※この作品はR-18です。

タイマニン・アンド・ニンジャ・クロスストーリー   作:タッツー2号

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前話の投稿からまた一年近く経ちましたが、まだ生きてます。やっと新しいのが出来たので、お楽しみ頂ければと思います。

あと、エロはやっぱり難しいですね。




【ニンジャ・スレイ・イヤー】

 

 

 

 魔都東京。摩天楼が建ち並び、煌めく都は今日も悪徳と欲望がそこかしこに蠢いている。そんな魔都の一区画にあるチョフ・エリア。

 かつては品の良い富裕層が住んでいたその場所も、今では住人の多くは魔族と結託して違法行為に手を染めて富を築いた、闇カネモチやナリキンたちに取って代わられている。

 彼らは自らの財力を見せびらかすように日々パーティーを開き、一般的サラリマンでは一生掛けてもお目にかかれないような贅の限りを尽くしている。

 

 そんなチョフ・エリアに存在する、とある闇カネモチの屋敷。そこでは決して表沙汰になることはない、闇カネモチたちによる淫欲と退廃をカクテルしたような、ヘンタイ・パーティーが開催されていた。

 

 

 

 

 

 ぐちゅっ、ぬちゅっ! くちゃ、ねちゃ……ねちょおぉぉ。

「ふほほっ、我慢せずに思う存分イキなさい!」

「あっはっ♥️……んあっ♥️……そこだめっ♥️イく! イっちゃううう!」

 

 パンパンパンッ!! パチュン! パチュッ! ズチュン! ズプ、ズポッ! 

「ほれほれ、ここか? それとも、ここがええんか?」

「んあっ! オジさまの太いのが、ふあっ♥️はあああんっ♥️」

 

「でゅふふふ、ワシの種汁を一滴もこぼさずにキチンと飲みたまえよ」

 びゅっ~~~! びゅるるる! どぴゅっ! どぽろろぉ♥️

「じゅずずずっ! んぶっ、えほっ♥️ご主人さまの、まっしろでどろどろなジュース、とっても美味しい♥️」

 

 

 

 屋敷の一部を改装して造り上げられた会場内の至る所で、男と女が一糸まとわぬ姿で互いの身体を重ね合わせて快楽を貪り、会場内は矯声が奏でられ、咽てしまいそうな性臭が漂っていた。

 しかし、そこにいる男たちの悦楽に満ちた表情とは裏腹に、女たちの顔は悦びながらもどこか虚ろであった。

 

 それによく見れば抱かれている女たちは全員、まだ少女といえる若い年頃の乙女たちであり、中にはまだ初潮前であろう幼い子供の姿も見える。常識で語るならば、このような場所に居ていい筈がない。

 それもそのはず、彼女たちは今回のパーティーを主催する闇カネモチの手によって、この肉欲の宴に出される品として違法に集められた少女たちなのだ。

 

 ある者は親の闇金への借金の取り立てで、またある者はアイドルへの勧誘を装ったニセスカウトマンに、またまたある者は人身売買目的の人攫いにハイエースされて連れてこられたのだ。

 そして彼女たちは魔界技術産の違法薬物を使われ、薬がもたらす偽りの快楽に沈みながらその若い性を理不尽に貪られているのだ。

 

 おお、なんたることか。このような非道卑劣がまかり通るとは! ブッダよ寝ておられるのですか! 

 だが、悪徳と欲望が渦巻くこの魔都で、探せばこのような光景はそこかしこに存在する。

 彼女たちも今までこのパーティーに参加させられた少女たちのように、骨の髄まで貪られて消費され、魔都の闇に消えることだろう。しかし、今宵のブッダはうっすらと目を開けていたらしい! 

 

 

 

 CABOOOM!!! 突然の爆発と共にパーティー会場の壁が砕け散る! 

「「「「「ア、アイエエエエエ!?!?!?」」」」」

 いきなりの事態にパーティー参加者たちが情けない悲鳴を上げながら困惑していると、砕けた壁の向こうから一つの人影が歩み出る。

 

「な、なん、何者だ貴様!」大声で精一杯の虚勢を張りながら主催者の闇カネモチの男が襲撃者へと言葉を放つと、その影は答えを返した。

 

「対魔忍、トウカ! 世に蔓延る悪を討つ!」堂々とした名乗りと共に、漂う粉塵を散らして現れたのは凛々しい少女であった。

 背中まで伸びる艶やかな黒髪のポニーテールと、グリーンサファイアのごとく綺麗な瞳。そしてたわわに実った乳房や、女性らしい丸みを帯びた臀部と、身体のラインがハッキリと分かる黒いボディスーツ。そう……対魔忍のエントリーだ! 

 

 

 

 パーティー会場からの爆音を聞き付け、主催者が雇っていた護衛オーク傭兵やサイバネ武装傭兵たちが次々と集まってくる。それを確認した雇い主である闇カネモチが即座に指示を飛ばす。

 

「さっさとあの対魔忍を始末しろ!」

「「「「「ヨロコンデー!」」」」」

 

 ジャカ、ジャキ、ジャッキンッ! ある者は手に持った武器を、ある者は身体に内蔵しているサイバネ武装を展開し、準備を終えた傭兵たちの武器から…………BLATATATATA! 一斉に弾丸が撃ち放たれた! 

 吹き荒れる鉄火の嵐はモータルであれば即座にネギトロめいた死体に変え、直撃すれば例え対魔忍であろうとアノヨ行きは確定だ! ……ただし、当たればの話であるが。

 

「ふんっ! そんなもの当たるかよ!」傭兵たちが撃つよりも速く彼女は駆け出していた。それに遅れて放たれた銃弾のシャワーは、標的の身体を貫くことはなかった。

 そのまま足を止めることなく、自身に向けられる銃火器の弾道を予測しながら回避し、彼女は近くにいた傭兵へと素早く接近する。

 

「セイヤッ!」攻撃範囲に納めた傭兵目掛けて、裂帛の叫びと共に掌打が打ち込まれると、BOOOM! 「アバーッ!」爆発音と共に傭兵の身体が破壊され、断末魔の声を上げながら倒れこむ。

 

 一分も持たずに死んでしまった味方を目撃した傭兵たちの間に僅かな動揺が走り、彼女はその隙を見逃さなかった。

「ヤッ! ハッ! タアッ!」BOOOM! BOOOM! BOOOM! 「「「アッバババーーーッ!」」」素早く接近した彼女の拳が的確に敵の急所を捉え、爆発と共に一撃で傭兵たちが殺され、さらにその数を減らす! 僅かな時間で数人の傭兵たちを永眠させた対魔忍の暴力を前にして、傭兵たちが恐怖からか一歩後ずさる。

 

 ALAS! なんたる皮肉か! 暴力を振るって生きてきた者たちが、身近であるはずの暴力に恐怖するとは! しかしこれもまた道理である。

 彼らにとって対魔忍とは一度相対すれば決して逃れることは出来ない、絶対的な死の化身である。無様に逃げ出さなかった彼らは褒められるべきなのだ。

 もっとも、逃げなかったからと言って彼らの末路に変わりはない。対魔忍であるトウカの宣言通りに、悪としてこの場で討たれるのだから。

 

 

 

「ええいっ! 相手が対魔忍だとしても、あんな小娘ひとりに何を手古摺っている! 何のために高い金を払っていると思っているのだ!」

 

 瞬く間に対魔忍にやられていく傭兵たちをしりめに、主催者の闇カネモチは悪態を吐きながら、対魔忍から逃げきるために、とある目的地へと逃げていた。だが、その逃走も対魔忍が相手では直ぐに追い付かれて終わるであろう。主催者の男の死という形で。

 

 それを理解しているからこそ必死に逃げていると、闇カネモチの背後から声がかけられた。

 

「おや、騒がしいですね。ワタシが少し離れていた間に何かありましたか?」

 

 その言葉に足を止めて振り返り声の主を確認すると、地獄に垂らされたブッダの糸を見つけたかのように、闇カネモチの顔がほころんだ。

 

「おお、ファイヤーアント=サン! 大変なんです! 今パーティー会場が、豊満で性的な対魔忍に襲撃されていて、奴から逃げるのに貴方の力が必要なんです!」

 

「ふむ、なるほど……理解しました。ではワタシをボディーガードとして雇うということで?」

 

「はい、そうです!」

 

「分かりました。では料金の相談は後でするとして、さっさと行きましょうか」

 

「オネガイシマス!」

 

 ファイヤーアントの言葉に従い、主催者の男が目的地へと駆けようとして、「おい、どこに行くつもりだよ」後ろから声が掛けられた。

 闇カネモチの足が止まると、血の気が引いたのか顔が青白く染まる。そのまま声のする方へと視線を向けると、視線の先には傭兵たち相手に戦っていたはずの対魔忍の少女、トウカの悠然とした姿があった。

 その身体には傷一つなく、涼しげな顔をしている。その様子に闇カネモチは舌打ちをした。

 

(くそっ! あの役立たずどもめ!)

 

 心の内で死した傭兵たちへ罵倒の言葉を口にする。奥ゆかしくない行為であるが、闇カネモチからすれば、高い金銭を支払ったのに、足止め一つ出来ない者たちへの正当な評価だと考えていた。

 

「さて……と」そう言いながらトウカが闇カネモチの方へと問いかける。

「素直に情報を寄越すのなら……」その言葉を聞いた瞬間だった。

「まだだ、まだ俺はこんな所で終わらんぞ!」闇カネモチは懐から銃を取り出し、それを迷うことなくトウカの頭に向けるが、「おっと、それはワタシの仕事ですよ」そう言いながらファイヤーアントは、闇カネモチの一歩前へと歩みでた。

 

「ここはワタシが引き受けますので、あなたは避難を優先してください」

「ヨ……ヨロコンデー!」ファイヤーアントは雇い主へと逃げるように指示を出すと、それに従い闇カネモチは構えていた銃を懐にしまい、脚をもつれさせながら目的地に向けて走り出した。

 

「逃がすかよ!」

 それを見たトウカも、躊躇いなく闇カネモチを叩きのめして情報を手に入れようと、拳を構えながら駆け出したその時! 

 

「イヤーッ!」「ンアーッ!」ファイヤーアントの姿が視界から消えた瞬間、ドンッ! と空気が破裂するような音が響き渡り、それと同時に闇カネモチを狙っていたトウカの身体が宙を舞い、そのままゴロゴロと床を転がった。

 

「ぐあっ! ……うっ、くぅ」

 

「ほう……今の一撃で死なないとは、なかなか頑丈ですね。さすがは対魔忍。誉めて差し上げましょう」

 

 ファイヤーアントの口から吐かれたのは褒め言葉であった。しかし、無様に床に倒れるトウカの姿を見るその目は、無能者を嘲笑うかの如く歪んでいた。

 

「て、てめぇ……いったい、何者だ」

 

「ふむ……何者ですか? そうですね、ワタシは…………」

 

 言葉を区切ると、突如としてファイヤーアントの外見が変化する。身に付けていたスーツは赤褐色に黒色のラインが入った装束になり、ノコギリと牙を組み合わせたかのようなメンポが顔を隠すように装着される。その姿は彼がただのボディーガードではない事を見て取れる。

 

「こういう者です」そう、彼はニンジャであったのだ! 

 

 

 

「スゥ…………フゥ」殴り飛ばされた衝撃で、床に倒れていた体勢を立て直して、トウカが構えを取る。そして、その顔には先ほどまであった油断や楽観は消えていた。彼女にとって予想外の強敵である。だがこの程度のアクシデントで止まるような、柔な対魔忍はいない。

 

「ぜえりゃあああああ!!!」キアイを込めたシャウトを響かせながら、ファイヤーアントとの距離を一気に詰めると、その拳を打ち放つ! 

「セイッ!」「おやおや」「ハッ!」「そんな程度では」「タアッ!」「当たりませんよ」果敢に攻めたてるが、その拳は虚しく空を切るばかりであった。

 

「どうしました? 私を倒すのではなかったのですか?」

「くっ……!」

 一撃も当てることができない状況に、トウカの顔に焦りの色が見え始める。「ヤアアアアアアッ!」ジャブ・フック・ストレート。焦りを振り払うように、次々と放たれる高速の連擊! 

 

 しかし、「フフフ、殴るとは……こうするのですよ!」全ての攻撃を悠々と回避しながら、嘲笑と共に放たれたファイヤーアントの拳がトウカの腹部を殴りつける。

「ぎ……ぁあっ!」

 耐えきれずにトウカは口から苦痛の声をこぼし、殴り飛ばされた身体は床を幾度も跳ねていく。

「うぐ……ぐぅ」

 急いで立ち上がるも、その肉体は打ち込まれた痛打に足を震えさせ、痛みに顔をしかめてしまう。

 

「アー、イイ。イイですよ苦痛に歪んだその顔。興奮してしまいますねぇ」

 ファイヤーアントはあえて追撃をせずに、トウカが苦しんでいる様を喜色に満ちた顔で眺めていた。

 そのサディスティックな姿は、表面的には礼儀正しいが、他者を痛めつけて苦痛を与えることが大好きという、ファイヤーアントというニンジャの下衆な性格を見る者に理解させてくれるだろう。

 

 

「さあ、これで終わりではありませんよ。まだあなたを苦しめ足りませんからねぇ」

 

 相手の恐怖を煽るためか、そう言いながらファイヤーアントは一歩、また一歩とゆっくりとトウカに近付いていく。

 

「ふむむむ、次はどう苦しめて差し上げましょうかねぇ」

 

「なめんなああああ!!!」

 

 気合いを込めた叫びと共に、相手が近付くのを待っていたトウカは用意していたクナイを投擲する。

 ガッシャアアアッ! 投げ放たれたクナイは寸分違わず天井の照明器具を破壊すると、辺りが暗闇に包まれる。窓から射し込むわずかな月光だけが廊下を照らし、急な明暗の切り替えがファイヤーアントの目を眩ませた。

 

「はあああああ!!!」トウカは作り上げた僅かな隙を逃さずに、距離を詰めてからの渾身の右ストレートを打ち出す! 今までに彼女が戦ってきた、並みの魔族達であればこれで終わっていたであろう。

 

「ヌウーッ!」しかし、相手は並みにあらず、ニンジャである! 

 自身に迫る致命の拳を、ファイヤーアントはニンジャ身体能力を駆使して回避! ブオン! トウカの放った必殺の拳が空を切る。

 

「図に乗るな小娘ぇ!!!」ファイヤーアントは空振ったトウカの腕を掴み取ると……ドゴム!!! イポン・セオイを決め、彼女の身体を一切の手加減をすることなく床へと叩きつけた! 

 

「カッハ!」あまりの衝撃にトウカは肺の中の空気を強制的に排出させられ、全身を襲う痛みに苦しんでいた。

 

「少し驚きましたよ。しかし…………」ファイヤーアントは悶えるトウカの腕に足を乗せると……ボキンッ! 「ぐっっぁあああああ!」そのまま足に力を込めて、彼女の腕の骨を枯れ枝のごとくへし折った。

 

「ニンジャであるこのワタシに勝とうなど、土台無理なことなのですよ。それにしても…………アーイイ! 少女の悲鳴! スゴくイイ! 興奮する! もっと、もっとワタシに聞かせてください! 貴方の苦痛に満ちた美しい叫びを!」

 へし折ったトウカの腕を、グリグリと脚で踏みにじりながら興奮で息を荒げ、さらなる暴力を振るおうとする彼の背後から…………。

 

「ではオヌシが叫ぶがよい、断末魔の叫びをな」「え?」「イヤーッ!」「グッッッッッワーーーッ!」

 ファイヤーアントは後方からの声に振り返ると、眼前に突如として迫るアンブッシュトビ・ケリを、とっさに両腕をクロスさせてガード! 

 

 CRAAAAAAASH!!! しかしあまりの勢いにそのまま後方へと吹き飛び、壁へと激突していった! 

 

「オ、オノレーッ! なにヤツ!」

 バォウッ! 体勢を立て直したファイヤーアントが襲撃者に向き直ると、そこには一人のニンジャが立っていた。血で塗り固めたような赤黒のニンジャ装束。さらにそのニンジャのメンポにはこう刻まれていた【忍】【殺】と! 

 

「ドーモ、はじめまして」先手を打ちオジギをしたのは赤黒のニンジャだ。「ニンジャスレイヤーです」

 

「な……に? ニンジャスレイヤーだと!? キサマが!? …………ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ファイヤーアントです」

 

 ニンジャスレイヤーのアイサツにファイヤーアントもアイサツを返す。初めてこの光景を目にした者は違和感を感じるかもしれない。当然この後に始まるのは凄惨な殺し合いだ。しかし、アイサツは決しておろそかにできない。ニンジャの礼儀だ。古事記にもそう書かれている。

 

「フン……まさか実在していたとは。噂には聞いていますよ、我らマルカジリ・グループに楯突く狂犬じみたニンジャがいると。ですが、たかが一人で何ができると?」

 

「無論、私のカラテでこの場でオヌシを殺し、ジゴクに送ることができる」

 

 ファイヤーアントの侮蔑のこもった言葉に、ニンジャスレイヤーは殺意に満ちた返答を行い、ジュー・ジツの構えをとった。

 カッ! 窓から射し込んだ月光が【忍】【殺】の二文字を照らす。なんたる恐怖をあおる字体! 

 ごくっ……恐怖か緊張からか、知らずファイヤーアントは息を飲んだ。

 

 そしてニンジャスレイヤーは死神そのものの声で宣言した! 「ニンジャ殺すべし!」「戯れ言を!」

 ダンッ! イクサの先手を取りに行ったのはファイアーアントであった。

「イイイヤアーッ!」ボヴオオオッ! ファイヤーアントの手が激しく発火! 煌々と燃える炎を手に纏いながらニンジャスレイヤーに迫る! 

 

「狂犬はさっさと駆除するとしましょう! 消し炭になりなさいニンジャスレイヤー!」

 ドババババ! 速い! モータルでは視認することすら出来ないであろう、おそるべきファイヤーアントの拳速! だが……そこにニンジャスレイヤーの身体は無い! ニンジャスレイヤーは己に迫る炎の拳を全て回避していた! なんたるニンジャ敏捷性! 

 

「イヤーッ!」そして回避を終えたニンジャスレイヤーが、相手の首めがけてボトルネックカットチョップを振るう! 

「イヤヤヤヤーッ!」当たれば即死につながる一撃を、ファイヤーアントはバク転で回避しながらのスリケン投擲で応戦! 

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは投げ放たれたスリケンを悉く受け止めると、相手へと全て投げ返す! ワザマエ! 

 

 GING! GING! GING! ファイヤーアントの放ったスリケンとニンジャスレイヤーが投げ返したスリケンが、空中でぶつかり合って火花を散らし、変則スリケンラリーが開始される。

 

「イヤアアアアーッ!」「イヤヤヤヤヤーッ!」

 GING! GING! GING! GING! GING! GING! GING! GING! 

 次々とぶつかり合うスリケンから生じた火花が咲き、それがまるでイルミネーションのように暗闇を彩る。ニンジャ同士の苛烈なイクサでありながら、それを忘れてしまいそうな美しさがそこにはあった。

 

 だが今ここで行われているのは、互いの命を掛けたイクサである。モータルには影を捉えることすら困難なニンジャ同士によるスリケンラリー、永遠に続くかと思われたその結果は……。

「グワーッ!」苦痛の声はファイヤーアントの口から漏れた! スリケンラリーを制したのはニンジャスレイヤーだ! 

 

「ヌウーッ!」肩に突き刺さるスリケンを表情を歪めて抜き取り……「ザッケンナコラー!」怒りのあまりヤクザスラングがファイヤーアントの口から飛び出した。

 

「狂犬風情がこのワタシにキズをつけやがって! 灰すら残さず燃え尽きろー! イイイヤアアアーッ!」ボヴオオオオオ!!! 怒りに燃えるファイヤーアントが両腕を構えて腕に炎を灯すと、火炎放射機の如く炎が広がりながらニンジャスレイヤー目掛けて迫り来る! 呑み込まれれば丸焼け確実だ! 

 

 たとえ天井まで跳んで逃れようとしても回避は難しい。ならば窓や壁をぶち破り横に逃げるのか? それとも後方へ退避するのか? ……否! 「イヤーッ!」前だ! ニンジャスレイヤーは炎の津波に突っ込んでいく! ヤバレカバレか? 狂気の決断か? ……それも否だ! 

 

「イイイヤアアアアアーッ!」走りながら天へと構えられた腕が、襲い来る炎へと振り下ろされ……ニンジャスレイヤーのカラテチョップが、自らを呑み込まんとする炎を割った! 

 

「バ、バカナー!?!?!?」驚愕! ファイヤーアントは目の前で起こった事柄に圧倒された。凄まじきはニンジャスレイヤーのカラテである! 

 

「イヤーッ!」炎の津波を引き裂いて接近を果たしたニンジャスレイヤーが、ワン・インチ・パンチを叩き込む! 

「グワーッ!」そのままファイヤーアントはワイヤーに引かれたかのように吹き飛んだ! 

 

(((な、なんというカラテ。まずい、早く体勢を……)))吹き飛ばされたファイヤーアントが行動に移ろうとするが……「イヤーッ!」「グワーッ!」それよりも速くニンジャスレイヤーが放ったサマーソルトキックが、相手の顎を蹴り抜いた! 

 

 BAGOOOM!!! 

 

「グワッ!」上方へと蹴り飛ばされたファイヤーアントが天井に激突する! だが、彼のニンジャ耐久力はニンジャスレイヤーの一撃に耐えてみせた。

 しかし、今の一撃でアノヨへ行けなかったことは不幸であっただろう。何故ならば、これ以上苦しむことなく死ねたのだから。

 

 ゆえに……見るがいい。おお! なんたる無慈悲! 砕けた天井の破片と一緒に重力に引かれて落ちてくるファイヤーアントの落下地点には、カラテを構えたニンジャスレイヤーの姿が! 

 

 そしてファイヤーアントは目が合った! ニンジャに対する憎悪に染まった死神の瞳と! その目はこう告げていた(((ニンジャ、殺すべし!)))

 

「ア、ア、アイエエエエエエ!」それを目撃したファイヤーアントの口から恐怖の悲鳴が上がる! 

「ま、まで、まっでぐれ! ニンジャスレイヤー=サン! はなじを」見苦しい命乞いの懇願。しかし…………。

「イイイヤアアアーッ!」ズドム! 「アッッッバーーーッ!」聞く耳もたず! 構えられた腕が解き放たれ、ニンジャスレイヤー渾身のチョップ突きが容赦なくファイヤーアントの心臓を打ち抜いた! 

 

「バ……バカな、あり……えない。こんな、こんなことが、あっていいはずが。わ、わたしは……ニンジャ、なのに」

 

「ジゴクに行くがいいファイヤーアント=サン。後でオヌシの仲間たちも全て、私が同じ場所へ送ってやろう……イヤーッ!」

 

 ブヂイ! ニンジャスレイヤーは一切の慈悲なく、断末魔の声をあげるファイヤーアントの首を引き千切り、残った胴体を空中へ放り捨てると……「サヨナラ!」CABOOOM! その言葉を最期にファイヤーアントは爆発四散! 

 こうして邪悪なニンジャがまた一人、赤黒の死神によってジゴクへと送られた。

 

 

 

 

 

 

 そして時をさかのぼり、ファイヤーアントが赤黒の死神の手によって爆発四散する少し前に、主催者の男は息切れを起こしながらも、何とか目的地へと辿り着いていた。

 

(((よし! これで逃げ切ることが出来るはずだ! 何としてでも生き延びてやる!!!)))

 ファイヤーアントに後を任せて逃げ続ける事数分後、男がたどり着いたそこは地下駐車場のような場所あり、そこには一台の高級外車が停まっていた。

 それを確認した男は即座に車に近付き、開けられていたドアから車内へと転がり込むように乗り込んだ。

 

「よし、さっさと車を出せ!」「ヨロコンデー!」

 すぐに運転手に命じると同時に、車が発車しようとするが……パァン! と何かが炸裂した音がすると同時に車体が沈む。見ると、車の後方のタイヤが破壊されている。

 

「な、なんだ!? 一体どうなってるんだ!?」

 混乱する男をよそに、車の後方から人影が現れた。それは先ほどファイヤーアントに相手を任せた筈の対魔忍の少女だった。だがその姿は最初の時とは違いボロボロであった。

 

 片腕はへし折られて力なくだらりと垂れ下がり、ボディスーツに隠れて見えないが、身体中には幾つもの打撲傷もある。

 だがその目の光は消えておらず、必ず任務を遂行するという強い意思が宿っている。

 そして彼女は拳を構えながら口を開いた。

 

「どこへ逃げるつもりだ?」

 

「ア、ア、アイエーーーッ!!! 早く、早く車を出せ!」

 

「は、はいいいいい!」

 

 運転手が車を急発進させようとするが……「ぜえりゃあああ!」それよりも彼女の一撃のほうが速かった。

 

 矢のように駆け出したトウカが打ち込んだ拳が、めしゃあ! と車の後部にめり込んだ瞬間……CABOOOM! 

 爆発と同時に車がアクション映画さながらの動きで、吹き飛びながら縦にぐるぐると回転して、そのまま地面へと激突すると、車はスクラップ同然に変貌を遂げていた。

 

「ひぃ、ひぃ。一体何が起こったんだ……」

 そして暫くすると、ひっくり返った車から闇カネモチ這う這うの体で抜け出して来るが……。

 

「よう、さっきぶりだな」

 ざり、と聞こえた足音と声に闇カネモチが顔を上げると、彼の目の前には対魔忍が佇んでいた。

 

「ひ、ひぃ! なんでお前がここに!? ファイヤーアント=サンはどこに?!」

 

「さあな? でもここに来れてないってことは、そういうことなんだろうな」

 

 トウカが話しかけると、男は彼女から逃れようと後ずさるが、目の前には対魔忍。後ろは男の逃走を妨げるオブジェと化した車の残骸。完全に逃げ道を塞がれて、最早どこにも逃げようがない。

 

「ひぃ、ひいいいいい!?」

 それに気づいた男は半狂乱になって暴れた。だが彼女はそれを対魔忍の身体能力を駆使して、易々と押さえつける。

 

「さて、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、答えなかったら……どうなるか分かってるよな」

 

 未だにもがく男の耳元で囁くと共に、ミシミシと万力のごとく肩を掴む力が強まっていく。

 

「ひぎぃっ! ま……まて、待ってくれ! こ、交渉しよう。今までのパーティー参加者の情報も、会社でやった魔族との取り引きの情報も全て教える。だから殺さないでくれぇ!」

 強制的に正気に戻された男が肩の痛みに耐えながら、震える声で命乞いを始めるが、対魔忍の少女の眼は冷ややかであった。

 

 この時点で主催者の男の心はポッキリ折れていた。もし誰かに助けを求めようとしても、すでに他の参加者たちは逃げており、雇っていた傭兵たちも一人残らず全滅している。さらに、頼みの綱であったファイヤーアントも生死不明。ここにはもう主催者である彼と対魔忍の彼女しかいない。ゆえに僅かでも生き残る可能性に掛けることにしたのだ。

 

「パスワードは?」「え?」「パスワード! 金庫やパソコンに設定してるだろ。早く教えろ!」「ハ、ハイィッ!」

 対魔忍の少女に急かされながら、主催者の男は自らの持つ情報を全て提出していく。

 そして必要な情報を聞き終えると、トウカは頭の中で任務遂行のために必要な行動を速やかに判断した。

 

「必要な情報は聞いた。だから、もういいぞ」

 その言葉を聞いて、助かったと思い込んだ主催者の男の顔に喜色が浮かび……BOOOM! その肉体が弾け飛んだ! 

 自身の手が触れている場所を爆発させる。これこそが、サイバネで防備を固めた傭兵たちすらも一撃で葬り去った、彼女の使う火遁忍法である。

 

「よし、主催者の抹殺と情報の抜き取りは終わりだな。あとは被害者の保護要請と五車学園に戻れば任務完了っと……」

 残った任務を終わらせるために、足を進めようとしたその時。

 するり……誰もいなかった筈の背後から、彼女の耳に微かな足音が聞こえた。

 

「アンタは……」

 その音に反応して振り返ると、彼女の視線の先には、ニンジャスレイヤーと名乗った赤黒のニンジャが立っていた。

 

「「………………」」

 お互い無言で見つめ合い静寂がその場を包み込むが、ニンジャスレイヤーはトウカから視線を外し、爆散した主催者の男の亡骸を一瞥すると、興味をなくしたのか彼女へと背を向けて立ち去ろうとする。

 

「あ……待ってくれ!」

 思わずその背に向けて制止の声を掛けると、ピタリとニンジャスレイヤーが足を止めた。

 

「えと、あの、あ~アンタが何者か分からないけど、アンタのお陰で助かったし、任務も達成できる。だから、その……ありがとう」

 トウカにとって、目の前の人物が何を目的にファイヤーアントと戦ったのかは分からない。だが、その結果として彼女は助けられ任務を遂行することが出来るのだ。

 だからこそニンジャスレイヤーにしっかりと聞こえるように、彼女は礼の言葉を告げることにした。

 

「ワッショイ!」

 それに対してニンジャスレイヤーは掛け声一つ。そしてトウカに背を向けて魔都の闇へと消えていった。その赤黒のニンジャを彼女は最後まで目に焼き付けると、自身もまた残った任務を片付けるべく歩き出していった。

 

 

 

 

【ニンジャ・スレイ・イヤー】おわり。

 

 

 

 

 






・登場人物

ニンジャスレイヤー
この世界のニンジャスレイヤー。家族を殺したニンジャ組織、マルカジリ・グループの全ニンジャ抹殺を目的に、目についたニンジャ達もスレイする赤黒の死神。
その正体は未だ謎に包まれている。

ファイヤーアント
ニンジャ組織、マルカジリ・グループに所属するニンジャ。表面上は礼儀正しく振る舞うが、その本質は他者をなぶって苦しんでいる様を見るのが好きなサディストであるが、ニンジャスレイヤーの手によって殺された。

明野トウカ(あけのとうか)
五車学園高等部一年生。触れている場所を爆発させる、強力な火遁忍法の使い手。ファイヤーアントになぶり殺されかけるが、ニンジャスレイヤーの手によって助けられた。


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