※この作品はR-18です。

ジェノサイド・ストラトス   作:夢現図書館

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自由への衝動

 

「戦力が欲しいから」

 

「ウィキ姫ちゃん?」

 

「……ッ‼︎」

 

 其処でウィキッドが口を開いた。それはメサルティムが今、正に言おうとしていた事を的確に的中させた。だからこそ、メサルティムが目を見開いた。

 

「ウィキ姫様、御聡明で御座いますね。AISはその所属するコミュニティに所有権があります。AISが所属元を消滅する手段は3つ。コミュニティのオーナー等、権利者クラス同士による売買契約が締立し異動が認められた時。もう1つがコミュニティが壊滅し権利者の生存が否定される時。そして最後が、廃棄処分された時」

 

 AISは隷属的な契約に縛られており所属コミュニティの所有物。異動する時は基本的にAISは売買され売り飛ばされる形で違うコミュニティに送られる(その時、大概が高額で取引される事が多い。勿論、愛玩奴隷と言った末路である)。

 

「……成程、そう言う事。貴方達は戦力が欲しい、その為にAISが欲しかった。だから救出した、その判断で良いのね?」

 

「取り繕う事は致しません。はい、その通りです。当コミュニティは余裕がありません。他コミュニティにAISの所有権を買い取ると言う行為も足元を見られる故に常軌を逸する高額である事が多く、尚且つ売りに出される者達は……誠に申し上げ難いのですが、廃棄寸前と言う方々ばかりで……」

 

 コミュニティとしてもAISは殴る蹴る等の扱いは劣悪極まるが所有物であり『兵器』である事に変わりは無い。そして、売り飛ばす時もその時に最高の利益として運用するのが常。役立たずで使えないAISでも性奴隷と言う形であれば売物になるのだから。

 

「……壊滅したコミュニティから辛うじて回収して本人に『来てくれるか』と交渉するしか、無い」

 

「はい、その通りです。過去にも似た様な行動を致しましたが一歩遅れてしまったり、心身共に疲弊して力尽きたり精神を病んで錯乱し自殺してしまった方々ばかり……会話にまで漕ぎ着けた方々は貴方様方が初なのです」

 

 ウィキッドは理解した。自分達を助けた理由を。それは戦力確保の為……だが、相手の対応は交渉する姿勢であると言う事。普通ならば治療は兎も角、強制的な言動をするだろうと考えたからだ。

 

「この行為、最低だと罵って貰って構いません。ご主人様の為に最善を尽くす。それがメイドの務め。如何なる罵声も喜んで受け止める所存です」

 

 メサルティムは毅然とした態度でそう告げる。火事場泥棒染みた真似、人間としては最低である事は百も承知。そして、その全ては自身の主の為に尽くす。メイド長であるメサルティムは振る舞うだけである。自身の主の為に尽くす、他に意図は無い。

 

「「…………」」

 

「貴方達が、私達の知る人間とは違う。そんな気がするわ……手当てもしてくれたし食事も出した。感謝すれど、罵倒を言うつもりは無いわ」

 

——それに、行く宛なんて無い。それに……その交渉、条件(・・)付きながら受けても良い。

 

「オト姉?」

 

——……何時だって賭けばかりよ。仮にこのコミュニティを出て行って地上を彷徨っていても食糧になりそうなモノが見つからない時が多い。その果てに何時の日かは違うコミュニティに捕まるでしょうね。あの紫って人は『何処のコミュニティも似た様なモノ』と言っていた。此処がターニングポイントになるかも知れない。私は……。

 

「ウィキ姫ちゃん。ちょっと難しい話だからちょっと、ね」

 

「うに」

 

——対応が丁寧だった。生きる為に、最善策……そして向こうは取引をしたいと言っている。なら、少し欲を出しても行けるかも知れない。失われたモノを取り戻したい……その為に私が出来る事は……決まっている。

 

「……メサルティムさん。先の男性」

 

「メサルで構いませんよ。ご主人様ですか?」

 

「その人が言う『取引』。条件があるけど受けても良いわ……」

 

——失われたモノ。それから……自由(・・)。相手は戦力を欲しがっている。対価に私達も何か釣り合うモノを要求出来る。無理だとしても、身体を差し出してでも勝ち取る……躊躇いは無い。ウィキ姫ちゃんが、自由ならばもう1度、檻の中で過ごしてでも良い。

 

「……ふふ、本当に逞しいですね。分かりました、此処から先は私個人の幕はありません。ご主人様ご本人にお委ね致します。それで宜しいですね?」

 

「ええ。不鮮明な所はあるし……まだ混乱する事もあるわ。でも……どの道、帰る場所は無い」

 

——帰りたくも無いけれど。ウィキ姫ちゃんと一緒ならば、何処へでもきっと行ける。

 

「畏まりました。では、ご主人様をお呼びして来ますので少々お待ちを……」

 

 メサルティムはそう言い一時退室した。この取引が成立すればもう引き返せない。最も引き返すつもりも全く無い……最後まで生きると決めている。そして自分達を閉じ込める牢獄は壊れた。

 

——此処で、未来は決まる。ええ、間違いない……私達は私達の道を歩きたい……誰かに指図される事なく、生きたい。きっと、自由ってこう言う事を言うのかも知れない。

 

「オト姉。オト姉の判断なら、何も言わないよ?」

 

「……ウィキ姫ちゃん。ええ、ありがとう」

 

——紫って人。裏で何を考えているのか分からない。この判断が間違っていたとしたら……と言う不安もある。でも、此の儘、地上に出たとしても終わりない戦場かも知れない。不安、果てしなく不安が付き纏う。あの人は『愚民政策』と言っていた……知らないからこそ、恐怖を感じる、と。

 

「それから、ウィキ姫ちゃん。何が起こっても何も言わないで」

 

「う、うん……」

 

 ウィキッドに何が起きても口を挟まないで欲しいと言っておく。素直故に言う事は一応、聞いてくれる。度が過ぎれば挟んでは来そうだが、一応の釘差しはしておいた。

 

 

 

 

 

 

 

「想像以上に早いな。素直に驚かされてばかりだな……。ちょいと決断早すぎないか?と言う心配もあるがな」

 

 暫く時が過ぎると医務室の扉が開かれて紫が入って来た。オトゥールの伝聞を聞いて予想外だと言いたげな表情を浮かべて此方の様子を案じる様な物言いをしている。本人からすれば『取引』の話はもう少し後になると考えていたからだ、コレは本当に予想外だった。

 

「決断の遅れは危険を招く、違うかしら?」

 

「性急も又、危険を招くが……手を拱いているよりはずっと良い。で、メサルからこの『エストレア』の事情は聞いたからその辺の話は割愛させて貰う」

 

「ええ。貴方達はAIS、つまりISに対する戦力が欲しい。合っているわよね?」

 

「ああ、間違いは無い。ウチは万年、金欠で火の車って奴でな……仕事を取ろうにも作ろうにもISの存在が邪魔でな。対処法を確立出来ずに手を拱いている為に細々とした仕事しか取れない。俺の目的を実行に移すにしても、コレでは途方もない時間が掛かる。相応の実入りのある仕事を取り俺の目的に近付く為にはやはりIS絡みが最短経路。かと言ってその為のAISの確保は『エストレア』じゃ難しいのが現実でな」

 

 紫は『目的』があると言う。その目的を果たす為にもISの存在は邪魔らしい、その邪魔なISを排除する為にも現状で1番、有効打になり得るのがAISの存在であった。

 

「で、君の言う条件を聞こうか?」

 

「行方不明の仲間を探したい。その足掛かりにさせて欲しいの」

 

 オトゥールの要求は、コレまた紫からすれば想定外だった。紫の予想としては彼女達自身の自由か何かかと考えていたからである。

 

——移動出来るコミュニティと言っていた。つまり此の儘、彼方此方に向かう事が出来ると言う事。ならば行方知れずになってしまった皆を探しに行ける。きっと、皆……何処かで生きている筈‼︎

 

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