後ろ手に縛られながらもお尻を突き出し、深々と剛志にお辞儀をする佳代は剛志が良いと言うまでその姿勢を続けるつもりだ。
後ろ手に縛られた状態で深々とお辞儀をするだけでも背筋や腹筋が鍛えられていなければできない、そしてその姿勢をずっと続けるのだ、日頃の鍛錬の賜物だろう。
剛志は無言のままだ、時だけが流れる、さすがの佳代も少し辛くなってくる、体が小刻みに震えてくる。
その様子を後ろから三郎と緑子が眺めている、お尻を突き出した姿勢はマンコもアナルも丸見えだ、まるで自分たちに向かって見て下さいとアピールしているようにも見える。
「八重樫先生、お尻で謝ってどうするんですかな?」
そう言って三郎は佳代のお尻を撫でる、佳代は電流が走ったようにビクッと体をさせて
「なぁっ!? 何をするんですか! 止めて下さい!」
折りたたんでいた上半身を起こし、後方にねじり三郎に抗議する。
「それです、それですよ八重樫先生」
「な、何の事です」
「今のあなたは腹部がねじれてヘソが変形している、そういう事です」
三郎の言いたい事がまるで分からない、この男はやはり頭がおかしいのだろうかと佳代は思った。
3人から見ても佳代の顔は三郎の言っている事が理解できていないのが見て取れた、剛志は小学生に教えるように
「八重樫先生、お腹をよじると腹部がよじれますよね、これは理解できると思います、腹部がよじれるとお臍もよじれますよね、これも理解できますよね」
佳代は剛志の方に向き直る、中学生の剛志が41才の大人を見る目、それはまるで、こんな事も分からないんですかと言うような、バカにしきった見下した、そんな目つきであった。
佳代はショックを受けた、子供にこのような目で見られた事など生まれて初めてだった、その目つきを変えたい、変えて欲しいと思った。
思わず愛想笑いをしてしまった、すぐに後悔して取り消す、中学生の子供に媚びを売ってしまう自分がいることに驚いてしまう。
こんなにも弱い自分がいたのか、信じられない気分であった、そして、心の奥にはまだまだ自分が知らない自分、今までの人生で出てこなかった自分がいるのではないかと思い恐怖を覚えた。
大袈裟ではあるが今まで築き上げてきた自分という人格。
朝倉佳代として生まれて剣道に打ち込み、東北の鬼ユリとよばれる、夏木佳代になり六三四を生んで親子3人で幸せだったあの頃。
栄一郎亡きあと、六三四と二人三脚で歩んで、そして今の夫、八重樫幹夫との再婚。
佳代という女として築き上げてきた人生、人格に少し歪みが生じてしまった、そんな不安が生まれた。
子供に見下されるというのは、それほどショックな出来事なのだ。
「八重樫先生、聞いているんですか」
「え、ええ……」
中学生の問いに少し媚びた表情で見てしまう佳代、今度は緑子が剛志の横に来て話す
「あなたにも分かるように一言で言ってあげるわ、アピールよ、ヘソをアピールしながら謝罪するのよ分かる?」
緑子は佳代の事を先生と呼ばなくなっていた、緑子も佳代の事を理解力の低い頭の弱い人間だと思っているのだろうか、佳代は不安になった。
「お臍を……アピール……ですって……」
「そうよ、アピールよ、アピールにも色々あるわね、腰をひねってヘソの形を変えたり、或いは指でヘソを指さしながら、或いは言葉にヘソの単語を入れながら、ま、そこはあなたの工夫次第よ、理解できる?」
佳代は頭がカァーとなった、この女は自分をバカだと言ったのだ、バカという単語こそ使ってないが内容がそう言っているではないか。
「緑子、言い過ぎだぞ、剛志の担任なんだぞ八重樫先生は」
「あなた……でも余りにも理解力が……」
「分かった分かった、ではこうしようか、隣の部屋に行ってお前がやり方を教えたらどうだ、遅くなるとご主人も心配されるだろうし」
遠回しではあるが、やはり三郎も佳代をバカにしていた、佳代はもう頭がパニックになりそうであった、裸になってまで謝罪したのにこの言われようである。
「豆田さん、こんな辱めを受けたんです、もう十分でしょう、帰して下さい」
真剣な表情で頼んだつもりだったのだが、しかし、三郎に対しても媚びてしまった、唇を口に丸め込んで鼻孔を伸ばし、しばらくそのままにしてしまったのだ、三郎を見ながらだ、これは犬がお願いをするためにシッポを振るような物であろうか。
「ご主人も心配しているでしょう、さあ、隣の部屋に行って緑子からヘソ謝罪の仕方を教えてもらって下さい、さあ」
ヘソ謝りなのかヘソ謝罪なのか、間違えたのかわざとなのか、冗談なのか真剣なのか分からない狭間で、しかし事実として言えるのは、これから緑子にヘソ謝罪とやらを教えてもらわなければならない事か。
いや。そもそも、そんな馬鹿げた事をしなければならないのか? 服さえ返してもらえれば、そんな事をしなくても良いのである、服を返してくれないから無理難題を押し付けられるのだ。
「ふ、服を返して下さい、もう帰りますから」
今日このセリフを何回言ったか分からない、その度に、主人に電話を掛けると脅されたのだ、そして今の状況になっている、佳代は追い詰められて判断力が鈍っているのだろうか、普段とは違う環境でIQが落ちているのだろうか。
追い詰められた佳代の決断は。