※この作品はR-18です。

吸血鬼は淫魔の夢を見るか?   作:マスター冬雪(ぬんぬん)※休止中

33 / 45
第33話

 

 

目的とは終わりであってはならない。何故ならその目的に達した時、人は生きる意味を失ってしまうからだ。

 

 

 

★

 

 

 

着々と、ジョースター一行は此処エジプトへ近付いてきている。

終りの音が聞こえる。

まるでそれは嵐の前の凪の海。過ぎ去った過去を想いながら感慨深く思う。

 

この世界に堕ちて、色んな人と会った。あの世界では多くなかった、個性の強い人々。けれどあちらとこちら、さしたる差など無いなと思った。……彼以外は。

 

彼の存在は、自分がこちらに堕ちた甲斐があったと思わされる程のものだった。彼を中心に、様々なものが集まっていく様が小気味良かった。さながら、引力のようで。

 

彼は友人のようで、唯の愛人で、理解者で、どうしようもなく分かり合えない、自分が心を傾けるに相応しい男だった。美しい、人外。未だ幼い、化け物になりたいと願う愚かな徒人だった。

 

惑い、悩み、止まる事を知らずに突き進んで。その姿をもっと、言うなればずっと、見ていたくて。自分はこの世界に堕ちたのだし、邪魔をした。確信があった。彼は自分の妨害を喰い千切ってでも進んでいくだろう。だから気兼ねなく邪魔をした。彼からすれば飼い猫が足元に戯れついて来ている程度にしか感じていなかっただろう。

 

───彼は俺を踏み越えていく。

 

だから俺は彼を愛した。彼は信じようとはしないけれど。

本当に、愛しているのだ。元々生に執着の無いサガを持って生まれたけれど。彼にこの命を、この肉体を、この精神を。路肩に散ったゴミのように踏み潰されて捨て置かれたって構わないくらいには。……俺にだってプライドはある。そこらの人間より気位の高い自覚はある。自分の今の美しさに自負がある。だから他者が俺を無碍にして掌を返す様が気になって、手元に置いて、観察して。

だけど、そんな有象無象に向けるようなそれとは、明らかに異なっている。

 

俺はそれを愛と称した。

俺は、愚直に、哀れに、無垢に、純粋に。ひねくれて、人間不信で、自信過剰で、皮肉屋で、溝のような性格で。

歩みの先に道があると信じ切っているのが可愛くて、その先には崖しかないというのに突き進んでいくのが可哀想で。

 

 

そんな彼に、焦がれる程の───恋をしたのだ。

 

 

 

★

 

 

 

断ち切れるだろうか。彼は。

───無理だろうな。

スタンドが教えてくれる。この先に待っているのは紛れもない終着だと。

 

警戒を促している。けれど、それを止める事はしてはいけないと、戒められている。

 

強制力があった。魂が、そのような枷を嵌められている。

細く、脆く、容易く引き千切ってしまえる程度の、薄弱な鎖。

敢えて、それに従っている。その通りにしてしまう事が、彼の望む事だと分かっていた。

 

だから俺は、彼の脚を切り取ってしまうような事はしなかった。簡単に出来たのだ。そのようにして、彼を腑抜けにしてしまう事なんて。

彼は破滅を迎える。……そして、それは俺自身も。

 

構わなかった。だって、それは、彼と共に破滅に陥るという事。彼と共に終わるという事。それはなんて劇的で、ロマンティックなのだろう?

その時に彼が心底から悔しがって、怒って、憎んで、当たり散らして、泣いてしまったりしたら。俺はそれだけで永遠を幸福に生きられるだろう。嗚呼、その時には慰めてやりたい。責め立てて、嘲笑って、はじめから間違っていたんだと突き付けてやりたい。彼に罵られながら、彼を絶望に陥れてしまいたい。

 

そんな事になったら。

だけど。嗚呼。

その時は彼を切り捨ててしまうのだろう、俺は。

だから、幸せの絶頂で。

 

俺は彼に殺されたい。

 

 

 

★

 

 

 

魂の感知から、どんどんと見知った気配が消えていく。

残ったものも弱ってしまって、数ヶ月間は正常に戻るまい。

見知った魂は世界のどこにいても感知出来る、とはいっても、距離が遠のけば遠のく程、その感覚は曖昧なものへと変わっていく。

けれど、消えていく。俺を魔女と定義した占い師も、狂信の果てに血に沈んだ。

 

苛立ちと失望に暮れる彼に、俺を刺客に送り出せと甘言を吐いた。

彼は少しの思案の後に、首を横に振った。

どうして。

問えば、何も言わずにただ、準備をしろとだけ言った。

 

最近、彼はずっと、俺に殺しを求める。護身用だった拳銃も撃ち慣れてしまった。

魂の全てを糧にして、土壌にしろと仰せだ。

身体を大切にしろと。───まるで妊婦にでも言うように。

彼の望みを───唯の保険だろうが───俺は知った。

 

ああ、勿論。命令には従うとも。だけど、俺の好きなようにしていいという事だろう?俺に委ねるというのは、そういう事だ。

彼は何も言わなかった。

彼は何も言わずに、俺を抱いた。

 

 

 

★

 

 

 

永遠を求めてはならない。

 

 

 

★

 

 

 

彼はアメリカ、フロリダ州へ飛んだり、戻ってくるなり其処の友人を屋敷に呼んだり、苛立たしそうに机に向かったりして、忙しそうにしている。

彼は彼なりに考えがあるのだと、生涯唯一の敵対者が、僅かな優越と共に言った。正直なところその発言には納得したが、それの言い方が至極腹立たしかったので、売り言葉に買い言葉の子供じみた言い合いをした。その時は珍しく2人して彼に叱られたものだ。敵対者はすっかり落ち込んだ(悄気返った)ので、言い合いに勝負はつかなかったが、結果的には俺の勝ちって事で。

 

 

 

★

 

 

 

彼の方が余程、修道者だ。

悟りを開こうと頑張っているナアと他人事。すっかり屋敷は静まり返ってつまらない。暇を持て余して執事に執拗に絡んでウザがられている。やめる気はないけれど。

 

この沈黙はまるで、あの時の水底のよう。

俺はあの時の、停滞した沈黙を愛していた───否、今も愛しているので、成程、俺がこのスタンドを得たのは道理だったのだとひとり納得した。彼女が俺の一部となったのは、彼の言葉を借りると、運命だったのだ。……まア、俺は運命などというものは偶然の連続か、或いはなるべくしてなった必然だと思っているので、所詮は戯言なのだが。

 

スタンドとは精神のあらわれ。要するに、彼女が俺に惹かれたのも、俺が彼女の生前を憶えていたのも、それは必然だったのだろう。絶妙に、マッチしていた。彼女と知り合っていれば、俺はきっと彼女から悟りを受けていたに違いない。他人のふり見て我がふり、なんて。……実際に知り合ったとて、俺は彼女を有象無象のひとりとしてしか見なかっただろうが。

 

もしも、だなんて考えるだけ無駄な事。そう切り捨ててしまう程度の事を考えてしまうなんて、嗚呼。本当に、退屈な事だ。

 

 

 

★

 

 

 

不変を求めてはならない。

 

 

 

★

 

 

 

九栄神の皆が屋敷を発って直ぐの時に、拠点を移した。

屋敷はまるで箱庭だ。広い部屋でひとり、怠惰を貪る。腹は空いていないけれど、どうにも飢えを持て余して、俺は外へ抜け出した。

 

遠目に見たジョースター一行は太陽のような、星のような、輝かしい魂をしていた。闇に慣れた目が焼けてしまいそうな、そのような。

ポルナレフも、花京院も、それに引っ張られるように研磨されて、美しく輝いていた。

 

自然と、視線が向けられたのを感じた。ヴェールに隠されて顔は見られなかっただろうが、あちらも何かを感じたのだろう。じっと、ただじっと、俺がその場に留まっているのを見ていた。

 

ジョセフが首を傾げ、何事かを承太郎に話す。承太郎はその視線をうろと彷徨わせると、帽子を深く被り直して首を振る。一行全員の視線が、そうして逸らされた。

 

帰った俺は彼に叱られた。そりゃあそうだ。

ごめんって、謝ってるじゃあない、もうしないよ。

 

 

 

★

 

 

 

運命を捻じ曲げてはならない。

 

 

 

★

 

 

 

門鳥のペット・ショップが死んだ。鳥の魂の感知なんて出来るのかと不思議に思う。スタンド使いは魂の波長が非常に強い。案外、判別も出来るものだ。嗚呼、可哀想に。気高い隼だった。アニマルセラピー要員としてとても可愛がっていたのに。

 

明日、ジョースター一行がこの屋敷に招かれる。

明日、明後日。それで、彼らの旅が終わる。彼の全てが終わる。俺は未だに信じられてはいない。もしかしたら彼が勝利するかもしれないのに。だって、それ程彼は無類の強さを持っている。

 

だがまア、この世界は良い暇つぶしになった。

彼次第で、俺は残された手段をどうするか。具体的には、それを目の前で踏み潰して彼の絶望を嗤うか、彼の願い通りに能力を行使するか───決めるとする。

 

お膳立てされておいて、未だに決めかねているのかって?

そりゃあそうだろ、俺は俺の楽しい方を選択する。

快楽主義の刹那主義。希死念慮すらある。幸福の絶頂、死んだっていいと考えてしまえば、俺はそのようにする。

 

俺の心は、俺ですら分かっていない。

だから、彼も───俺を信用しないだろう。だから保険なのだ。予備案ですらない。滑り止め程度にもならない。

彼がそれを赦すので、俺はそれを貫くだけだ。

 

 

 

★

 

 

してはならない。してはならない。してはならない。

 

誰に決められた?

それに従う道理などありはしない!

 

 

 

★

 

 

 

どちらを選んだかって?

 

今の君の目の前にいる俺の姿を見れば、分かりきった事だろう?

 

 

 

★

 

 

 

負けるつもりはなかった。DIOは自分のスタンドに絶対の自信を持っていたし、過去、最大の好敵手であるジョナサン・ジョースターの肉体を奪っている。その子孫が何するものぞ、と。

けれどまア、現実は無情な事で、より大きな意志と、世界観やシナリオ通りに、何一つ変わらず終わりを迎えた。

 

とはいえ、彼───水瀬京一郎というイレギュラーが何も生まなかったかと問われれば、それは否である。

 

少なくとも刺客の彼ら彼女らは頭の隅に彼の存在が色濃く残っていたし、実際、所々で彼の存在を匂わせる発言をしたりした。

 

花京院典明は水瀬京一郎との何気ない会話を語ったし、ジャン=ピエール・ポルナレフは水瀬京一郎の美しさに友情を見出していた。

デーボは水瀬京一郎と呑んだ酒の味を覚えていた。

ラバーソールは痛みと恐怖による恫喝に水瀬京一郎の存在をチョイと小出ししてしまったし、ホル・ホースは2番目に組む相棒に水瀬京一郎の顔を思い出した。

J・ガイルは次の雇い主に水瀬京一郎を候補にしていたし、エンヤ・ガイルは最後の断末魔に夜の魔女め、神に仇なす事があればあの世で屈辱なる2度目の死を馳走してやると罵った。

スティーリー・ダンはあの狂気の坩堝よりはマシか、いやコッチはコッチで無理だと病床で呻いている。

マニッシュ・ボーイは送られるなら水瀬京一郎の元がいいと赤子のように泣いた。

ミドラーはこのような姿でも水瀬京一郎なら愛してくれるだろうなと思った。

ンドゥールは闇を歩くDIOの傍に夜のような水瀬京一郎が共に在れば良いと願った。

オインゴとボインゴは自然と水瀬京一郎の元に帰ろうと思ったし、アヌビスはどうか錆びる前にナイル川から引き揚げてくれと一時期持ち主であった水瀬京一郎に喚いた。

マライアは自分が敗れてもDIOの傍に水瀬京一郎がいれば問題無いだろうとほくそ笑んだ。

アレッシーは自身のスタンドで幼児化した敵に、やっぱり肉塊になったあの方は異常だったのだなあと、強烈に残る記憶を思った。

ダニエルは奪った2人のチップを弄びながら、水瀬京一郎ならまだ長くもったぞと思考の端にあったし、ペット・ショップは嘗ての自分の鳥生を走馬灯として思い、あの主人の番は弱いのにと思わなくもなかった。

テレンスは残されたスタンド使いの数を思い返して、あの人は動くだろうかと思考を痛みから飛ばした。

ヴァニラ・アイスは塵に消えながら、この状況でも怠惰を貪るようなら削り取ってやろうと呪ったし、ケニー・Gはあの人を逃がさないとと主人の命令に力を振り絞った。

ヌケサクと呼ばれた──は太陽の光に消える前にどうか自分を連れて逃げてくれと泣き叫んだ。

 

 

……DIOは。ディオ・ブランドーは。

 

今際の際、ジョナサン・ジョースターとの青春を。吸血鬼としての始まりを。“天国”への切望を。友であるエンリコ・プッチへの信頼を。

ジョースターに連なる系譜への憎悪と感嘆と、言いようのない悔しさと。何処か、行き着く先まで来たのだという、達成感にも似た飢えを。

 

それらを思い返してから、水瀬京一郎を“見た”。

 

真にディオ・ブランドーという人間の人生に寄り添っていたのは彼だった。

彼は鍵だった。差し込む鍵穴も、それを使う人間も、いない。けれどそこにあるだけの鍵だった。

 

彼の過去などどうでもいい。彼の未来もどうでもいい。けれど、現在を共に生きるにはちょうどいい、それだけの存在だった。

ディオ・ブランドーは愛を知らない。知る必要がないと切り捨てていた。寧ろ唾棄すべきものだと考えていた。

 

水瀬京一郎は、それを愛と言った。共に寄り添い、安堵を少しでも得られるのであれば、それは愛だと。

 

これで終わるのだと、DIOは思ってもみなかった。青天の霹靂、寝耳に水、……表現の仕方などどうだっていい。

ずっと、これが続くのだと、漠然と思っていた。それだけだ。

 

“時よ止まれ”。全てが自分の手中にある事の充足があった。

 

夢の中の停滞が、足を止める事が、恐怖だと、不安だと感じた。

 

何故なら。何故ならば─────

 

 

 

水瀬京一郎という男は、これを愛していたのだと。終の間際、DIOは少しだけ理解してしまった。

 

 

 

朝が、くる。

 

 

─────

太陽の下に、男はいた。

逃げてくれと送り出された先、男はひとり、そこにいた。

男はどこか虚ろに、幸せそうに、この世全ての不幸を背負ったかのように、掠れたような瞳で無表情に笑っていた(嗤っていた)。

ひとりの男はこてりと、まるで人形のように首を傾けた。

 

「満足か?」

 

男はひとりの人外を見下ろして、瞬きもせずに言葉を落とした。

 

「飢えは癒えたか?」

 

流麗に、沈み込むような夜と、忍び寄るような闇の、美しくも俗世から離れたような神秘的で冒涜的な魔女を思わせる、そのような声だった。

 

「そこはおまえの安寧か?」

 

塵に消える残骸を、しゃがみこんで片手に掬う。

 

「おまえの望み通りの世界が広がっているか?」

 

さらさらと、それは手の中から風に巻き込まれて消えていく。

 

「嗚呼……分かっている。分かっているとも。選ぶ刻が来た」

 

胎を撫で、さて困ったな、と男は云う。

 

「おまえは俺の報復を受け取っていないな」

 

ひたひたと、湿った水のような気配を帯びる。

恨みがましい、おどろおどろしいそれ。

 

「理解した。俺は俺の中のそれを、確かに。……あまり良いものでは無いな」

 

ひとつ、瞬きをする。

 

 

 

「おまえが作り出したものだ。おまえが喰らって、俺を終わらせろ」

「おまえが生み落としたものだ。おまえが終わらせるのが道理だろう」

「決めたよ、少年」

「決めたよ」

「これが、俺の愛の終着か。呆気ないものだった。酸鼻極まる。けれど、」

 

 

「これから始まる」

 

 

「終わりを迎えるのも……存外早くなりそうだが」

 

 

 

 

男は灰となった肉体を放り捨てて踵を返した。

最早抜け殻に興味はなかった。

 

 

 

★

 

 

 

腹に残っていたのは、経験した事の無い程の灼灼とした怒りだった。

自分が嘗て味わった屈辱よりも、乾いて疼く憎悪。失望。歓喜。……愛。感情に色があるのならば、今の自分の腹の中は真っ黒であろう。

 

肉体の強度など目に入らぬ。

頭痛が襲おうと、血涙が流れようと、身体が融け落ちようと。

 

 

気が付けば傍には彼の執事が控えていた。

周りには彼の部下が揃っていた。

話を聞くに、どうやら自分はあの後闇に潜り、片っ端から彼らを勧誘して回っていた。らしい。勧誘というのも憚られる、誘惑だとか、堕落だとか、兎に角本能を誘引させる一種の暴力、或いは蹂躙だったという。

身体が気怠げなのは淫魔としての能力を常に最大出力で使い、“スタンドすらも常時発動させていた”からだという。

 

淫魔の頑健さは衰えに衰え、自分はベッドの上から動けない状態だったのだから、余程の事である。

正気を取り戻した時、執事が手に持っていた物を全て取り落として医者を呼んだのだから。

 

「……あー、記憶が戻って来たかも」

「それは、良うございました」

「うーん、……無茶したなァ俺。迷惑かけたね、テレンス」

 

医者からの触診を受けながらケロリと言うと、テレンスはがっくりと肩を落として大きな溜め息を吐いた。

 

「まったく……“身重なんですから”、母体と子に関わるような事はおやめ下さい」

「……ウフフ、そうね。お前の、お前たちの、大事な主人の為だものね……」

 

勧誘の言葉に“主人たるDIOの復活の為に”、だなんて文言を使っておきながら、なんという無理を繰り返しただろうか。

 

素直に集まるなら良し。もう二度と経験したくない、普通に生きて平穏に死ぬんだと逃げ回るスタンド使いを追い回し、罠にかけ、死を選ぶ間際まで肉体的にも精神的にも追い詰め、絶望と共に赦してくださいと忠誠を誓うまで。執拗に。

人殺しが何を今更。コンビニにチョット出掛ける事すら出来ないくらいにまで社会的に潰すぞ。これまでの3ヶ月で現代社会の大半に深く爪痕を残すくらいに根を張っている者の言葉は重い。

 

「……プッチさんも心配しておられましたよ」

「彼を、だろ。彼(アイツ)DIO至上主義だから内緒にしてくれれば良かったのに」

「まア……代わりと言ってはなんですが、彼には内密に、DIO様の子の情報を入手しているので」

「っ嗚呼!本当?場所は?生活はどうしているのかしら。彼、どうにも難のある女ばかりを孕ませていたから心配していたんだ」

「京一郎様、お気を静めてください。お身体に障ります」

 

医者の言葉に閉口する。

 

「会いに行くのなんて以ての外ですよ」

「どうしてそんな酷い事を言うの」

「貴方は絶対安静です!今も手足が肘膝まで蕩けているのが分かりませんか!」

 

やっと血涙が止まったのに!とテレンスが声を荒らげてタオルを押し付けてくる。

 

「血涙は脳が融けるくらいオーバーヒートしたからだよ。もう世界中の人間の魂を観測してスタンド使いやスタンド使いの素養がある人間を探す、なんて事してないから……」

「そういう問題ではないです!」

「信用無いなァ……」

「あるとお思いで?」

 

テレンスがいつもはきっちりと纏めてある髪を解れさせ、にっこりと微笑みながら顳かみに青筋を立てている。

 

「兎に角今は絶対安静です。面会も謝絶。何度腹の子も危うくなったか……」

「わかったわかった、言う通りにするから。……取り敢えず腹が減ったなァ」

「……ふーーー……承知致しました。何かリクエストはございますか?」

「鉄分補給出来そうなやつ。タンパク質も。あとハグ(生気)ね」

「はいはい……」

 

立ち上がったテレンスが両手を広げるので、するりとその身体を抱き締める。

 

「ありがとう、テレンス。これからも宜しくね……俺と、彼の為に」

 

包帯で覆われた腕で、労わるようにして。

 

 

 

 

「……仰せのままに。我らが大いなる夜の魔女よ」

 

 

 

 

終




以上で 吸血鬼は淫魔の夢を見るか? ひとまず完結です。
駆け足で進んでいきましたが(何となくシリ切れトンボである)如何でしたでしょうか。作者の性癖でした。はい。まさか評価バーに色が付くとは。これ匿名じゃあなかったか?匿名だったよな。ウン。

実はというと四部前の時空でDIOの息子達を一時期集めて親として幼少期を送らせたり、DIOの息子達がいる状態でDIOが再誕したり夢の中で胎の中のDIOと蜜月()したりする構想も練っていましたが、そこは最早蛇足でしょう。そこまで書いたらパッショーネ某ボスと出会したりとか四部杜王町編とか六部神父をひたすら妨害する編とか書かなくちゃあならなくなる。キリがねぇよ。あったとしても一巡終了までだよ。無理だよ六部読んでないもん。プッチ神父の偽物感スゲェのなんの。また書き直すかもしれん。すまん。

リハビリがてら短編書きに来るかもしれませんが。その時は「ああ、こいつ今スランプなんだなあ」という広い心で迎えてください。


今後の予定としましては、宣言通り設定集を投稿後、作品の匿名を解除します。で、暇になったら前述した蛇足を書きに来ます。というかR18書きたくなったら頻繁に来ます。

長々と後書きで失礼しました。
今までこの作品を追ってくださいました皆々様、感想、評価等つけて頂きました御方方に、多大なる感謝の思いを記してこの作品の〆とさせて頂きます。


……ところで皆もDIO様受小説書いてみない?僕はやりました。キミもやってくれ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。