…………」

「なんでしょうか、山田先生」

「えっ? ああ、いや……なんでも、ないですよっ」

 

 頭の中でプランを練りながらノートに授業内容を書き込んでいた俺の目が、山田先生の前で止まる。

 山田先生は、さっきからずっとこちらを見つめていた。

 

 まあ、今まで女子しかいなかった授業に男子が加わるというのは、やりにくいのは当たり前である。仕方ない。

 

 そこでチャイムが鳴り、山田先生は次の授業の予告をしてからそそくさと職員室に戻る。

 織斑センセも先に教室を後にしていた。

 

「はーい! キョウジ君に質問!」

 

「キョウジ君はどう思う?」

 

「お昼ヒマ? 放課後ヒマ? 夜ヒマ?」

 

 授業が終わるなり、近くの座席に座っていた三、四人が飛び出して同時に質問をしてくる。もう俺が友達を作っていたがために様子見は終わりを告げたらしく、後続にはゾロゾロと列を成して大量の女子生徒が赴いて来ていた。

 

 そして、女子達の隙間からチラリと前を覗くと、織斑一夏も同上である。心無しか、向こうの方が少ないか。

 

「流石に、一度にいっぺんは無理です……」

 

 とりあえず、表向きの性格を演じるために縮み上がっておくが、いつの間にか列が教室の後ろの出入り口をゆうに越え、整理券配りを始める女子まで現れている。『一枚千円』と聞こえたのは、恐らく空耳ではない。

 

 ──本当に、なんでもありか。

 

 さしもの俺であっても、この展開には半ば呆れていた。

 

「……で、キョウジ君は、どうなの?」

 

 物量による質問攻めは終わらない。

 日本には、この質問の波を全て捌いた歴史上の偉人がいるとかなんとかで、その逸話を基にしたゲームがあると聞いたことがある。『聖徳太子ゲーム』だっけ。

 一応俺にもそれは出来なくもないが……。

 

「み、皆さん、一旦落ち着きましょう、ね?」

 

 しかし、その一言では止まる気配はない。

 始めは圧倒的アウェーだと覚悟していたが、これ程とは……!

 

 仕方なしに、俺は質問を一つ一つ捌いていく。

 

 感謝することと言えば、あの整理券を配っていた女子、あの整理券に『一人一言まで』と書いてあったおかげでこちらは少し楽だった。

 誰だか知らないが、感謝を申し上げておく。

 ……お金を徴収するのはいただけないが。

 

 ある程度質問を捌き切ったところで、俺は出席簿の音を聞いた。

 

 見れば、何があったか知らないが一夏がまた織斑センセに叩かれていた。

 

「休み時間は終わりだ。散れ」

 

 織斑センセの地雷を踏み抜いた……らしい。

 

「ところで織斑。お前のISだが、準備に時間がかかる」

「へ?」

「予備機がない。だから、少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」

 

 織斑センセの言葉に、クラスがざわめき出す。

 

「専用機!? 一年の、しかもこの時期に?」

 

「つまりそれって政府からの支援が出てるってことで」

 

「いいなぁ〜。私も早く専用機欲しいなぁ」

 

 彼女らの言う通り、これは異常だ。そもそもイレギュラー(俺たち)に関することなんか異常事態ばかりではあるが。

 

 そして、同時に俺もピクっと眉を上げる。

 

 それは、驚きというよりも、歓喜の反応だった。

 

 そもそも、織斑一夏に専用機が用意されるというのは想定済み、いや、そうなるように俺が仕組んだのだから。

 

 俺としては、作戦が成功してくれて嬉しい限りだ。

 

 しかも、『予備機がない』、つまり、この時点で一夏はあの『白騎士』……いや、『白式』に乗ることが確定した。全て俺たちの計画通りの結果だ。

 

 こんなに嬉しいことはない。

 

 『白騎士』がまだ完全に支配出来ていないとはいえ、これで織斑一夏を制御下に置いたも同然である。

 

 ──残念だったな織斑一夏。入学早々だが、もう俺の勝ちだ。

 

 心の中で、高笑いをする俺。

 

 そんな矢先だったが、織斑千冬の視線が、一夏からこちらに向いた。

 

「イクリプス。お前も同様だ。学園で専用機を用意する」

 

 ……というわけで、こちらの専用機に関しても、合法的に使えるようになった。束の根回しのおかげだ。

 

 ……だが、織斑センセは脅威だな。先程の死(・)線(・)程じゃないにしろ、元々の眼光が尋常ではない。振り向かれただけで、自然とこちらが強ばってしまう。織斑一夏に勝っても、織斑千冬に勝てなきゃ意味がないというのに、前途多難なのは俺も同じだった。

 

「あらあら。良かったですわね。私てっきり訓練機にお相手なさらなければならないかと思いましたわ」

 

 俺の思考を他所に、俺と織斑一夏に食ってかかったのは縦ロだった。

 

「なにぃ?」

 

「訓練機相手に勝ったところで、つまらないんですもの」

 

 一日経ったところで、彼女の舐め腐ったところは変わらないらしい。

 

 俺は今にも爆発しそうな織斑一夏の肩を抑えて、首を振った。

 

「口喧嘩をしたところで、何も変わりませんよ、一夏」

 

「だけどよ……」

 

「決闘をすると言っているのだから、全てはそこで結果を出せばいい。下手に出て憂き目を見るより、我慢して後で結果を見せつけた方が世の中生き残っていくのです。そうでしょう? オルコットさん」

 

「ええ。確かに貴方の仰る通りですわね。一週間後が、非常に楽しみですわ」

 

 オーッホッホッホ、という貴族御用達(?)の高笑いを浮かべながら、自分の席に戻っていく縦ロ。

 織斑一夏も、傍らで拳をギリギリと握っているものの、特に掴みかかろうという訳でもなく、力なく席へ戻って行った。

 

 ……対して俺はといえば、なんて低俗な戦いなんだと内心呆れながら席へと戻ったわけであるが。

 

「それでは授業を始める」

 

 教室内のざわめきも、織斑センセの授業開始の合図が始まる頃には、静まりかえっており。

 最低でも勉強は出来る奴らなんだなぁ、と複雑な心境を浮かべる俺の耳には、カリカリとペンを動かす音が聞こえていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回、やっと戦闘パートに入ります。
 その後に濡れ場に入れるかと…
 お待ちを……お待ちを……
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