吸血鬼は淫魔の夢を見るか? 作:マスター冬雪(ぬんぬん)※休止中
ショタ/騎乗位//
順当に行けば3日後の今夜、眠りに着けばまたあの白い部屋に招かれる筈だが───当たっていたな。
「よう」
「……」
何故殴る??
「また身長が伸びたな。今度はどれくらい経った?」
「……半年」
「ふぅん」
ちらりと壁のプロジェクターに目を向ければ壁には【SEXしなければ出られない部屋︰3】と映し出されていた。
艶のある髪を指で辿れば手を払われる。
「随分身形が良くなったものだな」
「……。お前もな……髪、切ったのか」
「まあな。鬱陶しくなったから。……似合う?」
「ウザイ」
「はははコイツ」
目尻を尖らせていた少年は溜息と同時に態度を改めてベッドの上で身体から力を抜く。
俺も倣うようにベッドに腰掛けた。
「お前はいつも愉しそうだな。お気楽なもんだぜ」
「愉しくて何が悪い?限りある人生愉しんでこそだろ、老い先短ぇ老人じゃねぇんだから。え、お前楽しみとか趣味とかないの?」
「誰が老人だ」
普段何してんの?学校?13ねぇ。家でも勉強して本読んでるのか、真面目だね。彼女は?いる?へえ、なのにこの部屋に呼ばれてるのか。ご愁傷さま……うん?俺は独り身だよ。所帯持つとかめんどくさいし、ンな暇ないし。切り捨てられても問題ない下っ端も下っ端は辛いもんだよ。おーい、笑うトコじゃあねぇぞ。
などと、ツラツラと。
「ふん……なんだ、今日はやけに話すじゃあないか」
「フフ。お前こそ……俺に何か話したい事でもあるんじゃあないか?」
「!」
目を見開いた少年は徐々に剣呑に目を細めて、下から俺を睨め付けた。
「……ナミセ。この白い部屋はお前の仕業じゃあないんだな」
「俺にそんな力はないぞ。何せ普通の人間だ」
「……」
「何でそこで疑わしそうに見るんだよ……皮膚を裂けば血は出るし首を裂けば死ぬんだが?お前まだ俺の事を淫魔とでも思ってんのか」
その言葉に少年は外方を向いた。おい。
「何か分かったのか?この部屋の事で」
「さあ?」
「……。……ま、いいけど」
首を竦める。だって気持ち良けりゃそれでいいんだから。
浮かべた笑みにギクリと身体を強ばらせた少年は深く薄く息を吐くと俺ににじり寄る。
「どうした?」
「……分かって言ってるな、お前」
「くっくっく……おいで、相手してやるよ」
大方、他を試しても満足いかなかったのだろうな。服を剥げば胸元と背中に鬱血痕が散らばっている。よしよし、やはりお前は可愛いな。
同じように俺のシャツを脱がせた少年はそこで動きを止めた。その視線の先は─────
「お前が良くて俺が駄目、とは言わねぇよな」
「……言う訳が無いだろ」
俺だって溜まるものは溜まるんだぜ。……不満がないと装うならその顔も偽れよ少年。
眉根を寄せた少年は鎖骨あたりに残っていたキスマークに噛み付いてキツく吸い上げた。……、いや、おま……噛み過ぎじゃね?ガジガジと歯型が付けられて思わず苦笑が零れる。
その勢いで俺をベッドに押し倒した少年は上に跨ってニヒルに笑う。
「乗ってやるよ」
「わお。いいね、」
くつりと笑って少年のベルトを緩めてやれば、彼は素直に腰を上げた。
「ン、く……ゥ、ふ……!」
ぶるると身震いしながらアナルに呑み込んでいく。少しずつ、逃げそうになる腰を無理矢理下ろしながら。
「ア、は……ッ!はー……っ、はー……っ、」
「ふは……良い子」
「うるさ、い」
頬に触れようとした手を払った少年は息を荒くしながら浅く腰を動かし始める。
「ン、んっ、ン……っ、ふ、ぁ、!ふ……」
「(いーい眺め、)」
口に出せば本気で嫌がるだろうから心の内に留めて。
汗の浮く赤く染った白い肌。均衡の取れた少年らしいしなやかな身体。醸される少年独特の色気。体毛の薄い身体に、勃起してなお可愛らしいサイズのペニス。
上から下まで丸見えのローアングルなんて、絶景以外の何物でもないだろう?……いやはや何とも、快楽を追って必死に腰を動かす少年の淫らで美しい事か、なんて。正直俺よりも淫魔らしいのでは。これ口にしたが最後殺されるな?(名推理)
自分は他人を淫魔扱いする癖に自分がされればブチ切れるとか理不尽過ぎるな。そこも少年のいい所だけど。
手持ち無沙汰に剥き出しの太腿を撫でればじとりと睨まれる。
「余計な事をっ、する、な……!」
「えー」
少年の積極的なとこ見て何もしないとか勿体なさ過ぎるだろ。そう言って厭らしく弾む腰やら波打つ腹やらを撫で摩れば、少年は次第に泣きそうな顔になって甘く声を上げた。
「あっ、あっ、ああ……!イク、ンン、イ、クッ!は、あぁっ……!!」
「ん、」
膝を震わせながら背を反らす少年の腰を支え、滴る精を腹で受け止める。
「ん、ふ……っ」
「ふは、……絶景だけど生殺しっての?つーか動いていい?」
「は、……ははッ!駄目だ。人形のように大人しくしていろよ」
「俺はダッチワイフか何かかよ」
態となのかきゅう、と締め付けられて眉根を寄せるとさも楽しいと言いたげに少年は笑う。
「ん……動く、……っ!」
「ふ……おいおいマジか」
本気か?この俺にマグロでいろと?
さっきよりも激しく腰を浮かせては根元近くまで咥え込むのをただ眺めてるしか出来ないとか控えめに言っても地獄かよ。そんなにも主導権を握りたいか。
「ンッ……ふ、ナミセ……待て、だ」
「お前なァ……」
呆れたように言ったのが気に食わなかったのか、強く締め付けられたまま引き出されて思わず呻いた。
「ぐ、ッ!」
「んァ……ふ、ハハ、無様だな……!」
「っははは。泣かすぞ」
……ま、いいだろう。好きなようにやればいい、付き合ってやるさ。
それはつまり飢えに近い欲情だったのだろうと思う。
「ン、は……なあ、まだか?」
「ァは……ま、ァだ」
愉しそうに“おあずけ”を繰り返す少年に従順に“待て”をし続けてどれくらい経つか。
身体中から汗が吹き出て流れ落ちる。……現在気力で理性を保ってるのだが、俺は多分そろそろキレていい。
出そうになる直前で動きを止められる。そもそも達するまでの刺激が与えられない。……よく萎えないなと自画自賛しても許される。多分きっと。
「自分は好きなだけイってる癖にィ……」
「……ァ、勝手に触るな、」
少年のペニスを無遠慮に掴んで摩れば、少年はぶるりと身震いした。ぬるぬると精液で滑るそこを弄ぶと少年は俺の手を払った。
「なあ、まだ駄目?」
するりと頬に触れ、指で唇を撫ぜる。
「ン……ッ、まだ……」
「ディオ……早くお前が欲しい」
「く……っふ、はは……っ!良い子だ、ナミセ……っ」
……嬉しそうに愉しそうに笑うお前が今は憎たらしくて仕方がねぇよ。蟀谷のあたりがひくひくと引き付けを起こしている気がするくらいには。
その双眸には支配欲と恍惚とした快楽が映っている。
「ふ、ふふ……!そんなにもこのディオが欲しいか?まるで餌を前にした飢えた野良犬のような目をして……!」
「ああ、欲しいね。今にも喰らい付いてしまいそうなくらいだ」
ぞわりと肌を粟立たせる少年はその先の、目の眩む程の快楽を求めていて。……ああ、まだるっこしい。いや、他でもない俺が応じたのだが。
要するに少年は他でもない俺から求められたかったのだ。それこそ獣のように。
この茶番はあくまでポーズに過ぎない。素直に求めるにはプライドが邪魔をしていた。自分を抱け、だなんて言える程狡い大人ではなかったという訳だ。少年は少年だった。その分俺が大人になってやったとも言う。その割に振り回されて煽られてるけどな。……うーんこのドツボに嵌る感じ。
「煽ったのはお前だぜ。今更尻込みするんじゃあないだろうな」
「誰が。……ふん、精々僕を満足させてみろよ」
GOサインも頂けた事だ……ハハハ。
手始めにこの俺を焦らしに焦らした事、後悔させてやろうな?
*
ああ、これだ。これが欲しかったんだ。
「ンはああっ!あ!ァ、ああ……っ!ゥ、あ……ッ!!」
僕に動かせて、腰を沈ませると同時に下から突き上げられるのが、先程よりも段違いに気持ちイイ。
ナミセのペニス全体が、ごりごりと僕のイイ所を抉り抜いて押し上げるのだ。思わず背中を反らして頭を振り乱す位には、快楽が身体を走り抜けている。
相性が良いのもあるのだろうか?ただ突き上げるのに技術なんて要らないだろうと思っていた僕が間違っていたのか。
上に乗ればある程度は主導権が手に出来ると思っていたのに、今はもう与えられる快楽に完全に振り回されている。
「早漏過ぎやしないか?ン?」
「はァ、ンっ!う、るさ───ひぅ?!ア、いやだ、イってるから、ァ、っ!」
「生憎こっちはイってないんでな」
「あっ、あ、!は、ァァ……っ」
脚が震える。
「力を抜けよ少年。奥までクるのが怖いか?」
「ッ……」
図星、だった。
上に乗った時もこの奥にまで沈めたら駄目だという、紛れもない恐怖そのものが過ぎったのだ。
痺れるような、頭が白くなるような、快感の前兆。ソレをされれば最後には失神してしまう、というのは、今までの白い部屋の房事を思い返せば自明の理である。
唯、膝の力を抜いて座り込むだけなのだ。それが恐ろしくて仕方ない。
快楽の引き金を引くのはいつもナミセが先で。
ごくりと唾を飲み込む。不安、恐怖。そして……期待。
逆に言えば、それを僕はずっと求めていたのだが。
「ァ、ウゥゥ……ッふ、は、……あァ、ぐ、」
「ああコラ、爪を噛むな……口寂しいならキスしてやるから」
身体を起こして柔く唇を重ねてきたナミセに眉を寄せながらも舌を伸ばす。
口寂しいだけじゃあない。分かれよ、お前が引き金を引け。そうしたら僕は浸れるのだ。
「俺からはしないぞ」
「!」
「今日はそういう気分なんだろう?」
「貴様……っ」
その言葉の続きは飲み込んでしまった。
ナミセは耐えかねる、という余裕のない顔で、ギラギラとした目でこちらを見ていたのだから。
……端的に言えば、欲情した。
腹の奥が切なくきゅうきゅうと甘く痛み、散々欲を吐き出した筈の昂りは自然と立ち上がって。
「─────く、ゥア゙ァ゙……ッッ!!」
目の前の身体にしがみついて、下半身から勝手に力が抜けた。
ぐりりと奥の奥を抉った感覚に意識が一瞬トんだ。
「んッ……!は……良い子だ、少年……、ッ出すぞ……!」
「ァ゙、ァ゙……っ、や゙、ァあ゙んっ!!あ゙っ、やら、あぁァァ……っ!」
熱い、迸りが満ちて。茹だった身体がまた深く絶頂する。
「ふは……ホント、お前はココが弱いなァ」
「ゥゥ……ッ、あぁっ!ァァ……っ!アォォ、くァァ……!」
苦しいくらいの、電流のような痺れを伴う快楽。痙攣する身体は連続する絶頂を全て受け止めて。
「ぁー……っ、はァ、……ゥ、ア……」
「フー……落ち着いたか?じゃ、動こうか」
「ア……ッ?や、やめ……!んひァッ!!ぅあんっ!あっ!あっ、あっ!あ、ゥ、んギぅ……ッ!」
先程のように倒れ込んだナミセに、僕は自分で身体を支えざるを得なかった。
後ろ手にベッドに手を付いて、背を反らすように。
ナミセのその目が、僕を。咄嗟に猛ったそこを手で隠す。
「やっ、!いやだ……ッ!」
「さっきと同じだろ?フフ、今度は俺も手伝うけどな」
「や、アアアッ!!ゆ、揺らさなっ……っ!ああっ、!!や、め、ァ、!イ、ひぁっ!あっ、あっ……あ〜……っ!あっ、ゥ、ああっ……!も、ま、たぁ……っ、!!ゥ、イッ……あぁぁぁぁっっ!!」
下から突き上げられて奥をグリグリと抉られれば昂ったままの身体は容易く達してしまった。
「ッはは、またイった?ほら、腰を上げて、」
「ゥ、あ……!ャ……あ……は、はぁ……ァ……ん、ふ……は……ああ……、いっぱい、イくの……キモチイ……ッ」
「かーわい」
「ッあ、ォ……っ!ああっ……」
気持ちイイ。気持ちイイ……。
頭が溶けてふわふわと夢心地で。
ずる、ずる、と腰を揺らしながら奥まで呑み込んで。気持ち良くて気持ち良くて。自然と先程と同じように後ろ手に手を付いて腰を揺すっていた。
「あ、は……ぁ、また、イク、!い、いく、いくっ!あはァ……!」
「ッ欲求不満だったみたいだな。いつもより積極的……今までの相手じゃ味わえなかった?」
「ン……ン……、全然駄目だ……痛いし、無意味に舐め回されて気色悪かった。お前が良い……、」
「そうかそうか……それは災難だったな。……少年、まだ続けるか?」
「……ん。まだシたい」
「……トんだ時の少年本当に可愛いんだけど。父性超えて母性湧くわ笑える」
「ぁ……なんだ、?」
「何でもねぇよ。それよかキスしようぜ、少ー年」
「ん……」
もっと……もっと、─────
「忘れろ」
「無理」
過呼吸寸前までされてそのまま疲れて寝ちゃったとかあざと過ぎて。
***
ぐい、と背を伸ばす。パキパキと骨を鳴らしてベッドから降りた。今日とてあちこちに噛み跡やらキスマークやらが散らされていたが、同衾者はベッドにはいない。
「ショタコンじゃあなかった筈なんだがな」
着替えを箪笥から取り出してシャワールームに向かいつつ首を回す。
奇妙だ。1度や2度ならば俺も溜まっていたのだろうと流せたのだが、3度4度5度ともなれば流石に無理があるというものだ。
性欲を発散しても徹夜を通そうとしても結局は白い部屋に呼び寄せられる。明晰夢にしても鮮明に過ぎる、夢。
ディオという少年。生まれやその背景の何一つ知らない子供。彼は俺を淫魔と呼ぶが、俺からすれば彼の方が淫魔だ。部屋の仕様でセックスの際の好みばかりが無駄に知識に加わり続けている。そのお蔭か否か、彼は子供にあるまじき色気を持ち始めているが……素養もあるだろう。まあ、そこは正直どうでもいいな。勝手にしてくれ。
シャワーのコックを捻る。頭から湯を被りながら、曇る鏡に映る自分を見つめる。
母方の祖父に似たという日本人にしては彫りの深い顔立ち。ハッキリした目鼻立ちに、甘やかに垂れた切れ長の目。日に浴びない所為で青白い黄色肌。正直見慣れているが、世間一般的に言えば非常に整っているとされているようだ。……ああ、幼い頃に母親に見せられた宗教画にも見たような気もする。
……母親に犯され父親に殺されかけたのならば、それはある種の呪いだと言ったのは誰だったか。それを言ってしまえば俺もお互い様なのだが─────。
呪いか。然しながら、言い得て妙。
髪を伸ばして伊達眼鏡で顔を隠して気弱を装っていた社会人3年目の頃が周りの人間の普通の視界であり世界なのだと理解した時は、却って新鮮だった覚えがある。今まで俺は常に人に囲まれていた。何処へ行っても、何をしても。
大して伸びていない髭を剃り、シャツを羽織って髪をタオルで乾かしながらソファーに沈み込む。
……上司のお気に入りらしい女性職員が目を盗んでこちらにアピールしてきてかなり鬱陶しい今日この頃。連日サビ残徹夜は当たり前のブラック企業でよくやるなと感心してしまいそうだが……とうの上司に伝わるのも時間の問題だろう。その内営業に回される。花形といえば花形だが、ウチでは顔だけの押し売りとも言う。
やろうと思えば、俺は。
─────何にだってなれるのだ。
その様は飛ぶ事を思い出した鳥か、
……或いは。