「抵抗するならまた電話しましょうか」とか「緑子! 旦那に電話してきなさきい」などと脅かされながら手際良く後ろ手に縛られてしまった。
恥ずかしさで後ろを向く佳代を、三郎と緑子はあうんの呼吸で脅し、なだめながら前を向かせる事に成功する。
素っ裸で手首を後ろで縛られている佳代、顔を真っ赤にして唇を口に丸め込む、鼻腔が下に引っ張られて縦に伸びている。
鼻腔を縦に伸ばす、女が良くやる仕草である、この仕草は男を喜ばせる、佳代はもちろんそんな事は知らない、しかし、知らないながらも女性フェロモンを出してしまっているのだ。
「今から謝罪して頂きますが、その前に1つ質問があります」
「こ、こんな恥ずかしい格好で謝罪もなにもないですわ! 縄を解いて下さい」
「分かりました、質問に答えて頂ければ、あなたの要望も考えないではありません、どうですかな?」
手を縛らせたのはどう考えても間違いであった、佳代は激しく後悔する、兎にも角にも、この状況を何とかせねばならない、帰りが余りに遅いと幹夫が心配するだろう。
先ほどの電話でもかなり心配しているに違いない、お臍で謝罪しろと言うのなら、謝罪をして早く家に帰るのが懸命だと考えた。
三郎の質問とやらにも答え、謝罪して帰る、それだけだ!
「し、質問はなんでしょうか、言って下さい」
「うむ、では質問させて頂きますよ、あなたの体はとても美しい、それに、なるほど自分で自慢するだけはあって、ヘソも縦長で美しいヘソだ」
ヘソを褒めた後、更に体について追求する。
「しかし……あなたの体を見てまず真っ先に注目してしまうのが、美しいヘソではありません、股間の淡い茂みでもありません」
質問すると言っておきながら、なかなか本題に入らない、三郎の質問がどのような物なのか佳代は皆目見当がつかなかった。
「形の良いお椀のような乳房……このお椀の頂点に陣取る突起物、つまり乳首、この乳首が異様に長いですな」
ただでさえ裸で恥ずかしいのだ、それをコンプレックスである乳首の事を言われ、佳代は死にたい気分になる。
「あなたの長い乳首、生まれながらだとは思っていません、いつからですかな長くなってきたのは、再婚されたと聞いています、前のご主人ですかな? それとも現在のご主人ですかな?」
三郎の質問とはこれの事だったのだ、何というハレンチな質問だろう、佳代は余りの侮辱、余りの情けなさに涙を浮かべる。
実のところ、乳首が長くなったのは幹夫のせいである、前の夫、宗一郎の時は至って普通の乳首であった。
幹夫は夜の営みのたびに乳首を舐めて吸う、その吸う力が尋常ではなく吸うのだ、しかも洗濯ばさみで挟んできたりもする。
そんな事をこの場で白状できる訳がない、答えるのもバカバカしいが何か言わねば帰してくれそうもない、佳代は涙を浮かべながらも
「わ、私の……そこは昔からです、結婚前からです、最初の結婚前からですわ……」
ウソを付いた、ブワッと涙が溢れ出る、言葉に出すと惨めさで溢れてきたのだ。
「泣きながらウソを付くんですな、実は私は知ってますよ、再婚してから乳首が長くなったんです、今のご主人はなかなかの変態ですな、はっは」
「な、何を言ってるんです、わ、私の事はともかく、主人をバカにするのは許しませんよ! そ、それに……結婚前からだと……い、言ってるでしょ……」
三郎が本当の事を知っているハズがないのだ、ここはウソを突き通す。
しかし三郎は本当の事を知っていたのだ……息子の六三四から聞いていたのだ、天真爛漫な佳代はよく六三四の前を下着で歩いたり、風呂上がりにバスタオル1枚でうろついたり……六三四は見ていたのだ。
「息子さんから聞いたんですよ、再婚してから乳首が長くなったとね」
「い、いい加減な事言わないで! 六三四がそんな事言う訳ないでしょ! 私の自慢の息子よ!」
幹夫をバカにされた時以上に激しく言い放つ。
「父親が変態、息子も変態、あなたも変態」
「いい加減にしなさい! 縄を解きなさい、早く!」
「それがこれから謝罪をしようとする者の態度ですかな? 八重樫先生」
「……あ、あなたが私たち家族をバカにするからです、さあ謝りますから、主人が待っているんです」
「では息子の前に行って下さい」
剛志は頭に包帯、手はギプスで固定と痛々しい姿である。
(落ち着いて落ち着いて……ここはとにかく誠心誠意謝る、それしかないわ)
ふんぞり返って立って待つ剛志、股間を少しでも隠そうと内股で剛志に歩み寄る佳代。
「先生、乳首長いっすよねえ」
「ま、豆田くん、そ、そんな事言ってはいけません」
自分より大きい生徒に、頰を染めた顔を上げて注意する。
「さあ息子に謝って下さい」
この屈辱、教師が生徒に謝る、裸で。
(冷静に冷静に、謝って帰る、それだけよ)
「ま、豆田さん、こ、この度は……」
剛志に心を込めて謝罪する佳代、最後は後ろ手に縛られているが腰を曲げて深々とお辞儀をした。