※この作品はR-18です。

ジェノサイド・ストラトス   作:夢現図書館

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直訳すれば『血塗れの祭』


Bloodstained Festa

 

 

 

 成層圏に浮かび上がる巨大な存在。それは外見を一言で言えば異様としか言いようが無い程に不気味であった。細胞が集まった光景、いや筋肉の筋が重なり合った光景、或いは骨髄が絡み合った光景、兎に角異様な存在であるとしか言いようがない。分かる事は、それは人間(・・)のナニカで形成された物体であると言う事。その巨大さから小さな惑星と形容しても良いかも知れない。人間から見ればそれでも充分、巨大なモノであるが。

 

『……どうやら、異分子が紛れ込んだらしい』

 

 その存在から聞こえるは機会音声か人間の声か何方とも受け取れる声。しかし、それを聞き届けれる者はこの場に居ない。

 

『娘達よ、息子達よ。問おう、愚かなる人間達の真意を』

 

『……淘汰を始めよう。人よ、更なる進化を……見せよ』

 

 大空が揺れた気がした。その存在から白い光と黒い光が伸びた、気がした……そして響き渡るは、甲高い咆哮……。

 

 

 

 

 

 

◯

 

 

 

 

 

 戦争を娯楽とする人間がいる。兵器を娯楽として使う人間がいる。その事に関して誰も疑問は抱かない……何故ならスポーツと言うのは人間が持つ『闘争心』を害なく発散する為に発明されたモノなのだから。どの様な凶器であっても『スポーツ』であるのならば公認となって成立する。ISも見るからに兵器であるが『スポーツ』と見做す事によってその存在価値、市場価値を見出し浸透する事が出来た。

 

 故にAISを使って娯楽を作る行為も、何ら不自然では無いのである。

 

 2人が引き摺られた先の部屋で2人は硬い床へ放り出された。髪の毛を引き摺られた為に為に髪の毛の痛みと共に軽く咳き込んだ。

 

「さて、貴様は先に来い。おい、お前は其奴の用意をしておけ」

 

「……ッ‼︎」

 

 ウィキッドだけが放置されオトゥールだけが先に引き摺られて隣の部屋へと連れ込まれる。この先は拷問部屋と呼ばれる部屋だった筈。2人同時に入れられないと言う事は何かしら用意されていると言う事なのかも知れない。

 

「……ッ、オト姉……あぐっ⁉︎」

 

「誰が喋って良いと言った⁉︎」

 

 1人、残されたウィキッドは扉の先へと視線を向けて口を開くがその行為を咎める別の男性に頭を掴まれて硬い床に顔面から叩き付けられる。口を開いていた為に舌を噛んでしまい軽く悶絶する。

 

「う、うぅ……‼︎」

 

 その時、耳元近くで金属質な音が小さく響いた。それと同時に感じ取れる首元の違和感と腕が解放された感触。後ろ手に拘束されていた拘束具が解かれた事を意味する。ウィキッドは座り込んで首元を触って見る。重くて冷たい感触……それは首輪と呼ばれるモノであり、『支配』の意味を持つ拘束具の一種であった。

 

「その首輪は遠隔操作で爆発する仕組みになっている。変に外そうとしても防衛機構で爆発する。爆発の意味くらいは馬鹿な貴様でも理解は出来ている筈だ」

 

「……ッ‼︎」

 

 悪戯に外そうとすればその時点でウィキッドの命は無い。そして歯向かえばその時点でもアウト、遠隔操作で爆殺される。頭に生体ナノマシンに腕に拘束具、そして首輪と言う雁字搦めに縛り付ける拘束。仮に片方をどうにかしても片方が残る二段構え。

 

「……最近、貴様らは反抗的な態度が目に余る。貴様らの様なAISの分際で希望を持つなど許さん。よって、再教育が必要であると判断した。やはり目に映る形の方が従順になると言うモノだからな」

 

「……っ……」

 

 首輪には長い鎖が付けられておりその鎖は男性が手綱のように握っている。引っ張られれば簡単に転がされる。首輪を付けられると言う事は支配される事を意味している。

 

「少しは自分の立場が理解出来たか?変な行動を取れば手が滑って貴様の頭が吹き飛ぶだろうな?」

 

「うう……」

 

——首輪、凄く嫌だ。逃げたい、でもオト姉が……。

 

「……立て。腕は使えるだろう?立たないのならばいつも通り引き摺ってやろうか?」

 

 痛い思いは好き好んでしたくは無い。命じられるままにウィキッドは座った体勢から立ち上がる。今迄の私刑とは様子が違う、何時もならば殴る蹴る等の暴力……暴力ならば気が済む迄サンドバックになっていればその内、終わる。しかし今回は私刑では無く拷問と言われた。拷問の意味はウィキッド本人は理解出来ていない。いや、知らない筈なのだ。分からないからこそ、恐怖が生まれるのである。

 

「それで良い。さぁ、来い」

 

 鎖に引っ張られて拷問部屋へと連れ込まれる様に扉を抜ける。その途中で首輪に繋がれていた鎖が外される。

 

「え……ッ‼︎」

 

「此処からは貴様1人で行け。モタモタするな、さっさと行け‼︎」

 

 鎖が外れた途端に困惑するも束の間、後方から蹴り飛ばされて奥へとすっ飛ばされる。放り込まれた拷問部屋は暗く後方から入ってきた部屋の照明のみが唯一の光源であったがその扉が閉じられたら真っ暗闇へと変ずる。そして、劇場の様に一筋のスポットライトがウィキッドへと照らされる。

 

「ッ⁉︎ な、何……⁉︎」

 

 そして次に照らされたのはウィキッドの前方遠くにある位置。其処には十字架を模した磔刑台が鎮座しておりオトゥールが十の字状の体勢で固縛されている。足首と手首の付近、そして不必要な腕と足の関節部にも大仰な固定具らしき物が見受けられる。

 

「オト姉ッ⁉︎」

 

 本人は気を失っているのかウィキッドの声に反応していない。ウィキッドがオトゥールへ向けて駆け出そうとすると眼前に鉄格子が突如、降りてきてウィキッドとオトゥールのいる場所を遮るように分断した。同時に部屋内の全ての照明が照らし出されこの拷問部屋の全容が明らかになる。

 

 誰もが予想する拷問具らしきモノは全く存在していない。AIS達が聞かされて来た自分達を壊すような残忍な道具の類は無い。あると言えばただ真っ白な部屋にオトゥールを固縛している磔刑台くらい。その他に要点を上げれば壁には二重構造のガラス張りが存在しその向こう側には多数の男性陣が物見の様に集まっている事である。

 

「……うぅ」

 

——し、知らない人が沢山。沢山、私達の事を見ている……。

 

 単なる拷問部屋では無いと言う事を薄々、ウィキッドは理解した。部屋の周囲を取り囲むように眺めている衆人達は皆、困惑するウィキッドと磔にされたオトゥールを舐め回すかの様な視線を向けている。

 

『あの様な格好で出歩くとか……痴女か』

『AISとはドイツもコイツも異常な奴ばかりだな』

『首輪をつけているとは、家畜同然だな』

『服の着方さえも分からないとは……』

『馬鹿だ馬鹿だとは聞いていたが、獣同然だ』

『精々、愛玩動物程度であるな』

 

 周囲から聞こえて来る声はどれも嘲りを含んだ声。誰1人として心配する声など聞こえはして来ない。

 

『皆様、大変お待たせ致しました。今宵のエンターテインメントを皆様方に御提供致します‼︎』

 

 そして唐突に大音量で拷問部屋内に反響する放送の音声。その内容をウィキッドは理解出来る筈も無いだろう。そして放送と同時に壁の一部が開かれて4人の人影が幽鬼の様な足取りで拷問部屋内へと入り込んで来る。腕や脚がISの様な機械のパーツに覆われた男性の成れの果て、即ちエインヘリヤル。

 

『今回ご用意させて頂いたのは、憎き女性主義者の女共が構築した女尊男卑によるISによって誕生したエインヘリヤル‼︎ その一部を鹵獲する事に成功致しました。そのエインヘリヤルと我がコミュニティが所有するAIS。その片割れはご覧の通りに磔刑台にて固定しております』

 

「……ん、えっと……な、何コレ……⁉︎」

 

 その時、放送の音声で気絶していたオトゥールが目を覚まして自身の身に起きた事を理解した。手足と関節を固定され磔の状態に拘束されていると言う事を。身動きすら許さない程に固く固定されている為に固定具は微動だにしない。

 

——オト姉……‼︎ でも、どうしたら……?

 

『今回、ご用意させて頂いたのは2匹のAISはお互いが大事な姉妹のような関係。片方が磔刑台ですので当然、妹分の方は抵抗するでしょう‼︎ 助ける為にも目の前のエインヘリヤルを殺さねばなりません‼︎』

 

 エインヘリヤルは鉄格子の柵から見てオトゥール側にいる。此の儘ではウィキッドは全く手出しは出来ない。

 

『ですが‼︎ エインヘリヤルを一体、倒す事に磔刑台の固定具の1つ、8つありますが関節部分に当たる部分が圧縮を作動してその関節部分を圧壊(・・)させます‼︎』

 

「……‼︎⁉︎」

 

『つまり、姉を助ける為にエインヘリヤルを皆殺しにした場合。姉は四肢を全て切断されて達磨状態にされてしまうと言う事になるのです‼︎』

 

「そ、そんな……‼︎」

 

「悪趣味……‼︎」

 

 オトゥールを助ける為に目の前の邪魔なエインヘリヤルを殺せば、オトゥールの手足の何処かの関節が固定具の万力が締まり、圧し折られ千切られてしまうと言う事。自分達の状況で四肢欠損の達磨状態となってしまえば、どの様な末路を辿るのか容易に想像出来る。かと言ってエインヘリヤルを無視してオトゥールの元へと進めば……ウィキッド自身の首に付けられた首輪が遠隔操作で爆破されてしまう。

 

『……素晴らしきかな姉妹愛‼︎ 姉を助けると見せかけて自分が生き残るか、姉を助けたいが為に自分自身がエインヘリヤルの餌になるか……妹分の判断に期待が膨らみます‼︎』

 

——そ、そんな……敵を倒せばオト姉の身体が、壊されちゃう……かと言って無視する訳には……ど、どうしたら……‼︎

 

 ウィキッドは自分の為にエインヘリヤルを殺してオトゥールを見殺し同然にするか、或いはオトゥールの為に自分が嬲られるか。その選択を突き付けられた。エインヘリヤルが何故、コミュニティ内で飼育されているのかの理由はわからない……分かりたくも無い。自分の身か、それとも相手の身か、何方の身を案じるのが正しいのか……。

 

『観客の皆様方はお手元に配布された用紙にはAISのコード名が書かれております。何方が、生き残るか予想下さい‼︎』

 

 同時に拷問部屋内を分断する鉄格子が外れた。その時にウィキッドの気配が近付いた事に気付いたエインヘリヤル達がこちらの方が危険だと判断したのか、一斉に襲い掛かって来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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