※この作品はR-18です。

吸血鬼は淫魔の夢を見るか?   作:マスター冬雪(ぬんぬん)※休止中

43 / 45
前話の続きと本編。

京一郎×ディオ(女体化)


第42話★

 

まるで本物の獣になったかのように。

そのままベッドに押し倒すかのように飛び付いて来た彼に思わず目を見開く。先程までその呼吸を落ち着かせていた筈なのに今は荒く、明らかに興奮を示していた。既視感あるよね。

 

「……シたいの?」

「フーッ、フーッ……!」

「そっか」

 

言葉は無く、けれどべろりと顎から目元までを舐め上げられて、成程と頷く。逸るようにその右手が俺の陰茎を握る。手荒くその女の手が上下され、少しでも早く俺を昂らせようと今は平たい胸板や首筋に唾液を垂らしながら舐めては齧る。

押し当てられるふわふわとした胸の柔さが心地いい。仕草とは裏腹に臀から伸びる尾はぴくぴくと跳ね上がりながらも緩く左右に揺れている。脚あたりに擦り付けられる秘部からは愛液が溢れ、ぬちぬちと湿る。

 

「慣らさないと。触るよ」

「───あ゛っ?!ァ、お゛……ッ?!」

 

指を隙間から差し入れれば、彼はびくりと身体を震わせて崩れ落ちる。

 

「あ゛〜〜〜……ッ!んァ、ぁ゛、や、ァァ……ッ!」

 

待ちかねたかのように肢体をくねらせ、俺の腕と指で自慰するように腰が押し付けられる。

乳房と太腿。弾力と柔さにきゅうきゅうと挟まれて右手が大変幸せである。

 

「お、いッ……!」

「ン。なぁに?」

「ちんたらする、なッ!慣らすんだろうがっ、……はァッ、早くしろこのノロマッ!」

 

首元まで肌を赤くしながらもそんな口振りなので、俺はにっこりと微笑んで指を突き入れる。

 

「ァ゛、ひィ……ッ?!んひ、ぁ゛ぁ〜……ッ!」

「じゃあ俺の手でオナニーするの止めような?……ウフフ、凄いね、全部ぬるぬるで洪水みたい」

「い゛うなマヌケぇッ……!!」

 

口が減らない悪いコには指を増やしてあげようか。

指が増やされる度に泣いているかのような嬌声があがる。

 

「はひィ゛〜〜ッ?!ァ゛、あ゛、下手くそ、ォ゛、」

「懲りろよ」

「ァ゛が……?!は、ォあ゛ああーーーッッ!!」

 

ぐり、と指を曲げて腹側の、Gスポットと呼ばれる場所を抉り、陰核を膣から突き上げる。途端、ぎゅう、と指が締め付けられた。

 

「あ゛お゛ッ?!ゃ、や、めろ゛、!つよ、ぃ゛ぃ……っ!」

「“気持ちイ”なぁ?」

「ッ……う゛う゛ぅ〜……ッ!」

 

体勢を入れ替えてしおらしくなった彼をベッドに押し付け、もう少し奥の愛撫まで済ませてぬちゅりと指を抜く。十分熟れて濡れていたので、指の届く範囲で奥を解しておけば痛みもない筈だ。

 

「ナマがいい?スキン付けようか」

「も゛、ろ゛っちれもいいがら、早く、ゥ゛……ッ」

 

……、まァどうせ30分かそこらで彼の身体は男のそれに戻るし、性感染症もお互い持っていないし、このままでいいか。今更だしな。

ぼろぼろと零れる涙を拭ってやる。目尻の赤さが痛々しい。紅を塗ったかのような赤くぷっくりとした厚い唇にキスを落とす。潤んだ瞳を揺らし、存外素直に瞼を閉じた彼の頬に手を当ててバードキスを送りつつ、するりと片手で横腹を撫でる。

 

「痛かったら言えよ」

「……は、ァ……」

 

ぶる、と身体が震え、脚にふさりとした尾が絡む。

恥じるものなどないと言いたげに脚を広げ、鼠径から臀裂にまで淫液で彩った薄赤のそこに、ベッドテーブルの引き出しから出した潤滑剤で自身を濡らして押し付ける。

 

「ぁ、」

「コッチに集中して」

 

少し怯える耳を食んで上を向かせてキスを深める。

下に気を遣り過ぎると要らない力が入る。彼に女として破瓜の経験がある筈も無く。処女なのだからそれはそう。

 

「いつもみたいに、ね」

「……ッ」

 

深く食い合うようにキスを交わし、そのまま腰を引き寄せて、ゆっくりと突き入れる。

 

「ン゛、ふ……ぅう、」

「っは……上手。痛くない?」

「ッうるさい。女扱いをするな」

「悪い悪い、ついね」

 

処女だしなあ……。

快楽に顔を歪めたまま不機嫌そうに言うなんて器用な真似をする彼を宥め、先程指で押し上げた所まで突き上げる。

 

「ンヒッ……?!ぁ、や、また……ッ」

「ゼリー追加するね」

 

そう言いながら小さく主張する陰核に人肌程度に掌で温めた潤滑剤を塗した指を押し当てた。

 

「あ゛ッ!?あ゛、ャ゛、ァがッ───♡ッ!」

 

踊るように身体を跳ねさせて俺の下で悶える彼があまりに愛らしい。広げていた脚も絶頂の波には逆らえず俺を挟み込み、内側からも外側からも刺激を受けてシーツを滑る爪先がきゅうと握り締められる。

 

「……ッはーーっ♡、はーーっ♡、ゥ、あ……っ、!……、……ッッナミセェッ!!」

「うわ吃驚した。なんだよ」

 

割とマジの声量で怒鳴られて首を傾げる。威嚇音すら鳴らされる程キレられるような事したか?変わらず脚に絡み付いている尾をちらりと見下ろしつつ。

 

「っおれの許しもなく勝手に動きやがって、ッ!」

「……気持ち良くなかった?盛大に仰け反ってたケド」

「ッ!」

「おまえ自分のペース乱されるの嫌いだよなア。思わず衝動的に怒るくらいには。他人のペース乱すのは好きなのに」

 

一方的に気持ち良くイかされて屈辱でキレるとこ相変わらずで笑える。

彼はぐぬ、と喉を詰まらせてそっぽを向いた。

 

「おまえのナカはちゃんと気持ちイイから安心しろよ」

「……そういう理由でムカついたんじゃあない。勘違いするな」

 

まァまだ先しか入ってないんだが。

顳かみから流れる汗を拭い、その横顔に唇を落として、その細腰を掴む。

 

「入るよ」

 

達した後のナカは小さく収縮を繰り返すのが気持ちいい。うねるように先を食む襞を丁寧に剥がし、少しずつその身を犯していく。

 

「は、ァう……ッ」

「っは……」

 

ぬぐ、と小さく抽挿しながら押し入れる。体が揺れる度に波打つように跳ねる乳房に顔を寄せて乳嘴を舐めて歯を立てれば、がくんと四肢が大きく痙攣した。

 

「あ゛ぅッ?!ふ、ァァ……ッ!」

「あと半分、」

「ん゛あ……、あ、」

 

腹に手を当ててマッサージするように摩る。

 

「此処まで入るからな」

「う゛、あ……」

 

ぐう、とゆっくりと奥まで。浅イキの感覚に身体が弛緩して、奥から愛液がじゅわりと滲む。

 

「あ゛、あ……はぁ……ッ!」

「ふふ……締め過ぎ、っ……」

「うる、さい、」

 

熱っぽく上擦った声音が深く息を吐き出した。

最奥に届いたと同時に噛んだ指を離させ、代わりに口付ける。

張り付く前髪を避けて、流れる汗を拭う。

下に目を移せば柔い胸の谷間にも汗が伝い、引き締まった腹が呼吸と共にひくひくと蠢いて。剛直を口いっぱいに頬張って震える陰唇が、隙間からはしたなく涎を零している。

 

「処女喪失おめでとう」

「ッ貴様……!」

「時間もないから動くね」

「───う、グッ?!」

 

まるでノックするように軽く揺さぶれば、彼はびくりと身体を跳ねさせて口を噤んだ。どれだけ俺がその身を貶めるような揶揄いをしても何も言えずに睨み付けるしかないその様が愛おしいと思っているとは、多分彼は理解していない。

この舌が裂かれようと、どれだけ身体に穴を開けられようと、例え死んだとてこの悪癖は治るまい。

根元までしっかり埋め込まれて、発情で降りてきている子宮口が亀頭に当たる。

ポルチオを突かれる感覚に疑問を浮かべるのも束の間、彼は瞬く間に蕩けたような色を戸惑いと共に表情に乗せ、ぎゅうと俺の腕を握った。

 

「ゥ、んんーっ♡!ん、ふ、あ、ああっ♡!あ、ゃ、」

「奥、気持ちイイ?」

「調子、に、乗るな……ァ、ッ!は、あ、ッ♡あ♡」

「うふふ……脚、絡んできてる」

 

お手本のようなM字開脚だったのだが、仰け反る形で腰を浮かせ、耐え切れず縋るように膝から下が腰に絡んできている。

 

「そんなに子宮を突き上げられるのが気持ちイイ?あは♡もしかして孕みたいとか?子宮口がこんなに吸い付いて来てる」

「っっ、ん゛んッ♡!!っふ、うァあッ♡!あ゛、あ゛〜〜〜ッ♡♡!!」

「ほら、もっとこの俺に媚びて、精液を強請ってみな?」

「も、黙れぇ……ッ♡」

 

俺の言葉すら興奮の一助にしているのか。普通処女はこんなにも乱れない。俺が女であった時に加えて前戯まで焦らされて、その上で度重なる快感と俺からの言葉。さぞ昂っているのだろう。

肌を打付けると共に縋る指に力が入れられて爪が食い込む。毛足の長い尾がぎちぎちと脚を締め上げている。

粗相をする仕置として浮いた腰の下に手を差し入れて、脚に絡む尾の根元、尾骶骨辺りを指先で叩く。

 

「に゛ゃ、ぁあ゛ッッ♡♡?!」

「この辺り……神経が通っているから気持ちイイだろ?」

「ふに゛ゃっ?!ンぎ、ん゛ぅ〜ッ♡♡!ん゛にィ゛〜ッッ♡♡!!」

 

本能に抗いたいのか抗い難いのか。

力を抜いてしまえば奥を突き上げられる際の快感を、力を入れてしまえば抉り抜かれる快感を。

2点による悦楽はさぞ響く事だろう。

 

「あ゛は、ァ〜……ッ♡あ゛、ォあ、ッ♡」

「はぁ……そろそろ出すから……ちゃんと奥で味わって」

「ッッ……ん、あ゛、あ、」

「返事。……ディオ」

「ッ?!ゥあ゛ッ、ぁぁ……〜っ♡♡」

 

耳元を掠めるように名前を呼ぶと同時、ぐねぐねと腟内がうねり、雄を搾り上げる動きに変わる。ひくひくと跳ねる舌が唇に乗り、八の字に眉が下がり、蕩けた目が生理的な涙を零す。

 

「は、ゥ゛……ッ♡はら、あつい、ィ……ッ♡」

「ふ……良い子」

 

髪を地肌から掻き上げるように撫で、そのままさりさりと耳の後ろを爪で擽れば、くるくる、ごろごろと喉が鳴る。普段なら心地良い感覚も今では過ぎた快楽らしく、更にぎちぎちに締められる。

 

「きつ……、」

「〜〜〜〜ッ♡♡ィぐ、もぉ、イ、くッ!ひあ、〜〜……ッ♡♡!」

「ッ!ふは……!」

 

そうして喉を鳴らしたまま、息を詰まらせつつも身体が跳ね上がり、絶頂に痙攣した。

そのまま奥深くに射精して全て出し切るように腰を揺らせば、噴出する体液の熱さに彼は愚図るようにかぶりを振って身を捩る。

 

「ひゃ、〜〜〜〜ッ♡♡!!ん゛あぁ〜……ッ♡!」

「っっ……は、あ……気持ちイ♡」

「は……♡……ゥ……ア……♡ハ、ぁぁ……♡」

 

中イキの感覚が長引いているのか、胎内から男根を抜いても茫然としている。口を半開きにしたまま喘いでいた為か口の周りは唾液でてらてらと濡れて滴り、怜悧な目元は見る影もなく。

 

「あ……♡♡」

 

きろ、と眼球が緩慢に動く。俺の姿を認めると、彼はぐるぐると喉を鳴らして俺の首をその赤い唇で食む。

 

「吸血鬼の時の牙も持たないおまえがどうやって俺の血肉を食むの?」

「♡」

 

歯が当てられる感覚はなく、ただ子猫の甘え鳴きのような声を零す唇がぱくぱく当てられるだけである。その様が愛らしく、愛でるように耳を擽り、喉を摩る。

身体を捩るのは獣の本能だ。……より受精し易いように。その目には理性はなく、発情のままもう一度……、

 

───という所で、彼の身体が元に戻る。

 

「……、……?」

「ッフ、……ンフフフ……!」

 

ぽかん、と、それこそ彼の言うマヌケ面になったのが分かって、耐える事無く笑う。見る見る内に不機嫌になった彼はヒトの歯で血が滲む程強く俺の首を噛んだ。

 

「ッ……!いって、」

「……」

「おまえもノリノリだったろうに……いたたた、」

 

嗚呼、可愛い。女であろうと男であろうと、彼は幼い頃から変わらず愛らしい。

 

「子供出来てたら大切に育てような、ッ〜〜〜てぇ゛ッ?!」

「次にふざけた言動をしたら食い千切る」

 

ウフフ、いつもの事じゃあないの。俺が戯言を吐くのなんて。好い加減慣れろよな。

 

 

 

★

 

 

 

岸辺露伴の屋敷が半焼したらしい。

何をどうしてそうなったのか。……どうやら虫眼鏡を放置した所為で発火したようだが、そんなもので火事になるか?とも思った。……まア、露伴くんは漫画家だ。燃えるものなど山のようにある。怪我はないようだが住むところを失った彼はホテル住まいという訳だ。

一応、彼には一時の避難場所として此処を打診したのだ。けれど彼はそれも貴重なリアリティとして、それにジョースターらが泊まるホテルに泊まって彼らを観察したいとの事で、困った時には寄らせてもらうという事だった。露伴くんの今の優先は彼ららしい。とはいえ、俺に対してもそれなりに興味は残っているらしいけれど。暴くのは本腰を入れてから、というのもありそうだ。

 

「自意識過剰じゃあないか?」

 

書庫の帰りか擦れ違い様にそう鼻で笑うディオに首を傾げる。

 

「俺はこんなにも妖しくて美しいのに?」

「おれの方が上だが?」

 

いやん、張り合っちゃって。

 

 

 

ところで、俺の屋敷の大事な使用人のひとりが俺に尽くし過ぎてスタンドを酷使し、その反動で現在入院中だ。そろそろお見舞いに面会しに行ってもいい頃合なので今から出掛けるところである。

 

「帰りに何か買ってきて欲しい物とかある?」

「酒」

「おまえはまだ未成年だからだァめ」

「チッ……本」

「はーい」

「ママ、そろそろ紅茶の葉っぱ無くなりそうだってドナテロが言ってたよ」

「まあ。ありがとうリキエル」

「今日の夜ご飯、久しぶりにママが作ったのがいいなぁ」

「うふふ!分かったわ、楽しみにしていてね?」

「やったぁ」

 

にこりと愛らしくはにかむリキエルの頭を撫でてバッグを肩にかける。手にはお見舞いに1人分のフルーツバスケット。いつものように顔を隠すヴェールとサングラスをして外靴に履き替える。

 

「いってらっしゃーい!」

「ンふ。行ってきます」

 

 

 

 

 

町は今日とて平穏で、スタンド使いからしてみれば少し騒がしい。吉良吉廣(彼)は彼なりに上手くやっているようだ。

 

「やっている事は戦力の逐次投入。愚策も愚策だけど」

 

徒に仗助達の経験を積ませるだけだ。その点、やはり組織的な存在の方が使える手段は多い。十分な財力や求心力は必要だし、裏切りや敵対者にも気を付けなければならないが。ああ後、運とか、審美眼とか。

俺は恵まれている。俺こそが信仰対象だと言わんばかりの頭の弱い人間(誰にも言えない事で悩める仔羊)達も、俺の本性を知った上で心酔する可愛らしい信者(悪魔崇拝者)や使用人達も。俺に付随する金や力、知識、淫魔による快楽を求めて侍る者(利己主義者)も。彼らの望む通りに振る舞うのは少し面倒だが、俺のありのままを愛でるが如く受容(需要)に満ちている。さて、どちらが支配(利用)されているのやら。

……とはいえそれもこれも、お友達である権力者諸君や彼による恩恵がデカイ。前者は徹底的に快楽と恐怖で脳味噌を焼き切ってある。ホラ、俺は美しい(淫魔だ)から。

やってる事は殆ど彼と一緒だ。彼とは違って俺は表には出ないし、不必要に一般人を害さないけれど。俺は別に世界の支配は考えちゃいないので。傾けるなら国で十分なのである。

 

「やらせてる事といえばアイドル(偶像崇拝)と一緒じゃあない?相談事は破格の値段で斡旋から解決までしてるし、それ以上は俺からは特に求めてないし、困窮者には資金援助もしているし」

 

レディはどう思う?

罪な存在だとレディは肩を竦めて見せた。

 

 

 

そんな無駄話(独り言)をしていればあっという間にぶどうヶ丘総合病院に辿り着いた。暇なので散歩がてら徒歩で来たので大分遅くなってしまったが。面会時間ギリギリだが、病院の方には連絡を寄越してあるので予定通りである。あまり人が多いのは好きじゃあない。感情の坩堝である病院は特に目(脳)が疲れる。視えづらくしてあるが、完全に視えなくしてしまう程警戒心をなくした覚えは無いのだ。

 

「こんにちは」

「……こんにちは。面会の方でしょうか?」

「ええ。連絡していた水瀬です」

 

面倒臭いというのを隠しもしない看護師は視線を書類に向けたままだったが。俺の声に渋々顔を上げてからというもの、途端に目を見開いて硬直する。

 

「……あの?」

「はっ!し、失礼致しました!○○さんのご面会でしたね?306号室になります!」

「ありがとう。……素敵な笑顔だね、キミの顔が見れて嬉しい(・・・・・・・・・・・)よ」

 

……イラッとしたのバレたかな?思わず変装解いちゃった。

 

 

 

扉のノック音に上擦った入室許可がおりる。

 

「こんにちは。体調はどう?」

 

笑声の含んだ俺の声に耳を赤くしながら、点滴に繋がれた男は笑みを浮かべる。

 

「はい……御蔭様で……」

「倒れたと聞いて驚いてしまったよ。無理をさせてしまってごめんなさい」

「い、いえ!私がしたいと思っての事ですので……!それよりも、貴方に此処まで来て頂いてしまって……」

「いいのよ、私がしたいと思ったの」

 

しなやかに傍の椅子に座り、ベッドテーブルにバスケットを置いて。

彼の痩せた手に触れる。

 

「───ね?」

「ッ……!ありがとう、ございます」

「しっかり療養してちょうだい。キミは無理をしてしまうから、少しくらい休んだって誰も咎めたりしないよ」

 

跳ねるその手を持ち上げて、祈るように、ゆっくりと唇を甲に寄せる。

 

「は。……ぁぁ……、きょういちろうさま、」

「ウフフ。ねえ、私に尽くしてくれる可愛い可愛い子……早く元気になって、私の袂へ還ってきてね」

「───はい。我らが愛しき艶美なる悪魔よ、慈悲深き夜の魔女よ……必ず、貴方の元へ……」

 

涙ぐんで、嗚咽を堪えて、男は爪先に口付けた。

 

 

 

暫く談笑して、食欲がありそうだったので果物を幾つか剥いてやり、体調を鑑みてそこそこで退室する。

全く、俺の信者(友人)はいじらしいなア。これだから愛でるのをやめられない。やり過ぎたら暴走しかねないが、2、3日軟禁でもされて何もかも任せれば満足して解放するのだから可愛いものだ。命が危なくならない程度に周りに粛清されるけど。それで俺がテレンスに怒られる。

ともあれ元気そうでよかった。栄養失調で2ヶ月入院なんて、大分重症だと思うのだけど。生命力が目減りしていたから、彼のスタンドは生命エネルギーを消費するのだろう。退院したら無理させないよう見張らせつつ3食しっかり食べさせてやらなきゃア。

 

エレベーターから降りて受付まで歩いていると、何やら騒がしくて咄嗟に脇に寄る。

あの小さな背は、康一くんだ。

看護師に必死に言い募っていたが無下にされて馬鹿にされ。康一くんは途端に表情を落とすとスタンドを顕にする。

看護師の傍にある薬品棚の上の大きな瓶が数本落ちかけ、看護師が慌てて支えた。けれど看護師は予想外の重さに冷や汗を流す。それもそう、スタンドとは埒外の力だ。物の重さを増す康一くんのスタンドに、徒人が抗える筈もない。

 

「“525号室の噴上裕也”。康一くんがそれを知りたがるって事は、その彼が今起きてるスタンド事件の犯人ってとこか」

 

さて、どんな事件だったかな。報告に上がっていただろうか。

俺はエレベーターの脇に寄り掛かっていたのだが、物凄い速さでやってくる誰かの───仗助くんの為に、エレベーターの開ボタンと5階を押す。

 

「京一郎さんッ?!」

「行きなさいな」

「サンキューッ!助かったぜ、康一、京一郎さんッ!」

 

見事なウィリー走行の後にエレベーターの壁に衝突、同時にエレベーターが閉まる。彼の背後を走る無数の足跡は一部がエレベーターに挟まるも、康一くんの機転によって地べたに這い蹲った。

 

「でも、『ACT3』の『3 FREEZE』は一撃1ヶ所しか攻撃できない!残りのヤツは仗助くんを追っていくッ!」

「止めたらいいの?」

「き、京一郎さんッ?!出来るんですか?!」

「残っているのは止めてあげる。追ってるヤツは仗助くんに任せるよ」

 

このスタンドは1つ1つ同じスタンドの集まりだ。スタンドとは側に立つもの。守護霊のようなもの。魂の半身。魂ならば、俺の管轄内である。

 

「『ホワイト・ポニー』。制限は一応、“スタンドの固有能力の阻害”と“外界との遮断”。脱出条件は“100kmの走破”。幾らでも持っていっていいから───“閉じて”」

 

現れ立つ黒い聖なる乙女は微笑みと共に、かのスタンドを空洞な胎へと収め、ふわりと降り立った。

 

「……案外生命エネルギーを持っていかれたな……。それだけこのスタンドは強いものだという事か」

 

日々からエネルギッシュな彼と戯れていて良かった。蓄えなら潤沢だ。

 

「京一郎さん、い、今のは……?!」

「『ホワイト・ポニー』は内部に魂を閉じ込める檻を作り出す。部屋の中はある程度設定出来てね。かなりスタンドパワーを使うが、制限と脱出条件の設定が出来る。ナカが少し脆いのはご愛嬌ね」

 

どうやらこのスタンドは対象を高速で追い掛け、触れた対象の生命力を吸い取る能力があるようだ。見事に吸い取り合戦が内部で始まっている。何よりも外界を遮断して正解だった。テレポートの力もあるらしく、消えたと思ったらべちべちと弾かれて暴れている。この能力の阻害をするために生命力をかなり消費したのだろう。

一部でしかない癖に生意気だな……半分くらい吸ってしまうか。

 

「見たところ……バイクに乗った仗助くんを“追い掛けていた”という事は……“追い付いてはいない”という事。あの速度は大体時速60km程度でしょう?それなら100km“走破”で1時間と40分。テレポートなんて無粋な真似は条件を満たさない。ちゃあんと“走って”おいで。……それだけあれば仗助くんなら何とか“する”わ」

 

 

 

───さア、ひた走れ。ここから抜け出したくば、このだだっ広く真っ直ぐに伸びる荒野の道路を。

 

『条件は示した。本体が無事な内に……間に合うといいね、名も知らぬスタンドさん?』

『ックソ!誰だテメェ……ッこっから出たらタダじゃあおかねぇぞッ!!』

『ウフフフ……無駄口を叩いている暇があるのかしら』

 

走りなさいな。回し車を走る鼠のように!この俺の腹(胎)の中で!

 

 

 

「あの短時間でそこまで……!……その、ところで、」

 

後は仗助くんを信じるしかない。という所で、恐る恐る康一くんが問い掛ける。

 

「魂って、スタンドだけじゃあなくて……人間も?」

「ウフフ。ご想像にお任せしようかな?」

「ひぇぇ〜……!」

 

 

 

少しして、外の噴水に噴上裕也が降ってきた。同時に胎の中にいたスタンドを解放する。ある程度スタンドが自立するくらいの蓄えていた生命力は勿論吸収した。収支は若干のマイナス。……まアこの程度で彼らの信用の一部となるのならいいけれど。

 

ボロボロの様相だった仗助くんをそのまま病院で治療してもらい、院内の破損した部分は彼のスタンドが直していった。まるで狐に化かされたかのように目を白黒させていた看護師と医者を背後に家路へ。

仗助くんはトンネルに置いてきたという、養分を吸い取られて動けない露伴くんを助けにバイクに乗って走っていった。緊急事態とはいえ色々な場所を壊してきたらしく、ついでに全て直しに行くそうだ。

別れる前、仗助くんはくるりと俺に振り返って頭を下げた。……そういう所、仗助くんの美徳だな。

 

「京一郎さんもありがとうございましたッ!スッゲェ助かりました!」

「ウフフ……偶然あそこにいたからね。助けになったなら良かったよ」

「ウッス!それじゃ、先行くわ康一ィ、また学校で!京一郎さんも、また!」

「うん!じゃあね、仗助くん!」

「またね、仗助くん」

 

病院の前で仗助くんと別れた後、康一くんと途中まで一緒に歩いた。どうして俺が病院にいたのかとか、俺の屋敷に使用人がいる事だとか、スタンド能力の事だとか。

言うまでもない事だが、俺は自分が普通の人間では無い事も、スタンド能力の一部も明かしていないままだ。

犬の散歩があるという康一くんと別れ、俺も真っ直ぐ家に帰ろうとして。

 

……彼と子供たちの為の買い物を忘れていた。

 

「……。テレンス?ちょっと買い物に付き合ってくれないかしら」

───「手隙の者を寄越しますね」

「偶には付き合ってくれてもいいじゃあない」

───「時間外労働はしない主義なので」

「あー……じゃあ代わりの人選お願いね」

───「承知致しました」

 

 

★

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。