※この作品はR-18です。

TSしたかったTS少女のお話   作:白三丁

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(注意)この話は前編でありR18要素は一切ありません、それでもよろしい人はお進みください



前編(エロなし)

「やっとできた……完成だ!」

 

 狭い実験室の中、隣で薬を見つめる私の共同実験者兼相棒、クリスに喜びのあまりはしたなく抱きついてしまう。

 

 彼女の発生源不明の良い匂いと柔らかな身体を精一杯堪能しながら彼女の顔を見る。いつもはこんなことをすると怒る彼女も許してくれているのか、微かに笑みを浮かべながら此方を見て祝いの言葉を掛けてくる。

 

「……おめでとう。完成した、してしまったんだね」

「? ああ、クリスのおかげだ! 私一人では絶対完成させることは出来なかっただろう。本当に感謝している!」

 

 抱きついてクリスの顔を見上げた事によって彼女の長い黒髪が私の顔を擽るがそれでも彼女への感謝の気持ちを表すためにクリスの顔を見上げて微笑みかける。

 

 思えば、彼女にとって何の役にもならないような私の独りよがりの研究に長い間付き合い、それでもなお笑みを浮かべてくれるクリスはもしや聖女なのではないか。

 勿論お礼は用意してはいるがしかしそれでもこの恩は返せる気がしない。せめてこの気持ちを少しでも彼女に伝えようと抱きしめる力を強めて更に笑顔を向ける。

 ああ、本当に彼女に出会えて良かった。私は薬を再度見て彼女に会った時のことを思い出すのであった。

 

 

 

 

「お前が魔法薬学の学年トップのクリス・シジョウだな!?」

 

 俺の額にかかる白髪を払い、何故か此方を見てぼーっとしている女性の目の前に立つ。

 俺と同じ学年であるのに俺が周りよりも一回りは小さく、対して彼女が周りよりも身長が高いため此方が見上げる形になることに若干の不満を覚えてしまうがどうしようもないためしかたなく彼女へと意識を向ける。

 

「……ええっと、初めまして。確か君は同じ学年のユウカ、だったっけ? 何か用かな?」

「ああ、始めまして。それでだ、お前にしか、少なくとも俺の知る限りでは頼めない依頼があってな。頼む! もちろんお礼はする、どうか聞くだけでも聞いてくれないか?」

 

 頭を下げる。

 他者から変人と思われているだろう俺が彼女に頼みを聞いてもらえるのか? 周りの評判を気にせず勉学のみに励んできた自身のことを今だけは恨みながら答えを待つと幸いな事に彼女は微笑んで答えを返す。

 

「うん、別に構わないよ私も君と話してみたいことがあるし。長くなりそうな話なら一緒に昼食でもどうかな?」

「ありがとう! じゃあ俺のお勧めの店に行こう、案内するよ!」

 

 そう言ってクリスの前を歩き始める。

 アンバランスな身長である二人だからだろうか? 少々多い視線の中、話す内容を頭で纏めながら俺は廊下を進むのであった。

 

 

 

 

 

「──っと少し長くなったがこんな所だ」

 

 事情を話し終え、サンドウィッチを頬張るクリスの反応を窺う。

 ある程度は興味を持ってくれただろうか、真剣な顔で此方を見るクリスが口の中の物を食べ終え口を開く。

 

「ふーん、転生か、珍しいね。しかも性別が逆になっちゃったと」

 

 そう俺は男として生きた前世を持って女としてこの世界に生まれた、つまりはTS転生者というものなのだ。しかも白髪赤眼TSロリ、どこのどいつだこんな性癖を詰め込みやがったのは。

 とはいえ性別が変わった時点でまあ不運ではあるのだがこの世界に生まれたことでおれにとって幸運なことは二つあった。

 

 まず一つ。この世界において転生とは珍しくはあるが事例は複数確認されていて受け入れられる土壌があったということ。…TS転生した人は確認されていないが。

 まあそもそもこれが無ければ俺は転生したことを隠して生きていかなければならずそして気味の悪い子かもしくはホラ吹きとして幼少時代を過ごさなければいけなかったかもしれない。

 

 二つ目は魔法が存在するということ。

 誠に残念ながらこの世界にTS出来るような素晴らしい魔法は存在しておらず、新しく魔法を作る為の才能を得ることが出来るような貴族の家系に俺は生まれる事ができなかった。

 そこで俺が目をつけたのは魔法薬である。勉強すれば誰でも一定以上の成果を出す事ができ、しかも俺には前世というアドバンテージがある。そのことに気づいた俺は家族に頼み込んで一心不乱にそれに取り組んだ。

 

 そしてその結果、平民でありながら数少ない研究室を持つ学生としてまで俺は成長して——当たり前であるかのように俺は行き詰まった。

 

 才能はあるのだ。

 無ければどんなに勉強をしようと研究室は貰えない。それでも俺の求める物を作るには才が足りず、仕方なく俺は人に頼ることを考えた。

 俺より魔法薬の腕が上というだけでは駄目だ。教授達は俺よりも腕はあるがそれは年齢が上なだけ、すぐにでも追いつく事ができる奴を才能があるとは思えない。俺より才能がある人つまり俺に近い年齢の奴を探すため初めて周りを見渡して——俺は彼女、クリスの存在を知った。

 

 少し考え込んでいる彼女の様子を少し不安に思いながら窺う。

 

「私としては協力してもいいと考えている。が、それでも君の目的の物を作るには私も短くない時間を使うことになることははっきりとわかる」

 

 その対価としてなにを支払うのか? と目を細めて無言で訴えてくる彼女に鞄から紙の束と魔法道具、契約魔法をするための物を取り出し突き出す。それを受け取った彼女が紙を読み終えるのをじっと見つめながら待ち、そして彼女が口を開く。

 

「本気か?」

「ああ、本気だ」

「魔法による契約、これは良い当然のことだ。研究によって発生する各種権利、私達が研究するなら一財産を築けるものができるだろうが君が良いというのなら受け取ろう。だが……最後のこれは本気か?」

 

 彼女の問いに目を見つめながら首を振る。この世界では果たしてどんな風に転生者の話が捻じ曲がったのか相手の願いを可能な限り三回叶えるということが全てを捨てた、本気を示す証として伝わっている、絶対これを伝えたやつは碌なやつじゃない。

 

 魔法契約は絶対だ。だからこの契約を結んだのであれば俺はクリスに対して何でもしなければいけない。そんな契約をする事で俺の本気を受け取った彼女は答えを出して魔法具に手を置く。

 

「分かった、君と契約しよう。私が差し出すものは君との研究に何よりも力を注ぐこと、これでいいんだね?」

「ああ、俺が差し出すものは二つ。研究で発生した各種権利、お前の命令になんでも三回従うこと」

 

 そう言って俺も魔道具に手を差し出し、魔道具を起動する。本人たちの意思に違いがない事が確認され淡く魔道具が光り契約が実行された。

 

「本当にありがとうクリス! とはいえ急な話だ、研究は明日からでも構わないがどうする?」

「ああそうだね、そうして貰えるとありがたいかな? ……あっそうだ、早速一つ目のお願いをしてもいいかな?」

 

 少し、身体が硬直する。例え彼女がなにを言おうと受け入れるつもりである、がそれはそれとして緊張するのだわかってくれ。

 

「……財布を忘れたから奢ってくれないか?」

 

 彼女が頬を染め恥ずかしそうに、申し訳なさそうに話す。その言葉を聞いて俺は笑いながら返事を返す。

 

「あははは、了解了解。そんなことなら任せておけ。というか別にこんな事に頼みを使わなくても奢るつもりだったんだから問題なかったんだぞ?」

「大丈夫さ、別に君に変な事を願うつもりは無い。契約を受けたのはそれだけ君の本気を受け取ったからだしね」

 

 少し安堵の気持ちが湧き上がる。少なくとも明日から長い時間を過ごすであろう俺の相棒は悪い奴でなく、どちらかというとお人好しの部類に属するらしい。そんなクリスに向かってニコッと笑いながら改めて俺は言う。

 

「明日からよろしくな、クリス!」

 

 

 

 

 そうして俺達は共同実験を始めた。

 

 

「ほうほう、異世界にはそんな文化が……」

「ああ、随分と業の深い話だろ?」

「いや、十分興味深いよ。異世界の話というのは大分貴重な物だしね」

 

 

 

 

「クリス!? ごめん、先入ってるって知らなくて!」

「? ああ、そう言えば君は元男だったか。日頃のユウカはどこからどう見ても可憐な少女だから忘れてたよ。別に構わないぞ? 一緒に風呂くらい」

「お、れ、が、気にするんだよバーカ!!」

 

 

 

 

「しかしユウカ、君はもう少しくらいはおとしやかに出来ないものかい? 日頃から思っているのだが言動さえ直せば君は恐らく私が見てきた中で一二を争う美人だぞ?」

「男に戻るのにそんなの必要無い! 別に言動くらいいいだろ、俺は気にしないぞ?」

「……二つ目の願い。ユウカは女でいる間はそれに見合った言動をすること、口調はまあ良いけど少なくとも主語は俺じゃなく私にしろ」

「ちょ!?」

 

 

 

 

「クリスってどういう勉強してるんだ? 私もいっぱい勉強してきたけれど全然かなう気がしないし、本当いつも助かってるけどさ」

「特別なことはしてないな。教科書を読んで覚えたら後は何となくでわかるだろう? ……どうしたんだユウカ、急に頭を押しつけてきて」

「この才能の塊め……!」

 

 

 

「生やす薬が出来た! くくく、せめて私の息子だけでも一足早く……」

「目的の薬の効果を妨げかねないし没収だ阿呆」

「そんな酷い!?」

 

 

 

「本当クリスって綺麗だよな、風呂へ入るといつも思うんだけどさ」

「私としてはユウカの方が可愛くて綺麗だと思うけどね?」

「むー複雑な気持ち、クリスみたいにかっこいい方が良かったなー。……どうしたんだ急に上を向いて?」

「……何でもない」

 

 

 

 そうして実に一年という歳月をかけて私はTS薬を完成させた。

 クリスに抱きついたままでむふぅーと柔らかさを堪能していると彼女が声をかけてくる。

 

「……疲れただろう、少し飲み物でもとってくるよ。完成祝いに乾杯でもしよう」

「いいのか? じゃあ頼む。確かに疲れたなー」

 

 少し名残惜しいが抱きつく手を離す。

 常備している魔法具から飲み物を汲んでくるだけなのでクリスは直ぐに戻ってくると思ったが予想より少し遅く彼女は戻ってきた。

 

「お待たせ、紅茶しかなかったけどいいかな?」

「ああ、大丈夫だ。ありがとうな」

 

 クリスから手渡されたカップを口まで運んで一口、香りを楽しんで疲れがゆっくりとほぐれていくのを感じる。そうして紅茶を楽しんでいるとクリスが何かを決意した真剣な顔でこちらに話しかけてくる。

 

「……それで、何時薬を使うつもりなんだい?」

「んー私も早くTSしたいし、これを飲み終えたらすぐにでも使うつもりかな? そういえばまだ願いは一つ残ってるけどTSした後の私でもちゃんと有効だからな、別にクリスの頼みならそんなの無くても何でも聞くつもりだけどさ」

 

 そう言うもクリスは真剣な顔を崩すこと無く此方を見る。それに流石の私も少し不安を覚えてクリスに尋ねる。

 

「……どうしたんだ? 何か薬に不備でもあったのか?」

「いや無い、無いんだよユウカ」

「そうか?じゃあ、っ!?」

 

 突然体の力が抜けて床に崩れ落ちる。手元のカップも床に落ち中のものが溢れて広がり私の髪を濡らしていく。

 

「くり、しゅ?」

「本当に不備でも有れば良かったんだけどね」

 

 何故? 残った力を振り絞ってクリスの顔を見る。

 彼女の目は先ほどまでとは違い今まで見たことのない、妖しげな光を携えていた。

 

 

 




TSしたかった(過去形)
設定とかに無理があっても気にせずR18要素が一切ない癖に無駄に長い小説を投稿したことを許してください(多分次話は来週か再来週くらいです)

※必要ないかもしれないけど色々補足
契約の魔道具・・・色々ある魔道具の一種。結ばれた契約に従うのならほとんど何もしないが反抗するとどんなに嫌でも半強制的に体が動かされたりする
主人公…ユウカという平民の少女としていわゆるファンタジー世界にTS転生した。男に戻りたい白髪赤眼TSロリ
クリス…そこそこ長身。黒髪黒目のいわゆる天才。女としての主人公に対して無意識に一目ぼれをしてたりする
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