※この作品はR-18です。

鬼滅の刃 小話〔完結〕   作:のねむ

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悲恋がテーマの今作。

しの→(←)炭←カナです。

どうぞお納めください。
まだニワカですので、おかしな箇所あれば訂正しますので、ご連絡くださいませ。

※ラスト変えました。

しのぶ死亡時にその知らせを聞いていたのがわかったので、それに伴った内容に変えてます。



届かぬ淡い恋慕 ~悲恋~

(髪飾り……しのぶ姉さんの、髪、飾り……)

 

――左目が見えない中、カナヲは必死になって手を伸ばす。

 

 童磨は胡蝶しのぶの命がけの助力もあり討伐。だが休むわけにはいかない。身体の痛みも酷く、疲労困憊の状態であっても、それを探す――否、探さなくてはいけない。なぜなら、それが彼女の―胡蝶しのぶの遺言でもあったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――決戦前

 

 カナヲはしのぶしかいないこの部屋で彼女から、童磨を倒す策を告げられていた。この日の為に、しのぶは身体に蓄積させた藤の花の毒が巡っている。それを喰わせることで鬼を弱体化させ、首を刎ねるというもの。カナヲはその作戦を内心酷く嫌がっていた。

 

 その作戦はしのぶが死ぬことが前提となる話だ。ならば戦う人数を増やして戦えば……だが、戦いは苛烈を極める。そんな甘い考えは捨て、確実性を求めなくてはならない。

 

(嫌だ……、嫌だ……)

 

 身体が震える。目の前の人を失う恐怖が、身体を覆う。家族の死が前提となる作戦など、到底受け入れられるはずもない。だが泣き言は言っていられない。彼女はこの日の為に今まで準備をしてきたのだ、しのぶの意志を変えることはできない。それでもカナヲは願わずにはいられなかった。あわよくば、あわよくばしのぶが生きて帰れることを、そんな都合のいい話になることを。

 

「それでもし……私が死んだとき、この髪飾りが残っていれば、炭治郎君に渡してください」

「ぇ――?」

 

 その蝶の髪飾りを撫でつつ、しのぶは穏やかな笑みと言葉で唐突にカナヲにそう告げた。

 

「ど、どうして、ですか?」

「もしこれが残れば、私の形見として残れば、是非炭治郎君に持っていて欲しいんです」

 

 慈愛と悲しさを含ませたその笑みに、カナヲは察せられた。付き合いの長い自分でなく、この屋敷の住人でもなく、竈門炭治郎に渡そうとするのか。その理由に行き当たり、カナヲはゆっくりと言葉を紡ぎ出した。

 

「師範……、しのぶ姉さんは、炭治郎の事を……」

「ええ、カナヲの思っているとおりです」

 

 言葉をすべて言い切る前に、しのぶはカナヲが言うであろう言葉を予測し、遮った。その答え、それは『胡蝶しのぶは竈門炭治郎を好いている』ということ。だが、彼女が彼と恋仲という話は聞いたことがない。それこそ一緒に出掛けているところなどロクに見ていないのだ。精々ばったり会ったというところ程度。であれば、

 

「その、ことは炭治郎は知っているのですか……?」

「いいえ、彼は知りませんよ」

 

 当の本人である炭治郎はしのぶに好かれているとは思っていないだろう。あれはあれで異性には疎いというか、鈍いタチ。例え好きだと伝えても、それが恋慕とは捉えてもらえない可能性もある。

 

「言わない、のですか? 炭治郎に」

「言いません、……()()()()()()。この想いを告げるのは」

「っ……!」

 

 しのぶは最初から告げるつもりはなかったのだ。自身の命の使いどころを決めている以上、待っているのは死に別れ。想いを告げるだけでもいいだろう。そして彼と結ばれれば、それはこの上なく喜ばしいことだろう。

 

 だが想いを告げてしまえば、それが足枷にもなりうる。彼の判断を鈍らせることにもなりかねない。想いを告げた結果によっては、これから死のうとしているのに自分は生を願ってしまう。復讐に生きてきたのに、それを否定してしまう。

 

「私は復讐の為に命を散らすでしょう。炭治郎君には、余計な事に気を使わせたくはありません」

「で、ですが……」

()()()()()()()()? 彼のこと」

「っ!」

 

 カナヲの心臓がドキリと跳ねる。未だに明かしたことのない想い。誰にも、ましてや彼にも告げたことのない、隠し続けている感情。なぜそれを知っているのか? 

 

「『なぜ知ってるの?』という顔ですね。わかりますよ、同じ人を好きになった者同士ですし、第一今までどれくらい一緒にいたと思ってるのですか?」

 

 しのぶとカナヲの付き合いは長い。血の繋がりはないが、それでも家族のような間柄。その絆は強固で、決して切れることはない。まだ自身が今よりも幼い時から自分を見てきた彼女だからこそわかったことだ。

 

「しのぶ姉さんに、隠し事はできませんね……」

 

 『栗花落カナヲは竈門炭治郎へ恋心を抱いている』そのことを自分自身、自覚していた。しかし初めて湧き上がるその感情を、どう表現していいのか、どう言葉に出していいのかがわからず。未だに想いは告げられぬままだ。

 

「当たり前です。そもそも私が本気を出していたら、カナヲに入り込む余地はありませんでしたよ」

「え――?」

「本気を出していたら、私はもう人の妻になってます」

「そ、そんなにっ!?」

 

 い、いや……ま、まさかそんな……。さ、流石に例え師範でも、しのぶ姉さんでもまさかそんなに早く……。

 

「毎夜カナヲの隣の部屋から情事の声が聞こえてきますよ。それでもよかったのですか?」

 

 想像する。炭治郎としのぶが恋仲になったとする。すると自分が寝ようとすると、毎晩隣の部屋から片思いの相手と師が濡れ場を繰り広げているのだ。漏れてくる聞いたことのない師の声色、彼の声。愛の言葉。音。それで眠れずにそれを聞き続けることになる。

 

 

――あぁ……炭治郎君っ、そんなっ、はげしっ……!

――しのぶさんっ、しのぶさんっ……!

 

 

(拷問っ……!)

 

 はっきり言って死ねる。誰が悲しくてそんなのを聞かされ続けなければならぬというのか。部屋を移動しようにも、移動した部屋のすぐ隣に彼女達も移動して、また声を聞かせてくるという新手の嫌がらせを受けることになるだろう。これが恋に敗北した者の末路か。そんなことになれば家出してる。

 

「ほら、よかったでしょう?」

「い、いや、……そ、そんなことは……」

「――と、冗談はそれくらいにして。私はこの道を進むと決めたときからもう、諦めてますし、しないと決めてました」

 

 誰かを好きなっても想いを告げられない、告げるわけにはいかない。それ以前に身体になじませた毒で、子供すら産めない身体になっているかも知れない。自身の幸せを手放してまで突き進んだ道。今更拾うことなどできない。

 

「だから――炭治郎君の事はカナヲに任せます。彼は非常に好かれますから敵は多いですよ? 私が身を引くのですから、必ず射止めなさい」

「……っ! は、はいっ……!」

 

 それはもう一つの遺言。妹の幸せを願う姉としての言葉。その言葉に胸が、目柱が熱くなってくのがわかった。だから――だからいつか、この想いを彼に伝えるんだ――

 

 

 

 

 

 

「あ、でも……私の想いを知って、私に操を立ててしまう可能性もありますね。そうなってしまったらカナヲに勝ち目なんてありませんでした」

「ちょっ、あのっ、えっとっ……応援しているのですかっ? 蹴落とそうとしているんですかっ?」

「両方です」

「両方っ!?」

「ふふ……冗談ですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……)

 

 カナヲが退席した部屋でしのぶは彼への想いを馳せた。いつしか彼に惹かれている自分がいた。彼と一緒にいるアオイやカナヲに嫉妬したこともある。今でも彼のことを思うだけで、心が熱くなる。しかしそこまでだ。その思いは彼に届かない、届けられない。

 

 カナヲの為に身を引いた、といえば聞こえがいいかもしれない。だが実際は、自分は『幸福に生きる』という姉の遺した言葉よりも復讐を選んだのだ。彼より、姉より、復讐を取った自分――もう引き返せない。

 

――違う

 

 怖かったのだ。今までの自分を否定してしまうことを。彼に想いが届かないことを。彼と誰かが寄り添う姿を見るのを。だから自身に『いずれ死ぬから』と、『カナヲが炭治郎が好きだから』と言い訳をして逃げたのだ。だから、ひた隠しにしてきたその浅ましい想いをせめてと思って『遺品』として残す。出来るのはそれだけ。

 

(もし……もし私がこのような生き方をしていなければ……)

 

 姉が生きていれば、復讐の道を歩んでいなければ、今のような生き方をしていなければ、彼の隣にいたのは自分だっただろうか。彼に想われ、娶られ、彼との間に子をなし、人並の幸せに生きる。そんな自分に都合の良すぎる未来があっただろうか。……いや、考えてはいけない。より未練が強くなってしまう。だから、だからこれでいいんだ。

 

 例え彼が自身を思っていたという都合のいいことがあっても、彼ならば前に進んでくれるはずだ。

 

「私は……胡蝶しのぶは、竈門炭治郎を愛していました……」

 

 小さく、消えてしまうような呟きは、誰にも聞かれることなく、空に解ける。目から一筋の涙が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しのぶと話した、あの時のやり取りを思い出す。もう叶わぬ会話。もはや過去の記憶になってしまった一コマ。もう顔を見る事さえもできない。だが彼女は自身の心の中で生き続ける。大事な、大事な家族として。

 

(やりました、カナヲは、見事、討ち取りましたっ……!)

 

 彼女の遺品を握りしめる。勝利の喜びと喪失の悲しみから両の目から涙が、しのぶの想いが込められた髪飾りに零れていく。だけどまだだ、この髪飾りを彼に届けなくてはいけない。

 

――この髪飾りが残っていれば、炭治郎君に渡してください

 

「必ずっ……無事に届けますからっ……! しのぶ姉さんの想いをっ……!」

 

 脳裏に彼女が微笑む顔が過る。告げられずに、告げなかった想いを彼に届ける為に、カナヲは痛みを堪えながら歩きだした――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シノブ!! カナヲ!! 伊之助!! 三名ニヨリ!! 上弦ノ弐撃破! 撃破ァァァ!!」

 

 炭治郎と義勇の元へ、吉報が告げられた。十二鬼月、上弦の弐を倒したという事実に、喜びが湧き上がる。

 

「伊之助とカナヲはは無事なのか?」

「ナントカァァ」

 

 仲間の無事を聞き、ホッと胸を撫で下ろす。なにせ相手は強敵ばかりだ。死んでもおかしくはない。

 

(よかっ――)

 

 ふとそんな時、自身の顔のすぐ横を蝶が飛び抜けていった……ような気がした。こんなところに蝶がいるはずもない。ではその蝶は一体なんなのか。

 

(っ……!)

 

 ドクンっと心臓が一際大きな音を立てた。全身を強烈な悪寒が包み込む。瞳が動揺で激しく震え、呼吸が乱れる。悲しみが込み上げ、涙腺が緩む。

 

「大丈夫か?」

「え、えぇ……、だ、大丈夫っ、です……」

 

 心を落ち着かせてどうにか言葉を返す。彼女は、胡蝶しのぶはもういない。彼女は戦死を遂げたのだ。しかしその事実を受け入れろという理性と、受け入れないという本能がせめぎ合っていた。

 

(しのぶ、さん……俺は……っ!)

 

 色んな感情が混ざり合う。後悔、悲しみ、喪失感――それらが一騎に押し寄せてくる。

 

(……)

 

 平静を取り戻し、今一度彼女のこと――胡蝶しのぶの事を思い返す。

 

 彼女と話をするときは鼓動が誰よりも早くなる。彼女と離れるときは後ろ髪を引かれるような感覚に囚われる。ふと彼女のコトを考えてしまうことがここ最近増えてきている。彼女が自分以外の男といると胸がチクリと痛む。きっと何かの病気か何かなのだろう、しかし体調面では何の異常もない。

 

 いつかこのことを彼女に聞いてみようと。彼女ならば答えを知っているかもしれない。今は忙しいから、戦いが終わったときにでも聞いてみようと思っていた。しかし、その機会は未来永劫訪れない。その強く焦がれる思いが何なのか、と。

 

――炭治郎はその思いが恋慕だということに気づかないまま、思いを伝えることは叶うことはなくなったのである




「ここで大正コソコソ噂話――」







「オリジナル設定としてしのぶは蟲の呼吸以外に花の呼吸が、アオイも適正ではなので威力は低いですが一応水・花の呼吸が使えます。カナヲは花の呼吸のみです」
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