吸血鬼は淫魔の夢を見るか? 作:マスター冬雪(ぬんぬん)※休止中
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『この文面は焼け焦げている』
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男はその日、承太郎らに呼ばれて吉良吉影の捜索へ加わる予定にて外出する。
「行くのか」
「呼ばれてしまったから仕方がないね」
「……ふん」
鼻を鳴らして、彼は玄関に出る男を見送る。
少し掛かるが歩きで向かう途中、雨が降り始めた。
男はごろごろと雷が唸るのも他所に片手を上げて見せた。承太郎から受け取っていた、“川尻隼人”の写真を手に。
8時32分。
「やあ、遅れてしまったかな?」
「お、京一郎さん!遅れてんのは露伴のヤローだけッスよ!」
「おはよっす!京一郎さん〜!」
「うふふ……おはよう、仗助くん、億泰くん。康一くんに承太郎さんも」
少年を取り囲むような様相に首を傾げつつ。よぉく見ればこの少年、写真の“川尻隼人”本人だ。
露伴が此処で待ち合わせをしたのはこの為だったのだろうか。けれど、当の露伴本人は車を停めたまま忽然と姿がない。
仗助達も少年が“川尻隼人”だと気付いたのか、写真を手に話し掛けている。
少年から香る、絶望と焦燥の感情。けれど少年は犯人に与している訳では無い。
「言っちゃダメだッ!」
紛れも無く、自分の為ではなく他者の為の言葉。男は手を顎に当てる。決死の言葉。まるで───献身の為に命を絶つ、そのような覚悟。
「いきなり叫んで……“言っちゃダメだ”って」
「まだ質問もしてねーのによーっ。いったい“何”を言っちゃあいけないんだ?」
「……承太郎さん、これは……少し拙いのかも」
「……」
男の忠告に少し黙り込むと、承太郎は意を決したように少年に向き合った。
質問をされる事。その姿を見る事。それが“それ”の起動する条件!!
少年が自ら突き付けたカッターを受け止める小さなスタンドは『キラークイーン』、第三の爆弾『バイツァ・ダスト』。
その姿は目にした者の眼球に
「ああああぁぁぁ……ッッ!!!」
そして、『また』、辛く冷たい、一日が繰り返───『この文面は焼け焦げている』
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男はその日、承太郎らに呼ばれて吉良吉影の捜索へ加わる予定にて外出する。
「行くのか」
「呼ばれてしまったから仕方がないね」
「……ふん」
鼻を鳴らして、彼は玄関に出る男を見送る。
「……?……
───『この文面は焼け焦げている』
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男はその日、承太郎らに呼ばれて吉良吉影の捜索へ加わる予定にて外出する。
「行くのか」
「呼ばれてしまったから仕方がないね」
「……ふん」
鼻を鳴らして、彼は玄関に出る男を見送る。
「待て」
「……?どうかした?」
「何かが……おかしい」
男は眉根を寄せる彼に首を傾げた。
「違和感が……既視感が、ある」
「承太郎が時でも止めたの?」
「……いや。だが、それに近しい違和感だ」
「似たような。つまり、時に関する干渉という事?」
「……」
「……、ウン。時間も無いし、帰ったら話を聞くさ」
行ってきます、と男は家を出た。
このままでは数分遅れてしまう。待ち合わせは8時30分。多少なら許されても、良い顔をしている大人として、5分以上の遅れは流石に気が引ける。けれど男は歩いて待ち合わせに向かうつもりだったので、少し近道をする事にした。
「京一郎様、今日はもう直ぐ雨が降ります。宜しければお乗り下さい」
「……そう?なら頼もうかな……」
ガレージから顔を出した部下の言葉に頷く。この部下のスタンドは天候を操る。今はまだ短時間、小規模にしか影響しないが、その分天候の変化に関しては百発百中だ。
雨が降るというなら余計に遅れてしまいそうだな……。
それに、朝の彼の様子も気にかかる。
「そうでしょう、レディ」
胸騒ぎのする朝だ。スタンドである『ホワイト・ポニー』は困ったように笑う。
朝起きる時間。家を出る時間。いつも通りなのに、ボタンを掛け違えたような違和感。
「“運命”の軋みのような───そういう事だね」
『ホワイト・ポニー』は困ったようにドレスを揺らして、消える。
8時25分。男は待ち合わせ時間の少し前に現れる。
「おはよう、露伴くん」
「ああ、京一郎さんか……」
「浮かない顔ね?どうかしたの?」
「いや……雨が背中に入って冷たくてね……。それにしても、時間通りに来たのは貴方だけか」
「うふふ、そのようね」
男は予定ではもう少し後に来る予定だったのだ、と視線を逸らす。
「お、康一くんと承太郎が来たな……」
男はふと顔を上げ、視線を、何の変哲もない街角へ向ける。
───闘争の気配。血と暴力の匂いがする。
雨が上がった。
隣の家ではガス爆発が起きたと言って消防隊や野次馬が集まり。
仗助と川尻浩作……否、吉良吉影が、双方ボロボロの状態で向かい合っている。
戦いは既に最終局面。
血塗れで倒れ伏す吉良吉影に救急隊員が駆け寄って行くのを、止めはしなかった。
『キラークイーン』。
『シアーハートアタック』。
『バイツァ・ダスト』。
どれも素晴らしいスタンド能力だった。追い詰められ、絶望の縁に立ってこそ、自身の望む力というものが手に入れられる。時の運と資質と。狂気的なまでの執念を。
48人もの女性を殺し。それ以上の人間を消した、稀代の殺人鬼吉良吉影。
素晴らしい悪の魂。美しいまでの感情の味。
絶望。
「さようなら、吉良吉影」
中々愉しい暇潰しだったよ、と。
「『ホワイト・ポニー』」
「『ACT 3 FREEZE』!!」
「『スタープラチナ・ザ・ワールド』!!」
───……一瞬、視線が向けられる。
思わず笑ってしまったものだ。
「相変わらず、視線の合わない人だな」
最期は呆気なく、目の前で、稀代の殺人鬼は救急車に轢かれて死んだ。
★
仗助や康一に呼ばれ、杉本鈴美という、振り返ってはならない小道にいる幽霊少女の元へ訪れる。吉良吉影という仇敵を打ち倒した事で未練を解消し、天へと還るのだ。
少し離れた場所には、珍しく姿を晒した彼の姿もある。
関わりはあまり無かったが、見送りは大勢の方がいい。
サングラスをずらす。
無理矢理現世に残り、長い時間が経つ事で少し歪だった魂が、その地縛から解放される。
さぞ苦痛だった事だろう。さぞ孤独だった事だろう。
「お疲れ様、杉本鈴美さん。安らかに」
「……ありがとう。不思議なひと……」
恐ろしくて、あたたかくて、冷たいひと。
見透かす程に透明な目。
優しくて、強くて、真っ直ぐな子だ。
「悪い事は、あんまりしちゃあ駄目ですよ」
「……うふふ。耳に痛いね」
俺の事を何にも知らない筈なのに。これだから……黄金の精神を持つ者は、困るね。
そうして、見送って。
近々、承太郎とジョセフは帰国するらしい。未だ吉良吉影に与したスタンド使いがいるかもしれない中、それでもこの町の、仗助を筆頭としたスタンド使い達が、この町を守るだろうと……そう託して。
「水瀬京一郎。お前とは長い付き合いになりそうだ」
「アラ……嬉しい事を言ってくれるね」
「そういう意味じゃあない。……お前は色々と怪しい所があるからな。きっちり調べさせてもらおう」
「ンフフ……それはそれは。楽しみね」
何かあればお互いに。利用し合うとしようか。
「ジョセフさん。お元気でいらしてね、勿論静ちゃんも……」
「うむ」
赤子のその額に唇を落とすと、きゃっきゃと嬉しそうに手足をバタつかせる。赤子……静は、母親が見つからなかったため、ジョセフが引き取るという。……唯でさえ仗助のお母さんの事で夫婦喧嘩していただろうに、これはまた喧嘩の種となりそうだが……俺の関与する事ではあるまい。まア、今の痴呆の薄れたジョセフならば、何とかするであろうが。
「京一郎さん!」
「仗助くん」
まだ吉良吉影との戦いの怪我の残る彼は康一と億泰、露伴と共に立っている。
「怪我は大丈夫?」
「平気ッス!」
「京一郎さん……その……これからの事なんですけど……」
「吉良の残党がこの町にいないか、という関連かな?」
こくりと頷く康一に、柔和に笑う。
「勿論、私にも協力させてね?スタンド使いの魂の気配があったら、必ず知らせるわ」
「ありがとうございます!」
「あざーっす!」
「ッス!」
「うふふ……私も助けが欲しい時は、キミ達を頼らせてね」
虹村億泰は成り損ないの屍生人となった父と共に暮らしている。形兆とは異なり、父と共に生きる為に。それもまた愛の形。形兆のそれも、屈折していたが……愛の表れであった。
「どうか元気でいてね、億泰くん」
「?おう!」
それが今際の際、形兆の心にあった後悔だったろう。
「色々あったが……本腰を入れてキミの事は取材させてもらうぞ、京一郎」
「んふ。漸く?待ちくたびれたよ」
「オイ露伴!」
「本人が良いッて言ってるんだ、邪魔するなよ仗助ェ!」
「ははは……程々にね、露伴先生……」
彼ならば、屋敷の中に招いても構わないだろう。損得無く自分の漫画の為の経験を得に、虎穴に飛び込める彼にならば。
「驚かないで、内緒にしてね。私の大事な
くすくすと目を伏せて笑えば、お年頃の青少年は居心地悪そうに頬を染めて視線を逸らした。
「さ、帰りましょうか」
日陰の石垣に凭れていた彼に声を掛けると、彼は鼻を鳴らして背中を浮かせる。
「つまらん用事に呼び出しおって……」
「いいじゃあない、暇でしょう?」
「このような町ではな」
「ウフ。中々刺激的な事もあったけどなア」
時を消し飛ばすスタンド使い。それに運命付けられたスタンド使い達。悪は栄えず、さんざめく眩しい黄金達。
まるで誰かさんと誰かさんみたいに。
俺の思考を悟ったか、彼が機嫌が悪そうに喉を唸らせる。
「計画は綿密に、余裕があればある程良い。時間はたっぷり取っておこう。焦る必要はないだろ」
何せおまえは悠久を生きる吸血鬼。
そしてその眷属とも言える俺は、醜い程に美しい淫魔。
「人間のように生き急いだって……それはそれで愉しいけれど。折角ならおまえも、その身に見合ったように生きてみたら?」
「おまえの魂胆は読めている。このDIOに対して……おまえに堕落しろと言いたいのだろう。……時を忘れる程に」
「フフ……そうだな。俺はおまえが成り果てるのは望まない。終わりの見えないこの生の、ほんのひと時もね」
夕闇に陰り、町に夜が訪れようとしている。
じわりと彼の瞳が紅く染まる。───これからは、俺たちの時間だ。
「終わりを認められない可愛いひと。最期の最期で親愛なる友に運命を託したひと。……けれど何処までも利己主義な愛しいひと。託した志が上手くいかなかったら、自分の手で叶えようと手を回すのはいつもの事」
歌うように言えば、彼は渋面のまま、皮肉げに口角を上げる。
「おまえはそういうのが好きなんだろう?」
惰弱で脆弱で貧弱な人間のように、生きて足掻けと。そのように苦しむおれの姿が。
少しずつ、夜闇に歩を進めながら、俺は身を捩る。
「おまえがどういう思想をアイツに託し、アイツがどんな行動に出るかは知らないけれど。俺は悪魔だから」
神の行く手を阻む、夜の魔女だから。
「多少の試練は踏み越えていけよ」
そうして成るのが神というもので、そうして至るのが天国だというから。
「……この、淫魔め」
「おまえがそういう風にしたんだ。おまえが、俺を。そう変えたんだ」
この世が終わるまで、踊り狂おうじゃあないか。
おまえこそが、それを俺に望んでいる。
四章 終
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最後はさっぱりした感じで終わりました……『バイツァ・ダスト』戦、どう書けばええん?困るね
以降あとがき
実は最近四部読み終わったんですよね。読み込み足りてません。……最後の最後に吉良が京一郎を人質に取るシーン入れたかったが、スタンド使いとして知られている京一郎を人質に取るか?と思って……無理でしたね……
京一郎とDIO様、いっぱい暗躍のパート4。
密かに未練であったDIO様の身体的成長を見守る事が出来て京一郎はとっても満足しています。従順で純真な子供たちに囲まれて幸せいっぱい。スタンドの矢やスタンド使いという玩具もいっぱいで物凄く愉しんでた人。それに巻き込まれたり巻き込んだりやっぱり巻き込まれたりするDIO様、苦労人ですね。カワイイネ。スタンド使い量産して今後に備えてますけどね。六部が怖いね
四章の苦戦した所は山あり谷ありの部分が殆ど蚊帳の外だったからです。そらそう。群像劇書くの難しいって事。色々手は尽くした。
というか全然エッッな所書けてないんですけど……!ドウシテ。もっと出られない部屋使おうぜ……
いや、にょた化と猫化書けたのは課題だったから及第点としておいてくれるか……あのオリジナルスタンド、制限時間が無いとヤベー代物になりかねかったから長めに書けなかったのな。もっとネッチョリ書きたかったです。反省。レズレズ書いたの初めて……参考資料(意味深)いっぱいみた( )
『バイツァ・ダスト』戦
京一郎に何とか違う行動をさせたくて、DIO様に頑張ってスタンド使ってもらって違和感抱いていただきました。無理ありそうだけど勘弁して欲しい。消し飛ぶ直前・最中に時止め3秒あったから、その影響が……こう……なんやかんやしたって事で……ハイ
色々なキャラクターと関わりがちょこちょこある、近所のえっちであやしいお兄さん(お姉さん)みたいに書けてたら嬉しいな……悪いコトなんて(今の所)してないヨ!この杜王町、最悪町の住民殺し尽くすスタンドの矢が3つもあったんですよ、こわいね。その内1つはジョースターに見つからなかったんですよ。こわいね。+町1つを一夜で滅ぼす吸血鬼1人と淫魔1人が潜伏してるんですよ。こわいね。
というような四章でした。
読了ありがとうございました。
先生の次回作にご期待ください!(五章はまだかかりそうですすみません)