アブラナが「花を摘みに」行っている間、俺はイチゴと二人で盛り上がっていた。
話題は当然のようにアブラナについて。
イチゴと二人っきりになることは今まで無かったので、これ幸いとばかりにイチゴがいろいろな話を教えてくれて、捗っている。
ついでに、どうしてこんなアブラナとの仲を応援するような事をしてくれるのかと尋ねてみた。
「ん~? まぁ、色々と理由はありますけどぉ……ラティスさん、悪い人じゃないですし、
アブラナちゃんの事が本当に大好きなんだな、って言うのは良く分かりますからぁ。
アブラナちゃんも満更じゃなさそうですし、早くくっついちゃえば良いのに……って」
マジで!? イチゴにそう言って貰えると何か自身が付くと言うか、最強の味方を手に入れたような気がすると言うか……。
「あ、でもでもぉ。わたしの夢はアブラナちゃんと一緒に幸せな家庭を築くことですからねぇ?
ラティスさんがアブラナちゃんと結婚するのは良いですけどぉ、わたしもアブラナちゃんと結婚しますから!!」
ナニイッテルノコノコ。
いや、この世界は一夫一妻制ではないらしいから理論上問題は無いが……。
そうするとアレか、俺とイチゴはアブラナを取り合うライバルではなく、アブラナを分かち合う仲間になるのか?
いや、この例えは何かアブラナを物扱いしているようであまり良い気分はしないが。
「まぁ、それで大体あってると思いますよぉ。
今はわたしの方が"先輩"だからいろいろと手伝ってあげてますけどぉ、わたしが困ったときには、もちろんラティスさんも手伝ってくれますよねぇ?」
何だか微妙に黒いオーラが見えているのは気のせいだろうか。
まぁ、これだけ世話になっているのだからこちらとしても手伝えることを手伝うのに異論はない。
そう伝えると、黒いオーラは一瞬で引っ込み、イチゴはぱあぁっと笑顔を浮かべた。
そんな感じでイチゴと談笑(?)していると……
「ラティス! イチゴ! こっちに、害虫がまだ居る!!」
今の、アブラナの声だよな。
「ふぇ? アブラナちゃんの? そんな声聞こえませんでしたけどぉ……?
あ、もしかして覗きに行く口実ですかぁ?」
違う、ガチな奴だ。害虫がまだ残っていたらしい。
もし違ったら土下座でも簀巻きになるでも何でもするから、急いで向かうぞ!
「え? あ、は、はい!」
真剣な俺の様子が伝わったのか、慌てて武器を取って駆けだすイチゴ。
一緒にアブラナが向かった方へ移動していくと、徐々にアブラナの声がはっきりと聞こえるようになってきた。
「あ、あのぉ……ラティスさん? さっきからアブラナちゃんのえっちな声ばっかり聞こえてくるんですけどぉ、本当に害虫が出たって言ってたんですかぁ?」
ジト目を向けてくるイチゴ。気持ちは分かるが本当なんだ、信じて欲しい。
あと俺の股間を見るのはやめてくれ。真偽に関係なく、こんな声を聞かされて勃起しないはずがないだろう!!
それから更に近づいて、アブラナとのパスが再度繋がったあたりで、喘ぎ声とは違うアブラナの声が、再度届いた。
「や、だぁ……入って、来ないでよ……ラティス、助けて……」
……急ぐぞ。
「……はい、今のは確かにわたしにも聞こえました」
どこか躊躇していたイチゴの迷いも消え、今まで以上の速度でアブラナが居る方へと向かう。
そして辿り着いた俺たちが見たのは、こんな場所に居るはずがないほど巨大な害虫と、それに押し倒されているアブラナの姿だった。
……まさに薄い本な展開に、一瞬「このまま眺めているのも良いか」なんて選択肢が頭をよぎるが、今はそんな場合ではない。助けに来たことを大声で叫びつつ、イチゴの援護射撃のもと、巨大な害虫へと斬りかかる。
「っ!? だ、ダメですぅ、攻撃が全然通じません!」
絶望したような声をあげるイチゴ。
俺の攻撃も害虫に通じた様子は一切無く、害虫は俺たちを無視してアブラナを襲い続けている。
時折漏れ聞こえてくる喘ぎ声が色っぽすぎて股間が痛い。
脳内に謎のゲージが現れてぎゅんぎゅん溜まってそうな気すらしてきた。
「ふぁっ❤ やっ、ああぁっ❤ や、だぁっ❤ ラティスが、見てるのに……イくっ❤
あたし、また害虫にイかされ……っ❤ あっ、あああぁぁぁぁんっっ❤❤❤」
……脳内のゲージが一瞬で振り切れる。
脳内には今度はランタナ*1が現れ、「かいほう」と書かれたボタンを連打しまくる素振りを見せる。
……え? なに、このゲージ本物? もしかしてハゲビ、もとい
そんな物拾った覚えもないし、どちらかと言うとアブラナの喘ぎ声を聞くたびにゲージが溜まっていたが、まぁさっきから俺もイチゴも害虫に何度も攻撃を加えているし、俺が
もし本当に
一縷の望みをかけ、適当に両手を突き出しながら脳内のボタンを押し、大きく叫ぶ。
果たして、俺の両手からは原作と同じく強烈な陽光が放たれ……ずに、何やら桃色の極太レーザーが放たれた。管理局の白い悪魔を彷彿とさせる。
アブラナや地形には一切ダメージを与えることなく、群がっていた害虫だけが、一瞬にして消し飛んで行った。
「は、はわぁ……今の、もしかしてラティスさんが?」
あぁ、何か撃てそうだったから撃った。思ってたのとは少し違ったが……。
そしてアブラナの方に目をやると、そこには両足を広げ、アソコをヒクヒクとさせながら、ぐったりとしている全身ベトベトなアブラナの全裸姿が。……鎮まれ俺の股間っ!!
直視しすぎないように気を付けつつアブラナに近づき、大丈夫かと声をかけると……
助かったことに気付いたのか、アブラナはゆっくりと起き上がり、そして俺に思いっきり抱き着いてきた。
「来てくれた……本当に、助けに来てくれたぁ……」
「ラティスさん、わたしにも聞こえてなかったのに、アブラナちゃんの声がするーって気付きましたからねぇ」
「……それ、本当?」
あぁ本当だ。俺がアブラナの声を聞き逃すはずがないからな。
「そっか……ちゃんと、届いてたんだ……き、来てくれて……その……ありがと」
アブラナが素直にお礼を言った……だと……。
「ちょ、ちょっと何よその顔は! あたしだって、助けてくれた人にお礼くらい言えるわよ!」
「ふふっ、そうですよね♪ ラティスさん、本当に凄かったんですよぉ?
あんなに大きな害虫を、一発でわぁーーーって!」
「そう言えば、何か凄く温かくて気持ち良い光が飛んできたのは覚えてるけど……あれ、アンタがやったの?」
俺がやったの。……ところで、何か普通に話をし始めてるが、良いのか?
俺としては全裸のアブラナに抱き着かれているのはご褒美すぎるので問題無いんだが。
「~~~~っ!? こ、これは、その……い、今離れると、あたしの裸が見えるでしょ!?
だから、見えないようにこうやってくっついてるだけなの!!」
そう言って、ぎゅっと抱きしめる力を強くするアブラナ。
控えめな大きさの胸が俺の体に押し当てられ、潰されていく感触は、控えめに言って天国である。
と言うかこれ、俺の股間もアブラナに当たってないだろうか。
そしてそれを気にするどころか、アブラナの方からもぐりぐりと俺の股間に体を……
気のせいでないなら、アブラナも股間を押し当てていないだろうか。
「は、離れられないんだから、魔力を回復するにはこうするしかないでしょ!
良いからアンタはじっとしてて! あたしの方で何とかするから……ん、あっ❤」
え、何それ。アブラナが俺の身体を使ってオナニーしてるの?
そして俺から手出ししちゃダメなの? 天国かと思ってたら拷問だったの?
イチゴは乾いた笑みを浮かべたまま、口出しすることを諦めたようだ。
俺は耳元で喘ぎ声を我慢している、でも時折我慢できずに漏らしているアブラナの声を聞かされ、疑似的に素股のような事をされ、あっけなく射精させられながらアブラナの「回復」を待つことになるのだった。
暫くしてアブラナの衣服も元に戻り、俺たちは互いに何があったのかを説明しあった。
まだ害虫が残っていた事も驚きだが、アブラナの魔力を吸って巨大化したというのも問題だ。
俺が放った謎の光についても詳細は不明だし、急いで学校に戻って報告を済ませる。
『害虫が魔力を吸うと言っても、餌程度のはずですし、吸ったそばから進化するような現象は確認されていません。
ラティス君が使ったというのは、確かに
桃色の光で害虫を消し飛ばす、と言うのは聞いたことがありませんが、極稀に変わった
中には補佐官の姿を模った攻撃を放つ、なんて人も居たそうですよ?』
あぁ、原作でもあったな、ナズナアタック……。
そして教師から見ても巨大化の原因は不明、と。
アブラナ曰く、俺とのパスが繋がった状態で吸われたらああなった、との事なので、
その辺が関係しているのは間違いなさそうだが……。
何にせよ、今日の実戦訓練はこれで終了となり、俺たちは解散することになった。
そして別れ際にアブラナがこっそり耳打ちしてきた内容に、俺は固まってしまうのだった。
「……今夜、アンタの部屋に泊まりに行くから。後は察しなさい」
突然だが、学生寮の仕組みについて話をしたいと思う。
騎士学校は基本的に全寮制で、相部屋だ。
アブラナとイチゴが同室でぬいぐるみに囲まれて生活しているのは記憶に新しい。
そして俺はどうなのかと言うと、2人部屋を1人で使っている状態だ。
先輩の男子学生と同室になる可能性もあったのだが、丁度部屋が埋まっていたらしく、かといって女子と同室にするわけにもいかないということでこうなっている。
このことはアブラナたちも知っており、そんな俺の部屋に泊まりに来るということは……
勘違いとか期待のし過ぎじゃないよな? そういう意味だよな?
気が付くと俺は夕食も入浴も済ませ、1人悶々としながらアブラナが来るのを待っていた。
やがてコンコンと小さくノックの音が響き、アブラナが来たことが分かる。
招き入れると、アブラナの顔は既に真っ赤になっていた。
「その……ね。害虫に負けなければ良い、って言ってたけど……
今回はたまたま最後まではされずに済んだけど、いつまたあんな事が起きるか分からないから……。
後は、そう。 お礼。 助けてくれたお礼!
だから……今夜は、あたしを好きにして、良いわよ……?」
据え膳である。美味しく頂くしかない。 ……のだが、1つだけ気になることがあったので確認を取る。
俺はアブラナの事が好きだから抱きたいと思っている。
だが、アブラナは俺の事は何とも思っておらず、ただお礼のためだけに、抱かれても良いと言っているのだろうか?
「そ、それは……ど、どうだって良いでしょ? 抱いて良いって言ってんだから素直に抱きなさいよ!」
いいや良くは無い。肉体的な快楽を得るだけならどうでも良いのかもしれないが、
俺はどちらかと言うと精神的な充足感の方を大事にするタイプなのだ。
好かれていない相手に無理を言って迫るようなことは絶対にしたくない。
そう言ってじっと正面からアブラナを見つめていると、アブラナはやがて観念したかのような様子を見せた。
「あぁ、もう……分かった、分かったわよ! あたしもアンタの事が好きになっちゃったのよ!
今までも気にはなってたけど、今日のアレで確実にねっ!!
ふんっ、チョロいならチョロいと言いなさいよ! 助けて貰って本当に嬉しかったんだから!!
だから、あたしの初めてはアンタにあげたいの!! これで良い!?」
お、おぅ……。もしかしたら、とは思っていたが、本当にそう言われると案外照れるな……。
「そのセリフそっくりそのまま返すわよ! あたしの事散々誉めて、好きだ好きだって言われて、あたしが何も思わないとでも思ったの!? どれだけ恥ずかしかったと思ってるのよぉ!!」
むぐっ……こ、こう、誤魔化すよりはストレートに伝えた方が誤解が無くて良いかなと思って……。
「あぁそう! じゃああたしも全部伝えてあげるわよ! アンタね、自分がどれだけ格好良いか分かってんの!? 見た目だけじゃないわ。 男のくせに一人前の花騎士くらいに強いんじゃないかってくらいに剣も凄いし! 頭も良いし! ちょっとスケベなところはあるけど優しいし! アンタがくれたぬいぐるみねぇ、抱いてるとアンタに抱かれてるような気がしてすっかりお気に入りになっちゃったじゃない!! だいたいアンタ、何でそんな良い香りしてるのよ! アンタとくっついてると、もっと匂いを嗅ぎたくなってくるのよ! 何か変なフェロモン出してんじゃないの!? 誘惑するのはあたしだけにしなさいよね!! って言うかスケベな癖に優しいって何か間違ってるんじゃないの!? あれだけあたしの裸を見て、チンポも反応させてるのに、手出ししないって何なのよ! 一人で変な妄想しちゃってるあたしの方が変態に思えてくるじゃない! 馬鹿ぁ!! あたしとセックスしたいんでしょ!? すれば良いじゃない! あたしだってしたいんだから! お礼とか契約とか、そんなの関係ない! 好きな人として何が悪いのよぉ!!」
まさかのマシンガントークである。
って言うか何これ、俺思った以上に好かれてた?
そして良い香りって何だ。香水とかつけてないぞ俺。
……もしかして本当にフェロモンか何か出てる? いやいやまさかそんな。
あ、そう言えば前世知識にちょっと参考になりそうな物があったな。
確か、遺伝子的に相性の良い男女は無意識のうちに相手の体臭を「良い香り」だと判断するようになっていて、近くにいるだけでも幸せになれる、所謂「赤い糸で繋がっている関係」なんだっけか?
気のせいかと思っていたが、言われてみれば俺はアブラナの香りをめちゃくちゃ良い香りと言うか、何だかこう、無性に嗅ぎ続けていたい、得も言われぬ香りだと思っている。
もし向こうもそうだったとすると……ふむ、ちょっとニヤケ顔が止まりそうにない。
「何よニヤニヤしちゃって!! 抱くの!? 抱かないの!? 早く決めなさいっ!!」
おっと、お姫様がお怒りだ。
俺はすぐさまアブラナの前に移動すると、無言で抱きしめ、口づけたのだった。
Side. アブラナ
言った。言ってしまった。
恥ずかしくて今まで隠していたことも全部、勢いで言ってしまった。
一通り吐き出した後、急にニヤニヤとし始めたアイツが気に入らなくて、抱くのかどうかと迫ってみたら、アイツは急にあたしを抱きしめ、キスをしてきた。
この前の契約の時とは違う。どちらからともなく舌を差し出し、絡めあう、大人のキス。
魔力が流れてこないせいなのか、この前みたいにキスだけでイっちゃうって事は無いけれど、それでもこうやってキスしているだけで凄く気持ち良い。
身体がどんどん火照っていくのが分かり、アイツに触って欲しいと疼き始める。
……お風呂にはもう入ってきたし、大丈夫よね。もう、我慢できそうにない。
「……お願い、ベッドに運んで……?」
キスを中断して伝えると、アイツはあたしをお姫様抱っこして運んでくれた。
……だから、そういうことされると余計に好きになっちゃうってば。