※この作品はR-18です。

タイマニン・アンド・ニンジャ・クロスストーリー   作:タッツー2号

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何度か見直した結果、前回投稿した作品は作りが甘かったので削除して、新しく書きました。

そこそこ良い物が出来たと思うのでお楽しみいただけたら嬉しいです。


【ユーアー・スペシャル・トゥー・ミー】

 

 

 

 時は近未来、闇の存在・魑魅魍魎が侵食しつつある魔都・東京。

 

 人間の堕落により、魔族との間に結んだ相互不干渉という暗黙のルールが破綻し、魔界より来た闇の住人たちが人間と結託して生まれた暗黒企業や犯罪組織が悪を成し世を腐らせていく時代。

 

 しかし正道を歩まんとする人々も無力ではなかった。

 時の政府は人の身で「魔」に対抗できる集団・忍のものたちからなる対魔忍を組織し、彼らの力を以て人魔外道の悪に対抗し人の世の平和を守ろうとしたのだ。

 

 ある時は薄暗いスラムで、またある時は煌びやかなネオンの影で、今日もまた悪を滅する対魔忍たちの戦いは続いていく。

 

 

 

 

 

 

 自身の所属するヤクザクランと暗黒コーポの取引を横目にしながら、ヤクザのヨージンボーである彼は周りへ注意を払いながらも、過去へと思いを巡らせていた。

 

 対魔忍の家系に生まれ、将来は対魔忍となるべく鍛え上げられてきた子供時代、対魔忍養成機関である五車学園の中等部へと入学し、勉学と訓練に励み灰色の髪が美しいキレイな許嫁も手に入れた。まさに順風満帆の人生であった。

 

 だが、本人に過失が有ろうと無かろうと理不尽は唐突にやって来るものだ。

 

 転機は高等部への入学を控えていたとある日、家と魔族との繋がりが露見し家は取り潰し、そして彼も流れに流れて今ではヤクザのヨージンボーとして働いていた。

 

 昔と今の環境の落差にため息が出そうになる。だが自分は幸福なのだと彼は思い込む。普通であればどこかでのたれ死ぬか、家の取り潰しの時に殺されていたであろう。しかし今の自分は生きている、だから自分は幸福なのだ。下を見ればキリがないし時間は戻らないのだから。

 

 けれど、そう思うたびにいつも未練がましく許嫁の悲しそうな顔が思い浮かんでしまうのは、自分が女々しいからかそれとも幸福であったあの頃に戻りたいからなのか、それは彼自身も分からなかった。

 

「ぎゃあああああああああーーーーーーっ!」

 

 そんな彼の思考を現実へと引き戻したのは辺りに響いた汚ならしい悲鳴であった。護衛として雇われた傭兵の魔族たちが雇い主にどうするかを聞いている中で、彼は思考を戦闘態勢へと整えていく。

 

(敵対するヤクザクランか、魔界から来たばかりの礼儀を知らない魔族か、それとも魔薬で頭をパーにした中毒者か?)

 

 悲鳴の上がった場所へと元対魔忍として鍛え上げた身体能力を駆使して急行する。戦闘用の装備であるフルフェイスマスクや道具を確認しながら戦場へと近づくに連れて耳に届くのは味方の悲鳴と怒号と銃声による多重奏であった。

 

 

 

 

 

 

「くそ! 駄目だ止められねえ! ぎゃあああああああああ!!」

 

「体が、体が凍る! 助けてくれえ!」

 

「死ねっ! 死ねええええええ!!」

 

 魔族と人間の屍が無造作に放置され、辺りに散らばる血と臓物が不快な匂いを撒き散らす。そんなアビ・インフェルノ・ジゴクめいた景色の中で、薄汚い血を垂れ流し死んでいくのは武装したヤクザたちとオークなどの魔族の傭兵。自動小銃や散弾銃などの火器で武装している彼らの武装の質は高い、にも拘らずわずか数名の相手に圧倒されている。

 

「にゃはは、こっちだよ――――うりゃあああっ!」

 

「氷付けになりなさいっ!」

 

 一見競泳水着やレオタードにも見える露出度の高い衣装に身を包んだ少女たちは対魔忍。太古の昔から魔族や国家の敵を相手に戦ってきた彼らは、まだ10代であろう若さにもかかわらず圧倒的な戦闘能力を持っている。幾ら魔族が混じっているといってもヤクザの戦力は常識の範囲内。その驚異的な力に対抗しうるはずもなかった。

 

 アイスブルーの髪色の少女が氷遁の術でオークを氷像に変える。ネコ耳と尻尾を生やした白髪の少女が俊敏な動きでヤクザたちを翻弄しながら爪で引き裂いていく。最早虐殺と言っていいくらいの戦力差が彼我の間には存在していた。

 

 その光景を見ながらも彼の目はただ一人の対魔忍の少女へと釘付けにされていた。

 

 その対魔忍は美しく魅力的な少女だった。少女の対魔忍スーツはレオタードに似た紺とベージュの落ち着いた色合いの物。しかしその薄布では隠し切れない豊満な胸と尻が対魔忍スーツの上からでもしっかりと主張し、身体の成熟と平均より高めの身長がそれらをより引き立てている。さらに長く絹糸のような灰色の髪を両サイドに編み込まれ、顔の作りも小顔で整っている。なかでもハニーゴールド色の鮮やかな目が一層綺麗だった。

 

 彼はマスクの下で顔を驚愕の表情へと変えていた。昔の記憶より成長していても決して忘れはしない、かつて将来を誓いあった少女がそこにいた。

 

 思考が纏まらぬままに彼女の近くへと着地する。口からはなにかを言おうとしても言葉が形をなさずに消えていく。そして対峙する彼女は得物の大剣を構え直し、その目は油断なくこちらを見つめていた。

 

 その目を見て彼は思い出す。今の自分は彼女の許嫁ではなくヤクザのヨージンボー、そして彼女は正義の対魔忍。相容れる存在ではない。もう昔のように共に笑うことも出来はしない、その現実に心が痛む。だが、鍛え上げた肉体は自然とイクサの構えを取っていた。

 

 ピクリッとその構えを見た彼女の表情が変わる。すぐに元の表情へと戻し一瞬の躊躇いのあとに言葉を発した。

 

「・・・なぜ、とは問いません。お覚悟を」

 

 その言葉に自分の正体がバレたのかと考えたが、すぐに考えを改める。家が取り潰された時に一族の人間が何人も行方不明になっている。その中の一人と思われたのだろう。

 

 それでいいと思った。今から彼女が戦うのは元許嫁ではなく、薄汚いヤクザのヨージンボーなのだから。

 

 意識を切り替えて彼女と対峙する。互いの距離はおよそ十メートルほど、対魔忍であればすぐに走り抜けられる間合いである。彼女は武器を構えたまま動かない。しかし中等部時代に幾度か彼女と模擬戦闘をしていたからこそ、その行動の意図を読み取れる。

 

(彼女の忍法は手に持つ武器の長さを変化させるもの、爪楊枝から十メートルサイズまで自由に変えられる。無防備に前に進めば伸びる大剣に串刺しにされ、横へ逃げようともそのまま凪ぎ払われる。ならば・・・)

 

 一瞬にして思考を纏め上げ次の行動へと移る。彼は自らの忍法である身体強化の術を使い脚に力を込めていく。それを見て彼女は大剣を突き出す。想定通りの流れに安堵しながら、彼女の元へと走り出した。

 

 加速しながら彼の目は彼女を映し続ける。彼女の構えていた腕に力が入る。忍法が発動する予兆、それを察知し即座にクラウチング・スタートめいた体勢で回避、直後に先程まで自身の胴体があった場所を風切り音と共に弾丸めいた速度で伸長した大剣が通りすぎる。

 

 それを背中に感じながら作戦が成功したことを確信し、再び手足に力を込めて走りだし、チーターのごとき速度で距離を詰める。

 

(十メートル近くまで伸ばした武器を振り回せる長さに戻すにはニ、三秒ほどかかるはず、それまでに組み付いて意識を落として無力化する!)

 

 脳内で次の行動をシミュレーションしながら距離を詰め続けていく、しかし彼は致命的な思い違いをしていた。彼の認識は中等部時代で止まっており、今の彼女は中等部時代と同じではない。高等部へと進学し対魔忍としての任務で幾度も魔族との戦いを経験した彼女は一人の戦士として成長していたのだ。

 

(なに!?)想定外のことに彼はマスクで隠された顔を驚愕に染めた。回避して一秒もたたぬ内に彼女の手には元の長さに戻った大剣があった。このまま進めば間違いなく死ぬ。それを即座に理解し足に力を込めて急制動をかける。

 

 しかし車や電車のように加速したものは急には止まれない。無理な急停止でバランスを崩しながらも回避しようとするがもう遅い。

 

「ハアアアアアッ!」

 

「アッバアアアアアーッ!?」

 

 裂帛の叫びと共に袈裟斬りに振り抜かれた大剣が深々と肉体を切り裂いていく。マスクの下からくぐもった断末魔の声を上げながら彼は最後に彼女へと手を伸ばしながらも、途中で力尽きそのまま地面へと倒れていった。

 

 地面へと倒れこんだ敵を見つめながら対魔忍の少女、姫島美鈴(ひめじま みすず)の胸に去来するのは深い悲しみであった。彼女は敵の構えに覚えがあった、思い出すのは将来を誓いながらも別れの挨拶も出来ずにいなくなってしまった愛していた男の顔。両親から彼は死んだと聞いていた。だから自身の前に倒れているのは彼ではないと心に言い聞かせても彼女はしばらくの間、立ち尽くしていた。

 

「どうしたの美鈴ちゃん?」

 

「何かありましたか?」

 

 倒れた敵の前で立ち尽くしていた彼女の意識を引き戻したのは仲間たちの声であった。彼女たちはミスズ=サンが戦っている間にヤクザたちを片付けており、今回の任務である非合法取引の阻止は成功した。

 

 上司へと任務の成功を報告するため、彼女は悲しみを振り払うように倒れている敵に背を向けて歩きだした。

 

 

 

 

 

 

(俺は、死ぬのか・・・)

 

 大剣で深々と肉体を切り裂かれながらも彼はまだ生きていた。身体から流れ落ちる血に浸りながら視界が滲み始め中央にぼんやりとした映像があらわれる。その周囲を6つの映像がマンゲキョめいてぐるぐる回転する。

 

 正義の対魔忍となるべく共に研鑽を積み将来を語り合った記憶。初めてのデートでキスをした記憶。他愛のない会話に喜ぶ記憶。彼女と過ごした幸福な日々が次々と浮かんでは消えていく。

 

(ああ・・・もう一度、彼女と話がしたかったな)

 

 心の中で後悔が顔を出す。いまさら悔やんだ所でこれから自分が死ぬという現実を変えることは出来はしない。

 

(美鈴、どうか幸せになってくれ)

 

 最期に思うのは彼女の幸福であった。きっと彼女は自分との別れを乗り越えて新しく誰かと恋をして愛を育み、幸せな家庭を築いていくのだろう。

 

 その想像が脳裏を過ぎたとき、彼女との幸福な日々を映していた映像が形を変え始める。

 

 彼女の隣にいたはずの自分が暗い影に代わる。その影は彼女と幸せそうに生活していた。学園生活、結婚、セックス、本来なら自分が手に入れる筈だった彼女を自分ではない誰かが汚していく。次々と切り替わる映像が死のうとする彼の魂を蹴り上げた! 

 

(ふざけるな・・・ふざけるなっ!!! 彼女の笑顔も美しい声も豊満な胸も髪の毛一本、血の一滴残さず俺の・・・俺だけのものだっ!!!)

 

 感情の爆発と共に火山噴火のごとく身体の奥底から沸き上がる暗黒のエネルギと01ノイズの波が猛火となって全身を駆け巡りながら彼の精神を包み込みどこかへと連れ去っていった。

 

 

 

 

 

 

(ここは、どこだ?)

 

 彼の意識が目を覚ましたのは白一色の空間。目に移る周囲には何もなく静寂だけが支配するその場所に、突如として宵闇色の影が現れる。それは捉えどころのない不可思議な形をしており、唯一わかるのは口元と思しき部分にある下弦、上弦、満月、3つの月を組み合わせた形の面頬だけが青白い輝きを放っていた。

 

 突如として現れた影は、両手を合わせ体を九十度折り曲げ深くオジギを行い、アイサツした。

 

「ドーモ、ソウジ=サン。オヌ・ニンジャです」

 

 その言葉を聞いたとき、ソウジ=サンの脳裏に01ノイズに呑まれた際に垣間見た光景が映し出される。

 

 不可思議なニンジャとそれを囲んでボーで叩こうとするニンジャたち。ある者は超自然の炎で焼き尽くそうとし、またある者は念力で相手の動きを阻害する。それを不可思議なニンジャがいくつものジツとカラテで対抗する。

 

 まるでプロモーションビデオのようなその光景と共にいくつもの言葉が脳裏をよぎる。ニンジャクラン、ディセンション、ニンジャソウル、黄金立方体、オヒガン、そしてニンジャ!!! 

 

「ドーモ、オヌ・ニンジャ=サン。キシモト・ソウジです」

 

 継ぎ接ぎの知識を手にした彼はオヌ・ニンジャへと自らの意志で名乗り返した。

 

 その行いが意味することをソウジ=サンは理解していた。自分はこれで恐るべき半神的存在ニンジャになる。だが後悔はない。彼はこの力で必ずミスズ=サンを手に入れ、彼女と共に幸福を掴み取る覚悟を決めていた。

 

 二つのソウルが一つへと混じりあい白一色の空間にインフレーションを思わせるソウルの光が広がっていく。それはこの世界に新たなるニンジャが誕生したことを意味していた。

 

 

 

 

 

 

「イヤーッ!!」

 

「っ!?」

 

 ミスズ=サンが歩きだした瞬間、先程まで致命傷を受けて倒れていたはずの男が突如として数メートル垂直に跳躍し、空中でムーンサルトめいて一回転を行いコンテナの上に降り立った。

 

 同時に彼の姿は劇的なまでに変わりゆく。腕や脚に青白く輝く装甲が生成されると装甲の周囲から宵闇色の装束が生成され身体を覆っていく。そして顔に青白く輝く面頬が生成されそこからも宵闇色が広がり男の頭部を覆っていく。すべてが終わった時そこには一人の半神的存在ニンジャが立っていた。

 

「イヤーッ!」

 

 回転ジャンプで対魔忍たちの前に降り立つ。彼が手に入れようする対魔忍の少女の他に仲間の二人もいる。こちらは一人で敵対魔忍は三人。先程までならば絶望的な戦況であろうとニンジャの力を得た今の彼にとってはそう難しい敵ではない。

 

「ドーモ、対魔忍の皆さん。エニグマです」

 

 彼は両手を合わせ体を九十度折り曲げ深くオジギを行い、アイサツをした。

 

 先程まで自らの死を受け入れようとしていたはずの男はもういない。今ここにいるのはニンジャソウル憑依者、恐るべきニンジャ、エニグマであった。

 

 

 

 

 

 

 最初に餌食になったのはリーダーのユキコだった。死んだと思っていた男が復活し、エニグマと名乗ったのを見ると即座に忍法で作り出した氷の弾丸を打ち出した。

 

「ヤアアッ!」

 

「イヤーッ!」

 

 エニグマ=サンがニンジャ身体能力を生かして迫る氷の弾丸を即座に側転回避! そのままユキコ=サンへと高速側転接近し胴体を両脚で挟み込む! 読者の中にニンジャ知識をお持ちの方がいるなら気づくだろう。これは暗黒カラテ、デス・ロールの構えであると! 

 

「イィィィイヤーッ!」

 

「きゃあああああっ!」

 

 エニグマ=サンが身体をウインドミル回転! 脚に挟み込まれたユキコ=サンが身体を何度も地面へとドリブルされながらコンテナへと叩きつけられた。凄まじい衝撃にそのままユキコ=サンは意識を手放した。 

 

 赤子の手をひねる様な圧倒的な強さに残った対魔忍たちは絶句していた。ユキコ=サンは決して弱くはない。強力な忍法と鍛えたカラテはオークなどの魔族を容易く蹴散らせるものだ。しかし彼女たちの目の前にいるのはそのような生易しい存在ではない。相手はかつて何処かの世界で暗黒平安時代に日本を支配していた神話存在、ニンジャなのだ!!! 

 

「う、嘘にゃユキコちゃんがこんな簡単にやられるなんて・・・えっ?」

 

 タマキ=サンの身体が不自然に浮かび上がる。ニンジャ知識を持つものは気付くであろう、これはテレキネシス・ジツだ! 

 

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」

 

「にゃあああああああああっ!」

 

 テレキネシス・ジツによって身体を固定され防御姿勢を取ることも出来ずエアホッケーのパックのようにコンテナや地面を何度も往復しながら叩きつけられる。その衝撃に耐えきれずにタマキ=サンも意識を手放した。

 

 二人とも対魔忍スーツの優れた防御力と対魔忍としての高い身体能力、そしてエニグマ=サンが殺さないよう手加減したおかげで死んではいない。それだけが不幸中の幸いか、いや敗北した対魔忍がどのような扱いを受けるのかを考えると幸いとは言い難いものだ。

 

「ハアアアアアッ!」

 

「イヤーッ!」

 

「んああっ!」

 

 ミスズ=サンが大剣を伸長させる。至近距離から弾丸めいた速度で迫るそれをエニグマ=サンはブリッジ回避! 先程までの彼であれば切り裂かれていたであろう一撃。しかし今のエニグマ=サンであれば避けることなどベイビーサブミッション! 大剣が元の大きさに戻るよりも速くミスズ=サンへとニンジャ脚力で高速接近、そのまま武器を奪い取りニンジャ筋力を用いて遠くへ投げ飛ばした。

 

「いやっ、こ、来ないで・・・」

 

 あっという間に仲間が二人とも戦闘不能となり頼みの武器も奪われ反撃の手段は徒手空拳のみ。だが彼女には目の前の怪物に勝てるイメージが全く浮かばなかった。初めて経験する圧倒的存在の力に恐怖し、無力な一般人のような怯えた声が出る。

 

「・・・・・・」

 

 それを聞きながらエニグマ=サンは無言でミスズ=サンにじり寄っていった。

 

 

 

 

 

 

 イクサが終わり人目につかないコンテナの陰に彼女は連れ込まれていた。残りの仲間二人は厳重に拘束され地面で寝ている。あの怪我と拘束ではたとえ彼女たちが一流の対魔忍でも脱出できないだろう。

 

 これからどのような目に遭うのか彼女は恐怖に震えながら刑の執行を待つ罪人の気分を味わっていた。いや、本当は分かっているのだ自分はこれから目の前の怪物に人としての尊厳を犯し尽くされるのだと。

 

 しかし何時までたっても拷問も凌辱もする気配がない。恐怖に震える様を見て楽しんでいるのかと思ったがそれも違う。無為に過ぎる時間に彼女は疑問を覚え始める。

 

「あの・・・・・・えっ?」

 

 意を決して彼女はエニグマに語りかけたが、彼から返ってきたの抱擁であった。それに困惑しているとエニグマは言葉を発した。

 

「やっと、手に入れた。もう二度と放さない」

 

 その言葉に彼女は衝撃を受けていた。忘れたことはない、聞こえたのは死んだと思っていた愛する男の声。突然の事態に呆然としていると地面へと押し倒された。

 

「誰にもお前を渡さない。俺の、俺だけのものにしてやる!」

 

「えっ、 んむっ!?」

 

 強引に唇へとキスを行い舌を絡ませる。貪りながら何度も何度も繰り返し続ける。暫くして唇を離すとお互いの唾液が橋を作り重力に引かれて落ちていく。その光景にさらに情欲の炎を燃やしながら彼女の脚を開かせる。扇情的な対魔忍スーツの股間部分をずらし秘所が剥き出しにされた。

 

「きゃあっ!」

 

 いきなりのことに恥ずかしさの混じった悲鳴が上がる。彼はそんなことを気にも止めず自らの性器を露出させた。興奮のあまり先走りの汁がこぼれ落ちる巨大な肉槍は待ちわびた獲物を前に猛り狂っていた。

 

「えっ、ま、待って! ・・・いぎぃっ!」

 

 彼女の制止の言葉を無視して正常位で自らの肉槍を深々と彼女の秘裂に突き立てる。処女膜が裂かれペニスを伝い血が流れ落ちる。彼女の純潔を奪った証を眼にし彼の心は歓喜に震えていた。

 

「ありがとう、俺の為に今まで処女でいてくれて・・・!」

 

 彼女へ感謝の言葉を告げながら、最愛の女の初物を蹂躙する邪悪な悦びが彼の動きをさらに加速させていく。

 

「ハァーッ! ハァーッ!」

 

「あ゛ぁっ! やめっ・・・んひぃっ!」

 

 息遣いも荒く彼女を押さえつけ柔らかな肢体を貪り犯すエニグマの姿はまるで飢えた肉食獣のようであった。さらにその瑞々しい処女地を蹂躙していると、彼女の声にほんの少しだけ混じり始めた快楽の音色にニンジャとなったことで増大した欲望はさらに燃え上がる。

 

「あひいいいいいい! そこっ、だめぇっ!」

 

「あぁ・・・最高だよ美鈴・・・!」

 

 対魔忍スーツの内側へと腕を侵入させ蟲のようにエニグマの指がはい回る。そして目的である美鈴の乳房に行き当たると繊細な指の動きで乳首を捏ね繰り回す。さらに美鈴の肉付きのいい安産型の尻を始めとした体の各部をまさぐっていく。優しく時に強く、美鈴の反応を確かめるような動きでその滑らかな肌をはい回る。

 

「お・・・お願い、もうやめてっ おかしくなるからぁ」

 

 美鈴は懇願しながら羞恥と快楽に染まり始めた顔を手で抑えようとするが腕を拘束されてしまう。愛する女のその表情がエニグマの心を喜悦で満たし情欲をさらに高ぶらせる。もっと感じさせてやろうと執拗なまでにそのたわわな胸を揉みしだく。 

 

「んっ! ひあっ! あっ! やあああああっ!」

 

 唇からこぼれる矯声をさらに楽しむためエニグマは胸への責めを続ける。乳房をこね回してその弾力ある感触と矯声を楽しみ続けた。

 

「んひぁっ・・・やめてぇっ・・・みないでぇ」

 

 顔を快楽と羞恥に染めながら弱々しくお願いしてもエニグマは構うことはない。美鈴の乳房を堪能し終わると安産型の尻をがっちりとつかみ抽挿を加速させていく。美鈴の蜜壺を掻き回し続けるエニグマは股間からぞくぞくと快感が昇ってくるのを感じて、彼女へと腰を押し付けた。

 

「ぐっう、そろそろダスぞ!」

 

「まっ、中はダメ! 赤ちゃんできちゃあああああっ!?」

 

 どびゅうっ! びゅるっ! びゅるるるるるっ! びゅぼぼっ! 

 

 膣内で膨れる肉棒から射精の前兆を感じ取り必死に止めようとするも、美鈴の制止を意に介さず胎内へと情け容赦なく射精を始める。彼女の子供を育む無垢な揺りかごを蹂躙した証を刻み付けるため、睾丸の中身を全て吐き出していく。

 

「オオオオオオオオオオッ!!!」

 

「んっはああああああっ!!! ダメッ! イっちゃうううっ!」

 

 快楽の混じった悲鳴を上げながらも身体は無意識に愛する男の精液を一滴も逃がさないように脚を相手の腰に絡ませる。彼もそれに応えようとさらに腰を押し付ける。しばらく二人は身体を絡ませてお互いに快楽を享受していた。

 

 

 

 

 

 

 射精が終わり膣内から抜かれたエニグマの肉槍はいまだに硬さを保っていた。彼のニンジャとなったことで増幅された欲望は一度や二度の性交では鎮まることはない。さらなる快楽を得ようと邪悪なニンジャ性のままに再び美鈴の身体を貪ろうとした彼を止めたのは、彼女の瞳から零れる涙であった。

 

 熱狂していた頭に冷や水をバケツごと叩きつけられたかのような衝撃が走り、燃え盛っていた感情が一気に沈静化した。先程までニンジャの力がもたらす快楽に酔いしれていた自分が何をしたのか、彼女の身体が教えてくれた。

 

 服はあちこち破れ目は虚ろで息は荒く、股からは自分が注ぎ込んだ精液が破瓜の血と混じりアスファルトの地面を汚していた。

 

「美鈴、すまないっ大丈夫かっ!?」

 

 謝罪の言葉を口にしながら彼女の容体を確認する。性交の最中に怪我をさせてないことを確認し安堵するが、呼吸と共に揺れ動く美鈴の豊満な乳房が目に映ると沈静化したはずの欲望がムクムクとまた鎌首をもたげる。

 

 ゴクリッと生唾を飲み込む。膨れ上がる欲望を自覚しエニグマは即座にアグラ・メディテーションを行いヘイキンテキを保つ。スゥーッ! ハァーッ! スゥーッ! ハァーッ! とチャドーめいた呼吸を重ねながら滾る熱情を鎮めていく。しばらく呼吸の音だけが響いていたが、精神を鎮めるエニグマの腕にするりと美鈴が腕を絡ませた。それに驚いていると彼女はうっすらと笑い言葉を発した。

 

「バカ・・・初めてだったんですよ」

 

「あーーー・・・その、すまない」

 

「もっとロマンチックな初体験を希望してたんですよ」

 

「本当に、申し訳ない」

 

 エニグマはザゼン姿勢を正座へと変えひたすら美鈴へと謝罪を行っていると、美鈴は彼の面頬へと手を添えて嘆願した。

 

「ねぇ・・・お願い、貴方の顔が見たいの」

 

 その言葉にエニグマは覚悟を決めてニンジャ装束をほどいた。現れたのは今までニンジャ装束によって隠されていた精悍な顔立ちと茶色の短髪に鍛え上げられた肉体、記憶より少しだけ成長した愛する男の姿に美鈴は堪らず抱き着いた。

 

「ずっと、ずっと逢いたかった」

 

 美鈴の言葉に、拒絶されるのではないかと不安に思っていた彼は感極まって抱き返した。そのままお互いに見つめ合い、どちらからともなく唇を重ねて舌を絡ませ合う。先程までの一方的な口付けではなくお互いの愛を確かめ合う甘いキスをする。

 

 彼女への愛が沸き上がる邪悪なニンジャ性を粉砕し、人間性を取り戻していく。そのままキスを続けていると情欲に染まった顔で美鈴が彼におねだりする。

 

「ねぇ、今度は優しく・・・してね」

 

 その言葉に応じ彼は今度は優しく地面へ押し倒し愛する女との甘く蕩けるようなセックスを始めていく。そして辺りには愛し合う男と女の情事に耽る声だけが響いていた。

 

 

 

 

 

 

 その後、自身の所属するキングゴリラ・ヤクザクランと暗黒企業の取り引きが失敗し、本来ならケジメ案件でもおかしくはなかったが対魔忍に襲撃されたことと、その対魔忍を三人も捕縛したことで不問に処された。

 

((がははっ! いいぜいいぜ! あの対魔忍を相手にしたんだ、一人くらいなら何も問題ねえ。お前さんの戦利品だ大事にしろよ!))

 

 そして美鈴の所有権を求めると親分は笑いながら認めてくれた。あの夜以来いくつもの情勢の変動や勢力図の切り替わりによって、キングゴリラ・ヤクザクランにも幾度か敵対組織や対魔忍によって危機的状況に陥りかけた事があったが、その悉くを鍛えたカラテで粉砕し勢力の拡大に成功していた。そして彼もその功績により地位を向上させ、今では実働部隊のトップにまで昇っていた。それにより今の彼が住んでいるのほかつての安アパートとは大違いのグレードの高いマンション。そこで彼は美鈴と暮らしていた。

 

 

 

 

 

 

 共にベッドに眠る女の髪をそっと撫でる。指に感じる感触はまるで絹のように滑らかで何時までも撫で続けたくなる。しばらくの間そうしていると女が目を覚ました。 

 

「おはよう、よく眠れたか?」

 

「ふわぁ・・・おはよぅ、ございますぅ」

 

 寝ぼけているのかポヤポヤとした声で返事をする。あまりの可愛らしさにそのまま抱き締める。朝の日課となった行為であるが飽きはしない。むしろ彼女への愛情がどんどん沸き上がる。抱き続けていると意識が覚醒したのか美鈴の顔がイチゴのように赤くなる。その可愛さと幸せに浸っていると、PRRRRRRR! PRRRRRRR! と携帯端末が鳴り響く。すぐに電話に出ると向こうから助けを求める要件が告げられた。それに了承の返事を返すと不安げに見つめる彼女に言葉を掛ける。

 

「仕事が入った。出かけてくる」

 

「また、抗争ですか?」

 

「ああ、他所のヤクザのカチコミだそうだ。それにどうやら俺の同類もいるらしい」 

 

 名残惜しそうに美鈴から離れスーツを着込み身支度を整えるエニグマの顔は、幸福な時間を邪魔されたことで戦意と殺意に満ちている。

 

「安心しろよ俺は強いんだ、邪魔な奴らをさっさと片付けてすぐに戻るよ」

 

「・・・お気をつけて」

 

「イヤーッ!」

 

 心配な表情の美鈴を後目にエニグマは窓を開け一気に跳躍し、魔都・東京に跳び立っていった。

 

 彼は美鈴との幸福を掴み取るためにこれからも戦い続けるだろう。彼と彼女の物語がどのような結末を迎えるのか、それはブッダのみが知っている。だが、願わくば愛し合う彼らに幸あらんことを。

 

 

 

【ユーアー・スペシャル・トゥー・ミー】おわり。

 

 

 




・登場人物

岸元総司(きしもとそうじ) ニンジャネーム エニグマ

アーチニンジャ、オヌ・ニンジャのソウル憑依者の元対魔忍、現ヤクザ。茶髪で身長175cm

元は美鈴の許嫁であったが実家が魔族と繋がっていたことが露見し没落。その後はヤクザのヨージンボーとなったが、仕事で死にかけた時に自らの欲望を自覚しニンジャソウルに覚醒。その後は美鈴との幸福な人生を掴み取るため、今も魔都の闇を走り続けている。

憑依したオヌ・ニンジャの使うジツは、ユニーク・ジツであるモノマネ・ジツ、これを用いて相手のジツやカラテを真似ることで手数を増やすことが出来る。

ジツ:カラテ比率は1:9程度でエニグマ=サンはジツをあまり使わない。 


姫島美鈴(ひめじまみすず)

使用する忍法は"長短乱舞"(タイニーヒュージ)、手に持っている武器の長さを変化させる。欠点は長さを変えるとき少し時間が必要なこと。

きれいな灰色髪でハニーゴールド色の眼の胸や尻が豊満な対魔忍。総司の元許嫁であり、現在は彼と新婚のようなラブラブな生活を送っており、組からはエニグマの嫁として扱われている。

なお他の対魔忍の内、タマキ=サンは闇オークションに出品され獣姦観賞が趣味の変態に売り飛ばされ、ユキコ=サンは組の共有財産として毎日のように犯されるマッポーじみた状況である。救いはない。


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