ギャングスタ
パパから貰った封筒には現金5000ドル、リュックにはマリファナが10kgと種と栽培方法が書かれたメモが入っていた。
差し当たってこれで食いつなげってことなのだろう。
出会って1ヶ月程度の、あんな暴言を吐いた俺にここまでしてくれるなんてただならぬ愛を感じるよ。
感謝と自己嫌悪が同時にやってくる。
でももう吐いた言葉は飲み込めない。
さてどうしようか。
ビザも間も無く切れるから程なくして俺は不法滞在者、できる手段は闇に紛れて生きるしかないが、つてなどあるはずもない。
とにかく雨風をしのげる宿が必要だ。
身分証も必要なく安価で泊まれる安宿を探し、長期滞在の準備は整ったが、問題は収入源。
やりたくはないが選択肢はただ一つ、マリファナを売るしかない。
しかし売れば間違いなくギャングやマフィアにバレるのは必至な事くらい、15歳の俺でもわかる。
考えろ。
バレずに売る方法、ネット、いや必要なツールが揃えられない。
手売りなんてもってのほかだ。
バレた時の対処、問答無用であの世行きか?いや、そこでどう立ち回るかが肝だろう。
どう立ち回る?彼らがマリファナを売る理由、金になるから。俺を殺すより生かしておいた方がより金を生むと思わせればいい。
10kgのマリファナを仮に10ドル/gで売ったとして10万ドル。
まあ大金だが、売ってしまえばそれで終いだから俺の必要性はなくなってしまう。
頼みのツテは種と栽培スキルか…。
やるしかないが、どう言いくるめれば良いものか。
冷静になれ、俺。整理して計画を練るんだ。
まずやらねばならないのはパパのマリファナが良いものかそうでないのかがわからない。
上質な物を生産できれば金になるはず。
この界隈で出回っているものを購入して試してみるしかないか。
さて困った。どこで誰に頼めば入手できるのか?情報がなさすぎる。
ネットカフェである程度予備知識を得てから動いた方が良さそうだな。
調べた情報ではデリバリーしてくれる業者がいるとか。
電話番号がいくつかあったが、勿論ガセもあるそうなので片っ端からメモを取り、万が一足がついてもいいように公衆電話を転々とし、受け渡し場所もその都度変更しながら業者とアポを取った。
メモした電話番号のうち8割がガセ、もしくはすでに使用されていない電話だったが、残りの2割はちゃんとマリファナを持ってきてくれた。
値段は20ドル/g前後で、品質はパパの物の方が格段に良く、これはいけるんじゃないか?と期待が膨らむ。
取引した業者に、もっと良いのはないかと尋ねると、最初より良いネタを持ってはくるものの、やはりパパの方が良い。
何度か取引をしていると業者とも仲良くなり、いいネタが入ると俺のところに連絡をよこし、たまに一緒にチルしたりする業者も現れ、そろそろ頃合いかなとパパのネタを吸わせてみた。
仲良くなった業者、仮にマイキーとしておこう。
「なぁマイキー、すごくいいネタをゲットしたんだけど、日頃世話にもなってるし一緒にどう?きっと気にいると思うよ!」
そんな感じでパパのネタをわざわざパケに少量移し替えてマイキーに見せてみる。
パケを開け匂いをチェックするマイキー。
「オゥ!すげぇいい匂い!ハシシみたいだ!こなもすごい吹いてるし、絶対美味しいやつじゃん!でもこんなのここいらでもそうそう出回らないし、出回っても40ドル/gは下らないぜ?どこでゲットしたの?」
「アムス帰りの友人が持ってきたんだよ。まあ吸ってみなよ!ヤベェから!」
適当にごまかし、マイキーに吸わせる。
結果は案の定ぶっ飛んで、しばらく帰ってこなかった。
帰ってきたマイキーはご満悦だったようで、お礼にこれあげるよ。と言って5センチ四方のミシン目の入った紙をくれた。
「これってもしかして…?LSD?」
「そうだよ。上から試供品用に貰ったんだ。やったことない?」
「俺マリファナしかやった事ない。一人じゃ怖くてできないよ。」
「じゃあこんどゆっくりできる時に一緒にやろうぜ。」
そう言い残して、フラフラしながらマイキーは仕事に戻っていった。
よっしゃ!パパのネタはいける!あとは栽培だが、これは今試す時間も場所もない。
場所があったとて、発芽から収穫まで約半年、金がもたない。
これは口八丁でどうにかするしかないか。
パパのテキストをなん度も読み返し、頭に叩き込む。
ふとあることに気づく。
あれ?俺今すごく高揚してないか?窮地に立たされているはずなのに、下手したら死ぬのに、何でこんなに高揚しているんだ?この状況を全力で楽しんでいるような、そんな気分だ。
後で知ることになるのだが、シャブを食った時の万能感そのものだった。
やれる!俺はやれるぞ!
さて次の課題はどうギャングと接触するかだが、既に複数のプッシャーと接触しているから、そいつらのシマ以外で活動するギャングと接触しなければならない。
面が割れたら厄介が増える。
マイキーを呼び出し、マリファナを買うついでという程でギャングの情報を聞き出すことにした。
「マイキーさ、俺そろそろこの宿出たいんだけどさ、このブロックじゃないとマイキーからネタ買えなくなっちゃう?」
我ながら演技派だなと笑いそうになる。
「そんなことないよ!ここからここまでがうちのシマだから、このエリアに入ってればいつでも届けるさ!」
わざわざ地図を使って説明してくれた。
なんて律儀なやつなんだ、ごめんよマイキー下手したらもう会うこともないし、会えたとしても敵対しているギャングだったら戦わなきゃいけないこともあるだろう。
そうならないことを祈るばかりだ。
俺が向かったのは港の近くの如何にも怪しい雰囲気の街。
スラムといっても過言ではない、LAのイメージとはかけ離れた場所だ。
マイキーにもあそこだけは絶対に行くなと言われた場所の一つ。
俺はあえてそこを選んだ。
何でもマフィアとも対等に付き合っている、海賊まがいのギャングがいるとか。
その港町に一歩入ると、まずまともそうな人間が見当たらないし、風俗店やショーパブが昼間っから営業していて、路地を覗けばジャンキーが転がっているか、喧嘩しているか、恐喝しているかのいずれかしか見ることができない。
この世の果てだ。
さてと、早速商売でも始めるか。
俺はホームレスが多くいる場所を選び、あえて5ドル/gという破格でマリファナを捌いた。
理由は単純。ショバ荒らしが目的だから。
相場より安く相場より良いネタを売る。
ギャングからしたら喧嘩を売られているようなものだ。
だが、これはだいぶ分の悪い賭けである。
成功するか否かはまずギャングのボスが馬鹿ではなく、冷静な人間であることが第一条件。
次にパパのマリファナがそんじょそこらのネタではないということに気がつくこと。
そして最後に、俺の行動が理由あってのことだと見抜けること。
これが揃って初めて俺は第一関門を突破できる。
でなければ即その場で射殺されて終いだ。
そしてその時は意外早い段階で訪れる。
「ヘイジャップ!」そう声をかけられ、振り返ると拳が飛んできて顎を直撃。
うずくまっていると車のトランクに積み込まれ、どこかに連れていかれた。
車が止まり、トランクが開けられると手と足の親指同士を結束バンドで拘束された。
どこか倉庫のような場所に放り投げられ、後頭部に銃口のような物を突きつけられた。
薄暗くてよく見えないが、10人ほどのいかつ面々。女も数人混じっている。
「おい日本人、お前わざとうちのシマで商売してただろ?
目的を言え。」
ボスらしき屈強な黒人が喋る。
「生きるためだ。」
「お前のネタ、吸わせて貰ったよ。あの上物をあの値段でか?5倍の値段でも安いくらいなのに、なぜあの値段でさばいた?」
よし!このボスは当たりだ!
「アンタに俺を雇ってもらうためだ。だから敢えてケンカを売るような値段でさばいた。」
「お前バカか?普通なら死んでるぜ?」
「だが生きてる。相当分の悪い賭けだった。だがアンタが馬鹿ではなく、冷静な人間ならこの賭けに勝てると踏んだ。それだけだ。」
「なる程な。いくつか質問させてもらう。まずお前のネタ、どこで仕入れた?」
「俺が栽培した。」
盛大に嘘をつく。
「どこで?」
「前住んでた安宿のベランダ。」
「なぜここにきた?」
「俺はビザが切れて不法滞在者だ。だから職にもつけない。だけど日本には帰りたくない。金が必要だった。」
「本当にそれだけか?にしては周到すぎるぜ?プッシャーにでもなった方が楽だろうに。」
「それじゃあ最初はうまくいってもいずれ落ちぶれる。使い潰されるのはごめんだ。俺はお前たちに金を生むやつだと思われないと生き残れないと思ったからこの行動をとったんだ。」
「最後の質問だ。名前と歳は?」
「それじゃあ質問が二つじゃねぇか。俺はレイ。15歳。」
「レイ、お前の勝ちだ。望み通り雇ってやる。ネタは20ドル/gで買ってやる。言っとくが仕入れ値としては破格だ。それから畑と必要な道具は揃えてやるから言ってくれ。しっかし末恐ろしいガキだぜ。まったく。」
「あとさ、ションベン漏らしたから着替えもらっていい?」
「やっぱクソガキだ。俺はダッチ。よろしくな、相棒。」
切り抜けた。
安堵感で本当に漏らしていた俺は、ビショビヨのズボンを脱いでギャングのアジトへ招かれたのだった。
事務所で着替えると主要なメンバーを紹介され、ギャングの掟や仕事を教わる。
ラグーン商会というこのギャングの主なシノギは魚雷艇を使った運び屋がメインで、この界隈のマフィアからの依頼で成り立っている。
それ以外にドラッグの売買、女衒、ショウビズ界と手広くやっているようだ。
俺にはボディーガード兼見張り役として、K-1選手で韓国系アメリカ人のジョーと、2丁拳銃を操る二の腕から首までタトゥーが入った中国系アメリカ人の女ガンマン、レヴィが共に行動することになった。
俺を最初に殴ったのがジョーで、後頭部に銃を突きつけていたのはレヴィだったそうだ。
「しっかしお前すげーな!本当に15のガキかよ?なんであんなふうに立ち回れたんだ?」とレヴィ。
「昔じいちゃんに教わったんだ。土壇場を切り抜けるのは勇猛さではなく、冷静な計算の上に成り立つ捨て身の精神だってね。爺ちゃんはそうやって大東亜戦争を生き抜いて、腕の立つ猟師として有名だったんだ。」
「それよかさ、レイのネタ吸わせてよ。俺まだなんだよ。ダッチが分けってくれなかったんだ。」ジョーがおねだりするので3人でジョイントを回した。
「キタ!これ…やべえ…。」ジョーはそのまま動かなくなってしまった。
レヴィも「うわー…。」と言ったきり無言…。俺はどうすりゃいいんだ?
とりあえず腹減った。
「ねぇ、この辺で安くて美味い店ない?腹減った。」ダッチに尋ねると。「それなら俺らの行きつけに案内してやる。お前の歓迎会といこうじゃねぇか。その前に銃を撃ったことはあるか?」
「爺ちゃんの猟銃くらいなら数回。獲物に当たったことはないけど。」
「まあ経験無しよりはマシだな。これ持っておけ。いくらボディーガード付きとは言え此処じゃ自分の身は自分で守るのが基本だ。弾はいくらでもあるから後で練習しておくんだな。」
ダッチは俺にサブマシンガンを寄越した。
……。
「やっぱさ、抗争みたいなのってあるんだよな…。」
ビビりながら尋ねる。
急にギャングの一員であることのリアルが突きつけられた実感が、今更ながら沸き起こってきた。
「当たり前だ。何言ってんだ今更。ここいらで銃声を聞かない日は無いぜ。早いとこ腹くくらねぇとマリファナの芽が出る前に死んじまうぜ。」
ですよねー。今度はデカイやつを漏らしてしまいそうだ。
俺がこれから先の人生を若干憂いていると、長いブロンドヘアーにキャミソール、ミニスカートといういかにもビッチな格好の女、エダが割って入る。
「それよりダッチ、歓迎会の前にそいつになんか履かせてやれよ。可愛いモノが見えてっから食っちまいそうだ。」
発言も期待通りのビッチだ。
「エダだっけ?俺をあまりからかわないでくれ。ちょっと勃起した…。ダッチ頼む、なんか履くものをはやく…。」
「オーライ、ちょっと待ってなボーイ。」
ダッチはアジトを出て行った。
エダは俺の下半身と顔を交互に眺めながら悪い笑みを浮かべ、「しっかしさっきまで見事な掛け合いしてた坊やがこんな恥ずかしそうな顔見せてるなんてねぇ。可愛いじゃねぇか。ギャップ萌えってやつ?やりたくなったら私のとこにおいで。アンタのピグミーマーモセットいつでも可愛がってやるよ。そんで下半身丸出しでも堂々としてられる男に早いとこなっちまいな。」なんて言いながら、たわわな胸を俺の顔に押し付けてくる。
フル勃起した。
「アッハッハ!もう可愛がってもらいたいのかい?しょうがない子だよまったく!歓迎会が終わってアンタが潰れてなかったら部屋に行ってやるよ。」
完全に遊ばれてるな。
悔しいが今の俺は所詮この程度なんだと認め、絶対にこの世界で生き残ってやると心に決めた。
やがてダッチが戻り、用意してもらった服に着替えた頃、ジョーとレヴィもあっちから戻ってきた。
「あーヤバかった…。草でここまでぶっ飛んだの久しぶりだぜ…。しばらくいいや…。仕事に支障が出ちまう…。」とレヴィがぐったりしながらぼやく。
「俺は毎日でもやりたい!ちょー良かった!キノコと一緒にやったらやばそうだね!レイ、今度キノコパーティーしようぜ!」ジョーは相当気に入ってくれたようだ。
キノコ?少し前の出来事をふと思い出す。
「ジョー、キノコって幻覚系のキノコ?」
「ヤー。ジョー、キノコのファン!レイはやったことない?」
「俺はマリファナしかやったことないんだけど、こんなのもあるよ。」とマイキーから貰ったLSDを取り出す。
「マジかよ⁉︎いいもん持ってんじゃん!」食いついたのはジョーよりもレガーチという運転手要員のガチジャンキーだった。
「貰ったのはいいんだけど、やったことないから一人でやるの怖くてそのまんまなんだ。今度誰か一緒にやってくんないかなーって。」
「いいぜ!でも今味見したい!絶対したい!」とレガーチが前のめりでくるので、一枚切り取って渡した。
ものの数分で目がいっちゃってる。
こんななっちゃうんだと驚いた。
「なぁジョー、これ大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫。絵柄的にソフトなタイプだと思うよ。俺は抜けぎわがキツイから滅多にやらないけど、楽しいよ。ただ継続してやるとフラッシュバックが大変だね!」
と教えてくれる。
「さてさて諸君、ぶっ飛びすぎる前にイエローフラッグに行こうじゃないか。例の歓迎会だ。」
ダッチがグダグダになる前に仕切ってくれた。
一同イエローフラッグというラグーン商会行きつけの店に向かう。
アジトからイエローフラッグ迄は徒歩圏内。
主要メンバーと俺で10名のギャングが街を歩くと、人集りが十戒の海のようにサッと割れる。
まるで自分が強くなったように一瞬感じてしまうが、それはまやかしであると自分に言い聞かせた。
実際そうなのだから致し方ない。
10分程でイエローフラッグに到着。
扉を開けると、なんだこの店は…。カタギらしき人が一人もいない。
驚いて立ち尽くしていると、ダッチが背後から語りかける。
「驚いたかね?ジャンキー、フッカー、マーシー、ジョブキラー、ギャング。悪の見本市みてぇだろ?まぁだいたい見知った奴らだから心配すんな。楽しくやろうぜ?」
いやそんなこと言ったってなぁ…。
意を決してカウンターに座る。
みんな想い想いの酒を注文していざ乾杯。
俺はビールを頼んだ。
隣に座った男はなんだか他のメンバーとは雰囲気が違っていた。
なんかまともそうだ。
「なんか雰囲気がみんなと違うね。ラグーン商会に来る前はどこに?」
声をかけてみた。
「やぁ、僕はベニー。前はフロリダ大学さ。火遊びが元でマフィアとFBIを同時に怒らせちゃってね…。」
「で、トランクに詰められて海に沈められそうになったところを私に助けられたってわけさ。クソ話がよしなよベニー。昔話をするほど歳食っちゃいねぇだろ?」
レヴィが割って入る。
そこに更にエダが「レイ、あんま飲みすぎんなよ!この後勃たなくなっちまうぜ!」と更に割り込んだ瞬間、レヴィの眉間にシワがが入った。
怒りの混じった笑みを浮かべ、新しいグラスに自分と同じ酒を注いで俺に渡す。
「ビールなんざピスと一緒さ。いくら飲んでも酔えねぇんだよ。男ならコレだろ?」
「これ何?」
「ラムさ。飲んだことねぇの?まぁ女の勝負も受けられねぇ玉無しってんならしょうがねぇ、そんときゃスカート履いてリボンもつけて「やってやるさ!!!」カチンときた俺は立ち上がり、ラムを一気に飲み干した。
強い酒なんて焼酎くらいしか飲んだことなかった俺は、倍のアルコール度数のあるラムに一瞬でノックアウト。
朦朧としている中目に入ったのは、してやったぜと言った表情のレヴィと、大人げねぇなぁと言った笑みを浮かべるエダだった。
項垂れている俺にジョッキに入った氷水を差し出される。
持ってきてくれたのは銃よりもエレキギターが似合いそうな優男、ロットン。
「レヴィ、幼気な少年に無茶をさせるのは今宵の月がどんなに美しかろうと神は許さない。貴様に下される神罰を噛み締めながら懺悔しろ。」
中二病的な発言を言い放ち自分の席に戻ると、酒しかないこの店で持参したミルクを飲んでいる。
「ロットン、ありがとう。あんた酒飲まないのか?」
死人のような声で感謝と疑問を投げる俺。
「俺は下戸だ。ビール一杯で吐く。」
かっこ悪い発言をかっこよく発言するロットン。この時だけはかっこよく見えた。
俺が正気に戻ったのはジョッキの水を3杯飲んで、噴水のようなゲロを4、5回吐いてから。
「大丈夫かね?レイ。」
ダッチがニヤニヤしながら声をかけてくる。
「いや参ったよ。マリファナだけじゃなく、酒も強くないとこの稼業は成り立たないんだな…。せいぜい精進するよ。」
「良い心がけだ。そろそろ河岸を変えようと思うんだが、行けそうか?」
「ラムが無い所ならついてくよ。」
次に連れてこられたのはローワンというアフロヘアーの派手な怪しい黒人がやっているストリップ劇場。
え?女の子もいるのに?と戸惑っていたが、みんな何食わぬ顔で入っていく。
「いよぉ!レヴィ。エダにシェンフォアも!やっとウチで踊ってくれる気になったのかい?大歓迎だぜぇ!」
ローワンが冗談なのか本気なのかわからない台詞で出迎える。
「毎度毎度しつけぇんだよ。誰が人前でケツ晒すかってんだよ!」
レヴィが噛み付く。
いや、そのハイカットのホットパンツじゃ半分晒してるようなもんじゃん!というツッコミは誰一人としてしなかった。
もう一人の女のメンバー、ゴスロリメンヘラーのソーヤーはローワンにスルーされたことにショックを受けて、終始膝を抱えて鬱モードに突入。
聞けばいつもの事らしいが、ほっといていいのか?
ショーを見ながら雑談するのがラグーン商会のこの店の利用法らしくみんな女の裸よりも話に夢中なようだが、俺は初めてのストリップである為最前列でかぶりついていと、面白がってエダがからかいに来る。
「なんだよぉ〜レイ。すぐ側にダンサーよりセクシーな私がいるってゆうのにさぁ、しかもそんなギンギンでさ!ヤキモチ妬いちゃうじゃないか!」
「あったりまえだろ!エダ、口ばっかで脱いでくんないし!」
「おやおや?昼間の教訓をもう活かしてるつもり?頑張ってる感じがまた健気だねぇ。」
確かに俺は虚勢を張った。
本当はとても恥ずかしかった。
だが全ては慣れなんだと、場数なのだと悟ったのだ。
エダとのやりとりにダッチが助け舟を出してくれる。
「レイ!悶々としてきたんなら一発抜いてこいよ。言い忘れてたんだが、イエローフラッグの二階は娼館だ。俺の名前を言えば多少の無理は効くはずだ。」
俺は本当に抜きに行こうとしたが、何故か一瞬冷静になり思い止まった。
何となくダッチの言動が気になったからだ。
ローワンの店に来れば俺が悶々とするのは分かり切っている。
そこでダッチの名前を使って女を抱けば借りが生じ、その小さな借りがこの先どんどん膨れ上がる気がして堪らない。
きっと何か裏があると踏んだ俺は丁重に断ると、ダッチは俺を別の席に連れて行き、ニカッと笑ってこう言った。
「レイ。お前は本当に大したやつだ!お前が女を買いに行っていたら俺はお前を使い潰すつもりでいた。欲に駆られたやつは必ず何処かで自滅するからな。お前はうちの構成員ではなく、ファミリーとして歓迎する。試すようなことをしてすまなかったな。よかったら何故踏みとどまったのか教えてくれよ。」
「ったく、人が悪ぜ。直感だけどダッチの言動に違和感を覚えたのと、人の金や顔使って女買いたくないって思ったからかな。」
俺はこうしてギャングになった。
こうせざるを得なかったとはいえ、よくもやり遂げたものだ。
明日から俺のシノギ、マリファナの栽培が始まる。
そして過酷でエキサイティングな人生の幕開けだ。
「え?今の作り話じゃないんだよね?ギャングって…。まじ?」
「マジ。これから聞きたくなくなるような話が満載だけど、どうする?」
「聞くわよ!でも怖いから体くっつけてていい?」
そう言ってサツキはベットに横になってる俺の隣に寝そべる。
いい匂いだ。
そっと髪を撫でながら続きを話すとしよう。
ギャングスタ 終