これは三話連続投稿の後編です。
もしも前編、中編を読んでいないまま間違えてここに飛んできた方は前編あるいは中編への移動をよろしくお願いいたします。
いつから間違えてしまったのだろうか。
修学旅行の時か、専用機限定タッグマッチの時か、福音戦か、VTシステムで暴走したラウラとの戦いの時か、クラス対抗戦の時か、クラス代表決定戦の時かそれとも……入学初日、
(どうでもいい……)
いや、そんな
少年──須藤成志は己の中に雀の涙ほどはあっただろう良心から生じる反省の念からも目を背け、まどろみに身を任せる。
彼は今何もない殺風景な部屋で椅子に座っている。しかしその頭には不可思議なヘルメットが被せられ、手もたれに乗せられた手や、床に置かれた足は手枷や足枷で固定されている。大きく開かれた口にはチューブの付いたマスクのようなものが取り付けられており、さらに両腕を始め身体中に所狭しと様々な管が取り付けられている。そして彼の股間にも、その肉棒を覆うようなカバーとそれに接続されたチューブが伸びていた。
控えめに言っても彼の置かれている状況は異常。しかしそれを見守る白衣姿の男性達は何の疑問も抱いていないかのように、頑丈な窓ガラスがその部屋と隔てている、無数の機械類が置かれた研究室のような部屋でそれを眺めていた。
「にしても、こいつも憐れッスねぇ。世界で唯一の男性IS操縦者、世界中が大注目の人間。それが今やこんな文字通り日も当たらない所に幽閉されて」
「ハッ、違いないな」
パソコンを注視して画面に表示される様々なデータを確認しながら、白衣の男性が軽い口調でそう呟くと、その後ろに立つもう一人の白衣の男性が、嘲るような笑みを浮かべて鼻で笑いながらコーヒーを一口飲んだ。
「俺らは報告書を読んだだけッスけど。入学してからクラス内でISの模擬戦をする事になって、別のクラスの女子がコーチ役を買って出たらそいつにセクハラ三昧。しかもその子が養子とはいえあのデュノア社の社長令嬢にも等しい立場ってことで社長夫人がご立腹。それに留まらず色々やらかしてるっぽいッスねぇ」
「それで最後はまるで錯乱でもしたように、
「こんなの放っときゃ国際問題間違いなしッスからねぇ……」
報告書によるとISが世界に広まると同時に台頭し始めた女性の権利団体が、成志がIS学園内で起こすセクハラ問題を理由に彼を攻撃。さらに他国も自国民がセクハラされたという事から身柄の引き渡しを要求し始め、庇い切れなくなった日本はさりとて「世界で唯一ISを動かせる男」を手放すのを惜しがって強制的にIS学園から日本直属の研究機関へと送り込んだのだ。
その頃には何故だか成志は正気を失ったように錯乱、織斑千冬の妹──織斑壱花に性暴行を働こうとして返り討ちにあったのをきっかけに自発的に動く事すらなくなり、何か訳の分からない事をブツブツと呟き続ける人形同然となったため処置は難しくなかった。
「ハーレムだとか邪神だとかしゅじんこうほせーだとかいせかいてんせーだとか、なんか訳分かんねえッスね」
報告書の内容を思い出しながら、軽い口調で白衣の男性の一人が呟く。その時アラームがピピピと音を鳴らした。
「おっとと、検体の性的興奮を感知っと」
「んじゃいつも通りやっとけ」
「了解ッス」
白衣の男性がキーボードをタタタンッと叩くと、機械が稼働開始。成志の身体中に付けられたケーブルから何かの液体が彼に注入されていく。
「お、おぉ……ぉぉぉぉぉ」
成志が呻き声を上げる。ビクビクと身体を震わせ、ヘルメットで隠していない口が開くとだらしなく舌が伸びた。同時にパソコンのモニターが何かを報告するように一つのデータを表示する。
「興奮剤投与完了、あとは自動的に射精を待つのみ……それにしても今日だけでもう五回目ッスよ、いくらイイ夢見てるとはいえ性欲旺盛、絶倫とはこの事ッスかねぇ」
白衣の男性がパソコンのモニターを確認した後、ぼやく。
今成志が被っているヘルメット、あれは対象の脳内に干渉して対象の意識をバーチャル空間に送り、そこで対象の望む映像をまるで夢のような形で体験させるVR装置。要するにこれで成志に淫夢のような映像を見せるだけではなく実際に体験させる事で彼のリアルでの興奮と射精を促しているわけだ。
やがて股間の機械が稼働するポンプ音が聞こえ、少し置いて成志の「ォォゥッ」という呻き声と共に股間に接続された機械から延びるチューブに白い液体──精液が流れていく。
「うし。検体の遺伝子情報確保ッス。こんな訳分かんねえ奴をお外で遊ばせるより、こいつの遺伝子情報抜き取って、IS使える男の秘密を暴いてそれを量産する方が手っ取り早いッスからね」
「ご苦労」
「ウィーッス。それにしてもまあ、ハーレムッスか……」
ここでの仕事は終わり、そう言うように立ち上がった白衣の男は、我先にと足早に出ていったもう一人の男性を見送った後、成志を見て口元を歪め嘲笑う。
「ある意味その夢は叶ってるかもッスよ」
ここでの彼らの仕事は
この女尊男卑の世の中、己の優位性が無くなる事を恐れる一部女性による過激な反発活動が起きることは分かり切っているため表立ったものではない。自分達のような倫理観など捨て去った
「ただ真面目に遺伝子情報を検査するだけで終わるはずがない。試験官ベビー、クローン、その他諸々。あんたの遺伝子は今現在、様々な手段で新たな生命の誕生に使われていく」
新たな生命の誕生。それは本来あるべき祝福されるものではない、ただ狂った研究に浪費される部品が生産されるようなもの。
しかもそれは日本だけでは留まらない。どこかの国のスパイや内通者にテロリスト、または金に目が眩んだ関係者が彼の遺伝子情報や精液を外国に横流ししている事さえある。そしてそこでもそんな非合法な研究は行われている。
「つまり、世界中で数え切れないほどの鉄の女を孕ませてるってわけ。ハーレム達成おめでとうッス、少年」
白衣の男は皮肉気にそう言い残し、誰もいなくなった研究室を後にする。
須藤成志は現実から逃げ、幻想に浸り、生かされず、されど殺されず、ただ
そんな中、人工的に作られているとはいえ、己の望む夢を見続ける彼の顔は幸せそうなものだった。
「はぁ~あ……つまんないの」
空中に投影したモニター越しに成志をどこかから見守る紫ロングヘアに白いレオタードに黒コートの女性。成志をあの世界に送り込んだ邪神ニャルラトホテプは、人生が詰んだ状態に等しい成志を見てつまらなそうに頬杖をついてため息を漏らした。
「あのおもちゃはもうダメですね。次のおもちゃを探さなきゃ」
ニャルラトホテプはそう言うと、遊び飽きたおもちゃを投げ捨てるように、成志が映っているモニターを何の感慨もなく消去する。
「……」
ふと、ニャルラトホテプが
じぃっとこちらを見つめるニャルラトホテプはやがて悪戯っぽいしたり顔を見せると、人差し指を立てて自分の口元へと持っていった。
「内緒ですよ?」
しぃっと物事を秘密にさせる時のジェスチャーをこちらに送りながら、ニャルラトホテプの紅色の瞳がこちらを見つめ続けていた。
思いついたからやってみた。(ゲス顔)
もしも成志が自分の思い通りのチートISを手に入れてクラス代表決定戦で壱花達を倒したのを始めとしたなんやかんやでIS学園を自分のハーレムにして酒池肉林の日々を繰り広げる中の一日のIF……。
と見せかけてその全ては主人公補正が消えた事で全てが上手くいかなくなったと発狂し精神崩壊した彼が見ている夢だったオチです。(黒笑み)
え?あ、はい。もしもの物語とは言いましたよ?でも、そのもしもがグッドエンドの物語だなんて誰が言いました?ただでさえ現状バッドエンドに向かいそうな物語の、ワーストエンド方向のもしもの物語だったというだけですよ?(ひねくれ者)
まあそんなわけで彼の物語はここで終了。多分これの続きは流石にないと思います。やるとしたら世界観一新した新作書きます……書くとしたらね?期待しないでくださいね?(汗)
では今回はこの辺で。ご意見ご指摘ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。