≪お前も家族だ≫
ゴシャアッ
「わ゛ーーっ!?」(コントローラー落し
「!!?」←悲鳴にビビる
「もぉこわいよこのゲーム……VRで遊ぶものじゃない……休憩挟も45姉? ……45姉?」
「…………」ポケー
『お前も家族だ』
『これからはみんな家族だ!』
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
「………ぅぶっ ぅくくっ……wwww」
「ちょっ……なんで笑いだすの!!?」
「ハーッ……! ハーッ……!」
(おかしい!オカしい!アイツ頭オカしい!!)
AEK-999の捕縛を振り解いて逃走したM870であったが、結局の所行き場も分からずグリフィンの施設内を疾走し続ける様にあった。
途中途中ですれ違った者たちは皆、マジになって走り続けるそんな彼女を見て驚きの表情を浮かべている。
自分はこんなにも速く走れたのだな、といった具合の、呑気で牧歌的な客観視すら出来ない程、心に余裕が無い。
しかし、人間(人形)やってみなけりゃ分からないこともあるもんだ。
(逃げなきゃ……逃げなきゃ…… 逃げないと……!)ヒーッ ヒーッ
(でも、でも……何処へ……!?)
最初グリフィンへの異動及び配属が決定づけられた時は正直驚いた。
グリフィンといったら自分が元いた小さなエージェンシーとは比べられない程に大所帯。
しかも複数からなるグリフィンの部署の中でも、他機関の者たちの間で常々語られる程にその存在の知られる名門への配属。
正直なところ、そこへの配属は自分自身に大きな格がついたものだと心の中では喜ばしく思っていた。
認められたのではないか、と。
けれど、初日からどうだ? 唐突に銃口を突き付けられて、慌てふためいて逃げて……このザマだ。
巷で耳にした逸話と全然違う!ホワイトなイメージだったのに!
どうして……こんなことに……?
私だって、色々な所をたらいまわしにされてはいたものの…… 与えられた役割を私なりに懸命に全うしてきたつもりはちゃんとあって……
クソ上司に呼び出された時、正直、どうせまた左遷なんだろうなって思ってた。だからこそ、異動先がグリフィンだと知った時は驚きを隠せなかった。
しみったれたカビ臭い部署へと島流しされるんだとばかり思っていたから……
何せあのグリフィンだもん。その辺の機関と格が違うし、世間体的に見ても華がある。ついに我が世に春が来たんだなって。
でもこのザマだなんて……
あたし嫌われ者らしいけど(※自覚ナシ)個人的感情で嫌いって思っただけで、職場でも苛めなくったっていいじゃん……
そんなの公的場における私的感情の濫用じゃないの……
やっとこさホワイトな職場に来られたって思ったのに、クソ上司めあたしに嘘ついたな!?
さては上げて落しにかかったな!?
「あらら? もしかしてあんたが現在進行形で掲示板を沸かせているルーキー?」
声をかけられた。
よりにもよって壁に両手をついてガニ股でケツを突き出して疲労困憊している時に……
「な なに……あんた誰…… ぅぷ」ゼーハー
「私はMDR!究極形であるブルパップ方式のアサルトライフ……じゃなかった」
場にそぐわないと思ったのか、MDRはブルパップアサルトライフル語りを止めた。
「そうそう!あんた今じゃ、ちょっとした有名人なんだよ」
「あ、あたしが……何をしたって……」ヒュー… ヒュー…
「そら(人々が集まる屋内を奇声あげて全力疾走すりゃあ)そう(タイムラインに並ぶくらい一躍有名にもなる)よ」
なんだって!?自分は怖い思いをさせられたってのに!
「あ、後で写真撮ってアップしてもいい?」
「っえぇ……?」(困惑)
癖はありそうなものの、話の通じそうなマトモな奴が出てきた!とM870は安堵した。
MDRが貸してくれたハンカチで軽く汗も拭けて、彼女が割り当てられている宿舎へお呼ばれされることに。
丁度この近くには宿舎がある。それを初めて知った様な顔をしたら逆に驚かれるのだった。
「えぇなに、知らない? 施設の案内のファイルとか貰ってない訳? 案内役は?」
「え それは……」
貰う前に途中で逃げ出してきたなんて言いにくい……。
「まずは案内役がテキトーに連れて回って、施設各所を紹介してくれると思うんだけどなぁ」
「えっと…… えっと……」
思わずAEK-999との間にあったいざこざが再びフラッシュバックし、思わず動悸が激しくなる。
「ッ……」
それは、M870にとって思い起こしたくもない出来事。
「ちょ おいおい、大丈夫ルーキー? ホラ、ここ私の部屋!」
ドアを指差すMDR。
「そんな調子じゃ休んだ方がいいって」
「ア ハイ (な、なんだ!まともじゃん!)」
地獄で仏に会うM870。
「はーいごあんなーい。散らかってたらごめんね~」
「電気付けなって、あたし客人でしょう? こりゃ罰金ね~」←調子出てきた
「待ってろ~って、付ける付ける」
MDRが壁のパネルに手を触れる。すると瞬時に部屋の明かりが灯る。
温暖色の温かな光だった。
「――――は?」
内装もキレイだし、間取りも広いし設備も良好。こんなに良い部屋を個人に割り振られているなんて素晴らしいじゃないか。
――その時まではそう思った。
でもMDRの部屋には問題が有った。
物が散らかっているとか、例えば酷く汚いとか、そんなんじゃない。
そういうことじゃない。
……。
部屋の壁一面に、天井に、写真。
写真。
写真。
写真。
全て、今朝に顔を合わせた男の―― そう、指揮官の写真。
それがMDRの部屋に貼り詰められている。
それも、ほぼほぼどの写真も視線が合っていないものばかり。一体誰が指揮官の写真を撮ったのだろう?
……決まっている。十中八九
自分の身体の体温が見る見る失われていくのが分かる。おまけに脱力感に、倦怠感だって。
そんな中、頭だけは熱く、不思議と手足はしっかりと動いた。
「――――かえる」
「えっ?」クルッ
「おうち かえる」
「え゛!? 休まなくて大丈夫か? お家帰るって言ったってここが家…… 」
「えっと、ゴメン……もしかして急用あった?」
MDRは申し訳無さ気に言う。
「ウン 用事 アル ウン」
こっくりこっくりと頷き、自分には急用があったのだと、何度も何度も言い聞かせた。
「なら悪い事したなぁ…… 仕方ないすね~。またおいでよ」ヒラヒラ
こんなトコに居られるか!あたしは部屋から出させてもらう。
こうしてM870は踵を返し、慌ただしく走り去っていった。
M870が部屋を後にし、MDRは椅子に腰かけてしばらく部屋の宙を眺める。
眺めたのち、先程M870に貸したハンカチをおもむろに取り出し、匂いを嗅ぎ始めた。
「おー、よかった」
やがてこう呟く。
「あの
M870の冒険は続き……
「取り押さえろ! ほらそこ!脚持て脚ッ!」
「お体に触りますよ……」
「嫌!嫌!嫌!放してっ! あたしは別に病気なんかじゃ……!」
「そんな青白い顔しながらフラフラして何も無い訳ないだろ!いい加減にしろ! 早く彼女を医務室に連れて行くんだ!」
「む、無理よ!彼女こんなに暴れ……ああっ!?」
\嫌ぁあああああああ!/ ダダダ
「患者が逃げたぞ!」
◆
「指揮官に不敬を働いたであろう新入りを探している」
「お 前 だ な ?」
「ィヒィ!? 人違い!人違いよ!」ダッ
◆
「だっ、誰か……!ライダー助けて!」ガチャ
「ああ、―――、あるいは――― 我らの祈りが聞こえぬか……」
「白痴の―― にそうしたように」
「我らに瞳を与えたまえ……」
「……お邪魔しました」(そっ閉じ
(なによあのヘンテコな被り物……)
◆
~シアタールーム~
≪お前は最後に殺すと約束したな≫
≪そ、そうだ大佐。たっ助けて……≫
≪あれは嘘だ≫
\ウワァアアアアアアアアアアアアアアアア/
「ぷぷぷっ……」
◆
「…………」ガチャ
≪Call 9-11 now!≫(爆音)
「」ビクッ
ドゥードゥン ドゥー↑ドゥドゥドゥ ドゥー↑ドゥドゥドゥ ドゥウウウウウウン……↓(迫真)
※Skrillex - First of the year
「うわうるさぁっ!?」バタン
◆
「約束のブツは……持ってきたのね?」
「……ここに。そちらも提示して貰うよ」
「ええ勿論。……中身を改めさせて貰っても?」
「構わない」
(え、なになに 何をしているのあの連中は……?)ソワソワ
「指揮官の使用済み歯ブラシと指揮官のボールペンの交換取引……ここに見事成立ね!」ガシ
「ああ!」ガシ
~固い握手で結ばれる二人~
~それを温かい拍手で祝福する戦術人形たち~
(何をしているのあのバカどもは……)(困惑)
◆
◆
◆
「ここ どこ こわい やだ」
……と、うわ言の如く繰り返しながら、トボトボと覚束無い足取りで歩き続けるM870の姿が。
短時間で極度のストレスと緊張、恐怖とよく分からん世界に蝕まれてしまった彼女は悲しいことに、ちょっとした不調に陥っていたのだった。
今ではすっかり冷静さを失ってしまい、ないものを見たと勘違いしたりしている。
実際のケースを一つ挙げると、“大型の刃物”を取り出されたと思い込んでしまったこととか。
なお、その時に取り出されたのは背表紙が金属部品で構成されているだけの、ただのバインダーファイルだった。
そのファイルの背表紙が照明に反射してキラリと光り、あろうことか刃物を取り出されたのかと錯覚したおそらくの原因だった。
……中々に追い詰められていることが窺える。
こんな調子でどうにも他者の善意からなる施しを受け入れられず、逃げ出したりして拒否していたのだった。
せめて案内人であったAA-12から施設の案内を適切に受けるべきだった……
それなら施設の大まかな構造が分かり、まだここから逃げ果せたかもしれない。
(指揮官……)
ぽわんと、ふと彼の顔がなぜか思い浮かんだ。
ここへ来てからというもの、悲劇の連続で…… しかしその面々の中でも指揮官は一際優しかった。
だからなのだろうか。不安と恐怖で知らず知らずのうちに、彼との再会を心の拠り所にしている自分がいることに気付く。
しかし、次第に歩くのにも疲れ……
ついには適当な壁に寄りかかって背中を預け、その場にへたり込んでしまった。
眠りにつく気にもなれなかった。
目を閉じて開けたら、柔らかいベッドの上で目が覚める……なんてことがあればどんなにいいか……
しばらくそのまま俯いていると、声を掛けられた。
――聞き覚えのある声だ。 しかしどこで聞いたのだろう?
M870はゆっくりと顔を上げた。
声の主は――
指揮官だ。
彼は崩れる様に座り込むM870に近寄った。
偶然にも、絶妙な具合に照明の逆光に照らされた指揮官の姿が、疲れ果てたM870には、その疲れ眼も相まって凄まじく神々しいものに見えた。
自分の中に立ち上る暗雲がみるみるうちに晴れ、
光が差しこんだ様な気持ちにさせられていくのを感じた。
次の瞬間には、M870は指揮官に抱き着いていた。
急に抱き着かれた指揮官は勿論驚いたが、程なくしてゆっくりと抱き返す。
M870は彼の胸に顔を埋め、温もりと匂いに抱かれて酷く安堵し、同時に安心した為か、涙が溢れ出て止まらなかった。
この人になら、あたしは――
指揮官に頭を撫でられ、数十分後には落ち着きを取り戻していた。
しばらくすると周囲が少しずつ賑やかに。
見回せば、覚えのある顔ぶれが。これまででM870が出くわし、時には脅かされたり困惑したりした錚々たる面々だ。
何故か馬車のような車輪を片手に持ち、金色で雑に塗装されたカラーコーンを被っていて表情が分からない者を除けば、皆申し訳なさそうな表情を浮かべている。
聞けば皆、M870がグリフィンに配属されたことを知ったのは、各々で騒ぎが沸き起こった後のことの様だ。
彼女たちからすれば、M870は大分怪しい人物に見えてしまっていた様で、正直気が気でいなかったらしい。それもその筈、M870は恐怖に苛まれて錯乱状態にあったとはいえ、要所で取った彼女の行動が結果的に、各所で騒ぎを引き起こすことと相成ったのだ。
M870の配属は本当に急な事態ではあったもの、通達の遅れによっても生じたこれらのトラブルに関しては指揮官が重々謝罪を重ね、
後日、規模を大きくしての歓迎会が取り決められることになった。
M870を取り巻く周囲はこう言った。
皆笑顔だった。嫌な笑顔なんて一つたりともない。
なんだかこんなにも、温かい気持ちにさせられたのは初めてかもしれない。
驚きと嬉しさの混ざった表情を浮かべ、目を真ん丸に見開いたM870が指揮官の方に向き直った。
続いて彼も、こう言ってくれた。
「ようこそ。グリフィンへ」
ああ、ようやくあたしに居場所が出来た――
ねぇ指揮官。
あたしは貴方と一緒なら、いつでも何処へでも。
なんなりと。
~あくる日~
「そ、それで……M16A1……さん 話って何?」
「そうだな、手短にいこう」
「……時にM870、指揮官のことは好きか?」
「!? 当たり前じゃないの!」ガタッ
「…………」
「……… ! あ、いや、その……」ストン
「ふぅん」ニィ
「えっと……」モニョモニョ
「いいさいいさ。じゃあな」ヒラヒラ
「へ、話は?」
「終わりさ」
「え」
「ようこそ。グリフィンへ」