※この作品はR-18です。

ジェノサイド・ストラトス   作:夢現図書館

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反撃の狼煙

 

 

「うーん。ちょっと遅いわね……」

 

 その頃、隣の部屋では斬撃跡の亀裂前でオトゥールがウィキッドの帰りを待っていた。亀裂から入れないなら正面から入ろうかと考えたが、この部屋の前の扉付近の床が陥没しており入りたくても入れない状態となっていた。その為、入るならばこの亀裂の隙間から入るか壁を粉砕するかの2択となっている。

 

「……それに、無線機からはノイズみたいな音が響いていて通話出来ないのが気になるわね……ウィキッドちゃんとも連絡が取れないし、ちょっと心配ね」

 

——流石に長いかな。此の儘、待って……ッ‼︎

 

 オトゥールは思考に耽った直後、後方に飛び退きつつ首元から下げていたネックレスに手を掴むと同時に量子変換で形成させたモーニングスターを構えて着地。立っていた場所には多脚の機械、機械の蜘蛛の様な存在が現れていた。

 

——頭上から奇襲⁉︎ と言うよりも、こんな存在見た事が無いのだけど⁉︎

 

「……取り敢えず、敵は敵。かしらね‼︎」

 

 オトゥールはモーニングスターを構え直して突撃し横殴りにフルスイング。何はともあれ、自分達以外は基本的に敵。機械相手ならば躊躇う理由は無い。そもそも、此処は既に廃墟と化したコミュニティだ。暴れられて困る者など既に居やしない。

 躊躇いを感じさせずに振るわれた鉄塊は機械蜘蛛に直撃する直前、ハニカム状の薄い膜に阻まれた。それでも衝撃は殺し切れないのか不自然な形で機械蜘蛛が吹き飛んで行く。

 

——シールドバリア⁉︎ 人型では無いIS……⁉︎

 

 オトゥールはすぐ様にそのハニカム状の膜がISが最強たらしめるシールドバリアである事を見抜いた。前提条件としてシールドバリアを打ち破る事が出来なければ本体に攻撃は一切通らない。なまじ打ち破れたとしても『絶対防御』の存在がチラついている。

 

——……考えるのは後。となると、ウィキ姫ちゃんの向かった先にも居る可能性が……流石にちょっと危険かも知れないわ。あの子、大の蜘蛛嫌いだし。

 

 立ち止まっている余裕は無いと判断したオトゥールはモーニングスターを構え直して体勢が崩れた蜘蛛型ISの脚部を狙って振り下ろす。しかし、鉄塊は脚部に直撃する直前にシールドバリアに阻まれ耳障りな音が響き渡る。

 

——シールドバリアは無限にある訳じゃない。ISの残存エネルギーによる、と。生半可な攻撃じゃ、バリアを削り切れない。

 

 だからこそ、ISにはISと言われた。既存の常識を覆す火力を以って、制するのだと。

 

「……私はこんな所で立ち止まっている余裕は無いの‼︎」

 

 オトゥールは身を引いた後に身体を捻って遠心力を利用し床を擦りつつ足元から掬い上げる形で蜘蛛型ISを打ち上げる形で一撃を叩き込む。当然ながら、真下にも張られたシールドバリアがその一撃を拒む。それでも叩き付けられた衝撃は殺し切れない為にカチ上げられて天井にも激突する。

 

「……全く効いていない」

 

 モーニングスターの一撃、そして天井に激突しても本体にはダメージらしいダメージを与えるには至って居ない。その様子からシールドバリアを打ち破るには至って居ない事が推察される。幸い、激突した衝撃で着地には失敗している。

 

——やはりシールドバリアの存在がやっかい過ぎるわ。外部からの攻撃を悉く受け止められてしまう。伊達に最強の兵器を名乗っては居ない。良くあんな連中を前にして人間達は今日まで生きて来れたわ……。

 

 其処からオトゥールの判断は早かった。攻撃が効かないならば何時迄も相対している暇は無い。危険はあるが何もしないよりはマシと判断してウィキッドの潜り込んだ隣の部屋を跨ぐ壁を叩き壊して飛び移る。

 

——今回はあくまで探索。無理してISの相手をする必要は無いわ……‼︎

 

 隣の部屋はロッカー室の様であり多数のロッカーが置かれている。隣の部屋に飛び込めば騒音らしきモノが聞こえて来る。此方でも似た様な状況になっている様である。奥へと進めば先程の蜘蛛型ISと同型機と上半身が蜘蛛糸の様なモノで拘束されたウィキッドが対峙しているのが見えた。

 

「ウィキ姫ちゃん‼︎ と言うか、邪魔ッ‼︎」

 

「オト姉⁉︎」

 

 状況を瞬時に把握したオトゥールは進路方向に居る邪魔な蜘蛛型ISを背後からモーニングスターで振るって殴り飛ばす。当然ながらシールドバリアの存在により吹き飛ばされるも本体には傷さえも入らない。

 

「奇襲仕掛けて来るなんて、狡猾ね。知能を付けたとは良く言うわ……」

 

 此処にはISが2機も居る。此方の攻撃が全く通じないのだから不利は明白。それが人間の様な自我を持ち知能を付けた相手ならば尚更である。

 

「ウィキ姫ちゃん。取り敢えず今は、逃げましょう‼︎」

 

 オトゥールは足元の床をモーニングスターで叩き壊して底を開けて落下して下の階層へと物理的に降りる。その後、ウィキッドを連れて兎に角、ISから逃亡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯

 

 

 

 

 

『や、やっと繋がりましたー……。急にジャミングされたのか通信出来ない状態になっちゃっいましたから、心配しましたよ』

 

「ジャミング?」

 

『人為的な通信障害です。通信の妨害電波が発生すると無線機の通信が出来なくなっちゃうんです。廃墟で唐突に発生するなんて……』

 

「……心当たりと言えばISと遭遇したわ」

 

 蜘蛛型ISの奇襲から逃れた2人はコミュニティ内のある部屋にて休息を取っていた。ウィキッドの上半身に蜘蛛糸が巻き付けられておりウィキッド本人が自力で解けない為に解く必要があった。その最中に無線機の通信が復活して今に至る。

 

『え、ええ⁉︎ そ、そうなんですか⁉︎』

 

『代わってくれ。オトゥール嬢。よもや、本当にISに遭遇したのか?』

 

「え、ええ。蜘蛛の姿をしたISよ。ウィキ姫ちゃんと同じくらいの体長だったわ……シールドバリアを持っていたわ」

 

『成程な……過去に何回か人型では無く動物系に再構成した姿を持つISの存在が確認された事がある。蜘蛛型もその一種なのだろう。と、なると現状から考えられるのは奴が一定範囲内にジャミングを展開していると思われるな』

 

「……後、私達の今の武器じゃ破壊する所かシールドバリアを打ち破る事も難しそうよ。本気で殴り付けても防がれちゃった」

 

『だろうな。進化している以上、IS自身もシールドバリアの欠点も気付いている筈だからな……』

 

 紫は現状では勝ち目が無い事は承知だった様である。元々、常時張りっ放しだった頃に比べると瞬時に展開している様にも見えた。ISもエネルギーが必要であるが故に無駄なエネルギーを使わない機械的な合理的判断に基づき行動しているのだろう。

 

「……貴方、分かっていたの?」

 

『IS共の乱入は流石に想定外だっての。廃墟にわざわざ、出向いて来る理由が分からんよ……が、都合が良い。そのISを破壊して残骸を持ち帰って来て欲しい』

 

「貴方、話を聞いていたの⁉︎ 私達の攻撃は殆ど効いていないって‼︎」

 

 あろう事か紫は蜘蛛型ISの残骸を持ち帰って来いとまで宣って来た。オトゥールからすれば正気の沙汰とは思えない言動だった。オトゥールのモーニングスターのフルスイングの一撃さえ無傷で耐え切った相手。恐らくISの中でも小型だが、シールドバリアの存在故に舐めていると痛い目に遭うだろう。

 

『聞いていたよ。無策で挑むのは、な。君達に渡した武装は『試作品』と言った。拡張領域以外にもある機能を付けている。まさか、初日からISと遭遇するとは運が良いのか悪いのかは分からないがな』

 

 自嘲気味な声。本人も初っ端からISと遭遇するとは考えては居なかったらしい。本人は運が良いのか悪いのかとも言う。

 

「……その機能ってのは何よ?」

 

『埼玉コミュニティから回収出来た代物の中にリスクが大きいが、使い方次第では……と言うモノがあった。時間が足りなかった上に検証データも無い上に資料も乏しい……ので未完成のままでな。試しに使わねば無意味な技術だ』

 

「簡単に言ってよ〜。分かんない‼︎」

 

 紫の説明にウィキッドは声を上げる。やはりウィキッドには分かりにくいのか通じていない。

 

『そうだな。簡単に言おう、シールドバリアを中和(・・)し一時的に無力化する……と言えば簡単か』

 

 その言葉は2人からすれば驚愕モノと言える内容であった。

 

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