吸血鬼は淫魔の夢を見るか? 作:マスター冬雪(ぬんぬん)※休止中
・銃口、硝煙とシガーキス
・今は未だ、
屋敷にいるスタンド使いは大きく分けて2つ。
ひとつはエンヤによって集められたタロットの暗示を持つ者達。
もうひとつはDIO自ら集めたエジプト九栄神の名を持つ者達。
エンヤは俺の事を毛嫌いしているのでタロットのスタンド使いとも険悪か、と言われればそれは違うと答える。
世界を移動して未だふた月程度ではあるが、スタンド使いは存外自我が強い。精神の強固さがスタンドの強度に繋がる為か否か……主と仰ぐDIOの存在もあるだろう。異世界から連れられて来られた元人間ともなれば興味を寄せるのも無理からぬ事だと俺だってそう思う。
囁かれる噂は多々あるだろうが。遠くから見てくる者も近寄って話し掛けて来る者も、俺から話し掛けるのは俺が相手に興味を持った時に限る。
煙の残り香を何となく追って、屋敷の中を歩く。そこらにはDIOが吸血した後と思しき女の死体が転がり、献上された財が無造作に隅に寄せられている。素足で歩くには散らかり過ぎている。隙間を縫うように、ふらふらと。
「煙草の香りの元はキミかな」
びくりと肩を震わせたテンガロンハットの男の手には今漸く付けたばかりといった風の煙草が赤い火種をじりじりと燃やしていた。
「こ……れは、これは。どちらさんで?DIO様の食糧……いや、男だからねーか……?」
西部劇のガンマンを思わせる立ち姿を少し上から手摺に身体を預けて見下ろす。血の匂い。立ち上る上質な生命エネルギー。───スタンド使いだ。
「ふた月前に此処に来たばかりでね……知らないのも無理はないよ」
「!……アンタもスタンド使いか?」
「そう……キミもそうだろう?」
階段を滑るように降りて横並びに立つ。
「私はミナセ。キミの名前を……教えてくれるかな」
見蕩れ、気圧されたような顔でホル・ホースだと漏らした男はハッとして口を噤んで1歩退く。
「煙草」
「あっ……もしかして禁煙だったか?す、すぐ消すんで……」
「ううん……咎めに来たんじゃあない。……実は私も喫煙者でね……うっかり切らしてしまったから、1本頂けないかなって」
くすくすと笑う。そんなに驚かなくたって。
「そうしたら、此処でこそこそしていた事。内緒にしてあげる……」
別にこの屋敷の間取りを見回る事が悪いとは言わないが。殺し屋として万一の為に周辺の安全を確認するのは大切な事だろうから、その程度でDIOやエンヤが咎めるとは言い難い。
ははは、と空笑いを零したホル・ホースが胸ポケットから箱を取り出して差し出した。
「……んふふ。契約成立だね……」
差し出された火を先に灯して一息、ふと薄く吐いた。
「ガンマンさんはどちらかな……エンヤ婆から?DIO様から?」
「あー……エンヤの婆さんからだな」
「そうなんだ。彼女、すごい占い師なんだってね……1度占って欲しいものだけど、私は彼女に嫌われているから……」
「……ん?つー事は、アンタはDIO様から?」
「そ……地位も故郷も捨てて自分に尽くせって言われてね」
「そらァ熱烈な勧誘で……」
「でしょう?彼の傍はきっと退屈はしないだろうから、私は彼の物になったの」
「はぁ、アンタ変人だな……」
「ひどい言い草だなァ」
ホル・ホースの目が上から下までさり気なく走るのが肌で分かる。どのような立場なのか、どのような戦い方をするのか、脅威か否か。
「……オレを何故ガンマンだと?」
「西部劇が好きそうだから?」
「ああ、そういう……」
「あと知り合いにそういう人がいるから……利き手、火薬の匂いがする。拳銃かな……でも携帯している風ではないから、……ああ、これは流石にマナー違反か」
「……そういうアンタは殺し屋ではなさそうだな。血の匂いがしない。前線で戦うタイプじゃあない。どっちかってぇと、従えて後方で命令するタチだ」
「フフ!正解……」
つ、と流し見るとホル・ホースは油断なく、けれどリラックスした様子で俺から目を離さないでいる。
「警戒するなよ。キミを見極めに来たとか、監視に来たとか、そういうんじゃあないんだから」
「……」
「良い事を教えてあげる……私は別に、彼に忠誠を誓ったり心から彼に従っている訳じゃあない」
「!」
「キミだって……彼には金で雇われたから、表面上従って見せているだけ……。……ねえ、私たち、仲良くなれそうじゃあないか?」
ふわりと紫煙に視界が紛れる。1歩進み追い詰めるように身を寄せる。息を詰め、唾液を飲み下す音が大きく響いた気がする。
「……ふふ!なんてね」
吸殻を彼の手元にある携帯灰皿に押し付けて身体を離す。
「気が向いたらまた話そうか」
殺せる、とは思った。鼻腔にこびり付くような甘い匂いを忘れるように、かぶりを振る。
───同時に、殺されるとも思ったが───それはDIOに初めて対面した時のそれと同じようにも。
露出の多い服は一見してDIOの餌である女たちを彷彿とさせた。が、その振る舞いは喰われるばかりの女たちとは一線を画して、いっそ高貴なもので。暗がりから顔を出した男はDIOの横に並んでも謙遜ない程美しく、またDIOとは異なる、性を知った女のような色香があった。
淫蕩で蠱惑、倦怠。余りある包容。
毒々しいまでに瑞々しい象牙の肌。黒い水が流れ落ちるかのような髪が白に泳いだ時にどのような香りを齎すか───
……成程、DIOがこの男を下したいと思った一端がしれた気がするのだ。この戯れすら、男にとっては気紛れでしかないのである。並の人間ならばそれすらもう一度、或いはあわよくばと思いかねない。
……嗚呼、此処は本当に魔境である。
……彼の不幸は。これからもどこからともなく現れるミナセに何だかんだ煙草を強請られる羽目になり、それが吸い終わるまで色々とちょっかいを受ける未来が待っている事だろう。
後日、ミナセと名乗った男が異世界から喚び寄せたDIOが寵愛する淫魔であると知らされた時の、ホル・ホースの内心での絶叫たるや。
「言えよ!!」
「ふは……っ!キミ、本当に面白いね」
★
───DIOはよく机に向かう。
その姿を執事のテレンスはおろか、エンヤ婆すら知らないだろう。京一郎はDIOがそこまで筆まめな方ではないと理解していたので、何をしているのだろうなとニコニコその後ろ姿を眺めていた。面白がっていた。彼にとっては重要な事なのだろうな、と京一郎は朧気ながら確信していた。DIOが時折京一郎の事を、観察しているかのような、見透かしているかのような、そのような目を向けては思索に耽っている様を、京一郎は理解した。あれは過去を思い返していると思った。
自分を見つめ返す事は良い事だ。こと、DIOが常々望んでいる、『天国』へ、より深い幸福の
京一郎はDIOの言う『天国』を知らない。けれど、何となく理解はした。それは淫魔となり、魂を蒐集出来るスタンド使いとなり、魂の形と色、それが放出する生命エネルギー……或いは感情と呼べる波を感知出来るようになってからは、顕著なものだった。
その事を、京一郎はDIOに口にする事はない。それはDIOの望みを唯の思想のひとつに陥れる愚行であったし、そのような形で阻むのは京一郎の本意ではない。それは侮辱であり、蹂躙であり、嘲弄し足蹴にして嬲り殺すような所業だからだ。
京一郎はあくまで、神のゆく道を傍で誘惑し、堕落させんとする悪魔であるべきなのだ。それがエンヤによって暗示された夜の魔女としてやるべき使命である。そのように在れと、他ならぬ自分を求めたDIOが望む事なので。
京一郎はDIOの望みを叶えてやりたいと思っている。夢から引き上げられた京一郎は、簡単に言えばDIOに絆されたのである。……いや、それは正しい表現ではない。京一郎とDIOは互いを互いに利用し合っている。精神の在り方。快楽の交換。単純に能力を買って。或いは戦闘員として。魂を操り弄ぶ者として。
京一郎は嘗ていた世界で限りなく頂点に近しい場所にいた。その精神を怠惰に腐らせて停滞していながらも、京一郎には見えていたのだとDIOは確信していた。自分が最も欲している『天国』への道の先を。スタンドを持たぬ身でありながら。唯の卑小な人間でありながら。単に“つまらないから”と敢えてそこに到る事を拒んで。
その姿が業腹であった。怠惰だと、怠慢だと罵り続けるのは、DIOとしては認め難いが、嫉妬であった。
DIOは先人が歩いた道を辿るような屈辱は許し難いと思っている。京一郎がそのようにしているのは都合が良いものだったが、納得は出来ない。
京一郎はその様すら嗤うのだ。にまにまと、悪魔のように。望みを叶える姿を見るのもいい。そこでどのようになるのか、京一郎は楽しみだ。けれど、惑って迷って、快楽に堕ちてしまう様も悪くは無いなと思いながら、京一郎はDIOを見ている。
ぎしりと椅子が軋み、深い溜息が宙に溶ける。薄闇に混ざった空間は何とも言えぬ甘い残滓が香り、そこが京一郎の定位置のひとつだと明確にした。
「どうしたの。気が滅入っているようだ……行き詰まった?」
ベッドに座る京一郎の膝に足を乗せ、ごろりと横たわるDIOを不思議そうに見る。
じとりとそちらを見るDIOは重々しく口を開く。
「いつまでそうしているつもりだ」
「……抽象的だね」
「いつまで、そこで怠惰を貪っているつもりだと聞いている」
「ああ……精神の話か……」
ぼんやりと宙に視線を向ける京一郎を、DIOは睨むように見上げている。
「おまえの望むように、魂を扱う力には慣れたよ……胎に仕舞い込むだけなら何十でも……けれど、おまえはそうでは無いと言うんだろう……」
京一郎は謳うように言う。
「得るには喪わなければ。身を削り他者に与えるのではなく、他者より剥奪するのではなく、自ら価値のある物を捨て去らなければ」
「それで何が得られると?」
「……、……おや、聞く気になった?」
「……」
「けれど、こればかりは俺でも教えられない。そうしておけば、おまえは恐怖で留まるだろう?」
激昂の前にころりとDIOに寄り添い横になった京一郎は茫洋と笑う。
「おまえはわかってしまったんだ。人を辞めてその頂点に立つ事が幸福か?財や権力があれば幸福か?……ああ、可哀想に。そこで留まっておけよ、あそこはあまりに退屈だぞ。あるのは随分と平坦な、所詮は理想で造られた匣でしかない」
溺れてしまえと京一郎はDIOを抱き寄せて首に顔を寄せる。足が絡む。絡み合う。時に京一郎は敢えてDIOを憤慨させる。燻る怒りを忘れさせぬように。激情は人間性だ。唯一彼に残された。
「どうやって見出す?どんな風に苦悶する?おまえ自身が答えを出さなきゃあ意味が無いんだ。俺は楽しみだけれど、だけど導くと同時に妨げよう。俺は夜の魔女なんだから」
どうしても行きたいというのなら。その覚悟が出来たのなら。
俺はおまえの未練になろう。そうやっておまえを阻んでやろう。最後のさいごまで。
「最初の助言をやろうな……。先ずおまえは得なければ。満ちなければ。悟るには未だ足りない。喪う段階にすらない。さあ、何が足りないのだろうね」
京一郎はDIOが自らの深みに耽ける様が好ましい。彼はDIOの望みを叶えてやりたいと思っている。けれど同時に到らなければ良いと願っている。京一郎はDIOのスタンドを知らない。その能力を知らない。今後何が起こるかなど知る由もない。
けれどぼんやりと理解はしていた。彼に足りないものも、彼が持ち過ぎているものも、彼が欲するものも、何となく。 そして彼が何れ何処に到るのかも。
京一郎はエンヤによって、形が定められた。京一郎自身がそれを肯定した。京一郎の中で何かが噛み合ったのだ。京一郎は京一郎自身の
嘗てイエスを誘惑した悪魔のように。そのように。
……マア、イエスとは違ってDIOも闇の世界を生きる怪物であるので、快楽に酔うのも時として興じるが。そこも京一郎としては好むところか。
京一郎はDIOの頭を胸に抱いて、そのまま目を閉じる。今はまだ。
DIOは水底での名残か、何も言わず京一郎の元を訪れては眉根を寄せて目を閉じた。暗中模索、吸血鬼の目ですら見通せない暗闇を、手探りで探すのだ。
惑い惑え。この時間を京一郎は気に入っている。
ホル・ホースとはシガーキスしてると嬉しいなってすごく思う。
No.2として組むには京一郎は相性良くないね。淫魔(参照吸血鬼)として普通の人間よりは力があるからスタンドとしても割と筋力はあるだろうな。能力は中~遠距離っぽい。スタンド能力のステータスよく分からんのだ。
18話のDIO×京一郎、要る?
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要る。番外編として書いてほしい
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要らない。それより新章書いてほしい
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要る。あとキャラの設定集も書いて
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要らない。けどキャラの設定集は書いて