※この作品はR-18です。

鬼滅の刃 小話〔完結〕   作:のねむ

25 / 31
予定を変更し本日投稿します。

頑張ったのですが書けて約5万字……難しいなぁ

なお本作はすべてプロット(試作)作品となります。
濡れ場も『後日談』までありませんので、エロ目的の方はそこまで飛ばしてください。


原作終了後の話となります。


異形 ~恋愛~ 第壱話

「――お父さんっ! お母さんっ!」

 

――姉と共に両親の元へとしのぶは駆ける。ようやく会えた、今一度自身を抱きしめてほしい。頑張った、姉の敵を取ることが出来たのだ。無残にも鬼に殺された二人に涙が零れそうになる、が、

 

「あ、あれっ……? ね、姉さんっ!?」

 

 肩を並べる様に走っていた姉が先へと行ってしまう。驚きながらしのぶもなんとかカナエを追いかけようとするも、差は縮まるどころか徐々に開いていく一方。しかも脚がどんどん重くなっていく上に、姉だけでなく両親までもが徐々に離れていっているようにも見えた。

 

「ど、どうして……!? ね、姉さん待ってっ! 置いていかないでっ!」

 

 両親もとに辿り着いた姉に、涙ながらに叫んで懇願する。自分もそこに行きたい……けどどうしてか前に進まない、進めない。こんなにも走っているのにどうしてなのか? せっかく会えたと思ったのに。これからずっと一緒にいられると思ったのに。

 

「はぁっ……はぁ……な、なんで……?」

 

 息を切らし、汗を滲ませて疑問を漏らすしのぶ。悲しい顔をしている彼女とは反対に、両親も姉のカナエもしのぶに柔和な笑みを向けていた。

 

(どうしてそんな顔をしているの――?)

「駄目よしのぶ。しのぶはまだこっちに来ちゃ駄目」

「そうだぞ、しのぶ」

「な、なんでっ!? 私だってそっちに――」

「ううん。今こっちに来ることはお父さんもお母さんも私も許しません。だってしのぶは――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――鬼舞辻無惨が消滅し、世に平和が訪れてしばらく経ったある日のこと

 

「あぁ……もう、長話に付き合ってたら遅くなっちゃったっ」

 

 夜の道を一人の女性が小走りで進む。本来ならばもうとっくに家に着いているはずだったが、友達の長話を聞いていたらいつの間にかこんな時間になってしまっていた。早く戻らねば……明日の仕込みもしなくてはならないというのに。

 

 急ぎ薄暗い小道を進んでいる中、ふと脇道の林が目に入る。

 

「あ――」

(そうだっ、少し怖いけど近道しちゃおう……)

 

 このまま道なりに向かうより、この林を抜けた方が時間を大分短縮できる。夜遅い時間の林は少々不気味な雰囲気を漂わせているものの、もう暗闇に姿を紛れさせる鬼はいない。いても精々小動物くらいだ。お化けや妖といった類が苦手な彼女は、生唾を呑む。

 

 以前聞かされた怪談の化物が出来そうな感じがしてしまう、例え作り話だと思っていても、湧き上がる恐怖感が脚をすくませる。少々怖気づいたが、女性は林の中へと脚を進めていく。月明りが木葉の隙間から差し込む僅かな光源のみの中、暗い林の中を恐る恐る小走りで進む。生い茂る木々が、明るい日中に見せている姿と打って変わり、不気味さを醸し出す。

 

(? 誰かいる……?)

 

 小さな物音にビク付きながら進んでいる途中――ふと進行方向の先に人影が見えた。ゆらゆらと夢遊病者の如く歩くその姿、酔っ払いか何かだろうか。何処かで飲んでいてこんな時間になってしまったということならば、ありえないことではない。実際旦那も昨日は夜遅くまで飲んで帰って来たではないか。……にしてもどうしてこんなところに。

 

 ……酔っ払いに絡まれては厄介だ。ここはさっさと抜き去ってしまおう。そう思い脚を早く動かして行くと、その人影の形が見えてくる。見えた身なりと髪の毛、体形からその者は女性のようだ。だがその人物からは酒気がしない。この匂いは、なにかの花の匂いのような……?

 

(誰――?)

 

 小走りにその女影を抜き様に、振り向いて様子を伺う。その顔は――

 

 

 

 

 

 

「っ……!」

 

――縦に避けた瞳、口元に付着した鮮血、見える犬歯、伸びた爪

 

 

 

 

 

 

――その姿は以前見たことのある鬼そのものだった。

 

「ぁ、あぁぁ……きゃぁぁぁぁっっっ!!!!!」

 

 その顔を見た瞬間、女性は目を見開き、悲鳴を上げて一目散に逃げ出した。なぜ、何故鬼がいるのか。何故この場所にいるのか。いろんな疑問が次々に浮かんでくるが、それをいちいち考えている余裕はない。

 

 後ろを振り向くことなく、脚がもつれそうになりながらも、女性は一目散になって逃げだした。足がもつれそうになりながらも、息苦しくなりそうになりながらも、必死に脚を動かして、家族がいる家へと。まさか、まさか鬼がまだいたなんて、彼女自身まったく思っていなかった。彼女は家に着くや否や、家族に事情を話し、藤の花のお香を焚き、鬼の襲撃に備える。ビクビクと外の様子を伺うも、気が付いた時には夜が明けていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――え? 鬼が出た?」

「はい。信じられないことなんですけど……、昨日鬼を見たという話しがありまして……」

 

――数日後、ちょうど蝶屋敷を訪れていた炭治郎と禰豆子はアオイたちから聞かされた言葉に思わず聞き返した。曰く、近隣の村で鬼を見たのだという。

 

 だがおかしい。無惨がこの世から消えた今、この世にいた鬼はすべて消え去ったはず。いるとすれば、珠世が鬼にした()だけ。彼がどこで何をしているかは定かでないものの、そうそう一目に姿を晒すような人……もとい鬼ではない。それ以前に目撃したのは女の鬼という話だ。

 

「でも鬼はいなくなったはずじゃなかった?」

「見間違えじゃあ……」

「いえ、目撃者の証言から鬼の特徴と一致します。どうやら見間違えではないようです」

 

 アオイから聞かされた鬼だというモノの特徴は、まさしく自身たちの良く知る鬼と一致する。見間違えではない……ますます不可解で首を傾げた。……もしかしたら自力で無残の支配から抜け出せた鬼がいて、消滅しなかったということなのだろうか。あくまで可能性の話ではあるが、鬼を見たという証言があった以上、その線も考えられないわけではない。

 

「しかもその鬼からは()()()()()()がしたとか」

「藤の花の?」

 

 その時点はさらに違和感が増す。鬼にとって藤の花は苦手で近寄ることもしないはず。鬼がその匂いを漂わせているという話自体どうも信じがたい。炭治郎は少し考えた後、すっと立ち上がった。

 

「よしっ! じゃあ俺、ちょっと調べてきますよ」

「え……? お兄ちゃん?」

「い、いや、炭治郎さんにそんなことをしてもらうわけには……」

 

 アオイの言うことは最もだった。鬼殺隊は鬼舞辻無惨の消滅を期に解散、柱も隊士もそれぞれの生活に戻っている為に連絡が取れない者も多い。第一今の炭治郎の右目は機能しておらず、左腕も使い物にならない。今外出しているカナヲが戻るのを待ってから、あるいは元柱とも連絡を取って数人で向かうのが最善だ。

 

「まだ被害の話は出回っていないので、そんな急がなくても……。せ、せめてカナヲが戻ってからでも」

 

 犠牲者が出たという話はまだない。しかし運よく犠牲者が出ていないだけかもしれない、なら出る前に事は収めた方がいい。

 

「大丈夫です! 確かにあの時のようには戦えないかもしれないですけど、無理はしませんからっ!」

「お兄ちゃん、頑固だから言い出したらなかなか折れないから」

 

 いつも通りの兄に、禰豆子は思わず苦笑いしてしまう。やむなく炭治郎は先発隊として先に調査に向かい、後からカナヲや義勇に事情を説明して追いかけてもらうこととなった。五体満足とはいかないものの、戦えないほどではない。被害が出てないということは野良鬼なのかも。討伐できなくとも、最悪逃げに徹すれば問題ないはずだ。

 

 炭治郎は護身用で持ってきていた日輪刀を持ち、禰豆子に無理はしないようにと口酸っぱく言われてつつ、目撃証言のあった場所へと単身向かうこととなった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確か鬼を見たというのはここら辺のはず……」

 

 目撃者から証言を聞き、その場所を訪れた炭治郎。時刻は鬼が活動できる夜間。灯で周囲を照らしながら、鬼の痕跡を探す。日があまり射し込まないこの林は、鬼が身を隠すにはうってつけだ。ここに身を隠していても不思議ではない。

 

 炭治郎には不可解なことがあった。それは鬼がその目撃者を襲わなかったことだ。日の出の時間でもなかったその時間、目撃者を襲わない理由がない。人間よりも身体能力に長ける鬼。逃げる人間に追いつき、喰らうことなぞ雑作もないはず。

 

 満腹だった? その可能性は低い。なら被害者の報告が出ていても不思議じゃない。存在が知られることを恐れた? ならば目撃者を生かしておくわけにはいかないはずだ。すべてが謎だらけ。本当に鬼だったかどうかさえ分からない、もっと情報を集めなくては。

 

(もっと範囲を広げてみよう……)

 

 周囲を警戒しながら、炭治郎は闇夜の林を進んでいく。鬼がいるのならば、必ず何かしらの痕跡が残っているはず。それさえ見つけられれば鬼がいたという事実がわかるだろう。

 

 

 

 

 

 

(っ……! 血の匂い……!)

 

 炭治郎の鼻が血の匂いを嗅ぎつけた。遂に犠牲者が出てしまったかと思い、急ぎその場所に急行する。まだ殺さないでいてくれ、死なないでいてくれと願いながら。息を切らしてその場所に向かうとそこにあったものは――

 

 

 

 

 

 

(これは……動物の死骸? この血の匂いの元はこれだったのか……)

 

 血の匂いを辿った先にあったのは、動物の死骸であった。血の乾き具合と蠅の集り具合からして、相当の時間は経っている。この季節、この場所に熊がいるとは考えられない。他の動物が食い荒らしたというのもまずありえない。ならば本当に鬼が……? 

 

 話の信憑性が上がる。だがまだ鬼の仕業と断定するには情報が少ない。せめてこの喰い荒し犯が何者なのかを調べないと。

 

「お~い! 炭治郎~!」

「ったく、いやがったぜ。窯治郎っ!」

「? ……善逸!? 伊之助っ!?」

 

 ふと声のした方を向くと、同じく灯を持った善逸と伊之助が炭治郎の元へ歩いてきていた。しばらくぶりの友の再開に、炭治郎は嬉しそうに彼らの元に駆け寄る。というのも、善逸と伊之助は現在蝶屋敷を拠点として生活していたのだ。タイミング悪く炭治郎が来た時は出払っていたものの、話を聞いた二人は彼を心配し、追ってきたのである。

 

「久しぶりだなぁ。にしてもどうしたんだよ、二人とも」

「禰豆子ちゃんからお前が一人で鬼退治にいったって聞いてな。炭治郎を追って来たんだよ」

「ふんっ! 片腕が使えないお前は弱ぇからなっ! 俺が鬼をぶっ倒してやるぜ!」

「はは……」

 

 伊之助の言う通り、左腕が機能しない炭治郎では以前のような戦いは出来ない。失神状態でないと本領を発揮できない善逸を踏まえると、まともに戦えるのは伊之助だけだ。雑魚鬼だとは思うが、三人が揃えば鬼に金棒というものだろう。

 

「さっさと鬼の野郎をぶちのめすぞ!」

「その前に見つけるのが先だけどな」

「それ以前に本当に鬼かさえもわからないけど……」

 

 少々不謹慎ではあるが、三人で鬼退治をしていた頃に戻ったようで、皆束の間の再開を喜ぶのだった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~くそっ! どこにもいやしねぇっ!」

「まぁまぁ、鬼かどうかもまだわからないから……」

「もう朝になっちゃったよ……」

 

 それらしき姿形は見当たらず、イライラが募って癇癪を起し始めた伊之助を宥めつつ、調査を続ける。周囲をひとしきり探したところで、朝日が射し込み始めた。鬼が行動するのは夜間である以上、遭遇することは難しくなるだろう。それに、長時間歩き回ったことで脚に疲労が溜まり、腹が空腹を訴え始める。

 

「一旦休もう。どこかで宿がないか探してみるよ」

「頼むよ炭治郎~……、もうクタクタだ……」

「クソっ……! 腹が減ってきやがったぞっ……!」

 

 疲労感を叫ぶ二人に苦笑いしながら、炭治郎は先導して歩く。……今日の収穫といえば、あの食い荒らされた獣の死骸。鬼が喰らったと考えれば説明がつくが、それでも不可解な点が多い。その日は近くの村にある宿で一泊することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グガー……スカー……」

 

 宿に着いた三人は食事をとると、直ぐに床に入った。よほど疲れていたのか、伊之助はあっという間にイビキを立てて就寝中。熟睡しているのか、寝息が聞こえてくる。

 

「炭治郎……、起きてるか?」

「うん……、善逸どうした?」

「聞いたぞ、()()()()()って」

 

 主語がないその言葉。しかし炭治郎は、善逸が何を言おうとしているのかすぐに分かった。それは大戦が終わって少しした後、カナヲに好きだと告白されたのだ。好きだと言われて直に嬉しいという感情が湧いてきた。しかしそれを受け入れることがどうしてもできず、そしてそれ以上に『申し訳ない』という感情がこみ上げ、彼女の告白を断ったのである。

 

「……聞いたんだ」

「……まだ引きずってるのか」

「うん……」

 

 カナヲの告白を断った理由――それは炭治郎自身が亡くなった者への恋慕を引きずっていることだ。炭治郎はあの大戦で亡くなった『胡蝶しのぶ』に仄かな恋慕を抱いていた。生前の彼女を前にしたとき、僅かに態度が変わる。彼から聞こえる音色が変わる為に善逸にはソレを見抜かれ、揶揄われたりもしたものだ。

 

 初めての感情に炭治郎は気恥ずかしく、戸惑い、彼女に好意を中々伝えることが出来ず。そのまま大戦が始まり、しのぶは亡くなってしまった。あの時の炭治郎の塞ぎこみ具合はなかなかのもので、立ち直るのに結構時間がかかった。

 

「俺は……しのぶさんに伝えられてないんだ。だから、なのかな……。それに……こんなんじゃあカナヲにも申し訳なくて……」

 

 面と向かって告白し、断られたのなら自分の中でも整理がつく。しかし炭治郎は告白もできずに、その恋慕は宙ぶらりのまま。それを思い出にできるほど、炭治郎の精神は成熟しておらず、割り切りができない。しのぶへの想いを抱えたまま、カナヲを受け入れることは失礼だと考えた炭治郎は、彼女の想いを拒絶したのである。

 

――しのぶ姉さんが、相手……なら負けても仕方ないや

 

 訳を話し、泣きながらも無理矢理笑顔を作り、そう言ったカナヲの顔がなんとも痛々しく、どこか美しさを持ったソレが今でも脳裏に焼き付いている。もし自分がしのぶに告白し、断られていたならカナヲを受け入れていた……、次の恋に進めた……かもしれない。

 

「勿体ないことしたよなぁ……。あんないい子、そうそういるもんじゃないぞ?」

「わかってるよ……。でも……俺は……」

「……ま、そんな生き方もあっていいと俺は思うよ。一人の人を思ってそれを貫くって、それってすげぇことだって思うし」

 

 善逸の慰めに、炭治郎は悲しそうに笑った。自分とは違い、カナヲもいずれ炭治郎を思い出に出来る時がくるだろうか。いつか……自分じゃない素敵な殿方を見つけて幸せになってほしいと願うことしか、今の炭治郎にはできない。

 

(せめて……せめてしのぶさんに一言、伝えたかったなぁ……)

 

 目を閉じて浮かんでくるのは彼女の姿。死したしのぶに、今一度……ほんの僅かな時間でいい。ほんの一言、好きだと……自分の思いを伝えたかった。そのまま瞳を閉じていると、やがて湧き上がって来た睡魔に誘われるままに炭治郎は意識を闇へと沈ませていった――

 




現在改訂版を書いていますが、他の作品以上の丁寧さを追求しています。

原作上炭治郎もしのぶも互いに矢印が向いていないばかりか、
誰かにも向いていなかったので、炭治郎×しのぶをどう表現するかが課題です。

上手く表現できるか……商業作品も見て勉強せねば……

ちょっとでも良い作品にしたいので、恐縮なのですがよろしければアドバイスや感想頂ければ幸いです!


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。