パチパチパチ__
三郎、緑子、剛志が拍手をする、佳代は少し汗ばんだ顔をして礼をした。
「素晴らしいです八重樫先生、剣道の素人の私でも何か少し分かった気にさせてくれますな」
「ありがとうございます豆田さん、私そろそろ……」
講評をすれば家に帰っても良いと三郎は言った、幹夫も心配しているだろうし、このまま、この雰囲気のまま帰りたいと思った。
しかし、そうはいかなかった。
「八重樫先生、確かに素晴らしい教えだと思います、ただ何というか……中学生に教えるにはもっと分かりやすくした方がよろしいのではないでしょうか」
素人の三郎が東北の鬼ユリとまで言われた佳代にダメだしをしてきた、普通なら怒っても良い場面である。しかし、佳代の明るくカラッとした性格、そして、借金をしている後ろめたさなどがあり
「そうかも知れませんね、もっともっと勉強しなくちゃ」
佳代は場違いかとも思ったが、そう言って片目をチャーミングにつむった。
「素人の私からアドバイスさせて頂きますよ、お臍の位置や動きが大事と言うのなら、その動き、形が目で見てハッキリ分かる方がよろしいのではないでしょうか」
「は、はあ……目で見て……ですか」
「つまり、お腹を出して今と同じ事をしたら良いのではと思いますよ」
佳代は講評をした後でテンションが上がっている、ここはいつもの明るい自分で切り抜けようとする。
「そんなぁ、豆田さん、恥ずかしくって竹刀を落としちゃいますわ、うふ」
茶目っ気タップリに言い放つ、しかし、場が場だけに微妙な空気が漂う。
(やり過ぎたかしら? もっと真面目な態度が良かったかしら……)
何しろ借金の事があるのだ、冗談交じりの返答などするべきではなかったと反省する。
「ご、ごめんなさい、その……神聖な道場でそのような事はできませんので……」
さっきの態度とは打って変わり、シュンとした感じで話す。
「なら、ここでやってみてください、ここは神聖な場所ではありません」
「……豆田さん、剣道はとても礼儀作法を重んじます、そのような格好ではできません」
「どうしてもやってくれませんか?」
「お断りします!」
少し怒を込めて返答する、借金とそれとは別の話である。
「なら仕方がないですな、お宅のご主人に頼みます、奥さんの借金をどうにかしてくれと」
佳代の顔色が激変する、それだけは何としても避けたいのだ。
佳代の脳裏に優しく微笑みかける幹夫が映る、時に肩を落としている幹夫、真剣に話を聞いてくれる幹夫。
優しくて優しくて、大好きな幹夫を悲しませたくないのだ。
「ま、待って下さい、それだけは待って下さい」
この後もやり取りはあったのだが、幹夫を出された時点で1本を取られていたのだ。
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白のブラウスに紺のロングスカート。竹刀を持った佳代は凛として美しく気品もある、ブラウスが胴着、ロングスカートが袴のような感じにも思える。
佳代は耳を赤くして、やや震える指でブラウスの丈を腰の横で結ぶ、白いお腹が見えた、しかしロングスカートがお臍の上まで来ているのでお臍は見えない。
三郎の指示でロングスカートを下げると、ついにお臍が顔を出した。佳代は顔まで真っ赤になる、豆田たちと目を合わせる事もできない。
佳代のお臍は縦長で美しいお臍である、そして、白い肌と相まって気品のようなものも感じさせる、まるで佳代の人格を体現しているかのようなお臍の穴。
あなたたちに見せるのは勿体なくてよ! お臍がそう言っているかのようにツンとすましていて、左右がくっ付いている、あなたたちには中を見せませんというわけだ。
しかし裏を返せば……穴がくっ付いているという事は、普段からお臍を掃除していないという事でもある。一見、気品があるように思えるスマした縦長のお臍であるが、その正体は、とても不潔で臭うヘソの可能性も捨てきれないのだ。
佳代は恥ずかしそうにしながらも剣道の極意を、先ほどと同じようにジェスチャーを交えながら始めた。
すると、三郎の言っていたことが、あながち間違いではないかと思わせるように、お臍の位置と竹刀の位置、竹刀のしなりとお臍の伸びなどが良く分かった。
竹刀をそらせる時はお臍も伸びる、竹刀を横にするときはお腹がややくの字になりお臍も曲がる、まさに剣道の極意はお臍なのだと思わせた。
最初こそ、恥らいながら竹刀を振っていた佳代であるが、やがて堂々として、凛として。
道場で見せるいつもの佳代に戻っていた、体から汗が流れる、ツツーと流れてお腹のくぼみに入る、しかしそのくぼみは左右がしっかりと閉じており、すぐに汗は追い出され下に流れて行った。
この日はこれで帰る事ができた、しかし次の日からが問題である。
「八重樫先生、これから毎日、剛志の言うことを聞いて下さい、そうすれば借金の事は忘れましょう、残高も増やしません」
「借金を忘れてくださるのですか? しかし豆田くんの言うことを聞くとは……どのような……」
「聞ける範囲で構いませんよ、あまりにも無茶な事を言ってくれば聞かなければ良いのです、ただしその場合、借金の残高は増え、あなたのご主人にも相談せねばなりませんが」
つまり借金をかたに、息子の言いなりになれと言うのである、こんなバカな話しがあるのだろうか? 今日のお腹を出して剣道の教えをしたことだけでも、とんでもない事なのに……と佳代は思うのだ。
(バカにしてるわ、舐めてるのよ、誰が聞くもんですか)
返事もうやむやに、佳代は逃げるように帰ったのだった。