※この作品はR-18です。

ジェノサイド・ストラトス   作:夢現図書館

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波乱の幕開け

 

 

「行方不明の仲間を探したい。その足掛かりにさせて欲しいの」

 

 オトゥールの要求は、コレまた紫からすれば想定外だった。紫の予想としては自由か何かかと考えていたからである。

 

——移動出来るコミュニティと言っていた。つまり彼方此方に向かう事が出来ると言う事。ならば行方知れずになってしまった皆を探しに行ける。きっと、皆……何処かで生きている筈‼︎

 

「……行方不明?そりゃあ、埼玉コミュニティから別コミュニティへ売り飛ばされた者達の事を指すのか?」

 

「それもある。けど、他にも居るのよ。ウィキ姫ちゃんはその時、1番幼かったから覚えて居ないでしょうけどね」

 

「説明してくれないか?」

 

「ええ。と言ってもそんな長くは無いわ。私達は捨子、元々は孤児なのよ。両親の顔さえも覚えて居ないわ。廃墟の街並みの幼稚園と呼ばれた建物で寄り添って生きていた。皆、その頃はとても幼かったわ……ウィキ姫ちゃん以外、名前が分からなかった。だから私は皆に名前を付けたの」

 

「ふむ……」

 

「けど、ある時に大人の男性達がやって来た。その時、初めて大人の男性と言う存在を見たわ……絵本で見た大人よりも酷い人達だった。皆、捕まって……散り散りになった。私とウィキ姫ちゃんとその他、数人の子達は同じコミュニティ、他の子達は何処かのコミュニティへ……そして牢獄に入れられた。その先は貴方の知っている通りよ」

 

「……AISの過半数が孤児や捨子……生きる為に自分からAISになる事を選ぶ少女も居る。成程、君はその孤児達の集まりのお姉さんだったんだな。年長者故の」

 

「ええ……」

 

「成程。君の要求は行方不明の仲間の少女達を探す事、か?」

 

「もう少し欲を言うのならば、安全な場所に迎え入れて欲しい。大体、私よりも年下でウィキ姫ちゃんより年上の年齢の子達よ。どんな子に成長しているか、全く分からないけど……何とか説得してみるわ」

 

「……ふむ。纏めるとだな。君達は戦力、及び人員の提供、その見返りに俺は清潔なベッドを提供するって形か……?」

 

「その表現が何を意味しているのかは読み取れないわ……」

 

「そうだったな。無学だったのを忘れていたよ……この表現だと誤解を招くか。確かに俺達は戦力が欲しい……だが、君の言うそのAISはアテになるのか?」

 

 紫が疑問に思うのは其処であった。確かに戦力は欲しいが、見た事も無く実績も不明。そして戦力になるかどうかさえも怪しい。エストレアの懐事情としては言い方は凄く悪くなるが使えない人材を抱えられる程の余裕は全く無いのだ。

 

「ごめんなさい。其処は、何とも言えないの……それでも、取り返すチャンスが欲しいの‼︎ 今迄は皆……私の手の届かない場所に行ってしまった……だからこの手に残ってくれたウィキ姫ちゃんだけでも護ろうと考えていた。でも、チャンスが巡って来てくれた……だから、お願い‼︎ 皆を取り返すチャンスを頂戴‼︎」

 

 オトゥールは其処で横たわっていた体勢から無理に起き上がり座り直す。身体中、包帯だけを巻いている身体を晒す。躊躇いは無い……。

 

「……私自身の身体を好きにしても構わない‼︎ あのコミュニティの様に奴隷の様に使ってくれても、性奴隷の様に性欲の吐き口にしても、牢獄に押し込めて拷問に晒してくれても構わない‼︎ だから……‼︎」

 

 オトゥールは自分自身を犠牲にしてでも構わないと言う覚悟を持って懇願した。痛みがある中で頭を下げた。

 

「止めなさい、頭を下げるな」

 

 其処で紫は制止させた。こんな光景は見たくは無かったからだ。

 

「自分の体を大事にしろ。何も『無理』とは言って居ない……それに軽々しく性奴隷とか口に出さないでくれ……」

 

 バツが悪そうに紫はそっぽを向きながらそう告げる。知っては居るがその手の話題に関しての免疫は殆ど無い、それに現在のオトゥールは身体の各所に包帯を巻いただけ(代えの下着さえも付けて居ない)の姿故に直視出来ないのだ。

 

「……で、その行方不明の仲間って何人くらいなんだ?」

 

「えっと……うーん。30人は、超える……かしら?」

 

「マジ、か……」

 

 想像以上に多かった。そして紫はオトゥールの記憶力にも驚いた。何年前かは知らないがその人数を記憶しているのだから凄いと言える。何せ、暴行が横行する中で褪せた記憶を覚えているのだ。気丈と言えばその通りだ。

 

「……ふむ。名前は、覚えているか?」

 

「ええ。私が皆に名前を与えたもの。覚えているわ」

 

「殆、驚く他無いな。君の提示する条件が行方不明の者達の保護、か。話を聞く限り……大半がAISになっているだろうな。故に全員が生存している保証は確約は出来ない」

 

「……覚悟はしているわ」

 

「それを第一条件として俺が呑めば此方の要求も聞いてくれる、で良いな?」

 

「ええ……私の身体を好きにしてくれて良いわ。縛るなり嬲るなり、お好きにどうぞ?」

 

「それは却下だ。自分の身体を大事にしろ。俺からの要求は戦力提供、位だ。元々、AISとして生きている君達は言い方は悪いが戦う事しか知らないだろう?」

 

「……本当に言い方が悪いけど。ええ、その通りよ。私達は戦う事以外、何も出来ないわ」

 

「……そうか。だが、今はそれで良い。知りたい事は後で知って行けば良いさ。何、焦る事は無い。いつの時代でも勉強が嫌いだと言う者は1人として存在していないからな」

 

「……それで、返答は?」

 

 オトゥールは自身の要求を答えた。紫は対ISの戦力として2人を欲している。対するオトゥールは行方不明の仲間達の捜索及び保護を要求している。リスクとしては紫にとって不利になる様な取引条件。紫は顎に手を添えて少し考える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いだろう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その取引条件を呑もう」

 

 考えた末に紫はオトゥールの提示した条件を認めた。オトゥールは条件を呑んでくれるなら紫の取引に応じると答えた。つまり取引成立である。

 

「現時点を持って君達2人を『エストレア』に迎え入れる。そして、君の言う行方不明の者達の捜索及び保護に関してだが、発見次第、状況を整えた後に当コミュニティである『エストレア』に迎え入れる、で良いな?」

 

「ええ……帰る場所も無ければ行くアテも無い。アテも見えず彷徨った挙句、また他のコミュニティの人間達に捕まって牢獄に押し込められるよりは貴方のコミュニティの方が良さそうって考えたの。正直な所、無茶な要求だとも分かっていたわ……却下される覚悟もしていた」

 

「……足元を見られて居たのは此方だ。ヴォルヴァを相手にして生存出来る奴なんてそう居ない。俺から見れば逃したく無いと言うのが本音……どんな無茶な要求が飛び出すか戦々恐々だったからな……」

 

 紫は戦力皆無の状況で見出せた2人を逃す程、愚かでは無い。多少のリスクを背負ってでもオトゥールとウィキッドを抱き込む価値があると見出したのだ。それに改めて考察を行った結果、見ず知らずの面子よりも見知った者達で固めた方が内部崩壊のリスクもある程度は低減出来ると言う発想に思い至った。何も出来ない訳では無い、『道』は1つでは無い。性急過ぎて居たのは他ならぬ自分の方であったと呆れる他、無かった。

 

「今一度、考えた結果……。それで君が行方不明の者達に説得してくれるんだよな?」

 

「ええ、皆……見つけたいのよ。例え、亡骸であったとしても」

 

「フッ……なら良い。どんな連中かは知らないが……何事も未知の存在である事に変わりは無い……どうやら性急過ぎていたのは俺の方だった、オーナー失格だな、フハハ……余程、焦っていたのか、俺は」

 

「うに?話、終わった?」

 

「ええ。でも、もうちょっと掛かるわ。そうでしょう?」

 

「ああ、この取引には『穴』がある。君達と『埼玉コミュニティ』との契約が消失している事が前提条件だ。確かにヴォルヴァによって君達の所属コミュニティが壊滅的な被害を受け回収出来た生存者もそう多くは無い。メサルが確認した限りコミュニティ・オーナー以下、有権者各位の所在は不明。生死不明だ」

 

「仮に生きていたら?」

 

「……返還要請が来るだろう。その場合は応じざるを得ない。その為、この取引は一時的になり得る可能性もある。オマケにAISには頭にナノマシンがある筈だしな、流石に現状では摘出するのは無理だ……。そう言う意味でも返還の要求を反故するのは危険だ……其処の所は頭に留めて置いてくれ」

 

 埼玉コミュニティの有権者が生存していた場合、返還要請が出されると指摘する。その場合、紫はその要請に応じる必要がある。コミュニティの規模的にも向こうが圧倒的に上であり、その要請を反故にした場合物理的な衝突が発生する可能性が高い……その場合、エストレアは間違いなく勝ち目は無い。そうでなくてもAIS各位に脳内にナノマシンに注入されている。現状、遠隔操作で爆破されていない為に様子見か或いは……。仮にその問題は無くなったとしても無理に反故にすれば経済制裁が行われる可能性も視野に入る為にコミュニティとしては死活問題に直面する。そう言う意味でも今回の取引を持ち掛ける紫はかなり危ない橋を渡っている事になる。

 

「……その心配は薄そうよ。紫」

 

 その時、医務室の扉が開かれてある人物が入って来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

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