※この作品はR-18です。

タイマニン・アンド・ニンジャ・クロスストーリー   作:タッツー2号

4 / 9
R-18小説のくせに今回は卑猥が一切ない。これは詐欺では?ボブは訝しんだ。

冗談はさておき今回は長くなったので、エロは#2になります。でも、いつ出来るか作者にもわかりませんので、気長に待ってくれると嬉しいです。





【ニュー・バース・ザ・イービル・ニンジャ】#1

 

 

 

 ニンジャソウル。それは人間に憑依し、憑依者をニンジャに変える。なぜこの世界に現れたのか謎に包まれており、今まで何人もの人間をニンジャに変えて、ソウルの影響で人間離れしたおぞましい姿になった者。ソウルの力を引き出しすぎて、自我をソウルに蝕まれて暴走してしまった者。性格が様変わりした者もいる。

 

 そして今日もまた新たにニンジャとなる者がいた。

 

 

 

 

 

 

 魔都・東京の郊外にとある一件のビルがあった。他の建築物より目立つ巨大ビルディングは、この魔都でも上位に入る企業の本社で在り、普段は多くのサラリマンで賑わうこのビルも、深夜となった今では静寂に包まれていた。

 

 だが、深夜だからこそ不審者対策の警備設備は、幾つも絶賛稼働中であり、警備員が幾人もいる。何か邪な目的を抱いた者がいても容易には侵入できはしない。そう、常人ならば。

 

 暗闇に紛れてビルを囲う防犯用フェンスを跳び越えて侵入する影があった。その姿は全身をピッチリとした黒いスーツで覆われていた。分かるものが見たら一目で気付くであろう。あからさまに対魔忍である。

 音もなく着地を決めた対魔忍は、物陰に隠れると通信機を取り出す。

 

「こちらシャドウ11。施設内への侵入に成功」

 

『こちらシャドウリーダー。打ち合わせ通り警備システムを抑えろ』

 

「了解」

 

 通信機をしまい、彼は稼働中の警備装置の合間を縫って、警備システムのある建物に向かう。

 

 対魔忍たちの今回の任務は、企業経営陣や闇組織の人員の捕縛である。

 

 この企業を運営する経営陣のおよそ過半数は、魔界産の物資の取り引きなどの不正により巨額の利益を上げてきた。そして今回も闇取引のために、暗黒ビジネスに関わる経営陣の人間が会社に残っていた。

 

 対魔忍たちは標的と敵対する企業から手に入れた情報を元に、取引現場にやってくる闇組織の人員を経営陣ごと捕まえることで、彼らの持つ他の闇組織の情報を、芋づる式に手に入れようとする一石二鳥の作戦を実行に移すため、対魔忍の一部隊が送り込まれたというわけだ。

 

 入手したデータにあった、目標である目立たないようカモフラージュされた小さな建物が見えると、彼は静かに近づいていく。そして気付かれないように窓から中をのぞくと、中には二人の人影が監視カメラのモニターをチェックしながら、おしゃべりをしていた。

 

「あーあ……シケてるなぁ」「だな」

 

「女の侵入者でも来ねぇかな」「だな」

 

「女なら魔族でも対魔忍でもいいよなぁ」「それはない」

 

 身体を機械化されたサイバネ警備員は、どう見ても堅気の人間ではなかった。このご時世、高性能の機械式義手や義足は表の世界でも流通しているが、制御室にいる警備員たちのように、一般では入手が困難な戦闘用サイバネを取り付けているということは、まず間違いなく経営陣の暗黒ビジネスに関わっていると見ていいだろう。

 状況判断……警備員の排除を決めた彼は解錠装置を取り出し、電子ロックの解錠が完了すると、そのまま室内へと侵入し警備員に襲撃をかける。

 

「イヤーッ!」

 

「アバッ!?」「な! テメッ! ザッケンナコラー!」

 

 一気にドアを開けると同時にクナイを投擲し警備員のツルツル頭に突き立てる。崩れる一人の横で、もう一人がイスから慌てて立ち上がり銃を突きつけようとするが「イヤーッ!」それよりも速く警備員に接近し、腕と襟首を掴み取り、そのまま床へと頭から叩きつける! 

 

「アバーッ!」床へと叩き付けられた頭蓋が脳味噌ごとセンベイ・クランチめいて砕け散った。警備員の始末を終えると、彼はコンソールの操作を開始した。仲間たちの進入路を開放し、脱出路を遮断する。情報にない秘密の抜け道でもなければ、これで作戦の下準備は完了である。後は本隊の対魔忍たちが闇取り引きのために集まっている標的たちを一網打尽にして終わりだ。

 

「こちらシャドウ11。警備システムの掌握完了、進入路を開きました」

 

『了解。後はこちらの出番だな。それと、施設から逃走する連中がいないかの監視を忘れるな』

 

「了解」

 

 通信が途切れると「はあ~あ」と重たいため息を吐く対魔忍、《石原優二》の気分は空から墜落するかのごとく落下を始めていた。

 

 頭の中でどこで人生の選択を間違えたのかと思うが、答えはすぐに思い浮かぶ。きっかけは中学時代。親に危ないから行くなと言われていた場所に、思春期特有の親への反抗心と好奇心のままに冒険してしまい、闇組織同士の抗争に巻き込まれたことが始まりだ。

 血に沈む身体。流れる血液。遠のく意識。確実に死んだと思った。だが、生きていた。そして何故か忍法に目覚め、闇組織の討伐にきていた対魔忍にスカウトされて、今は見習いの対魔忍として生きている。これが、石原優二という対魔忍の現在だ。

 

 対魔忍養成学校である五車学園に入学することになったが、苦労の連続であった。対魔忍は通常、その身に宿した独自の異能・自然系忍法を中心として戦う事から、どうしても強大な術を持つ者が優遇されるが、中には戦闘に使えるほどの力を持たない忍法もある。彼もその一人であった。

 

 彼の忍法は影を操る物だが、使えても影を纏っての隠密、潜入調査の任務程度であり、対魔忍としての評価は低いものだ。どれだけ仕事をこなしても、正当な評価をされないだけでなく、他の対魔忍から見下されることもある。こんな環境ではやる気など起きる筈もない。

 

 幸いなのは今回の任務の隊長である上忍の対魔忍は、こちらを馬鹿にするような人物ではなかったことだが、任務に同行する同じ下忍の対魔忍たちの何人かは、露骨にこちらを見下していた。

 

 そんな彼らのことを思い出しても不愉快になるだけなので、優二は隊長から与えられた監視の任務に意識を集中することにした。監視カメラから流れてくる映像をしばらく眺めていると、問題なく隊長たちは、地下に隠された違法物資集積場へとたどり着いた。

 

 標的たちを見据えた隊長が威勢よく用件を告げ、下忍たちもそれぞれの得物を構え、忍法の予備動作を行う。それに対して経営陣側の人間は慌てふためき無様を晒しているが、取り引きにやって来たであろうヤクザたちと、その傍に立つフード付きの宵闇色の装束をした者は特に慌てることなく悠然と佇んでいた。

 カメラ越しに見る映像からヤクザたちの様子に違和感を感じるが、どう見ても戦力差は明らかだ。フードの人物が気になるが10人にも及ぶ対魔忍の敵ではない。一方的な蹂躙が始まる筈であった。

 

 

 

 対魔忍たちが標的を捕らえようと一斉に駆け出し、経営陣側の人間が必死に逃げ出そうとする。それに対してヤクザたちは、宵闇フードに一礼すると整然と走り出した。列を乱さぬ逃走である。それを見た対魔忍の一団が捕まえようとするが、そんな彼らの前に宵闇フードが立ち塞がる。

 その姿を下忍たちは鼻で笑った。対魔忍である自分達に、ろくな武器を持たずに挑もうとするなど、馬鹿なヤツだと心の中で嘲笑い、ヤクザの護衛であろう人物を排除しようと、下忍の一人がカタナを振るい──────吹き飛んだ。

 

「は?」

 

 カメラ越しに驚きに目を見張った優二の前で、フードの人物は驚愕の表情を浮かべる残りの対魔忍を纏めて蹴り飛ばした。そして、対魔忍たちを一蹴した人物は、宵闇色のフード付きのコートを脱ぎ捨てると、手を合わせてオジギと共にアイサツした。

 

「ドーモ、対魔忍=サン」

 

 現れたのは腕や脚に青白く輝く装甲を纏う宵闇色の装束。そして顔には装甲と同じ色をした青白く輝く面頬。あからさまなニンジャである!!! 

 

「ニンジャ……ニンジャ!? ナンデ!?」

 

 モニター越しに突然現れたニンジャに、口から驚きの声が口をつく。集積場にいる対魔忍たちも動きを止めて注視する。それを見ながら姿を見せたニンジャは、自らの名を口にした。

 

「キングゴリラ・ヤクザクランのエニグマです」

 

 

 

「グワアアアアア! アバーッ! アバーバババーッ! アババババババッ!」

 

 優二がモニター越しにニンジャの姿を目にして困惑していると、突然ニューロンから発せられる激しい痛みに絶叫! 彼が着ていた対魔忍スーツが変形していく……ニンジャ装束に! 

 

 何が起こっているのか? ニンジャソウル憑依現象か? いや、違う! 彼は既にニンジャであったのだ! 闇組織の抗争に巻き込まれ、一度死した彼にニンジャソウルが憑依して蘇った後、彼はそれに気づかずに生きてきた。しかし、ニンジャと遭遇することでニンジャソウルが刺激され、今! ニンジャとして目覚めたのだ! 

 

 新たなニンジャがこの世に産声を上げている間にも、事態は動き出していた。

 

 

 

 物資集積場の戦闘は一方的な物と化していた。ただしそれは対魔忍による物ではなく、ニンジャのカラテによる物であった。

 

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」

 

 この場に攻め入った対魔忍は隊長格以外は下忍である。今回の任務は下忍たちに経験を積ませる目的も兼ねており、その練度はお世辞にも高いとは言えない。そしてエニグマと名乗ったニンジャのカラテは常軌を逸していた。凄まじい速さで間合いに接近すると一人一人と瞬く間に制圧して、対魔忍たちの意識を刈り取っていく。

 

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」

 

 殴りつけた対魔忍を掴むと投げつけて、こちらに切りかかろうとする対魔忍の視界をふさぎ、後ろに回り込みジャーマンスープレックスで頭から地面に叩きつける! そのまま気絶した対魔忍を砲弾代わりに投げ飛ばして、受け止めた対魔忍に空中回し蹴りを喰らわせる! 縦横無尽のカラテをエニグマは振るい続ける! 

 

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」

 

 今日に至るまでエニグマはニンジャ身体能力にアグラせず、日々カラテを積み上げ、対魔忍や魔族だけでなく、同類であるニンジャとも戦いイクサの経験を積み上げた、その結果、彼はカラテ戦士へと成長を遂げていた。イクサの経験もカラテも足りない下忍たちでは、彼を止めることなど出来はしない! 

 

 すでに多くの対魔忍たちが意識を失くして床に倒れている。最初は10人いた対魔忍も、今では僅か2人しか残っていない。それでも任務を果たすため、隊長である対魔忍は残った下忍と連携して、エニグマへと果敢に攻め立てる! 

 

「土遁・地針原!」隊長格の対魔忍が使用した忍法によって、砕かれた床から土で作られた針が周囲に広がりながらエニグマに迫る! 「イヤーッ!」跳躍回避! 空中へと逃れる! そこに「火遁・猛火弾!」もう一人の対魔忍が空中にいるエニグマ目掛けて火遁によって形成された火球を打ち放つ! 

 

 空中で身動きの取れないエニグマに迫る二つの忍法。このまま針で串刺しか? それとも火球で丸焼きか? 否! 「イヤーッ!」エニグマがスリケンを生成して投擲! 火球はスリケンに風船のごとく割られて消滅! さらにエニグマは針で出来た足場に軽やかに着地のち跳躍! そのまま針の生えていない地面に降り立つと難なく危機を乗り越えた! 

 

「ハアッ!」間髪をいれずに隊長がクナイを投擲! 「ギャアアッ!?」放たれたクナイは寸分違わず突き立った。そう、最初にエニグマに殴り飛ばされた仲間の対魔忍に。

 

「なに!?」

 

「おいおい、仲間に攻撃するなんて酷いじゃないか。もう少し周りを見た方がいいんじゃないか?」

 

 エニグマは着地した場所に倒れていた対魔忍を盾にしていたのだ。味方を傷付けてしまい僅かに動揺する隊長に、盾にした対魔忍を見せつけるように、もう一人の火遁を使う対魔忍目掛けて投げ飛ばす。

 

「うわああああっ!?」「アブナイッ!」

 

 火遁使いの対魔忍が、エニグマに凄まじい速度で投げ飛ばされて悲鳴を上げる仲間を、見捨てることが出来ずに受け止めると、隊長が警告を発した。だが遅い! すでに高速で接近したエニグマは、二人諸とも物資集積場にあるコンテナへと頭から叩きつけ、彼らの意識を刈り取った。

 

「おのれ良くも部下たちを! 許さんぞ! うおおおおおっ!」

 

「そう怒るなよ、イヤーッ!」「グワーッ!」

 

 隊長の忍法が発動してエニグマを刺し貫こうと、今度は土で出来た槍が地面から襲い掛かる! しかし土の槍を足場にしたエニグマは隊長にトビ・ケリを放つ! 直撃するが流石に隊長格だけあって持ちこたえた。

 

「グワッ! 舐めるな……せいやあああ!」「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」

 

 至近距離での戦いに持ち込まれた隊長はカタナを用いて必死に反撃する。対してエニグマは素手のカラテだが、超人的なカラテで獲物の差を感じさせない。刀をよけ、腕の装甲で受け流し、手刀で相手の腕ごと弾く。徐々に隊長の傷が増えていく。ジリープアーだ! 

 

「イヤーッ!」「グワーッ!」

 

 一分も経たずにエニグマのチョップがカタナをへし折り、続けざまに放たれたアッパー・パンチが隊長の顎を撃ち抜く! 

 そして脳を揺さぶられ、前後不覚に陥った隊長へとトドメのカラテ・パンチが放たれた! 

 

「イィィイイイイイイヤーッ!!!」「ア、アッバアアアアアアアーッ!!!」

 

 ドッオオオオオオン!!! 爆発音めいた激突音を轟かせて、衝撃波と共に隊長は水平に吹き飛んだ! 

 トドメの一撃を受け隊長はボールめいて地面を撥ね跳ぶ。積み上げられた物資を弾き飛ばしながらバウンドする体を、エニグマが掴み取り強制停止させた。隊長は血を吐き痙攣しながら、意識をアノヨへと飛ばしかけていた。

 

「フム……やり過ぎたかな? まあ、いいか」

 

 制圧した対魔忍たちを部下に運ばせるため、連絡用の携帯端末を取り出そうと懐に手を入れようとした刹那! 「イヤーッ!」背後から突然のカラテシャウトが響く。アンブッシュだ! 

「イヤ、ナニイー!?」エニグマが即座に迎撃のカラテを振るわんとする。だが不自然にその動きが止まった! 「グワーッ!」そのままアンブッシュの弾丸めいたテンカオ蹴りがエニグマに突き刺さり、タタミ五枚分の距離を吹っ飛んでいく! 

 

 なにがおこったのか? エニグマ=サンのウカツか? いや、よく見てほしい! エニグマ=サンが立っていた場所に蠢く影を! ニンジャ知識が豊富な者なら気付くだろう。この蠢く影が何らかのジツを用いてエニグマ=サンがカラテ迎撃する前に彼の動きを封じ込めていたのだと! 

 

 跳ね飛ぶ最中に謎の拘束が解除されたエニグマ=サンは、体勢を立て直し油断なくカラテを構える。

 その姿を見て、アンブッシュした暗灰色のニンジャ装束を纏う下手忍は顔をしかめた。アンブッシュは決まった。しかし、エニグマ=サンは健在。たいしたダメージを与えたようにも見えない。なぜならエニグマ=サンはウケミで衝撃を分散させて、テンカオ蹴りの威力を削っていたのだ! 

 

 そして、「ドーモ、はじめまして。シャドーリィグルです」アイサツである! アイサツ前のアンブッシュは一度までなら許される。アンブッシュされて、そのまま爆発四散するような三下やニュービーにはアイサツは不要。しかし、相手のニンジャはアンブッシュを受けても健在。ゆえに、アイサツを行う。ニンジャの礼儀だ。

 

「ドーモ、シャドーリィグル=サン。キングゴリラ・ヤクザクランのエニグマです」相手のアイサツにエニグマ=サンもアイサツを返す。例えこれから殺し合う敵だとしてもアイサツされたならアイサツを返さなければならない。ニンジャの礼儀だ。

 

「イヤーッ!」エニグマのアイサツ終了から0.8秒後、シャドーリィグルがジツを発動する! よりも早く「イヤーッ!」アイサツ終了から0.4秒後にエニグマは動き出していた! 同じ手は二度も喰らわない。相手がジツを発動するより速く、タタミ五枚分の距離を詰めてカラテを振るう! 「グワーッ!」意趣返しの、弾丸テンカオ蹴りがシャドーリィグルへと叩き込まれ、彼はタタミ十枚分の距離を地面にバウンドしながら飛んでいく! 

 

 吹き飛びながらもシャドーリィグルはクナイ・ダートを生成して、地面に突き刺し急制動をかける。そのまま体勢を立て直しカラテを構えるが、すでにエニグマは連続前転で宵闇色のカラテ車輪と化して、シャドーリィグルに迫る! 

 

「イヤーッ!」自身に向かってくるカラテ車輪に対して、シャドーリィグルはタイミングを合わせ、迎撃の水平蹴りを放つ! 

「イヤーッ!」「グワーッ!」しかし、エニグマは水平蹴りに使われた足を掴み取ると、前転の勢いそのままに、シャドーリィグルを空中に放り投げる! 

 

 上手く身動きの取れない空中でもがくシャドーリィグルだが、イクサに待ったはない! エニグマは跳躍を行いシャドーリィグルの元にたどり着くと即座にカラテを振るう! 空中戦である!!! 

 

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」「イヤーッ! イ、イヤーッ! ヌウーッ!」シャドーリィグルよりも高く跳躍したエニグマが、落下の勢いと遠心力を巧みに用いて、空中エアリアルダンスでシャドーリィグルを打ち据える! 必死にカラテ迎撃を行うもシャドーリィグルは初めての空中戦のためかジリー・プアー(徐々に不利)! 

 

「イヤーッ!」「グワーッ!」地面まで半ばの所で、遂に防御を崩されて空中回し蹴りが直撃! 「イヤーッ!」さらに地面に叩きつけられた所に、エニグマはカラテ反動を用いて垂直回転からの連続ストンピング! その攻撃を辛うじてシャドーリィグルはワーム・ムーブメントで回避! そのまま距離を取る。

 

 時間にすると2分も経っていないイクサの中で、双方のカラテ差はハッキリとし始める。ニンジャとして目覚めたばかりのシャドーリィグルと、今まで幾忍ものニンジャや対魔忍、魔族などの敵と戦い、イクサの経験を積み上げてきたエニグマとでは、役者が違うのだ! 

 

「さて、お前の所属はどこだ、それとも誰かに雇われたフリーランスか?」

 

「──────」

 

 エニグマがシャドーリィグルに問いを投げる。しかし、シャドーリィグルは沈黙で答えを返す。

 

「そうか、だんまりか。まあ、やることは変わらないがな!」

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 

 言い終わると同時に二忍がカラテをぶつけ合い、絶死のカラテゾーンが形成されるほどの超至近カラテ応酬! 常人にはあたかも猫同士がじゃれあっている動作に見えるかもしれない! だが、もし両者の間にマグロを投げ込めば一瞬にしてネギトロと化すであろう! 極めて致命的な打撃、防御、受け流しが、超高速で繰り返される! 

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 

 シャドーリィグルがエニグマを果敢に攻め立てる! 心臓を穿つチョップ突きと共に、影がヤリに変形して下方からエニグマの胴体を貫かんと迫る! それに対してエニグマはチョップ突きの腕をジャブ・パンチで弾き、僅かに遅れて迫る影ヤリを即座にブリッジ回避! そのままシャドーリィグルを蹴りあげる! しかし、その一撃を影が受け止めて捕らえる! これこそがシャドーリィグルの使うジツ、その名もカゲクリ=ジツ!自らの影を自在に変形させて攻防一体の武器に変えるのだ!最初のアンブッシュの時にエニグマの動きを封じたのも、このジツによるものだ。

 

「ヌウーッ!」ギチギチと捕まえた脚を締め潰そうとする影にエニグマ=サンはなす術なしか? いや、違う! 「イヤーッ!」エニグマ=サンは身体を高速スピンさせて影を引きちぎり、そのまま連続メイアルーア・ジ・コンパッソへと移行する! 

 

 捲き込まれればミンチと化すであろうカラテ旋風が、シャドーリィグルに襲い掛かる! 「イヤーッ!」それに対してシャドーリィグルもまた、連続メイアルーア・ジ・コンパッソで迎撃! 

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 

 このまま永遠に続くかと思われたカラテ車輪のぶつかり合い。一見すると互角にみえたが、その拮抗状態はさほども経たずに、イクサの天秤を傾けた! 

 

「イヤーッ!」「グワーッ!」被打の声と共にカラテ均衡が崩れた! 地面を跳ねて吹き飛ぶのは……シャドーリィグルだ! ノーカラテ・ノーニンジャ。今も昔もニンジャのイクサはカラテを極めた者が上を行く。カラテに劣る側がイクサの勝ちを拾えるはずもない。

 

 まだだ! と痛みに耐えながらシャドーリィグルは体勢を整え「イヤーッ!」「グワーッ!」る前に無慈悲な追撃! エニグマに慢心はない、ニュービーながらアンブッシュの一撃を叩き込むだけでなく、実戦経験不足でありながら己のカラテに抗って見せた目の前のニンジャを、油断なく攻め立てる! 

「イヤーッ!」「イ、イヤーッ!」「イヤーッ!」「ヌウーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」 「イヤーッ!」「グワーッ!」崩れた体勢からカラテ迎撃を行うが、その程度ではエニグマのカラテは防ぎきれない! カラテパンチが、チョップが、膝蹴りが、容赦なくシャドーリィグルに打ち込まれる! 

 

 そして、「イヤーッ!」「アバーッ!」エニグマのカラテ猛攻の前に、遂にシャドーリィグルが、壁に叩きつけられそのまま崩れ落ちた! 「オボボーッ!」ギリギリ爆発四散は回避したが、口からは血の混じった吐瀉物を吐き出し、このまま放置すれば遠からずサンズ・リバーへとゴー・トゥー・ダイブするであろう有り様だ。圧倒的優位に立ったエニグマはそんな状態のシャドーリィグルに言葉をかける。

 

「ニュービーながら中々のカラテだ。なあ、シャドーリィグル=サン。お前がどこの手の者か知らんが、キングゴリラ・ヤクザクランに来ないか?」

 

「アバッ、どう、いう……つもりだ、目的、は……なんだ?」息も絶え絶えに、シャドーリィグルが質問をすると、エニグマは率直に答えた。

 

「スカウトだよ、カラテをぶつけ合えば分かる。ニュービーでありながら、お前は才能あるニンジャだ。そして、将来有望なニンジャであれば是非とも勧誘したい。クランに入るのであれば、お前の命が助かるだけでなく、金も女も手に入る。どうだ、悪い話ではないだろう?」

 

 その言葉に、シャドーリィグルの心の中に邪悪な欲望が生まれ始める。エニグマと戦ったのも、ニンジャとなっても残っていた石原優二の人間性に基づいて、仲間の対魔忍たちを助けるために取った行動であったのだ。

 

 だが、彼は成り行きで対魔忍になっただけであり、心から正義の対魔忍になりたかったのではない。だから、対魔忍を辞めることに心を痛めることはない。そして、チラリと気絶している女対魔忍に目を向ける。今まで自分を馬鹿にしてきた彼女たちを好きに出来ることに、心の天秤が邪悪な方向へと傾いた。

 

 エニグマのニンジャ観察力がシャドーリィグルの僅かな動作も見逃さなかった。彼が一瞬だけ見てしまった女対魔忍が使えると判断したエニグマは言葉を続けた。

 

「もし、お前がクランに入らないのであれば、あの女対魔忍たちはオークションにでも売りに出されるだろうな。だが、お前がクランに入るのなら、あの女たちをお前のモノにできるよう、俺から親分に話をしてみてもいいが、どうする?」

 

 厚待遇を約束するエニグマの言葉は、シャドーリィグルの心に毒のように染み渡る。

 

「ボクは、ボクは……」

 

 心の底からニンジャとしての邪悪な欲望が沸々と湧き上がり始める。金! 暴力! セックス! 自分を馬鹿にした彼女たちをファックしたい! 見下した奴らを殺してやりたい! 

 心からの欲望を自覚して、石原優二としての人間性を踏みにじり、邪悪なるニンジャと化したシャドーリィグルの出した答えは……

 

「ヨロシクお願いします!」

 

 ドゲザであった。土下座。それは謝罪、降伏あるいは忠誠の意思を示し相手に慈悲を乞うための動作である。

 そして、ドゲザの姿勢をとる事は相手への全面的な屈服を意味する。対魔忍、石原優二。否! ニンジャ、シャドーリィグルはエニグマに、キングゴリラ・ヤクザクランの軍門に下ったのである! 

 

 こうして、一つの事件の幕が下りた。対魔忍たちは闇に消え去り、悪は滅びることなく生き続ける。そして、新たに邪悪なニンジャが産声を上げたのであった。

 

 

 

【ニュー・バース・ザ・イービル・ニンジャ】#1おわり。#2に続く。

 

 

 

 

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