万能細胞を使ってIS学園を洗脳・改造・侵蝕・ハーレム! 作:地球最適化プログラム
モニターには、ブルー・ティアーズから放たれたミサイルがウイングガンダムプロトゼロに吸い込まれて大爆発する映像が流れていた。
「キョウジ君、大丈夫でしょうか……」
アワアワとして落ち着きがない山田先生を尻目に、織斑千冬はいまだ爆煙が残るモニターを見つめている。
その傍らには、織斑一夏と篠ノ乃箒の姿もあった。
織斑一夏は、映像を見ながら息を呑んでいる。
モニターを介して伝わってくる戦場の空気。
爆煙に消えた友の行く末。
先に行かせてしまった罪悪感。
そんな気持ちが綯い交ぜとなって、今の一夏は何も言葉を紡げずにいた。
「それにしても、なんでオルコットさんはレーザービットを使用していないんでしょうか?」
そんな重苦しい空気の中で、山田先生が疑問を問いかける。
確かに、試合開始から六分は経っているが、セシリアはビットを展開しようとしない。
遠隔で操作を行えるレーザービットの展開は、それだけで戦力が増加されることを表す。
『正面から一機が迎撃している間にもう一機が周りこんで迎撃』
という複数人を必要とする戦略を一人で成せる、しかも意思疎通が必要ないと言うのは、刻一刻と状況が変化する戦場では大きなアドバンテージになる。
それに、相手が一機のみであると錯覚させておけば、思わぬ奇襲を狙うことだって出来るし、ビットの数だけ使える戦略は増えていく=有利になる、筈である。
実際、空想上の話と言えども、遠隔兵器を使用したモビルスーツは、戦場で多大な戦果を挙げている。
ララァ・スンが乗り込むニュータイプ専用のモビルアーマー『エルメス』はビットを使用した遠隔攻撃でソロモンに駐留していたマゼラン級戦艦やサラミス級戦艦を次々と撃破し、その後も一日で戦艦五隻を沈める壮挙を成し遂げた。
ラウ・ル・クルーゼも同じだ。初搭乗にも関わらず遠隔機動兵器『ドラグーン』を搭載した『プロヴィデンス』を操り、十二分な活躍を魅せた。ムウ・ラ・フラガが操るエールストライクを翻弄して中破させ、キラ・ヤマトの駆るフリーダムと互角以上に戦い、追い詰めた。更に、その傍らで宙域の敵機をすれ違いざまに撃墜させたり、エターナルやクサナギを損傷させている。また、作中でミーティアユニットを破壊したのも、彼が唯一だ。
思えば、ファンネルや、ドラグーン、ビットといった兵器は、ガンダムの主人公達を幾度となく苦しめた。
ア・バオア・クーにてガンダムの前に立ち塞がった『ジオング』。
カミーユ・ビダンの乗るゼータガンダムと、ジュドー・アーシタの乗るダブルゼータガンダムと、二つのシリーズに渡って二人のガンダムパイロットを苦しめた『キュベレイ』。
『νガンダム』と『サザビー』の関係といえば、最早お互いが最後の敵、つまりラスボスとも呼べるべき存在だった。
宇宙世紀の物語は、バイオコンピュータによって自立稼働するモビルスーツが登場してもなお、一定の活躍を続けることになる。
クロスボーンガンダムに登場する巨大MA『ディビニダド』等が代表的な例だろう。
もちろん、遠隔兵器は宇宙世紀だけの話ではない。
先程の、フリーダムと戦った『プロヴィデンス』を初めとして、
だから、遠隔兵器という武器パターンが戦場や、また戦闘において有利に働くというのは自明の理であった。
「オルコットさんは、あの後ろの棘みたいなのを飛ばして、多角的な攻撃を行うのか」
包囲されたら終わりそうだな、と一夏は冷静に分析しつつも、しかし焦りを隠すことが出来ていない。
顔は呆然としている。
あの降りしきる弾雨だけじゃない。
アイツはまだ、隠し玉を用意している。
この戦闘を見ている限り、シールドで幾らかを防ぎながらやっと避けきれているように見えるのだが、純粋に砲塔が増えただけとして、それらを防ぎ切ることが出来るかと考えたら、それは難しいと言う他ない。
──アレに、勝てるのか?
一応、布仏から貰ったデータが、一夏にはある。
そこにはこのブルーティアーズという兵装も余すことなく記載されていた。
このIS学園で使われるISのデータは、全て開示されなければならないという条項が書いてあるために、このデータを入手することが出来た。
だが織斑一夏には、データを知ることは出来ても、まだ戦闘のイメージが掴むことが出来ない。
つかめないが故に、分からない。
──だが、彼が負けようと負けまいと、次に俺の番が来る。
分からないなりにも、何か策を考えねば──。
「織斑。行くぞ」
スパッと切る、声。
彼を思考の海から引きずり上げたのは、織斑千冬だった。
「織斑先生は、この試合、見なくて良いんですか?」
思っていた以上に競り合ってますよね、と続けたが、千冬の視界からモニターはもう外れていた。
「……つまらんな」
「えっ?」
千冬の言葉に、反射的に反応を返した山田先生だったが、それを見越していたかのように、千冬はもう一度言葉を吐き捨てた。
「勝敗が分かりきっている試合程つまらんものはないと言うことだ」
「はあ……」
千冬は部屋を後にした。
続いて一夏と箒も部屋を出ていく。
部屋には、山田先生だけが取り残された形なのだが、やはり彼女は意気消沈していた。
(……誰も私の疑問に答えてくれなかった)
「経験の差……って奴かな」
キョウジは溜息をついた。
黒煙の中から、ゼロは姿を現した。
盾には大きな黒い焦げ後が残っている……が、しかしIS本体は五体満足であることに、セシリアは歯噛みした。
あくまであの男は、まともな戦闘をするのはまだ二回目な筈。
イメージ・インタフェースを用いていくら簡単に操縦出来ようとも、しかし操縦技術を上げた者との差は、天と地程はある。
そして、織斑一夏とは違いキョウジにある程度の知識があるとは言っても、経験ならこちらが圧倒的に上。
なら……目の前の彼は、一体何であるのか。
あの機動は、初めて動かした者が成せる技じゃない。
それに、やはりこちらの手が読まれているような感覚がしてならない。
この感覚は一体──?
──それが分からずとも、全力を出し切らねば。
そう思って背後のカスタムウィングに意識を集中しながらレーザーライフルを握り直すブルー・ティアーズに対して、ゼロはビームサーベルをしまって、右手にツインバスターライフルを連結状態で呼び出していた。
しかし、みすみす射撃動作を待っている程甘いつもりはない。
「撃たせませんわ!」
銃口が、爆ぜる。
ミサイルという奥の手が効かなかった以上、ライフルとブルーティアーズの五門の飽和射撃で相手を釘付けにするしかない。
しかし、それを行うには、些か今の自分には難しい部分がある。
だが、今の自分でもそれを行える、そのための布石は立てた。
あとはプランを、実行するだけだ。
セシリアの顎が引く。
(お待たせしましたわね。ブルーティアーズの真骨頂、お見せ致しますわ!)
カスタムウィングが開き、四枚のフィン・アーマーに搭載されたスラスターが火を噴く。
四機の猟犬が、長い沈黙を破って解き放たれた。
(……かかった)
だが、それはキョウジの手の内だった。
後ろに下がりながら、光弾を避けるキョウジはと言えば、先程までは気怠げな顔をしながら避けていたが、ここに来て顔色が変わる。
そもそも、キョウジはセシリアの戦闘データを全てチェック済みだった。
ビットがゼロの周りを高速で行き交う中、キョウジは落ち着いて周りを見回す。
確かにビットの動きは速い。小さくて、ちょこまかしていて、複数いて。ツインバスターライフルの連結状態では勿論通常の──例えばそう、ブルー・ティアーズのスターライトMk-IIIとは威力も攻撃範囲もダンチではあるが。確実に当てなければ自ら隙を晒しにいっているにも等しい。
だが、しかし、それはビットの話である。
彼は知っていた。
ビット使用時はブルー・ティアーズ本体の足が完全に止まることを。
別に、ビットを相手にしなくたっていい。
ISバトルは、相手のISの本体のシールドエナジーをゼロにすればいいだけなのだから。
キョウジは、『ブルー・ティアーズ』がビットを展開するのを待っていた。
ビットを展開してくれた方が道筋が分かりやすくて倒しやすい、というのもあるし、第三世代ISのポテンシャルが引き出された上で倒したい、というのもあったからだ。
だから、両者ライフルによる力押しを図った射撃戦から近接戦に切り替え、ビットの誘発を誘った。
スピードを上げる。
ビットはその速度についていき囲み続けるが、お構い無しにバスターライフルを構え──
──バスターライフルを振り上げた瞬間、一機のビットが反応した。
(迂闊でしてよ──まずは武器!)
レーザーが放たれる。
狙いは正確。ツインバスターライフルのその長い銃身の中途。
セシリアはこの戦いが始まって初めて、笑みを露わにした。
──やはり、こちらの特性は全て読まれていた。
そう悟ったセシリアは、すぐさま発想を転換する。
今までは、自分の長所、ビットによる数的有利や弾幕による、アドバンテージを稼ぐことで押し切ることを考えていた。
だが、予測されたら戦略も戦術も全て水の泡。
それは攻略本を読まれたゲームのボスキャラのような物である。
自らの攻撃パターンを、機体特性を、アドバンテージを全て読まれていては、それらが全て躱しきられる、アドバンテージとして成しえないのは必至。
こちらの利点を打ち消され、相手は何があるのかよく分からない
そんな中で、勝つにはどうすればいいのか。
それに答えられる最低限の──これでも最低限だ──正解は、まずその範疇から外れ、別の視点に立って考えること。
今の場合だったら、力押しがだめなら──一歩引けばいい。
自らの短所を、ピンチを、最大のチャンスに変えることにしたのだ。
彼女は、国内では、いや世界でもそうだろうが、BT兵器への適正は世界一だと自負している。
……とは言いつつも、問題は山積みなのが実際だった。
『ブルー・ティアーズ』本体と子機のビットを同時に動かせないのが代表的なものであろう。
ビットを初めとした遠隔操作兵装は、強力な武器であることは分かっている。
だが、それを十全に扱えなければ意味は無い。
ララァやシャアは、それを扱えるだけの、ニュータイプの技量があったから動かせたわけであって、そこらの軍人、一般兵にいきなりサイコミュを搭載した機体に乗せたところで、上手く扱えるはずがない。
BT兵器を扱う技術の鍛錬。セシリアにとってはそれが喫緊の課題であり、それこそIS学園に来た最大の理由である。
ただ、その問題をこの試合中に今すぐに、また根性ですぐに何とか出来るかといえばそうでもない。
別に彼女は根性とか勇気とか、そういう言葉が嫌いではないが、彼女は自分のことに関しては、一段と思慮深い人間だった。
勇気と無茶のボーダーラインは、心得ている。
ならば、今するべき最前の手筈は、何か。
それは自ずと彼女の中で見えていた。
相手はこちらが、『ブルー・ティアーズ』本体が疎かになっていることを知っていた。
だから、その隙をわざと晒したのだ。
もし相手がそれに誘い出されなくても、四方向から同時にレーザーを撃ち込めばいい。
そして──相手はその釣餌に、食い付いた。
あとは釣り上げるだけである。
ライフルを構えた瞬間に、ブルーティアーズによるレーザーを放つ。
だが、レーザーがライフルに触れる直前、その影は消える。
「えっ?」
ツインバスターライフル、いやゼロが空中で跳ねた。
レーザーが空を切る。
そして、間髪入れずに敵機の後方に据えてあったビットが爆散する。
勝手に自爆することはあるまい。
気付けば、ツインバスターライフルのトリガーが引かれていた。
そしてセシリアは直感する。
──乗せられた。
空中でライフルを振り上げる動作は完全にこちらに攻撃を仕掛けさせる誘導だった。
全て、彼の手のひらの上だった。
釣られていたのは、自分だった。
視界がぐにゃりと曲がる。
気に入らなさで気分が悪くなる。
男は、弱い。そして弱いから男は女に媚びるものである。
彼女の男に関する印象とは、そんなものだった。
オマケに下心が丸見えで、弱いのに増長して、こっちが隙を見せたら手を噛もうとしてくる。弱いから、すぐに返り討ちに遭うというのに。
現に、父親もそうだった。いつも母の顔色を伺って生きていた。そして、母に、私に擦り寄ってくる人間もそうだった。
だが、目の前の男は違う。
知略で完全にこちらを手玉に取り、今まさに女であるわたくしを追い詰めている。
根底から、覆っていく。
自分の思考回路が、次々とショートしていくような錯覚に陥る。
まだ試合は終わっていない、と無理矢理に奮い立たせるセシリアだったが、その心中は崩壊を始めていた。
後ろに回り込んだビットの攻撃を避け、ツインバスターライフルを構える。
そして、発砲。
しかし、向けていた銃口は後ろのビットではなく、上に回り込んだビットであった。
頭上で爆発が起こった後、下から放たれたレーザーを後退して避け、上昇を行う。
セシリアは一瞬驚いた顔をしたが、また目を細めてビットを展開し直す。
だが、もう勝負は終わったも同然だった。
ビットとISを同時に動かせない、というのは『ブルー・ティアーズ』の、ひいてはセシリアの最大の弱点であったが、大きな弱点はもう二つあった。
ビットはガンダムシリーズのファンネルと同様にビットに思念を送り込んで操作する脳波コントロール仕様であるが故に、パイロットの癖というものが、特にファンネルには色濃く表れる。
一つ目として、とやかく彼女は死角を使いたがる。
ISのハイパーセンサーでも知覚に時間がかかる背後や上など、そんな場所に重点的に配置したがるのだ。
癖というのは、自分ではあまり気付きにくいものである。
死角にビットをおけば反応までの時間、そしてレーザーの速射性において大きなアドバンテージを得れるのは確かではあった。
そして、二つ目にセシリアの技量ではビットによる相手へのブラフ立てが出来ない。
敵機への照準合わせをまだオートで使用しているために、例えば『敵機の前方にレーザーを撃って敵の足を止める』という手段がとれない。
そこで本体のスターライトMk-IIIで何とかしようとすると、今度は本体とビットの同時操作が出来ない弊害にぶつかる。
そして、相手を牽制しておいての、死角からの四方向同時攻撃。
ブルーティアーズを十全に扱えないと自覚していたセシリアはその瞬間を待っていた。
ゼロを特定のポイント、姿勢、状態に持ち込み、ブルーティアーズの初見殺しの機動攻撃によって一撃で撃ち抜く。
初撃を躱しすぐさま背後に周りこむ程に俊敏性が高いゼロ相手には、ビット──網を張れるほどにもっと沢山あれば話は別だが、ブルー・ティアーズのレーザービットは四基しかなく、セシリアの技量不足もある──では力不足だった。
ビットの機動も甘くいくつも課題が残るビットを使用するには、必殺の一撃、『とっておき』にするしかなかった。
しかし、キョウジは全て読んでいた。
(あの縦ロは俺がビームサーベルで突っ込んで来た時には悟っただろうな、力押しでは勝機がないと。だから一点突破に作戦を変更した。別にそれは悪くない判断だ。だが、奴は
そして、これだけではない。セシリアは重大な誤算をしていた。
セシリアは、ツインバスターライフルとマシンキャノンしか遠距離武器はないと考え、ビットを展開した。ビットを展開しなかった約6分の間、別の射撃武器を出そうとする様子は見られなかったから、そう考えたのだ。それは結果的に合っているが、しかしその考えが彼女の回答を縛った。
ゼロがツインバスターライフルライフルをチラつかせた時、セシリアには二つの選択肢が与えられていた。
そのままビットで本体を撃つか、先程のようにライフルを落とすか、の二つだ。結果はといえば、ライフルの破壊するのに失敗し、セシリアに傾きかけていた勝利の天秤は、キョウジに振り切れてしまった訳であるが。
あの時セシリアは、『敵機への攻撃』を最悪の条件時での行動と予定立て、『ライフルの破壊』を好条件時に行動しようと予定立てた。
だが、これは結果論になるが、セシリアは何としてでも相手のISを叩くべきだった。
キョウジや、キョウジのISにだって、弱点はある。ツインバスターライフルは取り回しが悪いし、マシンキャノンは射程が短く実弾であるため弾数に制限がある。
『ゼロ』に搭載された射撃武器はこれだけだから、この二つを喪失すれば後は近接武器のビームサーベル二つだけ。ライフルとビットで遠くから狙う『ブルー・ティアーズ』にとっては、近付けられなければ勝ちも同然。
だから、敵機がツインバスターライフルを取り出した時、彼女は今ISのシールドエナジーを削れなくとも、武装を破壊出来れば勝機はグッと上がると考えて『しまった』。
見かけ上は、確かにそうだ。
だが、それがミスリードだったら。
何も、自身の短所を生かす戦法を使えるのはセシリアだけという訳では無い。
武器の破壊に失敗し、敵を攻撃出来る絶好のチャンスを失ったセシリアは、敵の応戦によってビットで対抗せざるを得なくなる──つまり初見殺しが出来なくなったことにより、彼女は完全に勝ち筋を失う。
ビットがゼロを包囲して、ビットが火を噴くまでの約30秒。その間に行われた頭脳戦は、この試合の勝敗までもを決した。
(初陣としての出来は……まあまあいい方なんじゃないかな)
そして。
四方八方から来るレーザーの網を抜け出て、ミサイルによる攻撃をも防いだゼロは、ライフルを向ける──本体のブルー・ティアーズに。
「!?」
ビットの操作に手間取ったセシリアは、回避行動をとれない。
というより、銃口を向けられた時には、殆ど戦意が喪失していた。
ドッと言う衝撃の音と共に、光がブルー・ティアーズを呑み込む。
紛うことなき、キョウジの完全勝利だった。
負けた。
その一言が、セシリアに重くのしかかる。
シールドエナジーが切れたブルー・ティアーズが、地上へ落下していく。それこそ、蒼い、涙のように。
負けは許されなかった。優秀であらねばならなかった。強くあらねば、いけない。
彼女の瞳には、いつも凛とした母の姿があった。
母のように強く、正しく、逞しく。
だが、──こんなところで、それも男に負けてしまった。
それでは、わたくしは、わたくしは──。
『生きる価値もない』
瞳の中の母は、そう言い放つ。
こちらを見下ろす母の足元に、父の姿がいるのに、セシリアは程なく気付いたが、跪く父親の姿が、まるで今の自分に重なっているように見えた。
呆然とその姿を見ているうちに、母の姿がどんどん遠ざかっていく。
自らの目標が、憧れが、どこかへ消えていく。
「い、いや! わたくしは、わたくしは、わたくしは……」
──弱くはないさ。
誰かの声。女性ではない。男性だ。だけどとても落ち着くような、そんな不思議な……。
「大丈夫ですか?」
気付いたら、視界いっぱいに白髪の男……キョウジの顔があった。
「あ、あなた!?」
「ご、ごめんなさい! オルコットさんが落ちてきて、それで、それで……」
セシリアが、キョウジがとてもおどおどしている様子を見てから、自らが抱きかかえられているのに気付くのに、そう時間はかからなかった。
「なっ!? なっ、なっ、なっ、何をしていますの!? 早く下ろしなさい!」
「分かりました」
すぐにキョウジは地面へと彼女を下ろしたが、しかし戸惑っていた様子だった。
「本当に、大丈夫ですか? ちょっと、
段々と、認識が覚めていく。目の前にいるのは、いつもの、厚かましい程に丁寧なキョウジ。ただ、何故かいつもより焦ったような姿をしているのが珍しくて、
「ふふっ♬︎」
「? ……どうしたんです?」
セシリアが笑みを零すのを見て、キョウジは首を傾げる。
セシリアの瞳から、一筋の涙がこぼれた。
『キョウジはその場で待機、オルコットは一旦ピットへ戻れ。第二試合を始める』
スピーカーから飛ぶ、織斑先生の声。
こちらの疲労の問題は何処へやら、体力的に不利な中、バカと戦わねばいけないらしい。
あの野郎……と悪態をつくキョウジだったが、そこに声をかける者がいた。
「悔しいですけど、わたくしの負け、でございますわね」
立ち上がったセシリアが、いまだおぼつかない足で歩み寄る。
「無理なさらないで「わたくしはこれでも丈夫ですわ」……分かりました」
差し出した手に対してセシリアは首を振ってみせ、言葉を続けた。
「この戦いの敗因は明確……わたくしが貴方を侮っていたからですわ」
「そうかもしれませんね」
「キョウジさんは、意外と手厳しい方ですわね……。でも、次は負けませんわ」
キョウジには、次の試合が待っている。自分がここにいては邪魔だ。
セシリアはそう思い、最後にキョウジに笑みを見せてピットに向けて飛ぼうとするが、キョウジがそれを引き留めた。
「オルコットさん。少し待って下さい」
「なんでしょう?」
「機体がボロボロなんで……この後、また試合があるでしょう?」
そう言って、ブルー・ティアーズの肩に触れるキョウジ。
セシリアはゼロから、何か暖かいものが伝わってくるのを、感じていた。
……数分、肩に手を起き続けていたキョウジだったが、「はい、おしまい」という声と共に、手を離した。
「一体……何をなさったんです?」
「俗に言う……
その言葉にキョトンとするセシリアだったが、彼女はカタパルトに立つ白い機体をハイパーセンサーで確認する。
そろそろ、お暇しなければ。
「それでは、次の試合も頑張って下さい、キョウジさん」
スッキリとした顔をして、ピットに戻っていくセシリア。
キョウジはその背中をピットに入るまで見ていたが、彼女の姿が消えたところで目前の白い機体に意識を移した。
──個人的には、セシリアは善戦した方だと思っている。弱点はあれど第三世代を使い、ある程度の経験を持ち、そして俺に全て読まれていたものの戦略をしっかりと、順序立てて組んでいた。自らが不利であると判断しても、諦めずに起死回生の一手を編み出したのは容易に成せる技じゃない。それに、機体や戦闘のデータを完全に知られているという、不利な状況下の中、彼女は戦い抜いた。
流石は代表候補生、と賞賛を与えるべきだろう。
俺でなければ、やられていた、と言ったところか。……自分で言っておいてやけに上から目線だが。
さて、あの織斑一夏はどこまでいい戦いを繰り広げてくれるのか。
織斑一夏の機体──『白式』に関しても、ある程度のデータは手中にある。
貴様が弱いなら弱いで計画は順当に進むし、強いなら強いで倒しがいがある。
はっきりさせようぜ。
少し投稿期間が空いたのは主にシンエヴァのせいです。当人はTwitterとかやってないのでここで感想を言わせて頂きたい(以下ネタバレ含む感想につき透明処理)。
Qのあの絶望的な感じからよく返してくれたと初見でも泣きました。
終盤にかけて我らが主人公シンジ君がもうかっこよすぎてかっこよすぎて、TV版と旧劇は後半シンジ君がずっと孤独で補完始まってやっと成長したけどシンエヴァは補完始まる前に周りのみんながシンジ君を大人にしてくれたおかげで補完を破綻させてみんなを救うことができたと考えると感慨深い。結局旧劇含めて世界がループしてたし。
あと、アヤナミストな自分としては黒波がだいぶ好きになって、髪が伸びたポカ波が可愛すぎて、戦闘前のマリのセリフも刺さって泣きましたね。
帰ってからネタバレ動画見ててサクラ界隈に衝撃が走っていましたが自分はなんとなく予想済みでした。というよりアスカが本当に式波シリーズだったのが驚きだった。マリについてはあと一歩で置いてけぼりになりそうでしたが聖書関係を知っておいて良かったと思いました。イスカリオテのマリアという冬月の一言の理解が出来なかったらマリについては完全にわからずじまいなのが少し不満ですが……。結局漫画版のアレも既読必須みたいな感じだったし。
他にもいろいろ言いたいことはあるけど、まああの世界であれ以上のハッピーエンドは考えられないですね。旧劇の気持ち悪いエンドも全て過去にしてゲンドウも完全に救いネオンジェネシス完遂したのはようやったと言いたい。
本当に『さらば、全てのエヴァンゲリオン』でした。
面白かった。