「こほっ……! ごほっ、けほっ」
――とある日の事
夜の蝶屋敷で一人胡蝶しのぶは身体の不調を感じ取っていた。ここ数日前から突然始まった身体の異常。まだ周囲にバレてはいないものの、このまま悪化すれば流石に気付かれてしまうだろう。
(なんなの……? 今更藤の花の毒の拒絶反応が出るなんて出るはずがないのに……)
藤の花の毒を服用してから大分経つ。初期の頃こそ毒の所為で体調を崩すことはあれど、今頃になっていきなり体調を崩すなんて考えにくい。なによりこの感じは病や毒の症状とは異なる……、それに思い当たる節など……。
――しのぶさん……俺……
(っ……!)
頭を過るのは、数か月前に密に一夜を共にした日のコト。復讐に生きる中に芽生えた、微かな恋慕。それを浅ましく、一夜だけでもいいからと願った己が彼――竈門炭治郎を誘い、過ごした熱い交わり。それが呼び起こされる。
あの一夜限りの関係から数か月。そして現在の自身の身体の異常――それが導き出す答えは、
(っ……! まさか……)
それは一つの可能性だ。藤の花の毒は『避妊薬』としても使われる……、だから
◇
「ただいま~……」
「あ、炭治郎さん! お帰りなさいっ。お疲れさまでしたっ」
鬼の討伐を終え、蝶屋敷へと戻って来た炭治郎。疲れ気味の彼を、ちょうど玄関の掃除をしていたきよが彼を労う。見たところ、大した怪我もなかったようだ。
「今、お茶をいれますね」
「あ、そうだきよちゃん。しのぶさんはいるかな?」
「……しのぶ様は只今外出してまして……いつ戻るかは……」
しのぶの所在を聞いたところ、どうやら不在のようだ。……そっか、と炭治郎はほぅ……と息を吐く。
「何かありましたか?」
「あ、ううん。柱だし、忙しいよね……。ごめん」
柱も要請があれば、鬼の討伐に出向かなくてはならない。それは医学に通じているしのぶも例外ではない。それに、例えここにいたとしても傷を負った隊士らの対応に追われていた可能性だってある。
(しのぶさん……あの夜から一度も会えてないな……)
炭治郎の脳裏に過るはしのぶと共に過ごした熱い夜のこと。柱と隊士という関係から、男と女の関係になった一夜限りの逢引。今でもあの夜を思い出す度に顔が熱くなる。彼女の体温も、唇の柔らかさも、女の身体の気持ちよさも、すべて昨日の出来事のように思い出せてしまう。
しかし炭治郎はわからなかった。しのぶがなぜそのようなことをしたのか、何故自分を誘ったのか。それが一切わからない。だから……一度彼女と話しがしたかった。そして――
(できれば……一人の女性として思っていることを伝えたい……)
――自身の思いを伝えたかった。何を隠そう、炭治郎はしのぶに恋愛感情を抱いていたのだ。彼とて年頃の男の子。近頃どこぞの誰かと同様に思春期に突入した炭治郎少年。自身よりも年上であるしのぶは、彼の目にとても魅力的に映ったのだろう。
「あの……炭治郎さん」
「ひゃいっ!?」
過去の記憶を回想している中、掛けられた声に思わず変な声が出た。きよはキョロキョロと周囲を見回すと、コソコソと炭治郎に耳打ちする。
「本当は口止めされているんですけど……実はしのぶ様は――」
「……」
薬味を自室で飲んでいたしのぶは一人、静かに自室に籠っていた。
(もし……私の中に
ふぅ、と深い息を吐きつつ、ぼんやりとそう思う。まるで他人事のように感じられた。ここ最近の体調不調……その特徴と症状からしのぶは自身が『妊娠している』と判断したのだ。なにより彼の子を孕んだことに心当たりもある。
(……考える必要はない。どうなろうと、私の身体は鬼に……そうすれば胎児共々……)
自身の復讐の為に今まで培ってきたコトを考えると、自分の未来はわかりきっている。この毒に塗れた肉体を鬼に喰らわせるという手段を取る以上、己に宿った新しい生命は諸共同じ運命を辿るのはあきらか。この世に生れ落ちることなく、その生を終えることになるのだ。
この子を産んでから……なんて考えられない。どんな影響が出るかもわからないうえ、この子は生まれてすぐ母親を亡くすことになる。そんなこと、できない。
――あなたは普通の女の子の幸せを手に入れて、生きてほしいのよ
姉が死に際に自身に伝えた遺言と彼の顔が脳裏を過った。姉の願いよりも復讐を選んだ、幸福を諦め、復讐を遂げることを悲願とした自分。今更幸せを取ろうなんて……。
なぜあんな事をしてしまったのだろうか。そんな考えが頭の中で渦巻く。実際、しのぶは炭治郎に恋慕の情を抱いていた。だが自身の行く末故に思いを告げぬと、このまま思いを抱いて逝くのだとそう決めていたのに。気が付けば彼を夜伽に誘い、関係を持ってしまっていた。
「っ……!」
眩暈がして思わずしのぶは倒れ込む。気分が悪い。嘔吐感がする。
(どうすれば……いいの? 私は……姉さん私は……どうすれば……)
答えを見いだせない。混濁しそうな意識の中、姉に助けを求めるも彼女はこの世にいない。しのぶに答えを告げる者はいないのだ。
――あの……実はしのぶ様、ここ最近体調が芳しくないみたいなんです。誰とも会わないように部屋で養生されてて……。心配しなくていいから誰にも言わないようにって……
きよの言葉が何度も頭の中で再生される。彼女がそんな状態とは露と知らなかった。心配になった炭治郎は早足でしのぶの部屋へと向かう。自身が行ったところで何かが変わるとは思えない。何かが出来るとは思わない。それでも……
しのぶの部屋に前にやってきた炭治郎は、恐る恐る声をかけた。
「し、しのぶさん……っ」
(っ……!?)
障子の向こう側から聞こえてきた声に、しのぶの心臓が跳ねた。なぜ彼がここに自分の部屋に来ているのか。いくつか予想はつくが、まさかこのタイミングで……。
「あ、あの……御身体、大丈夫ですか? 話……聞きました。俺、居ても立っても居られなくて……」
(なるほど、そういう、ことですか……)
大方、アオイやきよ達が彼へ話してしまったのだろう。自分を気遣ってくれたのだろうが、今この状況では余計なお節介でしかない。
「しのぶさん……御傍にいっても、よろしいですか?」
彼の申し出に感情が高ぶる。目柱が熱くなる。だが、ここで彼に縋りついてはいけない。機会はあの一度だけ。二度目はしないと、自分を戒めたはずだ。これ以上彼の優しさに甘えては、つけ込むのは駄目だ。疲弊している精神をどうにか奮い起こす。ここで拒絶の言葉を口にしなければ。
「――迷惑です、炭治郎くん。帰ってください」
「……!」
彼へ助けを求めようとする自分を押し殺し、浅ましい女の部分を抑え込む。ここで彼を追い返さなくては、また自分は彼を求めてしまいかねない。
「身体の方は問題ありません。自分の身体のことは自分でわかります」
「……しのぶさん」
「……ここに何をしに来たのですか? 君にはやらなければならないことがあるはずです。ここで私の傍にいて何が出来るというのですか?」
心の中のもう一人の自分が悲鳴を上げる。彼に心配をかけさせている自分への非難を叫び、涙を流して彼に謝罪を叫ぶ自分がいる。だが駄目だ、ここで彼に縋っては……。
「……もしこの前のことで責任を感じているのなら気にしないでください。余計なお世話です」
(……? この匂い……?)
彼女からの拒絶の言葉に、炭治郎は項垂れる。が、そこで炭治郎はしのぶから嘘の匂いを嗅ぎ取った。障子を隔てている為にわかりにくいが、何かの薬の匂いもしてくる。もし彼女が嘘をついているのなら、どうしてここまで突き放すような言葉を投げかけてくるのか。その理由が炭治郎にはわからなかった。
「あれくらいで……はぁっ、はぁ、特別だと、思ったりしま、せん……から。はぁ……舞い上がらない、で……はぁ、ぅっ……」
ドサッ
「っ! しのぶさんっ!」
しのぶの荒い呼吸、そして何かが倒れる音がし、炭治郎は思わず障子を開ける。そこには畳に倒れるしのぶの姿。炭治郎はすぐさま彼女へと駆け寄る。
「だ、大丈夫ですかっ!?」
「うっ……はぁっ、はぁ……」
(……この感じ……どこかで……?)
気持ち悪そうに掌を口に当て抑える彼女。顔色もよくない。そんな彼女に以前見たことのある光景が記憶の奥底から蘇った。それは以前、母がしのぶと同じ状態になり、数日後自分たちの姉弟がいるとわかって喜んだ時の事。しのぶもあの時の母と同じということ、そして思い当たる節もある。まさか……まさか彼女は……!?
いや、それを考えるのは後だ。今は彼女を少しでも楽な状態にしなければ。
「……しのぶさん、首元、失礼します。それと、胴締めも、緩めますね」
断りを入れ、しのぶを抱えると首元の着衣と腰のベルトを緩めていく。先ほどの状態に比べれば、少しは楽になったはずだ。
「……はぁ、はぁ……」
(ごめん、なさい……炭治郎、くん……)
意識が薄れゆく中、彼への謝罪を心中で告げながら、しのぶは意識を闇に落とした――
◇
しのぶが倒れたことはすぐさま蝶屋敷中に広まった。炭治郎は直ちにアオイたちを呼ばれ、しのぶの対応をしたアオイは彼女の状況が思わしくないことを再認識し、事の重大さに気づく。しのぶの指示とは言え、これ以上無理をしようとする彼女を気にしない、なんてできない。
「もうこれ以上しのぶ様を放ってはおけません……っ! しのぶ様の命令に反しても医者を呼びます! それで見てもらって――」
まだ誰もしのぶの症状を把握していない。しかし、炭治郎はある仮設へと辿り着いていた。もしかしたら彼女は――
「あの……アオイさん。もしかしたら……しのぶさん、ご懐妊……かもしれません」
「――え?」
懐妊――つまり、しのぶは妊娠している、という可能性に炭治郎は行きついた。彼女の体調は過去に見た母と同じ。そしてその理由も自分がよくわかっている。
「俺、下の兄弟が多かったから……母が今のしのぶさんと同じように倒れるのを何度か見てて、それで……」
「ちょっ、ちょっと待ってくださいっ! ま、まさかそんなっ……!? え、でも急に言われても……根拠だって……。だ、第一相手は誰なんですか!?」
しのぶに浮いた話は一切なかった。誰かと恋仲――というより仲が良さそうなのは同性の甘露寺や女性の隊士くらいしか見たことがない。異性なんてもっての他だ。仮にしのぶが妊娠していたとはいえ、アオイにその相手が誰なのか見当がつかなかった。もしかしたら、炭治郎は知って――
「あ、あの……す、すみません……」
顔を赤らめ、恥ずかしそうに視線を逸らす炭治郎。そんな彼の様子を見て、アオイはワナワナと震えだした。え? 嘘? まさか? そんな? どうして?
「え……ええええええぇぇぇぇぇっっっ!?!?!?!?」
「……しのぶさん、俺です。炭治郎です……入ります」
しのぶが運ばれた病室に入ると、上体を起こしていた彼女が炭治郎へ視線を向ける。少し横になったからか、症状が軽くなったのだろうか。
「起きてたんですね。騒がしくさせちゃいましたか?」
アオイが驚きの声を上げるのも仕方ない。ポッと出の自分とまさかしのぶが、そういう関係にあったなんて夢にも思っていなかったはずだ。……にしても先ほどは声を上げすぎではなかっただろうか。
「あの……しのぶさん。もしかして体調不良の理由って……」
「……」
しのぶは炭治郎から視線を外し、沈黙する。沈黙は肯定の意――弁解も否定も言わない。炭治郎の言葉に、シーツの上にある手を握りしめたということは、自身の予測は『当たっていた』ということだ。
「やっぱり……ご自身で気付いていたんですね。……すみません、一人で悩ませてしまって……」
恐らく、彼女が自分の身体の異変に気付いた時、酷く悩んだはずだ。それに気づけなかった自分が申し訳ない。でも、まさか彼女がそんな状態になっているとは、炭治郎自身夢にも思わなかった。
「っ……俺、責任、取ります……」
「……」
彼女を妊娠させたのは自分だ。時期もちょうど当てはまる。何より彼女の初めての相手は他ならぬ自分だ。彼女が異性に易々と抱かれるようなふしだらな女ではないことくらいわかっている。
「いや、責任とかそういう義務とかじゃなくて、お、俺はっ――」
だが炭治郎は『孕ませた以上責任を持たねばならない』という、男側の義務感に囚われたくなかった。あの時、彼女を『孕ませたい』という気持ちが全く無かったか、と問われれば首を横に振るだろう。誘ったのはしのぶだが、それに乗ったのは自分。こういう結果になることも少なからず考えたはず。第一、彼女からは拒否されたが、処女を奪った時点で炭治郎は責任を取るつもりでいた。
なぜなら、炭治郎は以前からしのぶのことを――
「俺は……前からしのぶさんを――」
「……っ! 何も……何も知らない癖に簡単に言わないでっ!」
「っ……!」
――しのぶの悲痛な拒絶の叫びが病室に響く。
「私には果たさなければいけない使命があるのっ! 殿方と祝言を上げて、子供を産んで……そんな幸福は望んでいないしいらない! 望まないって決めてるのっ!」
それは姉が亡くなった時に決めていたこと。姉の願う『普通の幸せ』を捨ててまで復讐を選んだのだから、そんな幸福は今更だ。第一、彼やカナヲが死ぬかもしれない戦場に赴く中、そんな温かい世界で一人暮らすなんて真似はできない。
「もうこの世に未練なんてないの……!」
そう、未練は残さないと決めていた。どうせこの毒に塗れた身体を喰らわせる以上、自身の命はそう長くはない。だからこそ、誰も好きにならないと決めていた。
それなのに――
「私はっ……姉さんの仇を討って、姉さんのところに逝きたかったのっ!」
しのぶの両眼から涙が零れる。この身体も命もとうに捨てていた。それなのに――君が私の心に住み着いてしまったから。君が私の心を奪ってしまったから。自分と同じ感情を君からも向けられているとわかってしまったから。心が生を願ってしまう。彼と共に生きたいと思ってしまう。
彼女の悲痛な思いは痛いくらいに伝わってきて、思わず炭治郎の涙腺が緩む。今までの自身が費やしてきた時間も努力も、すべてが徒労となってしまう。身を引き裂かれるようなことなのかもしれない。
「――しのぶさんには酷なことだと思います。……でも、俺は……しのぶさんが生きたいと思える理由が出来たのなら、俺は嬉しく思います」
死に急いでいたしのぶが、生きたいと思えるようになること。それは彼女に恋慕していた炭治郎にとっては嬉しいことだ。例えそれが、彼女の尊厳を踏みにじることになろうとも。彼女と永遠の別れなどしたくない。叶うことならば、もし叶うのならば、
「しのぶさん……俺の隣で、共に生きてはくれませんか?」
炭治郎の指が、しのぶの涙を拭う。今にも触れれば壊れてしまいそうな彼女を、炭治郎は支えたい。力になりたい。
「たんじっ、炭治郎、くんっ……」
嗚咽を漏らしながら、しのぶは涙を拭う彼の手に自身の手を添える。泣きたいくらい辛い、それでいて泣きたいくらい幸せ。無念と悲しみが飛来するが、今はただ……愛しい彼の手のぬくもりを感じていたかった――
◇
「そ、想像妊娠……ですか……?」
「は、はい……つ、つまり妊娠してなかったんです……」
――数日後
呼び出された部屋で、炭治郎はしのぶに事の真相を知らされた。それは『想像妊娠』――妊娠していないのにも関わらず、妊娠時の様々な兆候が見られる心身症状の一つ。妊娠を強く望む、もしくは逆に強く恐れている女性に多いという。
しのぶはまさしくそれに当てはまった。炭治郎との繋がりを欲し、他のどんな女性よりも自分が一番彼の傍にいたいという思い。妊娠して戦えなくなること、これ以上この世への未練を強くしてしまうことへの恐怖。その相反する想いに苛まれていた彼女は、その症状に陥ってしまったのである。
「ご、ごめんなさい、炭治郎君……騒がせてしまって……」
「い、いえいえっ! そんなことはっ!」
平謝りするしのぶに、彼女を宥める炭治郎。そんな二人の姿を、遠くから鎹烏がさぞかし面白そうに眺めていた。
――本当に奇跡が起きるなら、
――本当に神様がいるのなら、
――本当に……彼の隣で、幸せな家庭を築けて、心の底から笑い合えるのなら、そんな幸せな未来が訪れてほしい。
――そう願ってしまう。
――それは、なんて幸せな未来なのだろうか。
↓以下アナザーエンドです。
――その後
「妊娠してました……。女の子です」
「お、女の子……! そ、そっか……女の子、か……」
しのぶが自身の子を身籠っている。それを改めて知らされると、炭治郎は嬉しさで思う様に言葉がでない。涙腺が緩みそうになり、言葉が詰まる。
「あの……それで、炭治郎君。申し訳ないんですけど、今日柱の会議があって親方様の下に集まる予定があります。なので……炭治郎君からも説明をお願いできませんか……?」
申し訳なさそうにそう告げるしのぶ。今後は前線に出られなくなった以上、説明は必須。それを孕んだ彼女に説明させるわけには……男としてできない。説明するのはあくまで孕ませた側の自分だ。
「は、はいっ! 寧ろ俺から説明させてくださいっ! もうしのぶさんの身体は一人の身体じゃないんですから……」
「炭治郎君……ごめんなさい……」
――そして
「――それで、しのぶ……妊娠しているというのは本当かい?」
「……はい。私は今回同伴させた竈門隊士の子を身籠っています」
親方様こと産屋敷の前に揃った柱たちと炭治郎を横に、しのぶは重い口を開いた。その返答を聞いた他の柱たちの反応は様々。嬉しさを分かち合うように声を上げる者。無関心な者。悪態と苦言を漏らす者。不安そうに見つめる者。
しのぶが責められそうな雰囲気に居ても立っても居られず、炭治郎は一歩前に出た。
「お、俺からも説明をさせてくださいっ! し、しのぶさんを妊娠させてしまった俺にも責任はあります!」
(! ……炭治郎君……)
「……わかった。じゃあ炭治郎、説明してくれるかな?」
周囲の視線に晒されながら、炭治郎はゆっくりと口を開く。
「さ、三か月前っ! お、俺はしのぶさんに誘われて、一夜を共にしました――」
「――そ、それでっ! し、しのぶさんはす、すごく可愛いんですっ! 声も普段とは違って甘く蕩けてしまうような声で……。あ、あとしのぶさん、接吻が好きみたいで行為中ずっとせがんでくるんです。それが凄く可愛くてっ……! は、裸も綺麗で……白い肌が月光に照らされて、思わず見惚れちゃったくらいなんです。ほ、他には……あ、し、しのぶさんの乳房もすごく綺麗なんです。掌に収まる大きさで、ハリも弾力も強くてずっと触っていたいと思っちゃうくらいでっ……。じょ、女性器はすごく気持ちよくて……。凄い濡れやすくて、その上凄くぎゅううってしてくるし、それでいてヒダ? っていうんでしょうか。それがすごいぐにゅぐにゅぬるぬるってしてて……子宮口も柔らかくきゅうううぅぅぅってしてくるみたいなんですっ! 悶える姿も可愛いっていうか……。えと、えっと……しのぶさん、抜こうとすると脚で腰をこう……ガシってして離れないようにしてくるんです。お、俺っ……興奮しちゃって、抜かないままさ、三十回も連続で出しちゃうくらい……興奮しちゃって……! 何度出しても飽きてこないんですよ、しのぶさんの中っ! それくらい気持ちよくて……! そ、それで俺、しのぶさんが気絶するまでシちゃって……、そ、それから……それから――」
「――炭治郎、君たち二人が仲睦まじいのは大体わかったから説明はそれくらいでいいよ。それに……しのぶが可哀そうだ」
「――え?」
「~~~~~~~~!」
産屋敷に説明を遮られ、しのぶを見やると、顔を真っ赤にし涙目でぷるぷると震える彼女の姿が。そう思うのも無理ないだろう。自身と愛する者の情事を赤裸々に語られては誰だって恥ずかしくもなる。
想像してほしい。式を挙げる会場で、知り合いたちが集まる中、新郎が新婦の身体がいかに素晴らしいか。いかに気持ちよいかを力説するのだ。聞かされる側も、説明されている本人も堪ったものではない。
「なんとも派手なことしてやがる……」
「おい。蟲柱の名、色ボケの色柱に改名したほうがいいんじゃないのか?」
「新たな生命の誕生……祝福は当然……」
「胡蝶も胡蝶だが、孕ませた本人も本人だ。何か処罰を与えるべきだろう」
「駄目よ、伊黒さんっ! しのぶちゃんのお腹に赤ちゃんがいるの! 喜ばなきゃっ!」
喜びと呆れが飛び交う中、義勇が炭治郎に問いかけた。
「炭治郎――(胡蝶を孕ませて)よかったのか?」
「は、はいっ! (しのぶさんの中は)凄く気持ちよかったですっ!」
聞かれていることを勘違いしているのか、これ以上ないくらい爽やかな笑みを浮かべる炭治郎。そんな彼にしのぶの羞恥心が限界を超えた。
「それで――痛っ!? いひゃいでふしのぶしゃんっ!」
「さっきから何をぺらぺら言ってるんですか! この助平男っ!」
「胡蝶、それはお前も――」
「冨岡さんは黙っててくださいっ! どうして君は皆さんの目の前で、わ、私のことをあんなにしゃべっちゃうんですかっ!?」
「だ、だっへっ、説明しへってっ……!」
「説明するのはそこじゃありませんっ!」
頬を抓りながら、炭治郎を叱る赤面涙目のしのぶ。始まった痴話喧嘩に各々がそれぞれの反応を示す中、そんな二人のやりとりを産屋敷は見つめていた。例え目が見えなくとも、どこか微笑ましさを感じさせるそのやりとりを――