※この作品はR-18です。

蒼の薔薇にオリ主が入った話(仮題)   作:黒糖バス

7 / 8
ラナー書くまいと思っていたのに書いてしまった。ごめんなさい好きなんです。


ラナー【前半】

 宮廷のある一室で、ラキュースはこの部屋の主人の少女と話をしていた。美しきアダマンタイト級冒険者として国内外から知られるラキュースでさえ霞んでしまう程の人間離れした美貌を持つ少女。

 

 彼女こそ《王国の黄金》と称される3番目の姫・ラナー王女その人である。

 

 個人的な友人同士でもある彼女達は定期的にこうしてお茶を楽しんでいる。会話の内容は蒼の薔薇のメンバーだったり、ラナーの付き人の少年についてだったりである。

 

「ユリウスにも困ったものだわ。まあ、男の子だから仕方ない所もあるのかもだけど」

「ふふ。そう言うけど、ラキュースの顔を見る限り嫌がってはいないのでしょ?」

「ま、まあそうね。あ、別に恋愛感情とかはないわよ?なんて言うか弟みたいな感じかしら」

「そうなの?まるで恋する乙女の様だったけれど」

「そんなんじゃないって」

 

 彼女達が今話しているのは蒼の薔薇の新人であるユリウスについてである。新人と言っても加入してから半年も経っている訳だが。

 

 少し前に彼と身体を重ねてから、心境の変化があった様で、話をするラキュースの顔は大分緩んでいた。

 

 それに気付かないラナーではない。その王国最高と称される頭脳はラキュースとユリウスの間で何かがあったのだと察した。と言うか誰だって気付く。

 

 ラナーは初めてを終えた女がこんな雰囲気を纏っていたな、と過去の記憶を振り返る。ずっと愛用していた乙女しか身に着ける事が出来ない鎧(無垢なる白雪)も最近は装着していないみたいだし間違いないだろう。

 

 因みに冒険者の間でラキュースが乙女で無くなった事は誰もが察していたりする。

 

「ラキュース。私、ユリウスさんと会ってみたいわ」

「ええ?どうしてよ」

「ラキュースがそんなに入れ込んでいるのよ?興味があるわ。それに、聞きたいこともあるの」

 

 同性のラキュースでさえ見惚れる程の美しい笑顔でそう話すラナー。何となくあの少年が彼女に見惚れる姿は見たくないな、とラキュースは思った。

 しかしそれ以外には特に断る理由もなかった為、彼女は了承の返事をする。

 

「仕方ないわね。彼さえ良ければ今度来る時に連れて来るわ」

「ふふ。ありがとう」

 

 その後、しばらく2人は会話に花を咲かせた。

 

 

「長居したわね。そろそろお暇(いとま)するわ」

 

 お昼時になった頃、ラキュースはそう言って宮廷を後にした。笑顔で彼女を見送ったラナーは扉が閉まると一瞬で真顔になる。

 

「……彼が入ってからラキュース達が怪我を負ったと言う話は聞かないわね。大分危険な依頼を出していたのだけど。…彼が以前所属していたチームも実力の割に負傷する事がなかった様だし、そう言うタレントを持っていると考えて良いわね」

 

 一を聞いて十を知るという言葉を体現するラナーは、ラキュースが決して話さなかったユリウスについての秘密を暴いていく。

 

「……能力の代償は?これだけの力だもの。必ず存在するわ。──駄目ね。流石に情報が少な過ぎる。だけどそれをラキュースが知らないとは思えない。なら、許容の範囲だという事かしら」

 

 大した代償もなく仲間の負傷を防ぐ力があるのなら、それは戦士を育てるには最適の能力と言えるだろう。

 

 一般的には知られていないが、この世界は格上の存在を倒せば倒す程強くなる様な仕組みになっている。

 

 もし、本当にそんな能力があれば格上の敵に勝つ事は簡単だ。少しずつ傷を与え続ければいつかは倒せるのだから。この理屈で行けば小さな子供でさえ魔物を倒しうるだろう。

 

 ラナーは自分の愛する少年の顔を思い浮かべる。彼を強くする事が出来れば彼女と彼との間にある障害は一気に減る事になるだろう。

 

 八本指がほぼ壊滅した事で彼らと繋がりのあった貴族達も同時に処罰されていた。そのお陰で少し前では考えられないほど王国は平和になっている。

 

 ラナーの見立てではユリウスが加入する前の蒼の薔薇にそれを実現する程の力は無かった筈だ。ならば彼こそがこの平和の立役者と言えるだろう。

 

 派閥間のイザコザもいくらかマシになっている。今の状況であれば、クライムに武功を立てさせれば王女との結婚まで運べる算段がラナーにはあった。

 

 

 ☆

 

 

「うわぁ〜、本当に俺が入っていいんですかねラキュースさん」

 

 俺はラキュースさんと共に宮廷、つまり王様の住む城に訪れていた。

 

「ふふっ。そんなに緊張する必要はないわよ。──私とはぐれなければね」

「怖っ。何ですかその意味深な言い方は?!」

「冗談よ。貴方は王女様に呼ばれた正当なお客様なのだから」

 

 そう。今日俺をこの場に招待したのはこの国の王女様である。ラナー王女と言えば王国一の美姫として俺の様な平民にさえ知られている人物だ。信じられない事に美しさでならラキュースさんを上回る程らしい。

 

 そんな人物が俺の事を知っている事さえ驚きなのだが、会いたいと言ってきた事は更にありえない事だ。最初聞いた時にはラキュースさんが揶揄(からか)っているのかと思った程だしな。

 

 

 

 

 顔パスで警備を通過するラキュースさんに付いて歩いていくと、しばらくして目的の部屋に到着した。

 

 扉の前に控えていた使用人に声を掛けると、中に案内される。

 

「いらっしゃいラキュース。それから貴方がユリウスさんね」

 

 部屋の中で俺達を迎えたのは美しい少女だった。俺と同い年くらいだが一瞬で俺とは住む世界が違うと理解した。これが本物のお姫様か。噂以上の美貌である。

 

「一昨日ぶりねラナー。言われた通り彼を連れて来たわよ」

「ふふ。ありがとう。ユリウスさんもいきなり呼び出してごめんなさい」

「いえ。お招きいただきありがとうございます」

 

「さあ座って」と席を勧めるラナー王女に礼を言い、彼女の対面に腰掛ける。

 それから何度かやり取りを済ませた後「それで?」とラキュースさんは話を振った。

 

「ラナー。ユリウスに聞きたいことがあったらしいけど、何だったの?」

「うーん。そうね。悪いのだけどラキュースは少し席を外してもらっても良い?」

「…分かったわ」

 

 なんかよく分からないままラキュースさんが部屋を出て行き、ラナー王女と2人きりになった。

 

「ユリウスさん。早速だけど貴方の持つタレントについて教えてもらっても良いでしょうか」

「え?俺のタレントですか?」

 

 何故この人は俺がタレントを持っている事を知っているのだろうか。

 

「私が調べた感じだと、仲間の負傷を防ぐタレントだと思われるのですけど、合っていますか?」

「な、何故それを?!」

「そしてその代償は何らかの精神汚染。貴方の以前所属していたチームはある日全員が全員が問題行動を起こしていますね」

 

 ラキュースさんが話したのか?いや、いくら親友相手とは言えあの人が俺の秘密を勝手に教えるとは思えない。なら今のはラナー王女が自分で調べたという事か。

 そこで彼女が美貌だけでなくその知性でも知られている事を思い出した。

 

「…凄いですね。ええ合ってますよ」

「やっぱり。良ければ代償に付いて詳しく教えて貰えますか?」

「構いませんよ」

 

 どうせここまでバレているのなら教えても良いだろう。ラキュースさんの親友でもあるし信頼出来る筈だ。俺はダメージに応じて発情

 する事、そしてそれを発散させれるのが俺だけだという事をラナー王女に話した。

 

「ありがとうございます。よく分かりました」

「あの、どうして俺のタレントについて知りたかったんですか?」

「実は私の護衛の子が戦士として伸び悩んでいるのです。もし貴方のタレントが私の考えている通りなら彼が強くなるのに協力して欲しいと思いまして」

 

 成る程そういう事か。確かにそれは効果的だろうな。前のチームも俺のタレントで不死身だったお陰で同期の中でもかなり早く強くなっていたし。

 

 だが、問題もある。

 

 ……護衛って男だよな?流石に男の性欲を発散させるのは嫌なんだが。

 

「ふふ。今何を考えているか分かりますよ。でも残念ですが拒否は認めません。貴方から代償について聞いたらとっても良い事を思いついてしまったのですから」

 

 ────ゾワッ。

 

 直後、室内の温度が一気に下がったかの様な錯覚を覚える。

 その原因は間違いなく目の前の王女だろう。何故だろうか。先程まで可憐なお姫様だと思っていた彼女が、今は得体の知れないナニカにしか見えてきた。

 

 彼女は目だけが笑っていない黒い笑顔を俺に向けてくる。

 

「ユリウスさん。どうか協力して下さいね。断れば、そうですね、貴方のタレントについて法国か帝国辺りに教えましょうか。きっと残りの人生は地獄の様に辛いモノになるでしょうね」

「いやいやいや!いきなりどうしたんですか?」

「ふふっ。私は本気ですよ」

 

 な、成る程。これがこの王女様の本性なのだろう。政治の中心である宮廷には魑魅魍魎が跋扈すると聞いた事があるが、政治と無関係な王女様でさえこう言った裏の顔を持っているのか。これが王族…敵わないな。

 

 天使の様な見た目に完全に油断していた。この悪魔は俺に、他国に一生飼われるか、それとも男の性処理をするかを選択しろと言っているのだ。

 

 どっちも最悪だが、前者は一生続くのに対し、後者は一度だけだ。選ぶならこちらだろう。

 

「くそっ。分かりました。協力しますよ王女様」

「ありがとうユリウスさん」

 

 そう言って笑顔を向けてくるラナー王女は、中身を知った後でさえ可愛いと思ってしまうほど魅力的だった。

 

 

 

 ☆

 

 あの会合から5日後。

 俺はラナー王女と、そしてその護衛のクライムくんと一緒に遠出をしていた。ここでクライムくんに格上の魔物と戦って強くなって貰うのが今回の目的である。

 

 ここには金級冒険者程度の実力であるクライムくんには厳しい様な魔物が跋扈している。一応ミスリル級の俺なら余裕を持って対処出来るレベルだ。

 

 本来なら蒼の薔薇の皆を連れてもっと難易度の高い場所に行ければ効果的なのだろうが、何故かラナー王女が着いてくると言い出した為、彼女達には内緒にしている。

 

 流石に王女を危険な場所に連れてくるとなると止められるだろうからな。ちなみに宮廷の方には市内の見学をすると言って許可を得ているらしい。

 

「クライムくん。さっきも言ったけど今の君はどんなダメージも効かない様になっている。だから恐れず魔物に挑んでおいでよ」

「はい!その、私が戦っている間ラナー様の事よろしくお願いします、ユリウス殿」

「ああ。任せてくれ。と言っても彼女も君同様傷は負わないけどね」

「そうでしたね。すみません。では、行ってまいりますラナー様、ユリウス殿」

「頑張って、クライム」

 

 俺とラナー王女に頭を下げて魔物に突撃していくクライムくん。王女の護衛というからどんな人物かと思っていたが、素直で気持ちの良い少年である。主人の役に立ちたいという思いがよく伝わって来て、個人的にも彼を強くしてやりたいという気持ちになる。

 

 ラナー王女が気に入っているのも分かる気がする。

 

「それで、どうしてラナー王女も来たんですか?命の危険は確かにあまりないですけど、攻撃を受けたら発情するって説明しましたよね」

「ええ、だからこそ着いて来たんですよ」

「…どういう事ですか?」

 

 俺が訊ねると、ラナー王女は少し悩んだ様な仕草をした後、説明を始めた。

 

「邪魔をされても嫌なので説明しておく事にしますね。私の目的は2つあります」

「1つはクライムくんの強化ですよね」

「その通りです。そして、もう一つの目的はクライムを発情させる事です」

「え?」

 

 意味が分からない。それ発散させるの誰だと思ってるんだこの王女様は。もしかして俺への嫌がらせか?と疑ってしまう。しかし続く彼女の言葉でそれは誤解だと理解する。

 

「私はクライムを愛しているのです。そしてクライムも私に特別な感情を抱いています。ですが、私の事を手の届かない存在だと思っているあの子は私に手を出そうとはしません」

「それで発情させて手を出させるって事ですか?でも兵士が王女様に手を出すのって色々不味いんじゃ…?」

「それも問題ありません。貴方達のお陰で今王国は平和そのものですから。大して価値のない第三王女の嫁ぎ先なんて気にする者は少ないでしょう。クライムに強くなって貰って名を上げさせればどうとでもなります」

 

 俺達のお陰で平和と言うのは八本指を壊滅させた事を言っているんだろうな。確かに王女様が護衛一人だけで外出を許されるくらいには平和になった。

 

 しかし、その立役者に対して脅迫してきたこの人は本当に容赦ないな。今語られた思惑と言い、目的の為なら手段を選ばないタイプか。

 

 だが、クライムくんとの事を語るラナー王女は本当に楽しそうで、俺もなんとなく彼女達を応援したいと思った。

 

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