1.クリスマス
今年も最後の月を迎えた頃、冥界の女主人がカルデア内をぱたぱたと走り回る姿をよく見かけるようになった。
無機質な廊下をふわりと舞う砂金のような髪を見かけるたび、忙しそうだなー、何か手伝えないかなーなどと藤丸立香は思うも、本人にはどうにもうまく意思が伝わらない。
つい先日も、廊下でダ・ヴィンチと話し込むエレシュキガルを見かけて声をかけると、
「あら、マスター。……はっ! な、なんでもない! なんでもないから!」
初めはぱぁっと表情を華やかにしたかと思えば、すぐに何かに気付いた顔になり、それから自分の頬をぺちぺちと手を叩き、突き出した両手をあわあわとせわしなく振り、それからダ・ヴィンチに何かをぽしょぽしょと囁いて足早に去ってしまった。
せわしないなー、可愛いなーなどと思っていると、隣で「ぷっ……ふふ、ふふ……っ」と笑う声が聞こえた。
「いやー、君たちは実に青春をしているね」
「……そう、なのかな?」
楽しげに笑っていたダ・ヴィンチの表情がふっと和らぐ。
「そうだとも。……大切にしたまえよ」
冗談の混じっていない真摯な声音に、ひどく顔が熱くなった。
何か隠しているのはわかるが、きっと自分にとって悪いことではない。むしろいいことだと思う。
けれど、最近よく笑ってくれるようになっていただけに、そばにいられないのはさびしいなぁ、と思った。
× × ×
夜も更けた頃。
立香の部屋のベッドで、ふたりは裸のまま行為の余韻に浸っていた。
(布団が奪われたままなんだけど……)
行為中のエレシュキガルはだんだんと大胆になってきたが、終わればとたんに恥ずかしがりに戻る。今も立香の掛布団を奪い、うつ伏せで身体を丸めている。ベッドの上に愛らしい山ができあがっていた。
「うぅ~……」
可愛らしく唸る声が聞こえる。行為中に発した自分の恥ずかしいあれやこれを思い出しているのだろう。可愛すぎか。
「エレシュキガル。ちょっと聞きたいんだけど」
「……何かしら?」
今反省中なのだけれど……とばかりにジト目を向けられる。けれど裸であぐらをかいている立香を見てほんのり頬を赤らめ、さすがに布団を奪っていることに罪悪感を覚えたのか、うつ伏せになってちょっとだけ布団をかけてくれる。何故にひざ先だけ。暖房がよく効いているから大丈夫なんだけれど。
「最近、なんでそんなに忙しそうなのかなーって」
「……私にも色々あるのよ」
「そういう下手なごまかし方も可愛いんだけど、やっぱり気になって」
「なっ、かっ、かわっ」
うつ伏せから素早く横を向き、顔をそむけてしまう。
「ほら、その感じ。また可愛い」
「あああもぉぉ……っ!」
顔を見ようとすると逆を向き、同じ流れを繰り返す。「くらくらするのだわ!」とさけぶと、最終的にまたうつ伏せに戻ってしまった。
「ごめんごめん」
行為のときはありとあらゆる賛辞――もちろんすべて本音だ――をぶつけているのだが、どの言葉も彼女の心によく沁み込むようで、こういった可愛らしい反応を楽しませてもらっている。
他の人が緊張しているとかえって緊張しなくなるとはよく聞くけれど、自分たちに当てはめると「エレシュキガルが恥ずかしがるので、立香は羞恥を覚えることなく好き放題に彼女を褒めることができる」といったところか。
さすがに怒ったかな……と脳内プチ反省会をしていると、エレシュキガルがひょこっと顔をのぞかせた。頭をくしくしと撫でると気持ちよさげに目を細め、「あ、そ、そうじゃなくて……」と顔をぷるぷる振った。表情筋が溶け落ちそう。
「……その、あなたにとって決して悪いことではない、と思うから。……だから、もう少しだけ待っててちょうだい?」
頬を桜色に染めながらも浮かべた淡い笑みに、立香は。
(あ、ダメだ)
ムラッとした。
「ん、わかった。楽しみにしてる」
強烈に彼女に触れたくなり、立香が手を伸ばす。エレシュキガルはおずおずと手を伸ばして握り返してきた。
にぎにぎと可愛らしく握ってきたかと思うと、手をつなぐのをゆるめ、立香の手のひらを指先でそっと撫でる。すり、すり、すり……。極めてゆっくりと、劣情を刷り込むように。恥ずかしがりなりの、精一杯のおねだりの仕草。
立香の喉がごくりと鳴る。エレシュキガルはその音に敏感に反応して、手を引っ込めてうつ伏せに戻る。
「エレシュキガル……」
かぶっていた布団をゆっくりと剥ぐ。抵抗はなかった。顔をうずめた枕を強く抱きしめる後ろ姿にあらためて見惚れる。
砂金のような髪が扇状に広がっていた。その髪を束ねて横に流す。うなじから背中、そして下半身へと視線を滑らせる。白磁のような、冗談のように白くなめらかな肌。
(ついさっきまであれだけしてたのに……)
乾いた砂に水を垂らしたかのように満たされることがない。ふたたび喉が鳴る。エレシュキガルは何も言わず、かすかに震えている。
うなじにそっと指を置いた。
「ぁ……っ」
消え入りそうなか細い声。普段ははきはきと喋るけれど、ひとたびスイッチが入るとその声は湿り気と艶を帯びる。肉茎がみちみちと漲り、今すぐ襲いたくなる欲求を力ずくで押さえ込む。
きゅっと引き締まった小ぶりなお尻に跨り、なめらかな背中に両手の十本指を這わせていく。うなじ、肩甲骨、背中、尾てい骨。丁寧に、味わうように。
「あっ、あっ、あ……っ」
枕から口を浮かせ、悩ましげに身をよじる。
「ひゃんっ!」
お尻の割れ目に指を這わせると、可愛らしい悲鳴が漏れた。
ふたつの穴が並ぶ際どいラインを爪でかりかりとこする。彼女のお尻がくっ、くくっ、とゆっくりせりあがってくる。言葉では羞じらう彼女だが、その仕草はとてもいじらしく、本能的だ。時には本人さえ自身の淫らな仕草に気付いていないことがあるのだからたまらない。
背中にじわりと浮いた汗を舐める。
「んふぅぅぅ……っ」
枕に顔をうずめ、ひざから先をばたばたとさせる。恥ずかしいのだろうが、それでも抵抗はしない。身をよじるたびに、汗を吸って少し重くなった金の髪がさらさらと揺れる。
「はぁぁ……も、もう、あなたは、本当に変態なのだわ……っ」
涙目で振り向いて弱々しく睨んでくるが、小ぶりな尻はもっともっとと欲しがるように揺れている。そこを指摘すると拗ねてしまうので(経験済み)触れないでおく。
「エレシュキガル。可愛いよ」
綺麗にくびれた腰を掴み、尻を引き上げる。がちがちに張り詰めた肉槍を割れ目に押し当てると、すでにたっぷりと潤んでいた。続けて口にしようとした言葉をいったん留め、言うタイミングをずらしてみる。
濡れそぼった割れ目に、張り詰めた肉杭をずぶりと埋めた。
「はぁうぅぅぅ……っ」
なめらかな背中がか細く震える。立香は半分ほど挿入したところで、
「すごく濡れてるよ」
「……っ」
先ほど言いかけた言葉を告げる。すると案の定、膣肉が甘えるように締めつけてきた。
「や、やだぁぁ……っ」
自身の反応に気付き、エレシュキガルがまるで子どものような声を漏らす。脚をばたつかせ、足の裏が立香の腰にぺちぺちと当たる。
尻肉を掴み、一息に最奥までねじ込んだ。
「はぁうぅぅ……っ」
膣ヒダがみちりと締まり、彼女の身体に痙攣のさざ波が走る。もっと声が聞きたくて、枕を掴んで引き離した。戸惑われるのも構わず抽送を開始する。
「あっ、んくっ、ひぅっ、だ、だめ、だめぇ……っ」
にゅち、にゅぢゅ、ぬちゅっ。
先ほどたっぷり注いだ精液と進行形であふれる愛液が混ざりあい、結合部が卑猥に白く泡立つ。彼女の声が蜜を一滴一滴垂らすかのように甘くなっていく。汗の噴き出した背中は、まるで春を間近に控えた雪原のようだ。
「気持ちいい?」
覆いかぶさり、耳元で囁く。エレシュキガルが目を見開くと同時に膣がきゅっと締まった。先走り汁が噴きこぼれる。
「……そんなの、言えないわよ」
「さっきはたくさん言ってくれたのに?」
「さ、さっきはさっき、今は今よ!」
側頭部をてちてちと弱々しくはたかれる。ううむ、和む。
「言ってくれないの?」
両脇から腕を通し、ぴったりと身体を密着させて腰を振る。激しさのない代わりに、膣奥を丁寧にこするねちっこい抽送。
薄い唇がかすかに動いた。
「……いい」
「ん?」
吐息がたっぷり混じった声。耳を近付け、わざとらしく聞きなおす。
「……ち、いい……っ」
「もう一回言ってくれる?」
「……気持ち、いい、って、言ってるのよぉ……っ」
涙目で囁く彼女に撃ち抜かれた。愛情、劣情、庇護欲、嗜虐心と矛盾した感情が同時に湧き上がる。
「ああもう、可愛すぎるよ……っ!」
身体を起こし、尻肉を掴んでふたたび激しい抽送を始めようとすると――
(……ん?)
エレシュキガルが腕を伸ばし、手のひらを上にしてくいくいと揺らしている。つなぎたい、というあまりにもいじらしい意思表示。細指に自分の指を絡め、一突き一突き丁寧に膣内を抉る。
「あっ、はぁっ、はぁぅっ、んくっ、ふっ、んふぅぅ……っ」
エレシュキガルの声がますます糖度をまとい、膣ヒダの締め付けは徐々に切実なものになっていく。心地よく込み上げてくる射精欲求。もう少しだけ、もう少しだけ楽しみたい……と内ももに力を入れてこらえる。
「マスター……っ」
エレシュキガルが弱々しく振り向き、か細い声で囁く。
「私、もう、イキそう……っ」
だから、あなたも……ね?
目を細めた婀娜っぽい流し目に見つめられた瞬間、たやすく我慢が決壊した。膣洞に根元まで埋め込んだ肉槍の切っ先から、精液が勢いよく噴き出す。
「はぁうぅぅ……あっ、はぁっ、あっ、あっ、あっ、あ……っ」
エレシュキガルがぐっと背すじを反らせて喘ぐ。つないだ手が震え、すがるように握りしめてくる。ふたりとも腰は動いていないが、膣肉は貪欲に蠕動して肉槍から精液を搾りとる。
「く……ぁぁ……っ」
脈動が止まり、汗ばんだ背中に覆いかぶさる。エレシュキガルはほろほろと涙をこぼしていた。無防備に口を開け、力の抜けきった喘ぎを断続的に漏らす。
「んふぅぅ……っ?」
顔を横に向かせて唇を重ねる。気だるげに舌を蠢かせるのがたまらない。蜜肉の中でびゅるりと残り汁が噴き出すと、彼女は目をぱちくりとさせ、それから嬉しそうに目を細めた。
(さすがに休まないと……)
全身を覆う心地よい倦怠感。エレシュキガルと肌を重ねてのんびりまどろむため、肉槍を引き抜こうとすると――不意に、彼女のかかとに尻を押さえられた。
「えっと……エレシュキガル? どうしたの?」
これでは抜くに抜けない。というか彼女は明らかに抜くのを遮っている。
「……め、……から……っ」
「ん?」
腕を引っ張られ、ふたたび覆いかぶさる。
エレシュキガルは立香の耳に唇を寄せると、
「……抜いちゃ、だめよ……っ。抜けたら……さびしくなるからぁ……っ」
耳朶に流し込まれる、今にも泣きそうな甘え声。身体を包む倦怠感が、強い風に吹かれた煙のようにたやすく吹き飛んだ。
「……ああもう、可愛すぎるんだって……っ!」
温かな潤みの中で肉幹が硬度を増す。「ひゃぁん!」という可愛らしい喘ぎに力がみなぎる。
「もう一回するよ、いいね?」
「…………」
立香の頬をすりすりと撫で、小さく頷く。
華奢な肩を握りしめ、密着したままでゆっくり腰を振り始めた。
× × ×
冥界の女主人の隠し事がいったい何なのかと楽しみにしながら迎えた、クリスマスイヴ。
例年のごとく食堂で盛大にパーティをすると、その後は各々の部屋で少人数で遊ぶ流れになった。生まれも老若男女もてんでバラバラなサーヴァントが和気あいあいと、時にかしましくケンカしながらひとり、またひとりと食堂を出ていくのを眺めていると――
「……ん?」
椅子に座る立香の袖が、くいくいと引っ張られた。
振り向くと、ちまっと袖をつまんでいる冥界の女主人と目が合う。恥ずかしそうに、何か言いたそうに、頬を赤らめ、視線をふよふよと泳がせている。ブーディカや牛若丸、ケツァルコアトルが微笑ましそうにその様子を見ながら通り過ぎていく。
「マ、マスター……その、この後の予定は、あるのかしら?」
「もちろん空けてるよ」
エレシュキガルの表情がぱぁっと華やぐ。抱きしめたいという強烈な衝動をぎりぎりで抑えることができた。
辺りにちらり、ちら、ちらと目配せをすると。
誰に聞かれるはずもないのに顔を近付け、上目遣いで、
「部屋で……待っていてくれるかしら?」
「……っ。……わかった」
告げる言葉はだいたい予想がついていたというのに、その破壊力があまりにもすさまじくて……。
立香はエレシュキガルと同じように頬を赤らめ、こくこくと何度も頷く。
「フォウ、フォーウ!」
そんなふたりの様子を眺めたフォウが楽しげにはしゃぎ、テンションの発散する場所を求めるように、淡い雰囲気を遠くから楽しんでいただけの花の魔術師に「ヤジウマシスベシフォーウ!」とトルネードアタックをかましていた。
ここまでにしておきます!
個人的なお気に入りはフォウ君。
詳細は活動報告に載せておりますので、そちらでご確認ください(^^)!
何かとしんどいことが多い一年でしたが、年の瀬に少しでもエロと癒しと笑いを提供できたら嬉しいです(^^)
それでは、今回もお読みいただきありがとうございました(^^)!!
よいお年を!!