ありふれた職業で世界最強~出会いと帰還への道のり~ 作:リュウコウ
~~~全面、氷で覆われた空間~~~
反則だと思った。
ずるいわ......って思った。
だって、まるでお伽噺の中のヒーロー見たいだったから。
だって、あんなにも貴方の紅色が綺麗だったから。
だって、貴方の背中は、あんなにも大きかったから。
私の心の柔らかいところに、貴方が居た。
気付くと、地球に居た頃から貴方を目で追いかけていた。
始めは、香織の貴方へのアプローチの為に漫画やアニメに
付き合っていた。その香織に付き合っていく内に私の心に
貴方が大きな存在になっていた。龍太郎はあいつに脅され
逆らえずにいたから仕方がない。しかし、あいつは貴方を
怠け者と罵っていた。
春に吹く優しい風のような暖かさを。
夏の日差しを遮る木陰のような心地好さを。
冬の張り詰めた空気のような痛みを。
秋の夕暮れのような切なさを。
甘いようで苦い、苦いようで甘い、複雑すぎて笑顔で
隠した私の深い部分に、貴方は居る。優しい笑顔で。
~~~シュネー雪原・上空~~~
兎人族の皇国・ハウリアを発って、30分。
僕と桜で作り上げた、飛空艇・フェルニル。
雲海の上を、滑るように飛行する。
夕陽を西から浴びている。ユエとユナ、ソーナにアルテナ
の4人は、ハウリアの樹海で俺と桜が作った
アーティファクトを手に馴染ませていた。
「夜一。七大迷宮、最後の迷宮なんだよな」
「そうだな。龍太郎、魔竜拳に慣れておけよ。
一応、この飛空艇の中に訓練場を広く取ってある」
龍太郎は頷き、訓練場へと向かう。
次に、俺の所に来たのは、妙子に奈々に綾子だった。
「夜一、私の龍操鞭は昇華魔法で1段階強化されて、
扱いが難しくなったんだよね?」
「だから、訓練場で慣れておけよ。妙子」
「私の獅杖も強化されたんだね♪夜一」
「魔法の威力が格段に上がっている。妙子と一緒に
訓練場で慣れておけ。奈々」
「私の雀杖の治癒魔法の回復力もだよね♪夜一」
「治癒魔法だけじゃないぞ。治癒を攻撃に変換でき、
後方支援が出来るようになったから、連携の訓練を
しておいたほうが良い。綾子」
3人は頷き、訓練場へと向かう。
「おぉ~。全然地上が見えませんねぇ~」
ウサミミをぴこぴこ。ブリッジの丸い窓に張り付き、
外の景色を眺めていたシアが声を上げる。
俺の両隣に座っている桜と鈴が、
「此方の世界の人は、空を飛ぶ技術がないから」
「うんうん。私も、初めて飛行機に乗った時、景色を
見て奮えたからね♪感動か?落ちないかって」
「それ、わかるよ♪鈴」
「優花もわかってくれる」
俺の周りで話に華が咲いていた。
シアと一緒で景色を見ていたミュウが、
「パパぁ~!お外の景色が大変だよ?」
「どれどれ。これから、シュネー雪原に入っていく」
俺も、ミュウのパパとして、
【シュネー雪原】ーーー大陸最南東一帯を覆う雪原だ。
西の【魔国ガーランド】と、北の【ハルツィナ樹海】に
囲まれたこの場所では、決して晴れることのない曇天が
常闇の如く暗い世界を作り出し、最悪の視界を更に猛烈
な吹雪がホワイトアウトさせる。大地は完全に雪と氷に
覆われていて、気温が氷点下数10度以上に上がること
はない。
構って欲しそうに夜一の周りをうろうろするので、
「リリィ、俺の膝においで♪」
では、失礼して、と前向きではなく、此方に向いて、
膝の上に座る。
「ええっと.....確か、雪原の奥に大きな峡谷があって、
その更に奥地に最後の大迷宮があるんだよね?」
「ああ。氷と雪でできた大迷宮ーーー氷雪洞窟が」
「一般的には、大迷宮だろうって言われている場所。
気候の厳しさと、洞窟から誰1人戻ってこなかった」
アイリスが答える。
「だからこそ、1番怪しいんだ。氷雪洞窟」
リリィとアイリスは納得する。きっと下界の極寒も試験
の1つなのだろうと。
「それでどうじゃ、ご主人様よ。きちんと羅針盤は機能
しておるかの?」
ティオが夜一の手元を覗き込んできた。それに釣られて
リリィも覗き込む。
「ああ。大丈夫だ。それにしても、改めて思うが凄い。
単に羅針盤の針が望んだ場所に向くだけじゃなく、目的
の場所、そこまでの距離が感覚でわかるなんて」
訓練場から帰ってきていた妙子と奈々と綾子が、
「地球の場所もなんとなくわかってたもんね♪」
「本当に凄いね。その羅針盤を作ったミレディの仲間」
「神に挑む解放者。神代魔法!流石です。ミレディ」
「あまり褒めないでよ♪私たちじゃ、敵わなかった」
ミレディは、敵わなかった、といいながら褒められて、
顔はニコニコだ。
「氷雪洞窟に到着だ。雲の下に降りるぞ」
「きゃっ!?」と、レミアが小さく悲鳴を上げる。
確かに『極寒』というに相応しい有り様だね。......
私、寒いのはちょっと、と、いうので、俺は雫を抱く。
すると、雫は顔と耳を真っ赤にする。
飛空艇が徐々に、降下していき雪原に着陸する。
俺たちが、飛空艇から降りると、目の前に神殿を彷彿
させる入り口が、そこが、最後の大迷宮ーー【氷雪洞窟】