吸血鬼は淫魔の夢を見るか? 作:マスター冬雪(ぬんぬん)※休止中
ショタ/攻めフェラ・精飲/捏造設定/
「は、少年その怪我どうしたよ」
目を覚ませばそこは例の白い部屋で。顔を走る痛みに舌打ちする。どうやらあれから寝落ちしたらしい。
「……別に、なんでもない」
僕の迂闊だ。奴の爆発力を甘く見ていた。
ジョジョは自分の為ではなく、他人の為に力を発揮するタイプなのだ……これから気を付けねばなるまい。まさかあのエリナとかいう女のために性分とも言える甘さを捨てて遮二無二殴り掛かってくるとは思いもしなかった。顔に食らった頭突きに怯んでいる隙に、この僕に拳を食らわせたのだ。
……屈辱だ。この上ないくらいに。
胸の中を憎悪が蠢くが、それが喉の先に出る前に再び腹の底に沈める。
今は、そう。雌伏の時に違いないのだから……。
底で煮立つ衝動は、屈辱は。奴にぶつけなければ晴らす事など到底出来やしない。
「手酷い反撃を喰らったな……養生しろよ」
「言われずとも」
それは一先ず置いておくにしろ……この部屋に来たという事は、出るにはやはりこの男とセックスしなければならないという事か。……まあ、下手な奴より数段良いが。
身に離さず置いていた所為か持ち込めたナイフでさえ扉に穴を開けるどころか傷一つも付かなかった。ナイフの刃にもひとつのヒビすら入らない。それ程の力で切り付けても、だ。それに、この部屋の存在している場所も分からないまま。
これは夢に違いない……奴の言い分を真に受ける訳では無いが、いっそ楽しんでしまった方が良い。何せ現実では痛みの伴わない傷痕くらいしか影響がないのだ。あらぬ所が痛まぬのも、後処理する手間が省けるのも良い。現状性欲処理にも目があるだろう。どうにも出来ないならば丁度いいと考えた方が建設的だ。
「肉付きが良くなったな。触り心地が良い」
そう言って奴は僕の身体に手を這わせる。
言い方と触り方が気に食わない。なんだその女にするような手付きは。
肩を押して睨み付ければナミセは肩を竦めて、髪を掻き上げながら軽く謝罪した。
「……随分と機嫌が良いな」
「そう見える?ならそれは少年のお蔭かもなぁ」
「気色悪い」
「ひでぇ言い方」
その目には希望と言うには昏過ぎて、憎しみと言うには輝きのある何かがきらきらと瞬いていた。
「思うがままに生きる事を思い出しただけだよ」
愉しくて愉しくて仕方ないね、と。
少しばかり肋の浮いていた身体がしっかりとした物になってきたのに気付いて手で触れてみて。……ああ、恐らくは、“戻ってきて”いるのだと思った。
“前”のナミセに、……この僕のお蔭で。
その瞳に、掠れたような虚ろな瞳に、こちらが茫洋としてしまいそうになる。
非常に複雑だ。
僕のお蔭だと宣うならばその分奉仕して返せと言うと、それすらも愉しいと言いたげにナミセは僕の足元に跪いて笑う。
恭しくソックスを脱がせたかと思えば事もあろうに奴は足の爪先に口付けて指を舌で舐り始める。
気でも狂ったのかと疑わざるを得なかった。
「おいやめろ、変態か貴様」
「ちゅ……ただの挨拶じゃあないか。……にしても、」
「……、なんだよ」
「これでそんなに欲情した顔をして、どっちが変態なのやら、」
「踏み潰すぞ」
「くっくっく」
女豹のように身体をしならせたナミセは僕のシャツの下に手を滑り込ませては腹や胸に口付けて痕を残し。膝の間に割り込んではそこをスラックス越しに、尖らせた舌でぐりぐりと抉る。
「……っぐ、ゥゥ……!」
「ン〜……相変わらず反応が美味しい」
「、この変態クズ野郎……!!」
「それ俺が1番知ってる事だから」
思わず呻けばそれをからかわれ。
罵倒しても尚愉しげにされてしまえばこちらは黙るしかなくなる。
ファスナーを口で下ろされ濡れた下着越しに音を立てて吸われた時は、喉の奥から細い悲鳴が飛び出るところだった。……くそ、これのどこが奉仕だこの鬼畜淫魔め……。
絡みつく舌の感覚と、引き攣って締め付ける喉の感触。
空気を含むように撹拌されて、ぐぽぐぽと態とらしく立てられる水音。啜られて張り付くような頬の内側の感覚。
走る快感に声を抑え、くしゃりと奴の髪を掴んだ。
「ちゅぶ、ちゅ……じゅるる、っ」
「ン……は、」
容易く根元まで呑み込んだナミセは僕を見上げてふと目元を和らげる。
「気持ちイイ?」
「っ、ふ……ン、いい、」
思わず零れた言葉に笑みを深めるとよく出来ましたと言いたげに奴はリップ音を立て、横合いから茎に口付ける。
吊り上がった口角。薄い唇。伸ばされた赤い舌。細められた目。
ああ、本当に……コイツは。
「く……、は、ァ、ッ」
「イきそ?いいね、出して」
「んっ、ふ……ぅう、っ!!」
「ングッ、!!」
……気付けば奴の頭を乱暴に掴んで引き寄せて、膝で挟み込みながら達していた。
「ぐ、ぶ……ん、ン……ふ、ァ、ごぷっ、」
「ッふ……っ、は、はぁ……っ、づ、!」
「ン、ぐ、ごくん……っ!ちゅ、ちゅぅぅ……っ、ぷはっ。……はー、溺れるかと思った……」
「……まさか、飲んだ、のか……?嘘だろ、」
「ン……押し付けてきた癖に。フフ、ごちそうさま」
機嫌良さげに笑ったナミセは残った精液も残さず飲み込んで愉しげに笑う。と同時に僕はベッドに押し倒された。
「ちょっぴり興奮してきたカモ?セックスしようぜしょーねん」
「っ……待ても出来ない駄犬か貴様……!」
「なぁに、少年。俺がそんなお行儀のいいワンコだと思ってた?あははは……!喰っちまうぞ」
不埒な手に息を詰まらせながら罵倒するも、尚獰猛に笑って首に齧り付いてくる。
ああ、こんな事で。身体に走るコレは確かに期待というやつで。
「んぅ、っ……ぅ、咥えていた口でキスするな、」
「あ、精液の味混じってた?ふはは、お前が出したんだろうに!……イイ顔だ。顔逸らすなよ、」
「きさ、ァ、ンぅ……!」
青苦くて吐きそうなのに。微かな甘さを感じてからはそれすらも快感に落とし込まれて。
舌が撫ぜる。絡み合って、絡み付いて、唾液を飲ませ合って。
───最高に興奮した。
「ァは……」
「可愛いなァ、少年。キスだけでトロトロになっちゃって」
「うる、さい……」
「可愛い」
「うるさいっ……!」
早く、僕に───。
きゅうきゅうともの欲しげに蠢く下腹部を押さえ付けながらキスを強請る。
脚に擦り付けられたソレに、脳が痺れたような感覚が走った。
熱くて、硬くて、大きい……。
「は……」
ああ……欲しい。
あの快楽が、無意味に頭を掻き毟りたくなる程の快感が。
目の前が真っ白になるような電流が。
「な?シよ?」
セックス。
「……、……、し、たい」
「ン、うん」
「セックス、したい……お前、と」
熱量に溶けた、上擦った声だった。
溶ける。蕩けてしまう。
「ああッ、ぁ……あン、ひゃ、ぅう……〜〜〜ッッ!」
ぐりぐりとそこを抉られて悲鳴を上げても、ナミセは止まらずに僕を鳴かせ続ける。
酷い、酷い、酷い。
ナカで太くて長くて、大きく張り出した硬いそれが行ったり来たりして、その度にぬるぬると擦れて。
奥までこじ開けてノックでもされるように穿かれてしまえば、頭が真っ白になって。
「気持ちイ?なあ、答えてよ」
「ひ、ああああっ、!あ!あぅァ……!!」
「言って?」
そんな事、今の僕の姿を見れば分かるじゃあないか。
前を触られずに、後ろの刺激だけで何度も何度も達して。何処を抉られても嬌声が口を突いて。さっきなんて、乳首を噛まれてキツく吸われただけで絶頂してしまったのに。
なのに、この僕に言わせようとするなんて、酷い。
「ィ、もち、ヒィっ、」
「なんて?」
「き、ィもち、ィ、っ!気持ち、イ……っイイ〜……ッ!」
引き攣る喉から締め出すように口にした言葉に、奴は、……奴も。蕩けたように笑って僕にキスを落とす。
「良い子だ、ディオ」
「ァ、」
……この男の口から自分の名前を聞いたらいつも、頭が可笑しくなってしまいそうになる。
じわりと頭の奥で熱が溢れたような錯覚を感じたと同時。バチン!!といういっそう強い衝撃が脳裏を焼き切った。
「ッッ、あ゙あぁぁああ゙ぁ゙ッ!!!あ、や、やら゙ああっ!!は、ああああ゙っ!!」
「ッ、やっべイク……ッ、」
「あ゙っ、あああ゙っ、きもちい゙、気持ちイイ!!あ゙、やあん!!やあっ!イイ、いいよぉ……!あっ、んは、あああっ!!あっ、あ゙っ、や゙、ゃめ゙、イクゥ!い゙、いぃくっ、イクっ、い……あ゙あああーーーっ!!!」
満ちていく熱い迸りに目の前が白む。
「しゃ、せぇ、精液っ、!きもち、い゙、ン゙ンっ!ナミセぇ……!」
「……っつゥ〜……やっぱ心構えあっても耐えらんねぇわ……良い子良い子」
「くゥゥ……っ、!ン、ク、ふゥゥ……っ!」
「あは、くぅーんだって。お前のが余程仔犬だぜ」
好き放題、言いやがって……。
頭や頬に感じる大きな掌に擦り寄りながら、背中に回した腕に力を入れる。
「どうした、」
「っ、もっと……ン、もっと、欲しい」
「、」
「寄越せ」
「マジでお前……そういうトコ、」
1度ナカで出したら用は済んだとばかりに部屋を出て行くのは知っている。例外は僕が失神したあの時くらいで、アレは特別なのだ。きっと今もそのつもりだった。
とうに部屋の扉は開いている。
「っん、ふ……ほらどうした、っは……はやく、動けよ。まさかもう弾切れ、なんて言うんじゃないだろ、な?」
「、はーぁ……どうしてこうお前は、俺の嗜好どストライクな事を……」
「ァ、……!」
吊り上がる口角を手で覆い隠したナミセは瞳孔の開いた目で僕を見下ろす。
「そういうトコだぞ、お前」
「ああ……う、ぁ、あ゙あっっ!!」
「だから俺みたいな大人に目を付けられるんだ。反省しろ」
ずぶりと奥に押し込まれて、僕は脚を引き攣らせた。
「あ゙あッ、はあ……っ!ン、望む、とこ、っはぁ……!あっ、」
「フフ……喰い殺してやろうかコイツ」
そこらじゅう、それこそ髪や足の先に至るまで。ナミセの歯が皮膚を削る。ガジガジと、けれど跡が残るようなものでは無い。ただ、感覚が鋭敏になっていく最中で、その刺激は耐え難いものへ変わりつつあった。
「は、ぁ゙ぁッ……!も、噛むな……ッ!」
「ヤダ♡」
「ン、くゥゥ゙……〜〜ッ!」
硬質な歯の感覚が皮膚を滑るだけで、ディオの身体に快楽が走る。
「はぁっ、はぁっ、アッ!?や゙、だぁぁ……ッ!おくっ、きもちい、っ……!」
「はは。きもちいンだ?身体中噛まれて、蕩けた奥の方、こうして抉られるのが……」
「ッ……!い、言うな、このマヌケぇ……っ!」
じわりと肌が朱に染る。
顔を隠すように、声を抑えるように、覆っていた腕を剥がして。ナミセはディオに口付ける。
「ンッ?!……ゥ、ん、ふっ……ふぅ……っ」
滲んでいた涙がぽろりと落ちる。ナミセは“コイツ涙腺緩いナア”などと思いながら、次々と頬を流れる涙をべろりと舐め上げた。
「ひぁっ?!ゃ、ンッ……!あ゙〜〜〜ッ……!」
「何処も彼処も敏感で……かわいいね」
「うる、さァ……ッい゙、〜〜〜ッ……!」
ごつ、ごつ、と剛直が胎内を往復する度に、ディオは視界が明滅する。
揺れる足先やシーツを握る手が心許なく、堪らずディオはナミセにしがみついた。
触れる、低い熱。しとしとと濡れる肌。
どれもが心地好くて、好ましくて、このまま何処までも落ちていきそうなのが少し不安で。より強くその身体に爪を立てる。落ちるのなら、お前も道連れにしてやる。
「あ゙っ、あ゙ッ……も、だめ、いく、イく、イくっ……ッ!」
「はァ……いいぜ、気持ち良くイきな」
「ひゃめろ゙、そんなっ、奥突くな゙、あ゙、ぁ゙?!ひゃ、やだ、やらぁっ……!ひぐ、ぅ、あん゙っ、あっ、ゥ、あ、ぁ、っ〜〜〜……ッ!!ァ、」
「ン、く……ッ」
身体を一層反らせ、強ばるままに、解放の快感に打ち震える。燻る熱と、暴れだしたくなる程のオーガズム。息を詰め、ディオは自身のナカでじわりと滲む迸りを手足をぴんと伸ばして享受する。
唇を噛んで、痛みに逃げようとして、逃げられなくて。
「あ゙〜〜ッ……ァ゙、あ゙……!」
「ッ……ふ、は。……おら、へばるなよ。挑発したのはお前なんだ、まだ付き合ってもらわなきゃあな」
「ッ?!や、やめ、!まだ動かないでぇ……ッ!」
「だァめ」
「なか、い、イってる、イってるの、とまんな、からァ……!」
不埒な手が、指が、薄く白い肌を這い回る。ごつごつとした硬い皮膚が神経の集まる柔い所を掠める度、ディオの幼い肢体に快楽が注がれていくのだ。
「きもちイね、ディオ?」
「ッひ、ァァ!?や、め、呼ぶな、!名前、呼ぶな……っ」
耳朶を打つ、甘く苦い、低い声。耳元に掛かる息にぞわぞわと肌を粟立てて、涙に滲む視界できろりとナミセを睨む。
それが誘われているように思われる事を、ディオは知らないのだろうけれど。
名前をその夜のような深い声音で呼ばれる度に、制御の効かない幼い身体は、胸が締め付けられるような錯覚をディオに与える。
「ディオ。ディオ……」
「ひ、ひぅ……ッ!?ひゃ、んんっ!や、だぁ〜……!やだ、いやだ、呼ばないで、お前の声、きらい……ッ」
「酷い事言うなよ。俺はお前の声は好きだよ」
幼さ故に高く揺れるディオの嬌声を、ナミセはまるで音楽を聞くかのように求めている。
耳の軟骨が歯に挟まれて、こりこりと感触を楽しむかのようにして、飽きたら舌を這わせて、態とぬちゅぬりゅと音を立てる。赤く、熱を持った耳が、ナミセの口内よりも熱くて、ナミセは声無く笑うのだ。
ぬろ、と、ナミセの薄く長い舌が、ディオの耳孔に入り込む。
「んゃ、ぁぁ……!」
「耳、敏感だな」
「ぁ、ぁ、」
くるりと白目を剥きかけて、快楽に柔く叩き起される。終わらない、絶えず与えられる快感に振り回され、抵抗しようにも身体に力が入らず、ディオはその魔手が再び自分に伸ばされるのを見ているだけしか出来ない。
「安心しろよ。壊さないように遊んでやるからさァ」
揶揄の滲むその声を睨み付けて、ディオはシーツに横顔を埋める。
言い出したのは自分だ。なら、まだ、今日だけは、好きにさせてやってもいいんじゃあないか?そのように思ってしまった自分を内心で殴りつける。もう、何もかもおかしくされてしまった。この、目の前の男に。素直に反応を示してしまう身体に呆れ果ててしまいそうだ。
けれど、もう、すべてがどうだっていい。
全部、この男に、今日だけは。預けてしまおう。
「途中で手加減してやれなかったらどうなってた事か、分かってるんだろうなァ?」
「……ふん」
その言葉を鼻で笑って、ナミセの腕の中で身動ぎする。
つまるところそれは奴から少しでも余裕というやつを奪えたという事に他ならないと自白しているようなもので。
まあ、今はそれでいいだろう。……でも何れは、僕でなければ勃たないと言わしめてやりたい。
痛む体と枯れた喉。
少し苦くて甘い、奴の匂いに包まれながらうとうとと微睡んで。
「眠いのか?少年」
「ン、」
「それなら1度外に出てからの方が、」
「僕に……命令するな……」
そんな事をしたら枕がなくなるじゃあないか。
空いていた間を詰めて更に密着しながら擦り寄れば、仕方ないと言いたげにナミセは僕を抱き寄せる。
「1時間だけだ」
「……みみっちい奴」
「何とでも言え」
そう言う割に僕の髪を撫でる仕草は存外優しげで、僕はストンと眠りに落ちた。
「やあ、おいでダニー。仲直りをしよう。僕が悪かったよ……」
***
髪を切った。
鬱陶しかったが、それでも余計なトラブルを起こさぬように自罰を兼ねて伸ばしていた髪。
鏡に映った自分の顔は思いの外痩せていたが、その目は不思議と生命力に溢れているようにも見える。顔色も良い。
「お兄さん、凄くかっこいいですね……!」
「そうかな?君の腕が良いからってのもあるよ、きっと。フフ……かっこよくしてくれてありがとう」
軽く頭を振って店の外へ。
髭のない顎を摩りつつ。……背後で腰を抜かせた店員を置いて。
ああ、さて、どうするか。
ふらりと立ち寄ったカフェに入れば客寄せの為かテラス席に案内された。商売根性逞しい。俺はそういうのを好ましいと思うタチなので快く承諾する。
ぱちりと小型の端末を立ち上げながら笑みを含める。
本日の休みは年下の同期の弱味を握ってもぎ取った物である。いやあ、実に簡単な事だった。まさか奥さんが不倫していたとはなぁ、ご愁傷様、なんてな。ホテルに入っていく証拠写真を見せながら囁けば精神を揺らすのなんて容易いものだ。まだ歳若いというのに、とても可哀想。所詮他人事、他人の不幸は蜜の味とも言う。
───君新婚だろう?可哀想に。家にクタクタになって帰っても温かく迎えてくれる奥さんが……ねえ?今も奥さんを愛しているかい?そうだろう、そうだろうね。
ちょっと俺に休みを譲ってもらえればいいだけなんだ。そうしたら奥さんを取り戻してきてやる。チョット俺の仕事を手伝ってくれさえすればいいんだ。何、簡単な事さ。規定の時間に先方に1件電話するだけだ。その為だけに出社だなんて、非効率的だろ?
安心しろよ、奥さんに手は出さないし、別に犯罪を犯す訳じゃあないんだからさ。お前は大切な同僚だ、協力したいと思うのは当然の事じゃあないか───
結果?ンなもん俺の端末に連絡先が増えたって聞きゃあ分かるだろ。……約束通り手は出してないさ。今はな。
届いた珈琲を口にして、軽食に手を付ける。そこそこ美味い。
さて、そういう経緯で今日は休日になったのである。
貸し1とはいえアイツは俺に頭が上がらなくなった事だろう。何せ奥さんが泣きながら懺悔して縋り付いてきたのだから。あの夫婦はアイツが奥さんに熱烈にアタックして射止めた……というか奥さんが根負けした形で結婚した。その奥さんがアイツに捨てられまいと必死になるというのは、男としてはとてもクる訳だ。これで多少の無茶もしてくれるようになるだろう。
そんな簡単に勤務を交代を見逃してもらえるのか?穴埋めが出来りゃああの無能も文句あるまいよ。あったとて言わせるものか。
端末を指で操作しながら珈琲を飲む。
所詮、この世は弱肉強食。強い者が弱い者を搾取し喰らう。だからといって慢心は良くない。俺のように、地の底からその首を狙う何かも息を潜めているかもしれないのだから。
過剰に恐れるのも良くない。それは何の為に頂に座したのか分からないじゃあないか。恐怖で凝り固まった心では見える物も見えなくなるというものだ。
愉しもうぜ、何もかもを。この世の全てを味わい尽くした者が完全無欠の勝者なのだ。吊り上がる口角を隠して、俺は席を立つ。
***
……あれからもう1年は経つが、未だあの白い部屋に呼ばれていない。普通はそれは喜ばしい事なのだろうが、こちらはかなり欲求不満……いや、溜まっているという訳ではなくて。……まあ要するに、現在僕は受け身側として疼く身体を持て余していた。
僕を殴ったジョジョに犬を焼却処分する事でちょっとした復讐を果たした後。僕は悔い改めて心を入れ替えたという仮面を被り、ジョジョとは理想の義兄弟、ジョースター卿とは理想の親子を演じる事にした。
何せ今の自分は子供……何をするにも保護者の目がある。つまるところある程度……そう、財産を法的に自由にできる年齢になるところで、ジョースター家の財産を丸ごと頂く事にしたのだ。その為には正式にジョースター家の養子になる必要があり、僕は耐える事にした……のは、いい。
世間一般、13にもなればある程度性に関して興味を持ちだす頃合いだからと性欲処理がてらガールフレンドとやらを作ってみたりはしたし、目を盗んで僕に興味を持った男に身体を貸してやったりもした。結果は女相手は兎も角、男相手では思ったような快楽は得られず。寧ろ痛みばかりが際立って不快感の割合が強かった覚えがある。……いや、正確には確かに快楽を感じはしたのだが……こう、奥まで届かない。届いても硬さが足りない。なのに痛い。奴の方が数段デカくて凶悪なのに、どうしてこうも違うのか。前戯か?
想像していたのは何もかも分からなくなるような、意識の吹っ飛ぶような快感そのものだ。だというのに女は行為の最中に水を差すが如くくだらない愛の言葉を求めるし、男は自分が気持ち良く出せればいいとでも言いたげにこちらの都合など考えない自儘ばかり。都合を考えないのならばこちらをイキ狂わせるくらいの勢いで来いというものだ。こちらが求めてももう無理だのなんだのと───主導権がこちらにあればその無理も通させてもらうが───……なんだか腹が立ってきた。それもこれも、あの淫魔の所為だ。
求めれば返すし、その分だけ求める。それだけの関係。幸いの事、アイツはイエローモンキーだが顔立ちは良いし、その肌は滑らかでガタイのいい身体は抱き着くには丁度良く、
─────張り出したカリと太い幹でごりごりと前立腺を磨り潰しながら1番奥まで突き入れ、その先の肉壁をこじ開けられた時の─────
「……っ、」
ずぐん、と腰に走る疼きに唇を噛み締める。
ハマっている。自覚はある。
だが心は許してはいない。身体の相性が良いのは確かなのだが、如何せんその他の全てを知らない不審者なのだ。心を許せる方がどうかしている。奴は相性の良いパートナーでしかないのだ。
「早く呼べよあの愚図……」
「?ディオ……何か言ったかい?」
「いや。何も言っていないよJOJO」
にこりと微笑めばジョジョは少し身動ぎして視線を逸らす。ふん、一丁前に警戒なんかして。笑っちまうぜ。
視界にふわりと揺れたブルネットの髪を無意識に目で追って、ついと目を逸らす。
……そう言えばアイツは、3日毎に呼ばれていると言ったか……。
馬車の外を眺めて足を組み直す。
そもそも、何故こちらは不規則なんだ?もしかして本当は規則性があるのか?
向こうは言わずもがな……奴の言い分を信じるのならば、3日毎。こちらは……思い出せ。初めは、……母を亡くして間も無い頃、浸る間もなく手酷い輪姦をさせられた後、か。次はあのクズを殺害せしめた後。最後にジョジョに反撃を食らった後……。
怒り、憎悪、殺意?それとも単に感情が昂ればいいのか。
……、試してみるべきか。
その日の夜、今までで1番感情を昂らせたであろうその頃を思い出して目を瞑る。……ああ、何故そこでアイツに甘く愛でられた時の事を思い出してしまうのか。
目を開けばそこは見慣れてしまった白い部屋で。
結局、アイツの事を思って眠る事で来れてしまったという自体に打ちひしがれていた。何だそれは、まるで歯の溶けそうなくらいに甘ったるい菓子のような思考ではないか!