※この作品はR-18です。

ジェノサイド・ストラトス   作:夢現図書館

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過去と未来、戦争と平和

 

 

 

「……仲良く、出来ると思っているワケ?」

 

「残念だけど、他のコミュニティも似た様な状態よ。そうでなくても貴方達はあの状態で生き延びる事が出来た?」

 

「……それは」

 

 鈴音は即答出来なかった。確実に勝てた、とは言えない。状況的に満身創痍でジリ貧……ウィキッド達が現れなければ蹂躙されていた可能性の方が高かった。

 

「……凰さん。怒るのは分かりますわ。ですが、彼女達にも事情があったみたいですから」

 

「鈴で良いわよ。私も神楽って呼ぶから……って、今更だけどアンタ達も監禁されている様な状態じゃない?と言うか、蒸し返すけど処刑ってどう言う意味なのよ?」

 

 神楽と呼ばれた少女の横槍によって鈴音は少し頭が冷えた。確かにオトゥールによってこの様な悲劇が起きた。しかし、オトゥールが現れなかった場合、もっと残酷な悲劇が起きたであろう事は今の鈴音の頭を過った。コレが助かったと言えるかは分からないのだが、取り敢えず話をせねば何も分からないのは確かだろう。

 

「……罵り合うのは何時でも出来る。良いわ、私達……AIS達の現状を話してあげる。そして、知って頂戴……私達の現実を」

 

 オトゥールは2人にAIS達の現実を自身が知っている限り、説明する事にした。その事実を聞いて2人は青褪める。余りにも不条理で理不尽なる状態である事を、そしてどうしようもない程に酷い有様だと言う事を。

 

「ISの反逆。その理由が昔の女尊男卑……」

 

「……ISの自我、そして大きな罪を償う為に全ての権限を奪われて戦闘行為に駆り出される……」

 

「人権は無い。逃げる事も出来ない、逃げれば生体ナノマシンで爆殺……拘束するのも抵抗する術を奪う為……何よコレ、八方塞がりじゃない⁉︎」

 

「命令に従わなければ私刑による暴力……だから、あの様な行為を行われても誰1人として平然としていたと言う訳なのですね……」

 

 鈴音と神楽は内容を理解する。その事実故に自分達もその状況に巻き込まれた。そして、ある事に気付いた。

 

「……どう考えても、その昔ってのは私達のいる筈の過去の世界の話ね。そうなると」

 

「今の私達は、私達から見て未来。と、なり得ますわね。確証は持てませんが」

 

 鈴音と神楽は自分達が今、自分達のいた時代では無くどうしようも無い事態へと直面した未来の世界か並行世界へと迷い込んでしまったと予測を立てた。そうでなければ、説明付けれない箇所が多い。何よりISの自我が芽生えた上に進化するなどと言う現象、多数のエインヘリヤルの存在。それらが発覚すれば全世界に波紋が広がる筈である。

 

「……未来?私からすればそんな事は知らないし、どうでも良いのよ。知らない事だから……」

 

「……興味薄ッ⁉︎」

 

「鈴さん。仕方ありませんわ……いきなり過去だの未来だの言っても大半の方は相手にしませんわ」

 

「はぁ、考えるだけ馬鹿馬鹿しくなって来たわね……想像以上の事ばかり起きて頭の処理が追いつかないわ」

 

 鈴音はどうでも良いやと言わんばかりに投げ出した。起こってしまった事に対してとやかく言っても仕方が無い。コレが現実なのだからどれだけ文句を言っても状況が変わる訳では無い。

 

「……アンタの行動も元を正せば此処の連中の命令。そうなんでしょ?あの時の無線通信、そんな命令だったんじゃない?」

 

「ええ、そうね。言われなくても貴方達を売り飛ばす形で生き残る手段を得ようとも考えていたけれど」

 

「アンタ、見た目以上に性格悪いわね……」

 

 鈴音はオトゥールの行動は命令に基づいた行動だと推察してそれが当たりであると判断した。最も、オトゥール自身もそのつもりだった様である。

 

「そうであったとしても謝るつもりは無いわ。生きる為には何でもしなきゃいけないのよ。そうしないと生を繋ぐ事なんて出来ないから……」

 

 気付けばウィキッドはオトゥールの膝を枕にして又、眠りに付いていた。牢獄の中、寝るか誰かと話す事以外にする事は何も無い。牢獄内には他にもAIS達は居るがほぼ全員が廃人寸前で何も話そうとはしてこないし誰かと関わろうともしていない。自分達の現状、そして未来に絶望して流されるままに死に体の状態で生きている。恐らく、長くは保たないだろう。その内、糸が切れた様にその命が終わる。

 

「……そう。私もアンタと同じ立場だったら、きっと私もアンタと同じ事をしたわ。相手を利用して生き延びる……踏み台にしてでも生き残る。そんな世界を知っているから」

 

 自分達の現状を噛み砕いて理解した鈴音はオトゥールの隣、ウィキッドの反対側に位置して壁に凭れ掛かる。

 

「仲良くするんじゃ無かったのかしら?」

 

「……正直、頭の整理は付いていないわ。幾ら叫んでも現状が変わる訳じゃないでしょ?腕が使えないし頭にナノマシンとか入れられているし、どうする事も出来ないじゃない……その内、周りにいる同業者みたいな状態になっているでしょ?」

 

 鈴音はそう言い周囲を見渡す。地面に横たわっていたり壁に凭れて沈黙を続けている他のAIS達を見てそう呟く。今の自分達は正常だが、期間が長くなれば恐らくあの様な状態になるだろうと言う憶測も脳裏に過ぎる。

 

「……それに、私は理解が早い方かも知れないけど……他の連中はそうも行かないでしょうね」

 

 牢獄の外、他の牢獄からであろう場所から悲鳴滲みた声が聞こえて来る。恐らく現状に納得出来ない新参者達が牢獄内で暴れ、看守からの私刑を受けているのを繰り返しているのだろう。

 

「良くも悪くも、平和な世界に生きていた人達ですから、突然、この様な牢獄暮らしとも言える環境は流石に堪えるでしょう……耐え切れるかは分かりませんわ」

 

「……そう。正直に言えば半数も生き残らなさそうね。AISは生死の間にいる様なモノだから」

 

 オトゥールがそう告げると近くで地面に何かが倒れる音が聞こえる。壁に凭れ掛かっていたAISの少女の1人が身体の支えを失って地面に横たわった。

 

「うに……?」

 

 その小さな音に気付いたのかウィキッドが蠢きながらも目覚める。そしてじーっと、横たわるAISを見つめていた。

 

「その子、ずっと彼方の倒れている人に向かって見ているけど……」

 

 起き上がったウィキッドは壁際に横たわるAISに近付いて頭を降ろして何かを確認する。

 

「……死んでる。息、していない」

 

「え……?」

 

 ポツリと呟いた声に神楽は思わず言葉を零す。その様子を見て鈴音も眉を潜めた。瀕死寸前であっても牢獄内に放置されている現状に対して呆れの表情が浮かんだのだ。見た限り劣悪であるのも分かっていたが、此処までとは。そして、2人は更なる驚愕を目の当たりにする。

 

「……ッ‼︎」

 

 ウィキッドは死んだAISの首筋に向かって噛み付いたのだ。AISスーツがある為に歯が突き刺さらないので生身の部分である首から上に向かって犬食いの状態で喰らい付いた。

 

「もきゅ、もぎゅ……‼︎」

 

 腕が使えない為に必然的に犬食いとなる。だが、今更気にしても仕方ない。そして、その様子をを見て看守達は『雌豚』だと揶揄するのだ。

 

「ひ、人を食べているの⁉︎ あの子は⁉︎」

 

「……」

 

 カニバリズムの行為など間近で見た事の無い2人からすればウィキッドの行動は正に異常で常軌を逸する行動と言えた。人が人を喰らうなどと考えられない行為だからだ。

 

「……ウィキ姫ちゃん。私も、貰うわ」

 

 そしてオトゥールも又、ウィキッドとは違う方向、正確には耳付近に喰らい付いて耳を食い千切り咀嚼(そしゃく)する。理性ある者が理性なき行動をする……人を喰らってでも生き残る。正に此処は、地獄と呼べた。

 

「……もきゅ、もきゅ……」

 

「あ、アンタ達。し、正気……なの?」

 

 鈴音は震えた声で耳の肉を噛み潰して食べているオトゥールに聞く。小さいウィキッドの方は今も一心不乱に喰らい付いている為に横槍を入れるのはマズいと本能的に察した。

 

「死体は死体よ。食べれる時に食べないと、身が保たないわ……肉なんて早々、食べれる様なモノじゃ無いから」

 

「だ、だからと言って死んだ人間の肉を食べようとは……‼︎」

 

「貴方達の常識を説かないで……貴方達の生きていた世界なんて私からすれば夢物語でしか無いの。平和とか、そんなの……あるのならば見てみたいわ」

 

 オトゥールはそう告げた後に別の肉を喰らい始めた。

 

 

 『平和を知らない子供』と『戦争を知らない子供』との価値観は違う。

 

 大いに違う。生きる為に戦わねばならないと言う環境、そして無理に戦わなくても生きていける環境。何方も悪い訳では無い、その相違点は大きく隔てている。オトゥールの言い分も鈴音達の言い分も、何方も正しい訳でも悪い訳でも無いのだ。

 

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