休暇
2週間ほどの休暇をもらった俺は、この期間でどう自分を磨こうか考えた。
一番目に付くのはやっぱり身体と身体能力だ。
思い立ったら即行動。
早速ダッチに相談した。
「ねぇダッチ、身体を鍛えたいんだが、格闘技とか教えてくれる所はないか?」
「ん?格闘技ねぇ。お前さんそれはどう言った理由でだ?」
「見ての通り俺の身体は貧弱だ。それに自分の身は勿論、相棒も護ってやれるくらいになりたい!」
「ほう。良い心がけだな。うってつけのところがあるが、生半可な覚悟で行くと死ぬが、どうする?」
え?死ぬの?一瞬の迷いをダッチは見逃さない。
「やめとくか?」
「いや、行く!どうせ俺は死人だ。」
腹の決まらぬうちに、咄嗟に言葉が出た。
もう吐いてしまったから呑み込めぬ。
「そういやレイ、お前さん三島由紀夫って小説家知ってるか?」
まさかこの地で三島由紀夫の名前を聞くことがあろうとは、驚きを隠せない。
金閣寺、豊饒の海、憂国、命売りますなどなど、難解ではあるが描写表現と美しい日本語においては右に出る者はいない。
サラと初めて肌を重ねた夜に読んでいたのも彼の作品だった。
「知ってるも何も、俺が敬愛している人だ。なぜ彼のことを?」
「俺はこう見えて博識な方でね。その敬愛している方と同じようなことをやってる奴を紹介してやる。良き商売相手でもあるから失礼のないようにな。」
「つまり軍事訓練?」
「その通り。軍人崩れのロシアンマフィアなんだが、奴らは第三次世界大戦をおっぱじめたくてウズウズしていて、定期的に訓練をやっててな、それに参加できるよう取り計らっても良い。」
ダッチはどうする?といった眼差しでこちらを伺っている。
「勿論やるさ!願っても無いうってつけの場所だね!」
三島由紀夫と同じような体験ができると、少々浮かれ気味に返答した。
「ok、但し、ガンジャは持って行くな。まぁ持っていったところでやってる暇なんてないと思うがな。」
え?駄目なの?そりゃそうか…。
ダッチはおもむろに電話をかけ始めた。
「なぁバラライカ、うちの新入りを鍛えてやって欲しいんだが、頼めないか?」
結果は二つ返事で了承となり、早速身支度を済ませロシアンマフィアのオフィスへと送り込まれる。
もうビビってる暇すら与えないこの対応、感服せざるを得ない。
バラライカの書斎に通されると、重厚な木製の机と本棚があり、本棚には分厚い本が陳列され、机の傍には屈強な男が微動だにもせず立っていた。
その男はボリスというらしく、顔面には刀傷、威嚇などしなくても充分なほどの破壊力を持ち、ダッチが気さくに世間話をしても軍人のような堅苦しい言葉で返してくる。
やがてバラライカが書斎に入ってくると俺は恐怖の渦に飲み込まれそうになった。
80年代に流行ったような肩パッドの入ったスーツスタイルにハイヒール、長い髪は一つに束ねられ太めの葉巻をくわえ、そして目を惹く拷問による無数の火傷。
そしてそれを差し引いてもなお美しい出で立ちに、俺は恐怖と性欲を覚えた。
「あなたがダッチのところの新入りね?思ったよりずっと若いのね?可愛い盛りじゃない。良いのかしら?ウチの訓練に参加なんてさせて。」
薄ら笑いながらバラライカがダッチに問う。
「手前から言い出したんだから構いやしねぇよ。みっちり鍛えてやってくれ。それとは別に三島由紀夫って知ってるか?」
「ダー。知ってるわよ。彼の人の武士道はロシア人には殆ど理解できないでしょうけど、私はとてつもない美意識と国を憂う心を感じたわ。で、それが何か?」
「大した意味はないさ。レイが彼のファンらしくてね。まぁ立派な軍人に仕立て上げてくれよ。」
そう言ってダッチは退室した。
俺はまだ一言も発せず立ったままだ。
「レイ、っだったかしら?貴様は先ず基礎体力を向上させろ。でないと本当に死ぬ。同志軍曹、貴様が面倒を見ろ。基本動作と軍人としての心得も叩き込め。それができるようになったら私の元へ連れて来い。CQCを叩き込む。」
「了解であります。カピターン。」
その言葉を最後におよそ半年に及ぶ基礎訓練が毎日ほぼ不眠不休で続けられ、俺の心身は見違えるように鍛え上げられ、身体はバッキバキに、心は鋼のようになっていた。
当初2週間の休暇のはずだったのはいつの間にか忘れ去られ、ボリスによって徹底的にしごかれたがだがまだ足らない。
これから種まきのシーズンまでみっちり、人の殺し方をバラライカから直接教わるのだ。
近接戦闘における基本訓練に始まり、関節の外し方、首の折り方、目のくり抜き方、金たまの潰し方、銃剣、ナイフ、軍刀、トラップ、拷問、それをホテルモスクワに楯突いた人間を用いて実技訓練を行う。
つまりは人殺しだ。
最初は大いに躊躇った。
柱に括られた人間を銃剣で突き刺すというものだったのだが、上手く肋骨の間を狙わないと刺さらない。
これに躊躇いによる手加減が加わり、余計に上手くいかず相手を苦しめてしまう。
これができるようになるまで、相手が息をひきとるまでなんども繰り返す。
それに加えて、目ん玉に突っ込んだ指に伝わる体温、首を折った音、金玉の弾ける感触。
正直精神がもたない。
悲鳴と肉の感触、骨の擦れる感触が銃剣を通して伝わり、こと切れた人間の色の変化、血と臓物の臭いが常にまとわりつく。
相手を家畜と思わなければ到底こなしていけないと思った頃、バラライカが俺の耳元で囁いた。
「いいか。これは豚や牛とは違う。人間だ。殺しはどんな理由があろうと、最大の理不尽だ。それを忘れるな。でないとお前は殺人鬼となんら変わりはしない。」
もう既に4人、嬲るように殺した俺の精神を良くも悪くもこの言葉がわずかに残った良識とをつなぎとめた。
銃剣の訓練が終わり、殆どの訓練と称した殺しをこなし、軍刀による斬首も身につけると俺の目つきは大分変わってしまったようで、バラライカもボリスも大変ご満悦のようだ。
最終訓練は武器を持った相手との殺し合い。
獲物は刀。
これまでにない緊張感と恐怖に間合に入り込めないどころか、気づかぬうちに下がってしまったようだ。
「下がるな!恐怖に負けるな!」
バラライカの檄が飛ぶ。
足元にはすりさがった己の足跡。
これじゃぁ俺はこいつに殺される。そう悟った。
まず落ち着く、それから相手をよく見る。
スパニッシュ系の黒人、背丈は俺よりでかいが、筋肉は俺が勝る。
しかし殺気は相手の方が明らかに放っているから呑まれそうだ。
双方間合い手前まで躙り寄り、切っ尖が触れた瞬間だった。
相手が真っ向から刀を振り上げ向かってくる。
咄嗟に刀で受けようとしたが一歩間に合わず額を切られた。
傷口が熱い。
なんとか引き離さねばとみぞおちの辺りを蹴り距離を取ったが、今度はふくらはぎを切られる。
またもや恐怖が襲ってくるが、どちらの傷も浅い。
呼吸を整えしっかりと構える。
相手はまた同じように斬りかかってきたが、今度はしっかり受けて払えることができ、腕に一太刀あびせたが浅い。
相手の方から距離を取り、またもや同じ型で斬りかかってくる。
こいつ素人か?
そう思った途端、精神的に優位に立った気がした。
その太刀を躱すと俺は刀を鞘に収め、居合の構えで奴の攻撃を待った。
案の定同じように突っ込んできたのでタイミングを見計らい、腹をめがけて斬る。
感触は確かなものだった。
相手は跪き、腹を抑えて叫んでいる。
鮮血の噴き出す合間から内臓が見え、勝負は着いたと思い刀を鞘に収めようとした瞬間「とどめをさせ!でないと此奴は数時間苦しんだままだ。貴様は武士だろう?ならばその責を全うしろ!」バラライカが叫ぶと、俺の中の何かが目覚めたような、実に激しく冷静な気分になり、臓物を抑えて苦しむ男の前に立つ。
「御免!」
考える間も無く刀を振り下ろした刹那、男と目があった気がした。
絶望に満ちた目の中に僅かな安堵を感じたのを俺は一生忘れないだろう。
刀を鞘に収めると、切断された男の首を離れ離れになった体の前に起き、合掌をする。
最終訓練終了。
この訓練中に殺した人数は両の指を優に超えていた。
「良い眼になったぞ、レイ。立派なサルダートだ。実に気に食わない。こんな良い眼なのに…。どうだレイ、私の元へ来ないか?ギャングにしておくのは実に勿体無い。」
バラライカは大胆に引き抜きをかます。
「バラライカさん、貴女は俺の中にある武士道を見事に呼び覚ましてくれた。この御恩は決して忘れない。」
「そう、残念だわ。但し、訓練には今後も参加しなさい。せっかく宿った魂にも脂肪は着くわ。それから困ったことがあったらいつでも私の書斎にいらっしゃい。」
別れ際にバラライカはそう言い残して職務へ戻って行った。
俺はボリスにラグーン商会のオフィスへ送ってもらい、車を降りると軍刀と勲章、空挺部隊の正装一式を貰う。
「カピターンからだ。軍刀は日本刀、孫六を軍刀設にしたものだ。こう伝えればわかると言われたが、良いか?」
「あぁ、バラライカさんにありがとうとお伝えください。」
ボリスは俺の言葉を聞くと無言で車を走らせた。
武者修行を終えた俺は再びラグーン商会のオフィスの門戸をくぐり、ファミリーと半年以上ぶりの再会を果たす。
みんな俺の変わり果てた肉体、面構えに驚いていたが、その直後に吸った半年以上ぶりのマリファナでブリブリの俺を見るや、やっぱりレイだと納得しいつもの調子に戻っていく。
やっぱりこれが一番心地よい。
禁欲生活が長く、軍人として生活していた所為もあり、言動がギャングのそれとは大分かけ離れていたため元に戻るのは少々時間がかかりそうだ。
その晩の帰還祝いの宴も早々に切り上げ、懐かしい我が家へ戻るとレヴィとジョーが押し入ってきた。
「レイ、心配してたんだぜ。でも良かった。本当に生きて帰ってきて!」
ジョーが眼に涙を浮かべてハグをしてくる。
「まったくよ、大した玉だぜ。こんなに逞しくなりやがって。しかもその眼、いったい何人ぶっ殺したんだ?」
レヴィの質問にとっさに睨みつけてしまった。
「おいおい、そりゃ仲間に向ける眼じゃねぇな。良い眼になったと褒めてやりたいが、四六時中それだと早死にするぜ。」
「すまないレヴィ。ちょっとは慣れたと思ったんだが、まだ訓練が必要らしい。ちょっと参ってしまってるのかもな。」
「オーライ、baby。私は良いさ。今日は朝まで側にいてやるからよ、安心してゆっくり休め。」
俺の心情を理解してくれたレヴィはジョーを追い返して隣に座ると、俺を優しく抱きしめてまたあの慈愛に満ちた眼差しで俺を見つめている。
「レイ、頑張ったな。何せ生きて帰って来ないと思ってたからよ。それに本当に逞しくなっちまってたからお前の気持ちを無視した台詞を吐いちまった。すまない。」
「いいんだ。俺に殺しは向かねぇんだ。ただ、自分や仲間が殺されるくらいなら躊躇いなく相手を殺すさ。そのくらいは判断して殺すスキルは手に入れたよ。俺はこれからもあの訓練に参加する。お前やファミリーを護りたいからな。だけどまたこんな風になっちまった時、そん時は俺を支えるか殺すかレヴィの好きなようにしてくれ。」
レヴィは「解った…。」と呟いて俺をきつく抱きしめた。
その日はレヴィと抱き合ったまま眠りにつく。
翌朝、と言っても5時前に起床。
軍隊生活の習慣が抜けていないことに若干気が滅入りつつ一服する。
レヴィはまだ寝ていた。
そうか…俺は人を殺したのか…。
不思議と殺人犯の手記に書かれているような、自責の念に堪え切れなくなるとか、そういった感覚にはならず、明日は我が身かもしれないという緊張感だけがまとわりつくようになった。
この日から筋トレと剣術の稽古だけは欠かさず行うようになり、その他キックボクシングと合気道を週一でこなす武道家に目覚める。
この悪徳の街において道徳もクソもない中、心の指針として武士道と修身を独学で学んだ。
鉄火場にも召集されるようになると訓練の成果も発揮され、ファミリーからの信頼もだいぶ厚くなった。
正直言ってギャングの抗争など遊びのように感じるぐらい楽な仕事だ。
レヴィのように本気で楽しめてはいないが…。
この頃から鉄火場に行く前に別れのキスをするのが常となっていた。
お互いいつどうなるかわからない身の上故、この世に悔いを残さないようにとその都度別れを交わすのだ。
「別れのキスだ。戦友。」
「あぁ、またあの世でな。」
彼氏でも彼女でもないが、それ以上の信頼関係が俺とレヴィには存在していた。
戦友と言うに相応しいだろう。
あ、勿論ジョーにも。
さて、もう四月だ。
やっと俺のこのファミリーにおける存在理由、大麻栽培がようやく始動する。
長かった。
アメリカに来て8ヶ月、色んなことがありすぎて正直整理できていない部分もあるが、ヒョロヒョロの甘えたガキがよく生き残ったなと、自分でも感心する。
明日はレヴィとジョーと俺で荒れた畑をトラクターで耕し、防犯設備を設置する予定だ。
だがその前に前夜祭といこうじゃないか。
面子はこの前のキノコパーティのメンバーにレヴィとエダも加わって、会場は俺の部屋。
パパのマリファナにジョーのキノコ、レガーチのコーク、いつぞやのLSDと選り取り見取り。
ガンジャ吸ってキノコ食って、コーク吸ってガンジャ吸って、訳のわからない会話してガンジャ吸って、もう自分がどうなってるのか理解が追いつかない。
気がつけばベッドルームでレヴィとエダが俺の愚息を喧嘩しながら貪っている。
何だ?どうしてこうなった?てかヤバイ!イきそう。
訳も分からないうちに二人の顔にザーメンがかかった。
「おいおい、何勝手にイってんだよ?」
レヴィはそう言いながらも丹念に愚息をお掃除し、エダも割って入って2人で残さず綺麗にしてくれる。
「あのさぁ、どうしてこうなった?」という俺の疑問に2人は怒りを露わにし、罵声のような解答が俺を襲う。
「はぁ?そもそもお前がエダなんかとやってたのが悪りぃんじゃねぇか!」
「なんかとはなんだい?レヴィばっか可愛がりやがって!妬けちゃうじゃねぇかよ、ロメオ。」
「うるせぇ猪女!」
はい?なんでバレてる?ジョーか?エダ本人か?ヤバイ…ガンギマリでこの思考はまずい!どうにかして落ち着け、俺。
「エダ、何でレヴィが知ってるんだ?」
本当はかなり吃っていたと思うが、本人はいたって普通に言ったつもりだった。
「あぁ、勢みで言っちまった。だってこの山猿女がよぉ〜お前といい感じになってるとか自慢こくからさ、妬いちゃったじゃん。」
「ちげぇだろ!お前が根掘り葉掘り聞いてきたんじゃねぇか!」
どちらかが口を開けばもう片方が噛み付く構図が出来上がり、俺の入る隙は与えられない。
暫く攻防が続いた。
2人の息が上がったところでやっと俺のターン。
「でさ、どうしてこういう結末に至ったのかそろそろ教えて欲しいんだけど…。」
一抹の原因は俺にあるからして、大変歯切れ悪く尋ねる。
「いやさ、レヴィがレイは自分のもんだみたいに言うからさ、最初に唾つけたのは私だって張り合っちまったって訳。」
「だからってお前、テクで勝負とかねーだろ!」
レヴィが割り込む。
「でもノってきたじゃねーか!」
「で?レイはどっちがいいんだよ!?」
エダを半分無視してレヴィが結論を急かす。
どうすればいいんだ?どちらかを選べばもう片方とギクシャクしてファミリーの秩序が乱れる恐れがあるし、ダッチもそれを良しとはしないだろう。
どちらも選ばないは俺がファミリーに居られない。
心情としてはレヴィを選びたいのだが、先述のようにそれは不可能に等しいのだ。
よし!どっちも選ぼう。そしてどっちからもフラれて仕舞えば2人の複雑な感情を払拭し、後腐れが少なく、ファミリーの秩序の乱れも最小限に抑えられる筈。
「あのさ、正直に言って俺には2人とも勿体無いくらいいい女だ。甘えるだけ甘えさせてもらってこうなったのは俺がクソガキだったからに他ならない。だけどそんなことが原因で2人の関係が壊れるのは本末転倒だ。だからさ、レヴィもエダも俺の女だ。どっちもしっかり愛してやるから、守ってやるから2人とも側にいてくれよ。」
よしっ!俺をぶん殴ってフってくれ!
ギュッと目を閉じて殴られるのを待っているが、一向に拳は飛んでこない。
恐る恐る目を開けると、2人ともトロンとした目で俺を見ていた。
え?どういうこと?
「レイ、狡いぜ、まったく。しょうがねぇから私はノってやるよ。ちったぁ自信もっていいぜ。あのクソガキが私にそれでも嬉しいって思えるくらいに良い男に成長したってことだからな!」
とレヴィ。
「本当にお前は人誑しの才があるよ。私もノった!しっかしよくここまで逞しく成られ果せたもんだぜ。私の稼業も任せていいレベルだよ。」
とエダ。
あれ?これはどういう展開だ?…あ、こいつらは普通の尺度で測っていい部類の人間じゃないのだと再認識。
「何で納得してんだよ?俺は色々考慮して2人から嫌われる答えを歌ったんだぜ。それがどうしてこうなる?」
率直な疑問を投げる。
「馬鹿かオメェは!こうなる結末も私らは予想済みだってこったよ。全ての可能性を考慮してそれぞれ最善の策を講じる。基本だろ?」
いや、そうだが…、今回は此奴らが上手だったってことか…。
レヴィの答えにぐうの音も出ない。
「これで私らはレイのもんになっちまった訳だ。寵愛の割合は四分六でいいからよ。勿論私が六、エダが四だ。しっかり頼むぜロメオ。」
「まさかとは思うが、お前ら俺の気持ちまで考慮してたのか?」
俺の問いにレヴィはニヤニヤと悪い笑みを浮かべて「あったりめぇよ!」と答えた。
「よく言やぁお前さんは戦国時代の殿様だ。正室、側室侍らせても良い類の人種ってこった。本来お前を巡って殺し合いなんてことになってもおかしくないんだが、そうはならなかった。どうだい?男冥利に尽きるだろ?」
エダも悪い笑みを浮かべて俺の首に腕を回す。
これは結果オーライと言って良いのだろうか?何にせよこれがきっかけで俺の人誑しの才が若くして目覚めた瞬間である。
「さて、一区切りついたところでどうする?続きが望みなら2人で相手するぜ?」
レヴィの誘いに到底応えられるわけもなく「いや、今日はもう寝たい。朝まで3人で眠ろうや。明日からまた忙しくなる。」そう丁重に断ってジョイントを巻いて3人で回し、床に着く。
愚息丸出しで冷えたのか、尿意を催す俺。
「あーちょっとトイレ行ってく「待てレイ!そっちは…。」
扉の向こうにあったのは失禁脱糞寝ゲロの三拍子揃ってぶっ倒れているレガーチ、素っ裸でシェンフォアに愚息をしゃぶらせながらソーヤーをクンニしているジョー。
俺は黙ってドアを閉めることしかできなかった。
ドアの前で固まっている俺にレヴィが弁解を始める。
「あ、あのよぅ…、あの3人が先におっぱじめやがったからよ、うちらもムラムラしてな…それで…。」
「寝る。」
レヴィの弁解を遮って、2人を抱き寄せてベッドに転がり眠りにつく。
翌朝、リビングの掃除はあの4人に丸投げして、さあマリファナを育てよう!
「マジなの…?レイ、人殺したの?」
サツキは怯えた目で俺を見ていた。
「ああ、じゃないと俺が死ぬからね。嘘臭かった?」
「いや嘘くさいってゆうか、日本じゃあまりないことだから現実味がないっていうか…。」
ドン引きしているのがひしひしと伝わってくる。
「俺のこと怖くなった?」
「それともちょっと違うかな。何だろう?ちょっと遠くに感じるっていうか、住む世界が違うっていうか。」
「そうだよね。ホームステイだけで帰ってきてたら、ドラッグ覚えて帰ってきたちょっぴり危険な匂いがするヤツってゆう美味しいポジションでいられたんだけどなぁ。」
「どうしてそんな普通にしてられるの?結構とんでもないこと言ってるのに。」
「ん?怖気付いた?話すのやめようか?てか俺の女になるのやめるなら話はここで終いだ。」
「何言ってるのよ!もうレイは絶対離さないんだから!話も最後まで聞く!」
ちょっと意地悪しすぎたかな?でもこういう所、昔のまんまだなぁ。
「ねぇサツキ、キスしてよ。」
サツキは恥ずかそうに唇を重ねてきた。
4章終