――夜
蝶屋敷の皆が寝静まった頃、炭治郎は一人ベッドで休息をとっていた。普段はいる善逸と伊之助はそれぞれ彼と入れ違いに、任務に出て行ってしまい、一人きりだ。月明りが射し込む静かな夜。寝入っていた炭治郎は、ふと感じた違和感と微かな水音にふと目を覚ました。
ちゅぱ、ちゅっ、ちゅるるっ、んぽっ、んぶっ
(ん……? なに……?)
意識が未覚醒のまま、寝ぼけ眼で上体を起こす。そこに下半身部分に掛けられているシーツがこんもりと盛り上がっている。それだけではなく、上下に、時折揺れるようにそれが動く。誰かいる? しかし敵意や殺気は一切感じない。それどころか、下腹部から微弱ながらも快感が昇ってきていた。
「っ……誰っ……!?」
眠っていた意識を覚醒させた炭治郎は、シーツの下で動く物体を確認すべく、のろのろとシーツへ手を伸ばしてソレを剥ぎ取る。と、そこには――
「あ、こんばんは、炭治郎君。起こしちゃいましたか?」
――蟲柱・胡蝶しのぶが、自身の男性器に舌を這わせていた。
「えっ、えぇっ、と、しのぶ、さん……?」
「はい、私です。どうかしましたか? んっ……ちゅっ、ちゅぱっ、れろれろぉ」
突然の出来事に動揺を隠せない炭治郎。彼とは反対に、しのぶはいつもの笑みを浮かべたまま、炭治郎の男根をむしゃぶる。舌を伸ばし、幹を丹念に舐め、鈴口に口づけをし、亀頭を口に含んで口内粘膜を塗りたくっていく。そのあまりにも淫靡な光景に、炭治郎は顔を赤らめた。
「ちょっ、ちょっとなにしてるんですか!? しの、ぶ、さ……」
(あ、れ……なんだろう……? 身体が、妙に重い……。それに、なんか痺れるような……)
ふと先ほどの下半身だけではなく、身体全体を違和感を覚えた。全身が気怠く、四肢を動かすだけで痺れが奔る。身体の自由が効かない。
「なにって……炭治郎くんの大事なトコロを舐めてるんです。あぁ、身体が重いですか? 申し訳ありませんけど、炭治郎君の夕食にだけ無味無臭の薬を混ぜさせてもらいました。その所為でしょう」
「え――……? く、すり……?」
「はい。身体の自由が奪われる効果と、媚薬の効果がある薬です。実際にほら、炭治郎君のこ・れ、こんなに雄々しく猛っているでしょう?」
ちゅっと亀頭に接吻をして見せるしのぶ。彼女の言ったとおり、媚薬の影響で炭治郎の逸物は痛みを感じるほどに勃起しきっていた。同年代よりも遥かに長くて太いそれが、血管を浮き立たせ、醜悪な生殖器の姿を眼下に晒している。
何がなんだかわからなかった。この状況が、どうして彼女に薬を盛られたのか、どうして彼女が自身の生殖器を舐めているのか。
「しのぶ、さんっ……なん、で……?」
「んぶっ、んぽ、んぢゅるっ、ちゅぅぅっ……ぱっ。そんなの……んふぅ、炭治郎君を夜這いしに来たに決まってるじゃないですか」
夜這い。自身には馴染みのない単語だと思っていた。それが今、現実で目の前で行われていることに、炭治郎は動揺を隠せない。薬を盛られている次点でどうかと思うが。
「んちゅっ、ちゅるっ、ぢゅるるっ……じゅるるっ、じゅるぞろぉろろろぉ」
「っ、ぅ、あっ……!」
(きも、ち、いいっ……!)
初めて味わう口淫。しのぶの舌使いもあってか、甘美な快楽が身体に流れていく。熱い吐息が肉竿に当たり、温かい舌が這い、吸われ、扱かれる。なんとも言えない心地よい感覚が昇ってきて、抵抗できずにされるがままだ。
肉棒が更に硬くなり、より血管が浮き出る。ガッチガチに硬くなる男根にしのぶは、炭治郎が気持ち良くなってくれていることに悦に浸りながら、丹念に、入念に、情熱的に奉仕していく。なにせ
「ちゅぅぅぅっっ、ちゅぱっ、ちゅぴっ、れろぉっ、ぢゅるっ、じゅろろろぉっ、んちゅっ、ずろろろぉっ!」
「うぁっ……! しのぶ、さんっ、もうっ、出っ――あぁぁあぁっ……!」
ぶびゅぅぅぅっっっ!!! どびゅびゅっ! びゅるるるるぅぅっっぅ!!!
「むぐっ……!」
「ぅっ……ぁっ……!」
尿道を通り抜けて白濁が吹きあがり、しのぶの口内へと吐き出ていく。女性の口に、しかも顔見知りであり、かつ美人な女性に味合わされる絶頂の快楽は、なんとも甘美な味。やがて射精は収まり、緩慢な余韻が残った。ちゅぽんっと男根から唇を離し、頬を上気させたしのぶは恍惚の笑みを浮かべる。
「んっ……凄い濃厚ですね。喉に絡み付いてきますよ」
「はぁ……はぁっ……、し、しのぶさんっ……どうしてっ……」
炭治郎は問わずにいられなかった。なぜこんなことをしているのか、まったく見当がつかなかったからだ。
「……それ本気で言ってます?」
「えっ……? す、すみません……」
(なんで謝ってるんだ、俺……)
怒っている匂いを感じ、反射的に謝った。彼女がなぜ怒っているのか、自分は何かしただろうか? 記憶を辿るもまったく思いつかない。
「はぁぁぁっ~~~……。炭治郎君、夜遅くに女の人が男の人のところにきて、こうすることの意味……わかります?」
クソデカイ溜息をつかれる。なんかすごく申し訳ない気持ちになってきた。
「そんなんじゃ、炭治郎君はその内冨岡りますよ?」
(冨岡るってなに?)
「仕方ありません。察しの悪い炭治郎君に教えてあげましょう――」
「君のコトが好きだから、です」
「ぇ……? す、すき……?」
「炭治郎君って結構鈍感だったりします? 女の子がこうして誘っているんですから察してくれてもいいじゃないですか。据え膳食わぬは男の恥、というでしょう?」
「……ちょっと何言ってるかまだ理解できてないんですけど……」
そもそも炭治郎は女の子に好かれているとはこれっぽっちも思っていなかったである。実際はしのぶのみならず、カナヲやアオイ、更には純粋な親切心で人助けをした町娘たちからも好意を向けられていたことなど善逸に知られたあかつきには嫉妬で殺されかねないだろう。
「炭治郎君は、女の子とこういうことするのって初めてですね?」
「い、いや、まあ、そうです、けど……」
彼の反応からして、それは明らかだった。自身が彼の初めての女になれると思うと、興奮が止まらない。しのぶは思わず舌なめずりをした。
「やはりそうですか。では、炭治郎君の初めて……私が貰いますね」
ゆっくりと身体を起こして、寝間着を脱ぎ捨てるしのぶ。色白な彼女の裸体が射し込む月光を浴びる。その淫靡ながらも美しい女体に、炭治郎は息を飲み、目を奪われた。――なんて美しい人なのだろうか、と。
片手をそそり立つ剛直に添え、先端を膣唇に擦り付けると、小さな水音が響いた。垂れ落ちる愛液が男根を伝い落ちてく。亀頭から感じる口淫とは違った心地よさに、炭治郎は表情を歪める。
「それでは、いただきます……」
「ちょっ、し、しのぶさんっ、待っ――」
ぐちぃぃっ……!
「あぁっ……!」
「ぅぁっ……しのぶ、さっ……」
炭治郎の言葉を聞く前に、しのぶは腰を落としていった。亀頭が膣穴に埋没し、やがて肉竿まで呑み込んでいく。熱く、滑り気と強烈な締め付けが襲ってくるも、その呑みこみは
「炭治郎君、わかりますか? 今当たってるの、私の純潔の証なんですよ?」
「……!」
純潔――それは胡蝶しのぶが男を知らない処女であることの証明。これを破れば彼女は純潔を失い、処女ではなくなる。男を知った女になるのだ。そんな大事なモノを彼女は自分に捧げようとしている。しかし、それがわかったとしても、動揺で思考が追い付かない――!
ぐぐっ……ぶっちぃぃっ!
「っ……あぁぁっ……!」
「し、しのぶさんっ……!」
しのぶが一気に腰を落として、膜を破った。炭治郎の逸物を根元まで咥えきった膣穴。結合部からは赤い血が伝い流れていく。汗を滲ませて痛みを耐えるしのぶを、炭治郎は心配するも、彼女は笑みを作り彼に微笑んだ。
「これが、破瓜の痛み、ですか……。確かに痛いですけど、それと同時に嬉しさが込み上げてきます……」
自身の初めてを想い人に捧げることが出来た――その事実に心を震わせて浸る。……だが、これで終わりではない。ここからが本番なのだ。しのぶは破瓜の痛みが引く前に、ゆっくりと腰を上下に動かす。膣穴に埋没していた男根が姿を晒しては、再び膣穴へと消えていく。その度に立つ水音が、彼女の興奮の度合いを炭治郎にひしひしと伝える。
興奮するしのぶと同じく、炭治郎も酷く性的興奮を得ていた。イマイチ状況が掴めていないものの、美しい女性の身体がもたらす快感に思考が染まっていく。彼女と同じく、頬が上気し、呼吸が熱帯びて乱れ狂う。
「んっ、はぁっ、んぅ、ふぅ、ふぅ……どう、ですか、炭治郎、くんっ……!」
「なんかっ……わからないですけどっ、すごくっ、気持ちいいですっ……!」
初めて知る女の身体の心地よさ、それに炭治郎はなすすべなく翻弄され続ける。しのぶも初めてであるものの、彼を気持ちよく出来ていることに、純粋な嬉しさが込み上げる。元々膣内の感度がいいのか、それとも身体の相性がいいのか、性交で得られる快感の波は強大だった。
快楽は漣から、大津波へと変わって、思考を覆い呑み、攫って行く。性的経験の豊富な者ならば露知らず、そんなものなどない彼らが抗う術などハナからなかった。
「まっ…、離れてっ、しのぶさんっ、お、俺っ、出っ――」
「我慢しなくて、いいのですよ、炭治郎くんっ。このままっ、んはぁっ、中っ、にぃっ――!」
「で、でもっ……あぁぁっっ……!」
ぶびゅるるるるぅぅっっ!! どびゅびゅっ! びゅびゅぅぅっっ!!
「んはぁぁっっ!!」
炭治郎が絶頂へ至るのに合わせて、しのぶは根元まで肉棒を呑み込んで膣内射精を受ける。子宮内を瞬く間に満たしていく子種汁。その熱と濃さに、しのぶは自身の内に秘める女が満たされるのをひしひしと感じていた。ビクビクと互いに身体を大きく痙攣させながら、互いに絶頂の余韻に浸る。
初めての情交で互いに絶頂へと至る事が出来たことに、しのぶは至福を感じていた。身体の相性が悪く、最悪絶頂できない可能性もあったが、杞憂だったようだ。
「はぁっ、はぁっ、し、しのぶっ、さんっ、ごめんっ、なさいっ、俺っ、中、にっ……」
「ふふ……大丈夫ですよ、炭治郎君。だって――」
「――だってこれは
しのぶは妖艶にほほ笑みながら、膣内射精に激しく動揺する炭治郎を諭す。そう、これは夢。淫夢を見ただけの事。
「ぇ……? ゆ、夢……?」
「はい、夢ですっ。炭治郎君が次に目覚めた時は朝日の射し込むベッドの上。君はただ悪い夢を見ただけですよ」
「そ、そんな――、っ……!?」
(な、なんだ……? 急に眠くっ……?)
悪い夢――違う、悪い夢なんかじゃない。貴女のような女性と関係を持てたことは、決して悪い夢なんて思わない。言わない。そう否定しようとしたところで、炭治郎の意識が急に重くなってくる。先ほどまで目が冴えていたというのに。どうして――?
(そうか、しのぶさんなら睡眠薬を作ることだってできる。まさか睡眠薬も一緒に――?)
問いただそうにも強烈な睡魔に、声が出ない。徐々に瞼が重くなり、視界がぼやけていく。
(ダメだっ! 眠るなっ! まだ、まだ聞きたいことが――!)
そう思って自身を奮い立たせようとするも、意識が薄れていく。まだ眠るわけにはいかないというに、睡魔に抗うことができずに意識が闇へと落ちる。
「俺、責任――しのぶさ――」
やがて瞼が完全に閉じ、彼の意識が完全に落ちた。静かな寝息が聞こえてくる。どうやら遅行性の睡眠薬がここで効いてきたらしい。しかしちょうどいい時に効いてきたものだ。
「……炭治郎君、君が責任なんて負う必要はないんです。だってこれは夢、私と君の間には何もなかったんですから」
――第一、命の使いどころを見極めている私なんかの責任なんて。こっちから襲ったのに、関係を強要したのに、とても嬉しくて、涙が出るほど嬉しくて、そうしてほしくて、その言葉を受け入れたいのに――その言葉を聞きたくないが為に、睡眠薬など飲ませたんです。
その言葉を聞いてしまえば、私の覚悟が揺らいでしまう。死ぬ前に一度だけ、君と関係を持ちたいという浅はかな女の欲が強くなってしまうから。一度だけじゃいやだと、欲深くなってしまうから。だから――
「――ごめんなさい、炭治郎君」
◇
「――くん、――じ―う、くん」
水底の闇に落ちた意識の中に声が響く。
(だれ……?)
思い出せない。思考が定まらない。頭が回らない。
「―おきて――たんじ――ん?」
しかしその声は不快ではない。間違いなく聞いたことのある声。忘れるはずのない声、だけど思い出せない。誰の声だろうか。思い出せないことをもどかしく感じながら、意識が水面へと浮上していく。
「朝ですよ~。起きて下さ~い、炭治郎く~んっ」
「~~~……、……んんぅ……、あ、さ……?」
「っ!?」
意識が浮上し、覚醒した炭治郎は、その声を聞いてガバっと身体を起こした。声の主を確認すると、それはにこやかに笑むしのぶの姿。
「おはようございますっ」
「あ……おは、ようござ、います……」
突然のことに驚きながらも挨拶を返す。ふと彼女の顔を見た瞬間、昨夜のコトが脳裏を過った。彼女の裸、蠱惑的な声、熱を帯びた笑み、そして胡蝶しのぶという"女"の味が。それの記憶が呼び起こされ、炭治郎の頬が恥ずかしさで赤く染まる。
「……どうしました? 炭治郎君」
「へ、い、いや、なんでもないですっ」
様子を怪しんだしのぶの言葉をやんわりと返すも、彼女の淫らな姿が頭から離れない。本当にあれは夢だったというのか、それとも現実だったのではないか。それがわからない炭治郎は、彼女に問いかけずにはいられなかった。
「し、しのぶさん、昨日の夜――」
「あーっ! 炭治郎さんやっと起きたっ!」
「――っ!?」
問いかけようとしたその矢先、アオイが部屋の扉から顔を出す。彼女から漂う匂いは、怒っている匂いと呆れている匂いがした。
「中々起きないんですからっ! お疲れのところ申し訳ありませんが、顔を洗って朝食を召し上がってくださいっ!」
「うっ……すみませんっ……。しのぶさん、俺、ちょっと行ってきます」
「はい。いってらっしゃい」
怒られた炭治郎はしょぼんとしながら項垂れる。その様子をクスクスとしのぶは笑ってみていた。その普段通りな彼女の姿に、昨夜の彼女とは別人のように思えてくる。そうだ、彼女はあんなことをする人じゃない。あれは――
(あれは夢だったんだ――)
そう結論付け、炭治郎はいそいそとベッドから出てアオイに続いていく。彼らの後姿を見送りながら しのぶはそっと己の下腹部を愛おしそうに摩った。まだ、この奥で彼の熱を感じる。
(そう、夢だったんです。淡く、切ない女心が見せた泡沫の夢――)
復讐を誓いながらも、捨てきれなかった女としての欲。それを果たしたいがために見せた淫夢。これ以上は欲張れない、自分が彼を繋ぎとめるわけにはいかないのだ。自分にはもう先がないのだから。ならばまだ未来のある子にいてほしい。胸の奥がチクリと痛むも、それは戒めだ。甘んじて受ける――受けなくてはいけない。
誰もいない寝室で、しのぶは儚くも悲しい笑みを浮かべていた――