あとがきに出てくるキャラは今回初めて書くので、違和感あったら教えてください。
――ここ最近、毎晩のようにソレに魘される。
それは彼との甘く、そして熱い夜の幻視。いくら私が否定しようにも、それは否応なしに見せられて体感させられる。そしてすべてが終わった後に目が覚める、その繰り返し。
(また……あの夢……)
全身滲み出る汗がなんとも不快だ。鼓動は早鐘のように打ち、熱でも出したかのように体温は高い。まもなく夜が明けるその時間、私は目を覚ました――
――一度だけ
たった一度だけという思いから、私こと胡蝶しのぶは竈門炭治郎くんと一夜限りの関係を持った。姉の仇を討つ為にこの命を使い潰すと決めた以上、その果てに自分が死ぬことは覚悟の上。それでも――それでも私の中にある女としての部分が、未練がましく彼との関係を求めた。
一度だけでいい。密に恋い焦がれる彼と一度きりの夜を過ごしたい。そうして私は彼を誘った。どういって彼を説得したのだったか。欲求不満の解消? 新薬の開発の為? それすらももはや覚えていない。覚えているのは、彼と過ごした時間が、何にも変えられない至福のひと時だったということだけ。
初めて肌で感じた男の身体、捧げた己の純潔、子宮内に感じた熱。愛おしい殿方に愛され、疲弊しきっていた心が癒され、満たされていく女としての自分。その初めて味わう感覚に私は酔いしれた。その一度切の逢引で終わりにしよう――そう思っていたのに
「炭治郎くん、今日も……お願いできますか?」
その後も私は幾度となく彼を求めてしまった――
――今回で終わりにしよう
――次でやめよう。
――次から止めよう。
そう自分に言い聞かせて、結局止められずにズルズルと彼との関係を続けていく日々。徐々に歯止めが効かなくなっていく。行為までは及ばなくても、日が高い時間から濃密な接吻を交わすことなど日常茶飯事と化した。
何度も関係を終わらせようとした。炭治郎くんを断ち切ろうとした。しかしそれは結局すべて徒労に終わり、終いには同じことの繰り返し。私は竈門炭治郎という蜘蛛糸に絡めとられていった。しかし彼は常に屋敷にいるというわけではない。炭治郎くんも私も隊士の一人、要請があればすぐさま鬼の討伐に向かわなければいけない。
その間は彼の姿を見ることも、声を聞くことも叶わない。たかが少しの間離れるだけ。これを機に彼との関係を終わらせよう――そんな考えは、後に愚かしいまでに甘い考えだと思い知らされた。
――最初は淫夢から始まった
ほどなくして、彼との情事に溺れるという淫夢を見るようになった。熱帯夜のように熱い夜を、炭治郎くんと濃厚な時間を過ごすなんとも甘美な夢。彼に愛を呟かれ、愛撫され、施され、責め立てられ、胎内に熱を注がれる。そんな女としての幸福を毎夜のように見せられる。夢の中の私はどうあがいても、どこまでいっても所詮は"女"でしかなかった。
一番ひどかった時は、夢の中で
発狂したかのように彼への愛を叫び、嬌声を上げ続ける私。その夢もやけに現実染みていて、彼の汗の味も、体臭も、高まる体温も、抱きしめられる腕の感覚も、すべてつい先ほどまで感じていたかのような錯覚がした。
――やがて私の中の女は淫夢のみにとどまらず、遂には現実にまでそれは侵食し始めた。
彼の声を聞くだけで、視界に入るだけで、体臭を嗅ぐだけで、鼓動が早まり、下腹部が焼けるような、甘美な熱を帯びるのだ。どうにか周囲にバレないように取り繕うものの、その熱は確実に私を蝕む。藤の毒に蝕まれている私が、竈門炭治郎という毒に徐々に犯されていく。
それでもどうにか彼を求めないように耐えていると、更に彼との情事を幻覚するまでに悪化した。屋敷のあちこちで情事に耽る私と炭治郎くんの姿がどうあがいても視界に入ってくる。それは幻だ、そう言い聞かせても彼との夜を強く思い出され、身体が炭治郎くんを求め始める。外に出れば道のあちこちで私と炭治郎くんの幻が情事に耽っていた。
何十人もの私が塀に手をついて、後ろから炭治郎くんに突かれている姿。道のど真ん中で、彼に覆いかぶさられ、潮をまき散らしながらも求愛し続ける自分。何処にいても、何処へ行っても、私と炭治郎くんの幻はついて回った。何百、何千組という私と炭治郎くんが常日頃から情事に耽っている。その光景は、私の神経をゴリゴリと削り取っていった。
(っ……! 炭治郎くんっ……!)
鬼の討伐を終え、屋敷に帰って来た私を出迎えたのは、戦闘で負った傷を治療する為に休息をとっていた炭治郎くんだった。数日間の炭治郎くん断ちを強制的にさせられ、少しはマシになるかと思っていた彼への想いは、逆に際限なく膨らんで破裂寸前の状態。
もう、我慢の限界だった。復讐の為には彼に溺れていてはいけないという考えは、もはや紙ペラのように薄く、ふとしたことでも吹き飛ばされてしまいそうな虚弱なものへと成り果てる。気が付いたときには、
「炭治郎くん、お疲れのところ申し訳ないんですけど……今夜、お願いできますか?」
その日も彼の耳元で蠱惑的な声色で、夜のお誘いを呟いていた――
◇
――自室で寝間着に着替える
私は今から炭治郎くんに抱かれに行く。身体が異様なまでに火照り、口からは悩ましくも熱い吐息が漏れる。布地の裏で、乳首が痛いくらいまでに屹立している――今すぐにでも彼に弄ってほしいとでもいうように。部屋を出る際に姿見が目に入る。そこに映っていたのは、復讐に身を焦がす女ではなく、情念に狂う淫女の姿だった――
「炭治郎くん、私です。いいですか?」
部屋の扉の前で声をかけ、僅かに開いた隙間から炭治郎くんが顔を出す。その顔は夜だというのにはっきりとわかるほどに紅潮しており、呼吸も荒い。湧き上がる興奮を必死に抑えているようだった。炭治郎くんも私との情事を心待ちにしてくれていたことに、ゾクゾクと背筋が震える。
私は居ても立っても居られず、隙間から部屋の中へと身体を滑り込ませて扉を閉めた。そしてすぐさま、
「んんんっっ!! んちゅっ! んぢゅぅぅっっっ!!!」
炭治郎くんに縋り付いて彼の唇を奪った。唇をグイグイと押し付け、舌で唇と歯を開けさせて中へ伸ばす。歯肉、歯列、舌裏、歯裏、頬裏、口内を余すところなく舌を擦り付ける。彼の舌に乗っていた唾液を啜り、嚥下していく。それだけで胃の中がかぁっ……と熱くなる。堪らなくて、堪らなくて、私は身体を彼に擦り付けた。
(聞こえますか、炭治郎くん? 私の鼓動、こんなに早くなっているんです。あなただからなんですよ?)
「んぢゅっ、ぢゅちゅっ、ちゅっ、ぢゅるっ、じゅぅっ、ぶちゅぅっっ!!」
無論私だけではなく、炭治郎くんも私を掻き抱きながら、激しく舌を絡ませる。目を閉じ、全神経を舌に集中させ赤い舌を舐めかしく絡め合わせていく。ザラついた舌腹を擦り合わせ、唾液を混ぜ合い、流し合っては啜り合う。衣服なんて纏ってはいられず、互いに帯びを解き、脱ぎ落す。
飾らない、すべての殻を脱ぎ捨てた女と男が激しく抱き合って、見る者たちが思わず視線を逸らしてしまうほどの淫靡で卑猥な舌と舌の情交をし続ける。彼の吐息が伝わり、さらに私の興奮が掻き立てられていく。
「ぢゅぅぅうぅっ! ぢゅぢゅぢゅぅうううぅぅっっ!!!! ぢゅるじゅぞぞぞぉぅぅっ!!」
甘美な快楽を得ながら、私達は接吻に没頭する。唇と唇をくっ付けるだけなんて口づけとはいわない。まだ20にも満たない男女がするには酷く似つかわしくない、激しくケダモノのように貪り合うような真の口づけ。私の中の女が歓喜に打ち震える。――けど、それだけじゃ物足りない。
「ぷはぁっ! た、炭治郎くんっ、も、もう我慢できないんですっ! は、早くっ、早く挿入てっ!」
子宮の疼きに耐えられなくなった私は、寝台に横になって足を開き、膣穴を両手で広げる。膣壁を脈動させ、淫らに目の前の雄を誘う。私はこんなにも炭治郎くんのことが欲しくて堪らないんです。炭治郎くんだって私が欲しくて堪らないのに、そんな意地悪しないでっ……!
「っ……! しのぶさんっっ!!」
ぶちゅぅぅっっ!!
「んはぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!」
炭治郎くんも限界が来たのか、居ても立っても居られず、私に覆いかぶさって陰茎を躊躇うことなく突き入れた。まだ少年である炭治郎くんに似合わない、不相応な大きさの男根。最初こそ大きすぎて痛みを感じていたが、今はもう快楽だけしか感じない。
酷く大きな水音を立てて侵入していた異物を、膣壁が強烈に締め上げていく。長さも太さも一寸の狂いなく言い当てられるほどに、その形が伝わってくる。そして炭治郎くんの陰茎の形を膣ヒダで感じながら、それは私の子宮口を一気に押し上げて、一気に絶頂へと至らせた。背が弓形に反り、視界が明滅する。身体が酷く痙攣し、乳首が炭治郎くんの胸板に強く擦れ潰れ、瞬く間に二度目の絶頂を味合わせられた。
「んぎぃぃぃっっ!!」
「しのぶさんっ、締め付けが凄くてっ……あぁぁぁっ!!」
ぶびゅぅぅぅぅっっっ!!!! どびゅびゅびゅびゅぅぅっっ!!! どびゅどびゅどぷぷぅぅっっ!!
「んんぃぃぁぁあぁぁぁっっっ!!!!」
私の膣が絶頂によって激しく痙攣したことで、炭治郎くんの陰茎を強烈に刺激してしまい、彼をあっという間に絶頂へと昇らせた。大きく脈打ちながら子宮内へと流し込まれる強烈な熱と、極限にまで濃縮された精液の奔流。それによって私は挿入してから僅かの時間で三度目の絶頂へ上り詰めた。
少し会っていなかっただけでこれほどまで感じるのだろうか。いつもならこんなにあっさりとイクことはないというのに。凄まじい快感のあまり歯がカチカチなり、全身から汗が滲み出る。身体が破裂しそうなほどに熱くなって、思考をズタズタに引き裂いていく。やがて絶頂の波が引いていくと、身体を寝台に沈めた。
「っ……かはっ……はぁっ、はぅっ……はぁっ……!」
己の"女"が満たされるのを感じながら、重い息を漏らす。絶頂で脱力した炭治郎くんの身体が私にのしかかって重いけど、それがなんとも堪らなくて心地よい。
「ふぅ、ふぅ……すみません、しのぶ、さんっ……! 俺、我慢できなくてっ……!」
「はぁ、はぁ、はぁ……ふふ、構いませんっ。それほど気持ち良かったんですよね。私も、すごい気持ち良かったです」
まだ熱い身体を抱き合いながら、余韻の熱に酔いしれる。だけど、これで情事が終わったわけではありません。まだ夜は長いのですから――
「んっ! んっ! んふぅ! ふぅぅっ!」
――片足を持ち上げられ、口づけを交わしながら背面から炭治郎くんに突かれる。
久々――といっても半月も経っていないのに、お互いに酷く荒ぶっている。今回は挿入から一度も陰茎が抜かれることなく、情交は続いていた。中に出された回数は十を超えてからは数えていない。それだけ胡蝶しのぶを愛してくれたという事実が、酷い多幸感に支配される。
けど厄介なのは、炭治郎くんの精液の濃さにありました。彼のは酷く濃く、膣内に残っているのは挿送によって掻き出されるものの、子宮内に出されたモノは子宮内壁にこびり付いて一向に零れてこない。子宮の中に出されれば出されるほど、炭治郎くんの精液は沈殿し、腹部を膨らませていく。膣内にある男根だけでもすごい圧迫感だというのに。
それにこれ、まるで妊娠初期みたいな姿じゃないですか。炭治郎くんは私に予行練習でもさせるつもりなのでしょうか。皆には内緒にしているのに、このお腹見られたらどうする気なんです? 誤魔化すのすっごく大変なんですから。バレたら皆にキチンと炭治郎くんの口から説明してもらいますからね。
「んじゅっ、じゅるっ、ぢゅるる! じゅるぅっ!」
口元から飲み切れなかった唾液を垂れ落としながら、子宮口を激しく突かれる。巨大なカリと竿にボッコリと浮き出る血管が、膣壁を激しく擦られて生じる凄まじい快感に私は狂わされていく。もう何も考えられず、ただ彼と交わることだけしか考えられなくなる。
――これこそ女の喜び。女の幸せの極地。
「んふぅっ! ふぅぅっ! んぶちゅぅぅっ!」
鼻息荒く、激しい動きで呼吸を乱しながらも口づけを交わし続ける。もう私も限界が近い。炭治郎くんにも流石に疲れが見えている。恐らく次で最後。それは炭治郎くんもわかっているようで、最後の追い込みの如く激しく私の身体を突きあげる。
炭治郎くんの陰茎がはっきりとわかるほど激しく脈打ちだして震えだす。――くる。至極の熱が、悩ましくも好ましい、愛おしいとさえ思える波が。
「んっ! んぅぅ! ふぅぅぅっっ!! ぶちゅるるるぅぅっ!」
そしてその衝動が一気に吹き上がり、それは訪れた。
どびゅびゅぅぅっっっ!! びゅくっ! びゅくびゅくっ! びゅぅぅっっ!!
「んふぅぅぅぅぅっっっ!!!!!」
最後のトドメとでもいうように、子宮の中に新しい精液が流し足されていく。その熱がその夜最後の高みへと私を押し上げ、絶頂させられた。ビクビクと互いに身体を痙攣させ、絶頂の余韻を堪能すると、二人して寝台に寝転んだ。荒い息を吐いて胸を激しく上下させながらも、そこには嬉しさと喜びがある。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
「うぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅぅ……!」
疲労からか、睡魔が襲ってくる。瞼が酷く重い。それでも私は重い身体を動かして、炭治郎くんに向き合い、口づけを交わす。お疲れ様、今日もありがとうと、感謝と愛情を込めて。……もうだめ、ここでおやすみなさいですね。
私は炭治郎くんの身体の熱を感じながら、意識を闇に沈めていった――
◇
――またやってしまった。
いつも後悔は遅れてやってくる。朝、自室に戻って私は頭を抱えた。馬鹿か私は。あれだけ炭治郎くんとの関係を終わらせようと意気込んでおいてこれですか。完全にドハマりしてるじゃないですか!
いや、別に炭治郎くんに抱かれるのが嫌いというだけでも、飽きたというわけではなくて。はっきりいって好きですよ炭治郎くんとまぐわうの、ほんっと好きなんですけどそれじゃいけないんです。……いけないとわかっているのに……。
あれほどまでに心を燃やしていた復讐の念が、女の情念に押しつぶされていく。いままで仇を討つ為に費やした時間を、努力を否定してしまうのに、それを止められない。どれだけ足掻いても、炭治郎くんとの関係に溺れていく。振りほどこうと足掻けば足掻くほどに、それは抜け出せなくなり、より深みに嵌っていく。
一度だけ、と炭治郎くんと関係を持ってしまったのがすべて間違いだった。そう思いたくても、"女"の私がそれを否定する。次第に鈍っていく復讐の決意。日に日に増していく炭治郎くんへの恋慕。やがて復讐心は消え失せ、そこには恋慕しか残らなくなる。それを恐れているのに、私にはもう……どうすることもできない。
燃えカスような復讐心を心に宿しながら、私はまた彼の元へと脚を運ぶ――
◇
――そんな関係を断ち切れずに引きずり続け、とうとう危惧していたことが訪れた。
「っ……! ぅっ……ぇ……!」
ある日、唐突に嘔吐感が湧き、胃の中の物を吐き出してしまった。体調は問題なく、おかしなモノを食べたわけでもない。どう考えても、考えられる理由はたった一つだった。
(う、そ……?)
恐る恐る己の下腹部に手を当てると、そこには小さいながらも確かな命の息吹を感じる。
嗚呼――とうとう恐れていたことが起こってしまった。藤の花の毒を服用しているから妊娠はできない、と思っていた。しかしそれは私の勝手な推測。現に私は彼の子を身籠ってしまっている以上、その推測は誤りだったということに気づかされる。
(いや――まだ、まだ大丈夫……)
幸いその場には私しかおらず、妊娠していることを知っているのは私だけ。周囲に事が露見する前に
「……だめよ……できない……、できるわけないじゃない、そんなのっ……」
お腹の中にいるのは罪もない、炭治郎くんと私の子。それを己が我儘を通す為に殺めることなど、私にはできなかった。出来るはずもない。だってこの子は愛する男性との間に出来た愛の結晶なのだから。
この未来が予測できたにも関わらず、私は彼との関係を手放すことが出来なかった。それが後に復讐を妨げることに繋がるとわかっていても、女の幸福を知ってしまった私の身体は一途に彼を求め続けた、その結果がこれ。
――もう無理だ。この身体では、もう戦えない。復讐を果たすことができない。お腹の子を庇いながら戦うなど、恐ろしくてできやしない。
(姉さん、これは、姉さんが私を叱っているの……?)
鬼殺隊に入らず、普通の女性として幸福に生きてほしい――その遺言を無視してまで復讐を取ったから、怒っているの? だから私をこうしたの? 疑問を投げかけてもそれは宙に消えていく。
すべては自業自得。浅ましい女の情念を叶えようとした、姉の遺言を聞こうとせずに我を通そうとした私への罰なのでしょう。顔を上げて鏡を見た。そこには嬉しさと悲しさを滲ませた複雑な表情で笑みながら涙を流す私の顔があった。なんて、滑稽で哀れな女の姿。
彼との間に子を授かった嬉しさと、復讐に生きた自分を全否定してしまった悲しさが混ざり合う。今までの努力は、苦労は一体なんだったのか。すべては徒労に終わり、無に帰していく。
――馬鹿なんですか? 一時とは言え、浅ましい女の情念を優先したのは他ならぬ自分じゃない
鏡の中にいる虚像の私がさも嬉しそうに、そう罵ったような気がした――
↓以下後日談 ここを読むと恋愛にシフトします
――その後、
「お館様、一つ質問なのですが……鬼殺隊に『産休』ってあるんでしょうか?」
柱合会議の場でした質問に、他の柱達がギョっとした目で一斉に私を見た。
「はァッ!? テメェ……まさか……?」
「はいっ、私胡蝶しのぶは妊娠してしまいましたので、少しお休みをいただきたいんです」
「おいっ! このクッソ忙しい時に何ガキ作ってんだァ、テメェ……!?」
「そんなこと言わないでくださいよ、不死川さん。デキてしまったものはしょうがないじゃないですか」
「しょうがなくあるか!」
青筋を立てて詰め寄る不死川さんをなだめる。まぁこんな時期に子供作っちゃった私も私なんですけど。なんかもう開き直っちゃいました。
「誰だ孕ませた馬鹿は……!? まさか……」
ギロリと離れたところに立っていた冨岡さんを見た。……残念ですが違うんですよね……。
「違う。俺ではない。そもそも俺は彼女に一切興味がない」
「……」
「……」
この人一度頭解剖してあげましょうか? だから嫌われるんですよ。いい加減自覚してください。
「凄い~! しのぶちゃんのお腹の中に赤ちゃんいるんだ! はぁぁ……!」
甘露寺さんは素直に祝福してくれた。我が事のように喜んでくれる彼女に想わず顔が綻ぶ。
「じゃあ誰だァ……?」
不死川さんが柱の皆さんを睨み回す。
「オレじゃねぇな。第一嫁三人でもう手一杯だ」
「私ではない」
「わかっていると思うが、俺でもないぞ」
「僕でもないよ」
皆が次々に否定していく。これで柱の中の誰かという線は消える。あぁ、もう面倒。いい加減白状してしまおう。
「はいっ、正解は竈門炭治郎くんでしたっ。彼がこの子の父親ですっ」
「テメェェェェッッッ!!! 何女孕ませてんだコラァァァっっ!!!」
「炭治郎ぉぉぉっっ!! なんて羨ましいんだぁっ! 俺より年下のクセにぃぃぃっっ!!!」
「うわぁぁぁっっ!! ごめんなさいごめんなさいぃぃっっ!! でも妊娠させちゃう気はありましたっ! すいませぇぇんっっ!! 長男だから頑張りましたっ! ごめんなさぁぁぃぃいっっ!!」
「なに頑張ってんだゴラァッ! なに孕ます気満々だったんだァこの野郎っ! ざっけんなテメェェェッッ!!」
「素直でよろしいですねぇっ! ホントふざけんなよお前ぇぇぇっっ!!」
刀を振り回す不死川さんと善逸くんに追い回される炭治郎くん。まぁ私も孕む気がなかった……わけではないんですけど、そこは炭治郎くんが悪いということで。
姉の仇討ちは炭治郎くんに託します。私を戦えなくして、女の幸福の味を覚えさせちゃったんですから、それくらいの責任とってくださいね?
「炭治郎くんったら凄いんですよ? 夜はあんなに激しく……」
「しのぶさん、お願いです! 火に油を注がないでくださいっ!」
「んだとぉ……! テメェ女抱いてる暇あったら鍛錬でもしてろォォッッ!!」
「炭治郎ぉぉっっ! お前の日輪刀切り落としてやるぅぅっっ!!」
これもすべて姉さんがそうしたの? 復讐を諦めさせるために私と炭治郎くんを引き合わせたの? ……うぅん、多分そう。
何から何まで迷惑かけてごめんなさい。そしてありがとう。今度はこの子と一緒に挨拶に行くから――