どうでも良い世界観設定的な部分なので、割と読み飛ばしちゃっても構いません。
1-1. プロローグ
フラワーナイトガール、というゲームをご存知だろうか。
様々な花……いや、植物……いやいや、最近はキノコも居たな……
とにかく、そんな物の名前を冠した美少女たちを育て、害虫と呼ばれる魔物たちを倒していく、まぁ、最近では良くあるゲームの1つだ。
プレイヤーは騎士団の「団長」となり、花騎士と呼ばれる少女たちとデートをしたり、X指定版ではエロい事をしたりしながら愛でる、所謂「キャラゲー」に分類される。
かく言う俺もサービス初日からプレイしていた団長の1人で、アブラナという花騎士が特にお気に入りだ。
具体的にはアブラナが人気投票でお題1位を取った記念に抜いていたら、ヤりすぎて死んでしまったくらいにはお気に入りだ。
……そう、死んでしまった、らしい。
今俺の目の前には下半身を露出したまま息絶えている「俺」の姿がある。
最初は幽体離脱か何かと思ったがそうでもないらしい。
画面に表示されっぱなしの、アブラナが異種姦されているエロ画像を何とか消そうとしたり、パソコンを叩き壊そうとしたりしたが、幽霊(?)の身でそれは叶わなかった。
このままでは不味い。何か、何か証拠隠滅のためにできる事は無いのか。
そう焦っているうちに、何だか体が空へと吸い寄せられるような感覚を覚える。
まずい、まだ昇天するわけにはいかない。待って、待ってくれ……!!
そんな懇願も空しく、俺の体は屋根を突き抜け空へと吸い上げられ……そしてそこで意識が途絶えた。
目が覚めると体が縮んでいた。某高校生探偵もびっくりの、赤ん坊レベルにまでだ。
恐らくは親だろうと思われる目の前の人物は、どう見ても日本人ではない……
と言うより、どう見ても三次元の人間ではない容姿をしている。
別にペラペラの紙状をしているという意味ではなく、どこかアニメ調というか、2.5次元というか、そんな感じなのだ。
そんな人たちが、どう聞いても日本語にしか聞こえない言語で俺に話しかけている。
これはアレだろうか。最近流行の異世界転生とかそういうアレだろうか。
別にトラックには轢かれていないし、神様に会った記憶も無いのだが……。
色々と気になる事はあるが、赤ん坊の身体のせいなのか、とても眠い。
10代の美少女にしか見えない推定母親の姿に、「食事」の時間を楽しみにしつつ、再度俺の意識は途絶えたのだった。
……新しい生を受けて、そろそろ1年が経つ。
転生ものでは授乳を楽しみにしつつ、おむつを変えられる部分で苦悩するのが定番だと聞いていたが、どうやら後者の心配はしなくて良いらしい。
それと言うのも、この体、どうやら排泄が必要ないようなのだ。
便利とも言えるが、何この体怖い。
一向に排泄行為を行わない俺を見て、両親も不思議がるどころか、「素質がある」と言って喜んでいたので、何か良く分からないがそこまで特殊なケースでもないらしい。
普通に喋っても違和感が無い年齢になったら、どういう事なのか聞いてみることにしようと思う。
そして、前者の方をついに心配しなくてはいけなくなった。
1歳になるからと言って、ついに母乳を飲ませてくれなくなったのだ。
やや控えめな乳房を小さな手でぎゅっと搾り、乳首を舐め転がすようにしながら母乳を飲むたび、甘い声を上げながら赤い顔をしていた母さんの姿を見れなくなるのは非常に、非常に惜しいが、いつかは卒業しなければいけないことである。
これからは、風呂や寝る時に胸を触らせてもらうだけで我慢するようにせねばなるまい。
昨日は5歳の誕生日だった。
色々と「勉強」をして分かったが、どうやらここは
そう、あのフラワーナイトガールの舞台だ。
ラティスと名付けられた俺の新しい名前も、今までは特に何とも思っていなかったが、そういえば園芸用などの、格子状の衝立っぽいアレが、確かラティスとかそんな名前だった気がする。
ケンザンとかスコップとかそんな名前でなくて良かったと心から思う。
いや、スコップちゃんは可愛いし良いおっぱいしてると思うが、だからと言って人間の名前としてはやっぱりどうかと思う。
赤ん坊の頃に聞いた「素質がある」という言葉は、「魔力を扱う」素質を指していたらしい。
この素質を持つ者は、食べた物も老廃物も最終的には全て魔力に変換して取り込んでしまうため、一切排泄が不要になるらしい。
そして花騎士たちは例外なくこの素質を持っている……というか、魔力が自由に扱えなければ花騎士にはなれない。
つまり花騎士も皆トイレ行かない。やったね。俺にスカ趣味は無いのだ。
残念ながら俺は男性なので、素質があっても花騎士になる事はできない。
だが、「騎士団団長」になるにも魔力は重要であり、頭の良い(という事になっている)俺なら、きっと優秀な団長になれるぞと良く両親が言っている。
イベント時空では非常にユル~~~いのに、背景や実情はかなりシリアスなのが
命を張って戦う者が必要な世界だと言うのは分かるが、では自分が命を張りたいかと言われると流石に悩むというか、できればやりたくない……え? 何? 命の危険なんてまず無い?
……どうやらこの世界、イベント時空ともまた異なる、特殊な
そうだよな、花騎士はトイレ行かないなんて、そんな設定無かったもんな。
何が特殊かと言うと、どうやらこの世界、原作以上にエロゲエロゲした世界だった。
何でも、ここの害虫たちは基本的に「魔力」を餌とするらしい。
そのため、人を襲ってもバリバリムシャムシャと食べるのではなく、魔力を吸おうとする。
で、その魔力の吸い方が……流石にまだ俺が子供なので詳細はボカして説明されたが、要はエロい事をしてくるようだ。一通り吸った後はそのままキャッチ&リリースされる親切仕様。
そして男の魔力は口に合わないのか何なのか、徹底的に無視されるらしい。
勿論邪魔したり攻撃したりすれば、動けなくなる(邪魔しなくなる)まで向こうも攻撃してくるらしいが。
とにかく、アッーーー! なんて事にはならないようで安心した。
そういう事であれば、折角素質もあるらしいし、団長を目指してみるのも悪くないだろう。
原作花騎士たちに会うことができれば嬉しいし、可能であればアブラナを探して自分の騎士団に入れて……いや、既に他の騎士団に入っている可能性もあるのか。
まぁ今後は団長になる事とアブラナを探すことを目標として、頑張って行くことにしよう。
気が付くと18歳になっていた。時が経つのは本当に早いものである。
ここブロッサムヒルの騎士学校は、前世で言う大学のような物に位置しており、花騎士コースと団長コースに分かれている。今日から俺が通うのは勿論団長コースの方だ。
男女比が1:20の
折角座学も剣術も今まで色々と鍛えてきたのだが……まぁ、入試に役立たなくても、
入学後には役立つだろうし、無駄ではないはずだ。
教室に入ると、そこは見渡す限りの女の子。女子校に迷い込んだ気分だ。
今までも女の子だらけではあったが、男も数人とは言え存在していた。
だが、ここでは……同期では男は完全に俺1人らしい。
「アレが噂の……」「本当に男の人が……」「あら、思ったよりイケメン。でもやっぱり女同士よね……」などと、ヒソヒソ話をしながらこちらの様子を伺っているクラスメイトたち。すっかり珍獣扱いだ。
……そう、最初は男女比が偏ったこの世界に、ハーレムひゃっほいと期待していた俺だったが、今までの18年間ですっかり悟ってしまった。
数少ない男だから、というだけでモテることなど無いのだ。
と言うか百合……女性同士の同性愛が一般的すぎて、むしろ空気と化す方が多い。
前世からレズものは大好きで、その手の薄い本も大量に所持していた。
別に自分がTSして混ざりたいという訳ではなく、「見学」させて貰えるだけで良いのだが、残念ながら今まで一度もそういった機会はない。畜生、何でここは貞操逆転世界じゃないんだ。
何はともあれ、無難に自己紹介を済ませ、その後は団長としての教育を受けることに専念する。
良いんだ良いんだ、甘酸っぱい学生生活なんてものはとうに諦めている。
無事団長になって、花騎士が配属されてから本気を出せば良いのだ。
……いや待てよ? それって下手するとセクハラとかパワハラになるのか?
そういった話はこっちの新聞でも見たことは無いが、念のため後で確認しておかなければ……。
入学して約半年。この半年で団長として必要な知識を色々と叩き込まれた。
団長の仕事は基本的に「事務的な作業」と「花騎士の強化」になるらしい。
事務作業の方はまぁ大体分かるし想像がつく。原作でもよく書類仕事してたし。
花騎士の強化の方だが、これが団長に魔力素質が必要な理由であり、団長のキモである。
ゲームでもそれを匂わせる描写はあったが、団長とは花騎士の能力増幅装置らしい。
自身の魔力を自ら利用するのではなく、契約した花騎士へと与え、強化する。
しかも男性の団長は、自身が花騎士になれない代わりに、世界花の加護を魔力に上乗せし、花騎士たちをより一層強化できるそうだ。そりゃ男性の団長候補ってだけで一発合格になるわ。
また、原作知識も踏まえて自分なりに考えてみた結果、どうもこの世界の花騎士たちは、自力では未進化レベルMAXまでしか成長できないらしい。
それが、団長と「契約」し、団長が触媒……ゲームで言う進化竜を用いて加護を注ぐことで進化を促し、より強力な花騎士へと成長することが可能になるのだ。
開花らしき現象を聞くことはできなかったので、未実装の世界なのだろうか。
ちなみに、「契約」とは、団長と花騎士の間で加護・魔力のパスを通すことを指す。
お互いに接触することで可能となるが、より濃厚な接触であるほど効果は高いらしい。
手を握るくらいでも契約はできるが、キスをするのが一般的。
より親しくなった後で性行為を行い、「契約を更新」することも多いそうだ。
『仕事と割り切る団長も居ますが、お互いに親密になるほど効果が高くなる傾向がみられるので、できればちゃんと仲良くなるように。
特にラティス君。一夫多妻が認められていますから、騎士団の子は全員奥さんにするつもりで口説いてあげましょう』
……などと教師に言われてしまった。
親密になるほど、というのは原作の好感度システムだろうか。
流石にゲームではないのでステータスも好感度も数字で確認することはできないが、
強くなったことを実感できる程度には差があるという事だろう。
ケーキを100個食べさせるわけにもいかないし、パワハラになるどころかむしろ積極的に口説いて良いと言われたからには、頑張っちゃうしかないなー。仕方ないなー。
ちなみに、この花騎士の強化能力、相手がある程度近くに居ないと発揮されないらしい。
花騎士と比べて害虫と直接戦う能力が圧倒的に劣る団長であっても、戦場に直接出る必要があるのはこの辺が理由だとか。
何にせよ、今日からはついに花騎士コースのメンバーたちとの合同授業が始まる。
団長候補1名に対し、花騎士候補2~3名がついてチームを組み、
以後はチーム単位で訓練や害虫退治を行う事になるのだ。
ここで組んだチームは卒業後も行動を共にすることが多いらしく、メンバー選びは非常に重要だと言える。
今日は丸一日顔合わせ・メンバー選びに費やされる予定となっているが、果たして俺は上手く仲間を見つけることができるのだろうか……。
団長コースでは相変わらずどの子ともあんまり仲良くできていないしなぁ……。
そんな不安半分期待半分の気持ちで、俺は集合場所の部屋の扉を開けたのだった。