※この作品はR-18です。

ジェノサイド・ストラトス   作:夢現図書館

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壊れた導

 

 

 牢獄の前から移動して上階へと登る。2階以降は、廊下の底が抜けてしまっており穴が随所に発生しているのが見える。落ちない様に渡って行く必要がある。

 

「ウィキ姫ちゃん。落ちないように気をつけて」

 

「うに」

 

 崩落した廊下。普通の人間ならば迂回するだろうが、2人はしなかった。量子変換して展開した武装を棒飛びの要領で構えて助走を付けてから打ち付けて反動で向こう側へ跳ぶ。最初にオトゥールが行いその後を見よう見真似でウィキッドが真似て飛び越えた。ウィキッドの場合、体重が軽い為にすっ飛ぶ形で飛び過ぎる傾向があったが跳び越える点に関しては問題ない。

 

「……上手く行ったわ」

 

「彼方此方の通路、底が開いちゃっているみたい」

 

 何回も開いた穴を跳び越えて行く。破壊の傷痕は凄まじくちょっとの衝撃を与えてしまえは崩落してしまいそうな程に耐久力が落ちている。現に飛び越えた後に元いた場所は崩れ落ちてしまっている。

 

「ええ。足元が悪いから気を付けて行きましょう……司令室は何処かしら?」

 

 今にも崩れ落ちそうな廊下を歩きつつ司令室を目指す。このタイミングでエインヘリヤルやISに襲撃されては堪ったモノでは無い。最もこんな廃墟に用件があるのか?と言われた場合は答えに窮してしまうが。

 

「……此処、かしらね?」

 

 壊れた扉から中の様子を伺う。多数の電子基盤と思わしきモノが見える。そもそも司令室と言われてもピンと来ない為に機械が多数存在する場所と言う認識程度にしか思い当たらない。そう言う事もあり機械が多数ある部屋と考えて探していた。

 

「うに。大きく抉られた跡が見えるよ……」

 

 折れ曲がった扉を退かして部屋の中へと侵入する。壁には一閃するかの様に大きく抉り斬られた跡が残っている。恐らくあの時の無線の内容からヴォルヴァ・ヒムの手による破壊の痕跡だろう。

 

「機能を停止している。万が一、と思っていたけれど……その心配は無さそうね」

 

 沈黙したアナログ・キーボードを触って見てオトゥールは動く気配は無いと判断する。司令室のシステムを介してAISのナノマシンの遠隔操作を行なっていた。そのシステムが完全に沈黙している為に自分達の頭に注入されていたナノマシンの脅威は緩和されたと見るべきか。

 

「……ほぇぇ……あ……オト姉、オト姉」

 

「ウィキ姫ちゃん?」

 

 周囲を見渡していたウィキッドがオトゥールを呼ぶ。ウィキッドの視線の先、抉られた壁の傷痕から向こう側の部屋が見える。無機質さの部屋の一角に場違いなモノが視界に映るのが見えた。丁度、破壊された一閃の穴から向こう側へと入れそうである。

 

「……隣の部屋にナニカあるよ?」

 

 気になったウィキッドはその隙間を潜り向こう側の部屋へと侵入した。オトゥールも通ろうとしたが……。

 

「あ、胸が……これじゃあ、通れないわね……」

 

 オトゥールはウィキッドと比べて身長が高い上にウィキッドに枕代わりにされる程の爆乳である為に引っ掛かってしまって通れなかった。壊すにしても各地の脆さ具合から見るに強い衝撃を与えてしまうと倒壊してしまう可能性があった。

 

「ごめんなさい、ウィキ姫ちゃん。お願いして良いかしら?」

 

「うに‼︎」

 

 仕方ないのでオトゥールは司令室に待機してウィキッド単独で部屋内を物色する事になった。司令室の隣はロッカー類がある部屋に見える。

 

——えーと、あ、あった。

 

 部屋の奥、その隅に無造作に置かれていた蓋の開いたダンボール箱。その中には色々なモノがごった返して置かれていた。大半が小物であり玩具の様にも見える。その時、風を切る音が聞こえた。

 

「……わひゃ⁉︎」

 

 突如、背中を押されて押し倒された、どうやら何かが乗し掛かって来た様だ。視界を動かすと其処には青黒い胴体に多脚の脚が付いた機械兵器が其処にいた。造形は蜘蛛を模している様だ。その機械蜘蛛がウィキッドに乗し掛かっている。

 

「え、なに、なに⁉︎ ひゃ⁉︎つ、冷たい‼︎」

 

 小柄故にウィキッドと力では重量のある機械蜘蛛を押し除ける事も叶わない。踠いている間に機械蜘蛛の口付近から白い粘液が首元に掛けられる。ひんやりと冷たく粘着質の様に纏わり付く。

 

——な、何をする気……⁉︎わ、わ⁉︎

 

 その後、身体の周りに白い粘液が掛けられて行く。粘液故に身体に着くと中々、剥がれない。その為、暴れても身体を拘束するように粘液が掛けられ動きを徐々に封じて行く。粘液の正体は糸の様であり蜘蛛糸の様にも見えた。

 

——う、うう。う、動けない……‼︎ もう、嫌ッ‼︎ 蜘蛛、嫌い‼︎

 

「も、もう‼︎ 離して‼︎」

 

 唯一の足だけは無事だった為に思いっきり蹴り上げて体勢を崩させる。重量はあったがどうにか体勢を崩させる事には成功してその時に出来た隙間から逃れる。

 

——腕とか動かせない……うう、どうしよう。

 

 白い蜘蛛糸の様なモノで上半身は簀巻き状に拘束され腕は使えない状態にされてしまっている。機械蜘蛛は蹴り飛ばしただけでは沈黙せずに多脚を用いて体勢を立て直す。

 

——うー、機械の蜘蛛とか、気持ち悪いよ。武器が使えないし、どうしよう。使えると言ったらロッカー?

 

 腕が使えない状態故に使えるモノは限られている。蹴った程度では目の前の機械蜘蛛は壊れない。そもそも動力自体が良く分からない。埼玉コミュニティでこの様な兵器があったか?とウィキッドは記憶を探るも思い至らない為に直ぐに意識を切り替えた。

 

「ッ‼︎」

 

 機械蜘蛛はウィキッドの抵抗を確認した為に多脚を用いて此方へ突っ込んで来る。蜘蛛らしい気味の悪い動き方であり生理的嫌悪を覚える。その突進を躱してロッカーのある方向へと誘う様に逃げる。

 

——立て付けの悪いロッカー、あった。この場所なら……。

 

 ロッカー類がある場所へ逃げ込む。建物自体が倒壊しつつある状態の為に床が隆起している場所が散見されていた。その為に幾つかは倒れそうなロッカーがある。その1つの陰に隠れて待ち構える。

 

「来た……今ッ‼︎」

 

 機械蜘蛛が来るタイミング身体を使った体当たりで倒れそうなロッカーへとぶつかり傾かせた。傾き始めたロッカーは追って来た機械蜘蛛に倒れ掛かる形で倒れて押し倒す事に成功する。

 

——え……?

 

 其処でウィキッドは目を丸くした。倒れたロッカーを支える形で機械蜘蛛から離れた位置に青白いハニカム状の膜の様なモノが展開されている光景を。

 

——見た事ある……‼︎ アレはシールドバリア⁉︎ と言う事は、アレはIS……なの?

 

 小型と雖もウィキッドの体格よりも大きい機械蜘蛛。シールドバリアの存在からIS、だと推測出来る。ウィキッドが見た事あるISはほぼ全てがロボットや機械鎧の様な姿をした存在。少なくとも人型に類似しない姿をしたISを見るのは初めてである。

 

——シールドバリアがあるんじゃロッカーを倒してぶつけた程度じゃ止まらない‼︎ 腕が使えないから蹴っても殆ど効かないし……‼︎ と言うかこんなIS見た事無いよ‼︎

 

 蜘蛛糸の拘束により腕が使えないと言う事は武装も使えないと言う事を意味している。そして相手は小型化していると雖もISはIS。油断すれば命の危機に直面する……と言っても現時点でもかなり危険な状況なのに変わりは無かった。

 

——くっ、此の儘だと……不味いかも、ISが出没するならするって無線機から連絡あっても……。

 

 耳に付けたインカムからは僅かなノイズ音が響いているだけに留まっていら。何かしらトラブルが発生している可能性が高い。隣の部屋からは奥まった位置でありオトゥールが気付いていない可能性もある。更に後方は行き止まりである為、ウィキッドの状況は正に危機的状況と言わざるを得なかった。

 

 

 

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