※この作品はR-18です。

ジェノサイド・ストラトス   作:夢現図書館

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現実の悪夢

 

 

——眠れた時に偶に夢を見る。それは自分では無い夢。

 

 

 深い深い森の中。人里離れた森林地帯。其処に小さな一軒家が建っていた。其処に1人の孤独な子供が住んでいた。

 

『…………』

 

 長く綺麗な皓き光沢のある髪を靡かせた金色の双眸を持った少女の造形を成している。その少女は白と赤の服をその身に纏っているのが見える。

 

——見た事の無い服。アレは何て呼ぶのだろう?

 

 その少女は夜天に広がる大空を見上げている。遮るモノが無い満天の夜空が広がっており星々の光が見える。

 

『……!』

 

 その時、一筋の光が横切る。流星が見えた、それは1つだけでは無く何回も横切って行く。流星群と呼ばれる光景だ。

 

『……星、綺麗………ッ…………!』

 

 突如、夢は其処で途切れた。認知していた夢の光景は崩れ去り黒い世界に塗り潰される。

 

 

 

 

 

「んむぅ…………?」

 

——夢?空って、あんな色にもなるのかなぁ?

 

 気を失っていたらしい。周囲を見渡せば何時も通り代わり映えの無い錆だらけの壁、土の床、頼りなく回る換気扇……自分達にとって唯一の平和な世界である牢獄の光景が広がっていた。腕は何時も通り拘束されており動かせる筈も無くガチャガチャと言う金属音が虚しく響く。

 

「ウィキ姫ちゃん。眠れたかしら?」

 

「ん……」

 

 壁に一足先に起きていたオトゥールが凭れ掛かっていた。頬付近には擦り傷だらけで一部は膿み始めているのが見える。ウィキッドは這い摺りながら壁付近に近付いてその隣に凭れ掛かる。

 

「……何時間経ったのかな?」

 

「さぁ、分からないわ……次の日だと思うけれど……牢獄には時計も日付を示すモノは無いから、感覚が分からないわ」

 

 時間の概念さえも奪われている。終わりの見えない戦闘のサイクル。兵器に時間の確認の有無は必要ないとでも言うのだろう。

 

「……何か、聞こえる。コレは……悲鳴?」

 

『如何して⁉︎ 何で⁉︎』

 

『嫌だ、やだ、ヤダヤダヤダァァァ‼︎⁉︎』

 

『来ないで、こ、こっちに来ないでぇ‼︎ い、嫌ァァァァァァ‼︎』

 

 牢獄の外から聞こえて来るのは苦悶にも似た絶叫の様な悲鳴。凡そ、何が起こっているのかは予想出来る。どうやら洗礼が始まっていた様である。何も知らずにホイホイ付いて来た彼女達。最初こそ、歓迎されている体裁を保っていた……退路を塞ぐ様に奥へ奥へ案内されて、遂に本性を露わにされた際にその現実を知ったのだろう。

 

「……やっぱりこうなったわね」

 

「オト姉。分かっていたでしょ?」

 

「ええ。私達が生き延びるには、そうするしか無かった。彼女達も、あのままでは未来は無かったでしょうけど……」

 

——明日死ぬか明後日死ぬかの違いだと思う。でも、1秒でも長く生きていられた方が幸せだとも思う。私達の命は、安いから。

 

『だ、騙したって言うの⁉︎』

 

『そんなの、不条理よ‼︎』

 

『様子が変だと思っては居たが、其処までとは⁉︎』

 

『くっ、この状態じゃ……手も足も出せないよ……‼︎』

 

 言い争う声も聞こえて来る。気付いた時には時既に遅し……恐らく彼女達が強くても人質を取られてしまってはどうする事も出来ないだろう。何せ非戦闘員の人数が余りにも多過ぎる。

 

「……何人、生き延びられるかな?」

 

「其処は彼女達の頑張り次第ね」

 

 AISは成り立てが1番、死亡率が高い。当然だ、何せ碌な戦闘訓練を施されずに戦場へ放り出されるのだから、実戦で生き延びれば強くなる。そんな理論が罷り通っている。

 まぁ、常にエインヘリヤルやISとの戦闘が起こり得る環境故に呑気に戦闘訓練など出来る筈も無いのも事実。と言うよりも、そんな下らない事に時間なぞ割きたくはないと言うのが本音だと思われるのだが。ウィキッドと同時期にAISとなった者達は死亡するか行方不明になるか、或いは他のコミュニティに売り飛ばされたかの何れか。

 AISは場合によっては金銭での売り買いに使われる事もある。当然、均等の取れた身体付きや美少女だと持て囃されるだろうAISも存在する。そう言った者達は戦場に出されるよりもヨクボウの捌け口に使った方が良いと言う一定多数の人間も存在する訳で、『商品』扱いで高額で取引される。売り飛ばされた先でどんな目に遭うかは本人しか知らない、最もAISの現実から大概が碌な目に遭わないだろう。

 

——朧げに聞こえた言葉。多分、何人かは売られる。大した労力も無く大量の少女達が手に入った……使えなくても売物としての使い道はある、って所かな。

 

 元々、AISは奴隷同然の存在。凡ゆる抵抗は無意味かつ無駄な行為。人権は無いに等しい。抵抗すれば暴力を振るわれて捨てられる、身体的能力で男性には大抵は敵わない。

 

『待って、何処へ連れて行くつもりよ⁉︎』

 

『い、い、いや……嫌ァァァァァァ‼︎⁉︎』

 

『だ、誰か、誰か助けてェェェェ‼︎⁉︎』

 

『嘘よ、コレは夢よ。夢なら早く覚めてェェェェェェェェ‼︎‼︎』

 

 現実を否定する声も響き渡る。悪夢の様な現実を目の当たりにして拒絶反応が反響して広がる。しかしそれも直ぐに途絶える。何時も通りの私刑も同時に始まる。鈍い音と嗚咽に似た悲鳴が響き渡るのだから。

 彼女達からすれば体罰なぞの概念なぞ生まれて初めて体験する光景だろう。元々、体罰は日本では禁止行為に定められている上に女尊男卑で少年には行われて居ても彼女達の様な年齢で喀血を伴う程の体罰はまず体験する事は無かった。それが、現実となって現れている。時間が経過する事により悲鳴や鈍い音も聞こえなくなって来た。恐らく現実を目の当たりにして抵抗する気力を失ったのだろう。

 騒げば自身にも降り掛かる。暴力は、痛いのは嫌だ。だから従順になる。威張る事は出来ても暴力的な存在を前にして、何も出来ない。それが彼女達だった。最も、昨日前まではこの様な環境では無かった者達相手にコレは酷な話ではあるのだが。

 

「……終わった、みたいね」

 

 跫音が此方へ近付いて来る。コミュニティ内には牢獄は幾つも存在する。恐らく全員は入りきらないだろう……牢獄に入り切らず余った者達は何処かの物置に押し込められる可能性もある(或いは即日に売られるか)。最も『兵器』故にその辺の人権なぞ考慮される筈も無いのだが。

 鉄格子の向こう側から見えて来た後ろ手に拘束された数人の少女達。昨日までは汚れすら無い白い色だったお揃いの服は血や吐瀉物と言った色々な要因により汚れている。誰もが未来に絶望したかの様な表情で看守に連れられて歩いている。余程、酷い光景を目の当たりにしたのか操り人形の様に従って歩いている。

 

——酷い顔。私刑を目の当たりにしたら、大半がいなるか。殴られ、蹴られ、踏み躙られて……痛い思いをすれば何も言えなくなる。

 

 牢獄の扉が開けられ蹴り飛ばされる形で2人程の少女達が牢獄内へと放り込まれる。小さな悲鳴が聞こえて来るが看守がそんな事、考慮する筈も無い。その他の少女は別の牢獄に入れるつもりなのか、別の場所へと歩かせて行く様に牢獄の前へと横切って行った。

 

「痛っ……何なのよ。アイツら……‼︎ 髪の毛さえもケチ付けて来るなんて……‼︎」

 

「情け容赦が全くありませんでしたわね……」

 

 放り込まれて来たのは片方がツインテールの勝気そうな少女ともう片方は今の時代ではまずお目に掛かれないであろう大和撫子と言った容姿の少女だった。腕を後ろ手に拘束されている為に座る体勢に移るのも一苦労で半ば苦戦しながらも起き上がる。そして、オトゥールとウィキッドと目が合う。

 

「あ、アンタは……‼︎」

 

「あら……あ、そう言えば、あの時に見かけたわね」

 

 オトゥールはそう言えばあの時、戦闘に参加していた者達の中に目の前のツインテールの少女が居た事を思い出した。当時の彼女は茶髪だったが今の彼女の髪色は真っ黒に染められている為に少し思い出すのに時間が掛かった。AISには人権は無いので髪色さえも指定される。茶髪や金髪、その他の色は認められず廃棄処理前の重油を使って強引に染める(勿論、本人の生命に対しての考慮は無し)。現に目の前の少女も強制的に染められたのだろう。

 

「……えと」

 

「うに?」

 

 ウィキッドともう1人の黒髪長髪の少女の2人は蚊帳の外。その時、ウィキッドはオトゥールの後ろに隠れて居たし黒髪長髪の少女も非戦闘員組に紛れていたので2人の関係は知らない。

 

「……アンタ、こうなる事を分かっていたの⁉︎」

 

 コミュニティに来る事を認めた。そしてこの様な状況になるであろう事を予め知っていたと少女。凰 鈴音は憤る。

 

「ええ、そうよ。半ば分かっていたわ……そうしないと私達、殺されるから」

 

「殺されるって……⁉︎」

 

「言葉通りの意味。あの時、私達の任務は複数のIS、状況的には貴方達の事……つまり貴方達を皆殺しに出来なければ処刑される状況だったの」

 

 相手を殺すか或いは殺されるか、世界とは現実とはたったそれだけで出来ている。極限的に現実を表現するならば生命とは『殺し合う』モノだと、言えるのかも知れない。

 

「処刑って……そんなの……‼︎」

 

「私達、AISに人権なんて無いのよ。許されるつもり無ければ謝る気も無いわ。私達は生きる為に貴方達を道連れにするつもりで地獄へ落とした。ようこそ、本当の地獄へ」

 

 新たなる奴隷としての現実を突きつけられた2人の少女に対して、オトゥールはいけしゃあしゃあとそう告げた。

 

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