~~~氷鏡の心迷宮~~~
幼馴染みの桜は、氷鏡から子供の頃の桜の姿が現れて、心を乱された。
『こんにちは。桜♪』
「な.....なんで、裏桜。子供の姿なの?」
『それは、この頃が、桜の人生での、分岐点だったでしょ♪引っ越して、鳴神さん家の隣に行く前の子供の姿。可愛いでしょ?』
~~~氷鏡の心迷宮~~~
鈴は、氷鏡から子供の頃の鈴が現れて、心が乱れる。
『こんにちは。鈴♪』
「どうして、裏鈴は、あたしの傷を抉るのよ!」
『アラッ。ごめんなさい♪この頃、鈴、虐められていたものねっ』
「.......」
『どうして、黙ってるの?そして、鈴は公園に逃げていたね♪あと、敵を前にして、油断しないっ♪』
私は、心を抉られ、その隙をついて、裏鈴の鳳扇花から放たれる。
~~~氷鏡の心迷宮~~~
優花は、氷鏡から子供の頃の優花が現れて、心が乱れた。
『こんにちは、優花♪』
「.......。裏優花、その姿、止めてくれない」
『今、優花、私に隙を見せたわねっ♪』
裏優花は、私の隙をついて、攻撃を仕掛けてきた。
「くはっ!?......鵠日葵」
~~~氷鏡の心迷宮~~~
真祖の吸血姫ユエは、真っ暗なトンネルを抜けると、そこに、私が、アレーティアだった時の御屋敷が現れた。
その、御屋敷を目にした瞬間、寒気が走ったので、私は気雛鎌を構える。
すると、私と御屋敷の周囲を業火が地を舐め尽くしていく。
鼻腔を血生臭さが突き刺さり、油のようなねっとりとした空気が肌にまとわりつく。悲鳴と怒号、狂気を孕んだ雄叫びが、爆発の轟音と混じり合って凄絶なオーケストラと化している。
そこは戦場だった。
ただし、あまりに異常な戦場だった。
「このっ、化け物がっ」
そう、化け物がいた。
現実離れした美貌を持つ、まるでビスクドールのような少女ーーーの形をした化け物が。
年の頃、十代半ばに少し届かないくらいか。
豊かに波打つ金色の髪。神秘の火を結晶化させたような紅玉の瞳。夢のようにほんのり赤みを帯びた頬。フリルたっぷりの素敵に美しい真紅のドレス。
およそ戦場には似つかわしくない、あまりに可憐なその少女はまるで妖精ののよう。
そして、相対するのは5000の軍勢。
それが、この異様な戦場。
「ーーー〝緋槍・千輪〟」
その少女が愛らしい声音ひとつで、戦場に業火降り注ぐ。
「しょ、障壁展開ッ!対...炎属性をーーー」
軍団の指揮官が悲鳴じみた号令を拡声させる。が、遅い。
「これが.....鬼神の国......吸血鬼族の、王家の力....」
誰もが、畏怖の眼差しを少女へと向けていた。
吸血鬼族ーーー他者の血を取り込むことで身体を強化し、魔力を増幅させ、尋常ならざる回復能力を発揮し、寿命すら延ばす特殊な種族。
誰からも畏れられ、誰からも欲望を向けられる国の王女こそ、この金と真紅の少女だった。
1時間後、大地の肥やしになるという結果を以て、終演を迎えた。
あの戦から、数週間がたったある日。
その少女は1人、叔父に呼ばれて、「開かずの間」その少女の両親の部屋の隣にある父親の執務室。
少女は、ノックをして、父親の執務室へと入る。
「コンコンコン、叔父様。アレーティアです。入りますね」
すると、叔父様が少女の父親の椅子に座って待っていた。
少女は、声を荒らげる。
「叔父様!その場所は、私のお父様の」
「そう。私が殺めた兄、........王の椅子だよ♪」
少女は、叔父が発した言葉に動揺し、心を落ち着かせて、叔父様に聞き返した。
叔父から帰って来た言葉は、こうだった。
自分より、先に生まれたからと王になった兄に嫉妬した叔父様。その兄には、美しい妻もいたことが余計に、嫉妬の炎が燃え上がる。
数日後、少女が生まれ、温かい家族の形ができ、国は安泰。
叔父は、その少女が物心がつく前に、両親を殺めた。叔父、自らの傀儡にするために。
「どうだった?叔父様に両親を殺され、挙げ句、叔父様傀儡になり、国を治め、平和をもたらしたにも関わらず、不死身だから、封印され、ゴミのように迷宮の底に棄てられた可哀想な可哀想な、アレーティアちゃん♪」
「黙れーーーっ!私をアレーティアの名で呼ぶな!私には、あの夜一がくれた名が、あるんだからぁ」
『あぁ、あの殿方がくれた名があったねっ。ユエって名前が。でも、お断りします♪』
戸惑っている所に、蒼炎の顎門が私を襲う。
「ッッ!?」
右腕に激痛。声にならない悲鳴がが上がる。
黒髪に黄金の瞳を持つもう1人の虚像が。
右腕を食い千切った上に、至近距離で〝蒼龍〟の爆発により吹き飛んだ王女ーーー改めユエは、ズタボロにされた右半身を〝自動再生〟で、衣服を再生魔法で復元しつつ重力を制御。氷鏡の壁に激突する前に空中で制止した。
だが、体勢を整える前に間髪容れず超重力に襲われる。
『ーーー〝禍天〟』
「ーーー〝地漆〟」
凄まじい圧力が押し寄せてくるが中和する。
『貴女。「地漆」だなんて、物騒ね♪あはっ、大迷宮の150階にいたから?』
「そうかもしれない!」
腕の再生は完了した。その右腕を突き出し十八番の魔法を発動する。
「ーーー〝雷龍〟ツ」
『ふふっーーー〝雷龍〟!』
金色を纏う龍が二体。雷鳴の咆哮を轟かせ空中で激突。
私は、落ちながら横目でその歪んだ空間を見たあと、次の一手を放つ。
「ーーー〝碧槍・百連〟」
『ーーー〝氷槍・百連〟』
まるで合わせ鏡。まったく同じ魔法が同じタイミングで放たれる。(ルビは同じだけど、名前は違う)
『あらぁ、アレーティアの魔法、ルビは同じなのね♪どうして、500年前のをつかわないの?うふふっ♪』
「黙りなさい!!」
私は、アレーティアを目の当たりにしたからか、苛立ちを隠すように、左手で魔法を放つ。
「〝翠爪〟」
『〝風爪〟』
そのあと、私は別の魔法を唱え、アレーティアと激突する。
『あらっ、アレーティアのそれ、〝火剣〟よねっ♪』
「アレーティアのそれとは.....ち....違うわ。私の〝紅剣〟わ」
『私は、アレーティアの〝雷龍〟に合わせているのに、それは寂しいですね』
「そんなこと、思ってもいないくせに!」
『まあっ、どうして、そんなにもひねくれたのですか?昔のアレーティアなら、喜んでくれたでしょうに♪よしよ~し、怖くないですよ♪私と身体になるだけなのに』
「触らないで」
『アレーティアもユエと一緒に外の世界に連れていって。お願いします。このとおり.....ぐすんっ』
................えっ!?.....??.............???私は、驚いた。アノ、プライドの高かったアレーティアの私が頭を垂れた。.......土下座をしたのだ。
「な.......なによ。いきなり、土下座して私に泣きつくなんて」
『.....本当はね、アレーティアは、貴女......ユエを攻撃したくないのよ。私も外の世界を見て回りたいの』
「今まで、私たちは殺し合っていたのよ。そのアレーティアと身体になりたいと思っているの?寂しいからって、私を困らせたいの?」
『そ.....そうよね。ユエからしたら、昔の私が一緒にいたくはないよね』
........................。
「アレーティアも.........叔父様に裏切られて寂しかったのね。........私も、その気持ちは理解できるから、どうしようか?」
....................よしっ!
『どうしたの、ユエ?』
「それじゃあ、アレーティア。私と一緒に外の世界に.....飛び出してみる?」
~~~氷鏡の心迷宮~~~
白兎姫シアは、此処、氷雪洞窟に来る前、夜一がアーティファクトのメンテナンスと改造をしてくれた、牙兎鎚を構えて、今、氷鏡の壁から現れた裏シアと対峙していた。
『シア、王族なのに、他の兎人族から白い目で見られていましたね!』
シアの存在は、気味が悪いと下の者たちは離れていく。周囲に残ったのは、両親とメイドが数人。
王族だけど、生きていく為に、自給自足をしなければならない。
全てはシアという異端の子が王族に生まれたから。
『この広い樹海で、私はたった1人の存在!逃げれば良かったのに!1人で!家族から離れて!そしたら、王と王妃だった両親だけは、元の生活ができたのにね♪あっ、ごめんなさい!シア、弱かったから、身も心も♪』
「そうですよ。あの頃の私は確かに弱かった。両親に守られながらでないと、生きていけなかった」
『だよねだよねっ♪だぁ.....かぁ.....ら♪シア....死んでくれない』
....................。
「裏シアが....ねっ♪」
氷鏡から現れた裏シアがそこに、横たわり、その側には、血飛沫を浴びたシアが牙兎鎚肩に担ぎ、立っていた。
『もう、シアは、乗り越えていたのね』
「そう言うことよ♪......さようなら」
シアは、止めをさして、歩いていく。