東方逃亡失敗談 作:みずねかつは
故にいつもよりほんの少し長めです。
──あら、紫。久しぶりじゃない。
──久しぶりね、幽々子。突然で悪いのだけど、お願いがあるのよ。
──お願い?
──ええ。ある妖精を預かって欲しくて。
──私である理由は?
──その子、言ってしまえば罪人なのよ。その身に余る知識を持つというね。
──なるほど。私のところで亡霊にすれば、生前の知識は無くなるから──
─そういう事。だから、別に生かすも殺すも貴女の自由よ。あの娘みたいに従者にしてもいいわ。
──ふふ、考えておくわね。
△△△△△△△△
「ぐぺっ!」
地面に叩きつけられ、私──ヴィーは情けない声を出した。
紫さんに罰だと言われて放り出されたのは砂利の上。
ここは………?
「あら、貴女が紫の言っていた妖精ね?」
振り返ると、
「私は西行寺幽々子。この白玉楼の主人にして亡霊の姫、ついでに言えば……貴女のお仕置きを紫に頼まれた者よ」
「ゆ……幽々子さんが……?」
「そうビクビクしないの。何も死んだりするわけじゃないわよ」
「そ、そうですか……」
「貴女にはしばらくここで暮らしてもらうわね。その間にお仕置きは考えるわ」
△△△△△△△
現在私は幽々子様に呼ばれて畳の上で正座している。
私の考えが正しければ、おそらくお仕置きとやらが伝えられるのだろう。
「お待たせー」
幽々子さんが入ってきた。片手に黒い瓶を持って。
「貴女の罰は、これを一日一杯飲んでもらうことにしたわ」
「これは?」
「何だったかしら……確か、薬酒の一種?とにかく味が酷いらしいわ。まぁ、物は試しよね」
そう言って幽々子さんは器に酒を注いだ。
「さ、まずは一杯」
「いただきます……」
ええい、こういうのは度胸が大事!!
ごくっ。
「〜〜〜〜〜っっっっ!!」
しょっぱい!苦い!程よく旨味みたいなのがあるのがまた腹立つレベルで味がまとまってない!!まっずぅ!!!!
「ふふ、そんな美味しくないのね。飲まなくて正解だったわぁ」
こ……これ毎日飲むのぉ?
△△△△△△△
私が例のアレを飲むようになってから1週間ほどがたった。
正直つらい。なんだか口の中がいっつもしょっぱい気がするのだ。
「どうでしょう、ヴィーさん」
「これ本当にお塩入れました?」
「え?普通のお味噌汁ですけど……」
「え?」
いや、もう手遅れかもしれない。
△△△△△△△△△
「今日はちょっとお仕置き変えるわ」
「ありがとうございます!!」
「そ、そんなに美味しくなかったのね……」
「控えめに言っても地獄かと。なんだか舌が染まりそうです」
「ふふ……さて。今日のお仕置きは……ズバリ!断食よ!」
「断食……?ちなみに、いつまで?」
「明後日の夜ね」
「明後日!?」
△
「お腹、空いたなぁ……」
胃は鳴りっぱなし。なんてったって、食事時になると幽々子さんが見せつけるように食べてくるのだ。くそう、生殺しだよ……!
でも、それも今日で最後。明日からはまた一杯ご飯が食べられるのだ。
………多分あのお酒も一杯飲むことになるんだろうけど。
「ようむー?」
「なんでしょう、幽々子様」
「この手紙を私の友達に渡して欲しいの」
「その方はどちらに?」
「ええとね、まずこの辺に……マヨヒガっていう、化け猫が住んでるところがあるの。そこのリーダーが私の友達の式の式だから、その子に案内してもらいなさい。あ、あと。貴女が直接渡すこと。いいわね?」
「は……はい。わかりました」
「時間はかかってもいいから、必ず届けてねー」
「流石に日没までには帰ります」
そう言って妖夢さんは出て行った。
「さて。じゃあ、お楽しみね」
そう言って幽々子さんは私の頭を撫でた。
そうして、私の意識は死んだ。
「ふふ。待った甲斐があったわぁ。こんなに美味しそうになるなんて」
幽々子はヴィーの服を脱がせ、机に横たえた。
台所から何本か包丁を持ってくる。
「ふふっ。本当、美味しそう……」
つぷり。と。
ヴィーの未成熟なぽっこりとしたお腹に刃が入る。
幽々子は手慣れた様子でそれを臍の方まで引き下ろした。
むりむりっ♡ぷりゅん♡
裂け目から腸が溢れ出た。
「かっ……可愛いわぁ……!」
幽々子はそれを持ち上げ、腸膜を丁寧に切って外し、一本の長い腸を引きずり出した。
ぺろりと舐めてみる。
「……素晴らしいわ。十分に下味がついてる。やっぱり原液は濃すぎたみたいだけれど……このくらいなら美味ね」
そうしてかぶりつく。
くにっ♡くにくにっ♡
柔らかな弾力がたまらない。
そのままぷつりと噛みちぎる。
「ん〜〜!この感触!堪らないわ、妖精は初めてだけど……やはり、生の体はいいわねぇ」
さらに幽々子は包丁を下に進める。
「あら、可愛らしいコブクロね」
そう言って幽々子は肚の中から子宮を取り出す。
そのまま一口。コリコリとした独特の歯ごたえ。
「美味しい!」
今度は包丁を上に進める。
「私、肺はそんな好きじゃないのよね」
そう言って幽々子は切りとった肺をそこらに捨て置いた。
「やっぱり……ハツが一番よね♡」
送るべき血液のほとんどを失い、脈動の弱くなったそれを幽々子は手に持った。
そのまま中に残った血を吸い出していく。
その姿は悪趣味なグラスでワインを飲むかのようだった。
「ぷはぁ。多少は残しておかないと、食べた時の汁気がなくなっちゃうわね」
そう言って一思いに噛みちぎる。
「あはぁ……♡何度食べてもいいものね、この感触、この美味しさ……♡口の中で脈動するのがまだ素晴らしいわ……これが生命を頂くということなのね」
「両腕と両足は切り取って焼いて仕舞いましょう。骨つき肉はロマンよね」
ばつん!ばつん!みちみち。ぶつり。
「そういえば、胃袋も食べられるのよね……いつもは手間をかけなかったから中身が入ってたけど。今回はしっかりお腹の中身を抜いたし、大丈夫……よね?多分焼けば食べられるわね」
ぐちゅ。ぷりぷり、ぺりっ。
「レバーは生が一番よ。これだけは譲れないわ」
噛みちぎる。みちりと音がする。
「んー!濃厚かつまろやか、やはり幼い子の方が肉が柔らかくていいわぁ」
「あぁ、皮も食べないと」
そう言って幽々子はその小さな未成熟の乳房にかぶりつき、食いちぎる。
「舌触り滑らか。食べるのもいいけど保存しておくのもいいわね……迷うわぁ。どうせならこの際、食べられそうなところは全部試してみようかしら。そうね、それがいいわ。次いつになるかわからないものね」
目玉をくり抜きながら言う。
「それに。残したらヴィーに怒られちゃうわ。肉体も美味しく頂いて、魂は私とずっとお喋り。ふふ、フルコースって感じね。全部、全部、私の物よ」
△△△△△△△
幽々子がおにくを食べている時。
紫は、妖夢の前で手紙を読んでいた。
そこには短く一文が認められていた。
『なるべくその娘を引き留めて』
「ふぅん……。さて。じゃあ、お茶にしましょうか」
「いや、私の用はこれだけなのですが」
「いいじゃない、少しばかり遅くなったって幽々子は怒らないわ。それに……幽々子の昔の話、興味あるんじゃないかしら」
「!?それは…………。少し、お邪魔します」
「いいのよ、気にしないで」
「それに……幽々子の為だもの」
スキマをちらりと見る。
そこには、付き合いの長い紫でもなかなかみることのない──心から幸せそうな笑みを浮かべる幽々子の姿があった。
さて。また性癖のデパートみたいな回を書いたわけですが。
カニバリズムというのは私が大好きなジャンルのひとつでして。
皆さんは『pupa』って漫画、ご存知ですかね?茂木清香さんの。
私は全巻揃えました。兄妹愛、素晴らしいですね。
あのように甘々な喰い愛を書くのは私の夢です。
今回はいささか一方的ですが。
あとは窓口基さんの『カニバリズム!』
あれも良い。モツの描写が丁寧で堪らなく好きです。
あと今回の腸が溢れ出た時の擬音ですが。
あれは漫画家の原崎さんの影響を多分に受けております。
肉感があって堪らんのですよ。ぷるぷるです。
モツドバって単語、流行らないかな……。
ではまた。