「先輩、いったいどういうことなんですか!?今日は私と市内のモールまで一緒にショッピングへ行くって約束してくれましたよね…?それなのに、どうしていつまで部屋でゴロゴロしてるんですか?」
涙をうっすら溜めながら雪菜は言った。しかし、古城は…
「仕方ないだろ、この前「絃神 冥駕」や「ヴァトラー」の奴等が此処で暴れまくったせいでろくにゆっくりも出来ないまま、那月ちゃんには大量の課題を出されたばかりなのに…」
「南宮先生に課題を出されたのはもう数日も前ですよね?。それに私もずっと先輩と付き合って一緒に問題を解いてましたし。あと少しで終わるのをほったらかして昨日、藍羽先輩の所に行ってたからですよね!?せっかく終わるはずだったのに…‥」
「仕方ないだろ、浅葱の奴に今までほったらかした分と手伝ったあげた分の借りを返さないととんでもない事になるわよなんて言われちまえば‥‥、俺だって雪菜とばかり一緒にいられないぞ」
その言葉に雪菜は堪忍袋の緒が切れてしまった。
「もういいです!‥‥、先輩がその気なら私はもう何も言うことはありません。部屋で好きなだけグータラしてればいいんです!!」
そう言うと雪菜は足早で玄関から外へ出て行ってしまった。
「おい‥‥姫柊…。すこし落ち着けって!」
そんな古城の言葉も届くはずも無く、既に部屋に残っているのは彼一人だけであった。
―――――――――――――――――――――――――――――――
(はぁ‥‥喧嘩してしまいました。ですがあれは先輩のデリカシーがなさすぎです...)
雪菜とて古城の言い分には分かる所もあった。先日の絃神島を救う為の命がけの戦い、既に皇帝となっている彼にかかるプレッシャーは彼女らには計り知れない物があるだろう。
だからこそ、他の女性を言い訳にしたときに我慢出来なくなったのだ
第四真祖の監視役としての役割が一番であることは理解している。しかし雪菜自身も初めての恋心と言う事でどうすればよいのか、心の整理が付かないままであった‥‥
肩まで伸びた美しいの黒髪ををさらりと揺らし、『姫柊雪菜』はひとり昼の日差しを浴びながらモール近くまで歩いていた。156㎝のすらりと伸びた肢体が誰の目にも眩しい。セーラー服に青色リボンの胸元をふっくりと盛り上げるのは76センチのCカップの美乳。
青地を基調としたミニスカートから伸びる足、黒のニーソックスとお揃いの色のローファーが彼女の清楚な雰囲気をより高めている。
胸は多少控えめかもしれない。しかし天使と思えるほどの愛くるしい容貌、艶やかな黒髪を併せ持つ。ふとした仕草に“おんな”の色香を漂わせたり、性とは無縁の無邪気な笑顔を浮かべれば男子生徒のみならず大人達ですら、その魅力には道を外してしまうだろう。
「ねぇねぇ、そこの彼女!? 一人で元気なく歩いてるけど、どうしたの?」
「えっ!?」
(私は驚いてしまった。いつの間にマンションを出てから歩きつづけてモール近くまで来ちゃったんだろう‥‥)
そういって可憐な女子生徒は目の前にいる男を見詰めた。
彼は一言で言うならば『とてもかっこいい男子』であった。女子受けするであろう髪型に、鍛え上げた体そして、整った容姿。
しっかりと日焼けし、胸板は厚く鍛えているのであろう。身長180㎝程の長身を誇り、スタイルは抜群。精悍で整った顔立ちにその肌の色とは対照的に白い歯がとても彼を魅力的に見せる。左耳にはピアスそして下品にならない程に制服を着崩し、少し長めの明るく茶色に染めた髪がさらに際立たせる。
通り掛かる女子生徒が一目見れば、興味を必ず惹くであろう容姿…まるでセンターを飾るアイドルの様だ。
暁古城もそうじて見た目の素材は割といい…。
だが吸血鬼体質による日々の慢性的な寝不足により気だるけな表情、そして整えているのだろうか多少寝解せのついた髪型。普通の男性よりは上位であるがそういった理由もあって、以前の人間だった頃よりも不健康そうに見える。だが十分【イケメン】と言える容姿である。
しかし目の前の男…は自分の事を理解しそれを武器として極限まで高めている・・・
彼の名前は『大山 隼人』。彩海学園高等部2年。古城らと同じ年である。そして学園を代表とする、稀代のやり○んである。学園内では言うまでも無く、街においても幾人もの肉体関係を持つ女性達を侍らかす男だ…。
それだけで無く、何やら後ろ暗い連中との付き合いも囁かれる、何かときな臭い一面もあるいう噂もある‥‥。
どちらかと言えば年上が嗜好である彼だったが『雪菜』を見て生じた欲望は彼に、一時の趣旨替えをさせるには十分すぎる魅力であった…。
「はい? 何か私に御用でしょうか?」
「いやさ、別に用と言う訳でもないけどさ、キミがなーんか困ってるように見えてさ」
雪菜はそう答える男を伺うように身構える…‥。
(これは…‥ナンパ?…‥でしょうか。正直、今はそっとしてほしいのですが。また前のように面倒を起こしたら大変ですし...。)
「いえ、何でもありません。今、急いでまして大丈夫です」
そう言って無難な回答でその場を離れようとする雪菜。以前にも吸血種、獣人種からのナンパを受けた際には武力行使を行い、あわや周りにも被害が出るところであったのだ。
(あれ、そういえば…‥ふふふっ。あそこで先輩が初めて私を助けてくれたんでしたっけ。でもその後はパンツを見られたり、出会いは良くなかったのかも)
そう昔の事を考え、自然と笑みが出る。彼女とて本気で古城を嫌いになったはずは無い。多少すれ違いもあるもの時間が経ち、お互いが素直になれば解決するだろう…‥
「お、笑顔になった!。もしかして俺が話しかけたおかげで元気出ちゃったかな。どう、これからカラオケでも、思いっきり歌えばもっと楽しくなるよ」
「カラオケですか‥‥?、申し訳ありませんが、もう大丈夫なので私のことは放っておいてくれませんか?」
「いやいや、キミみたいな超かわいい子を逃したら、男して終わりっていうーかw。カラオケが嫌だったら、そのままホテルでゆっくりしちゃう?。その方がお互いゆっくり話も出来るだろうーしねw」
「…‥‥‥、はいっ…‥!?」
「あれ、もしかして君みたいな超可愛い女の子なのにまだそういう事には疎いのかな?制服を見ればわかるけど、同じ学園の一つ下だよね。高等部にもうすぐ上がるってのに遅いんじゃなかな‥‥?w」
そういって隼人は下卑た笑みを浮かべながら、可憐な乙女に話しかける。まるで可憐な乙女の反応を楽しんでるようであった。
しかし既に経験済みの女性ならば、その逞しい体とアイドル顔負けの彼に言われのあれば、多少卑猥な言葉でも嫌には感じないのであろう。
むしろ自分の事を「可愛い」と話してくれる彼に体を身を任せてもいいと出てくる者はおるかもしれない。
もっとも姫柊雪菜には意中の男性もおり。また何度も危機的な状況から二人で力を合わせ乗り越えてきた絆はそんなにもたやすく破れる物ではない‥‥。
可憐な乙女はそんな傲慢な男の言動を耳にし、その美しい容貌は怒りで真っ赤になる。
何とか言い返してやりたいのだが、脳裏が乱れて上手く思考をまとめられない。それに相手は女性の扱いに長けてる百戦錬磨の男…。
恋愛経験など皆無の雪菜がいくら言っても、聞こうとしないだろう…‥
「っ‥‥‥失礼します!」
一言そういって彼女はその場を立ち去る。以前自分が起こした事を考えれば、こうする事が最善であろう。
だがこの時、雪菜はまだ気づいていなかった。今、大事なのは好意でも怒りでも何でもいい、自分の事を強く印象付けるための言動であり。
隼人が彼女を逃すつもりは毛頭無い‥‥。
「うーん、力尽くでは無理っぽいな…‥ありゃ。さてさて、どうしてやろうかね。さっきカマ掛けたみたいにあーいう超美少女に限って男に免疫が無い場合もあるからな♡」
そう言いながら自然と笑みをこぼしたのであった。