「……倒した」
エインヘリヤルを発見。反応される前に頭部を粉砕し、其の儘、胴体を割断した。腕が壊れようが足が吹っ飛ぼうが頭が刎ねられようがエインヘリヤルは蠢き続ける。元々、死体に機械を無理矢理繋げた様な見た目なのでマシンゾンビみたいなモノだ。確実に破壊しなければ奇襲される。
「一体だけだったのかしら?……他にエインヘリヤルは?」
『えっと……その1体だけみたいです、はい』
「…………」
オトゥールはスピカに無線で他にエインヘリヤルが潜伏していないか聞く。以前、ジャミング仕様の蜘蛛型ISの存在もあり、レーダー云々は余り信用は出来ない。
『すみません。前回の埼玉コミュニティP2跡地の時もそうでしたが、エストレヤのレーダーシステム自体、他のコミュニティから見て旧式と呼ばれても差し支えない性能なんです。
それに加えてIS自体、日々進化しているんです。その内、レーダーに反応しない対レーダー完全ステルス型ISやエインヘリヤルが誕生するかも知れません』
「……つまり、レーダーに反応しないISが現れるかも知れない、と言う事?」
『そう、考えて頂ければ……』
「オト姉、オト姉。このエインヘリヤル、ボロボロ……」
——腕自体、壊れてる。それに脚も元から千切れていたみたい……。
「……私達が壊した箇所、じゃないわ。元から? いえ、私達よりも前の戦闘の時、かしら?」
『……元々、反応が微弱でした。つまり、手負いで沈黙寸前だったのかも知れません』
——だから、あんなにアッサリ死んだんだ……。
「こう言う個体も居るって事みたいね……」
『何処かのコミュニティの作戦での撃破漏れで逃亡に成功した個体かも知れません。しかし、IS側はエインヘリヤルの生産はしますけど、修理すると言う行動は確認されていません』
それは、つまり……。
「使い捨て……と言う事なのね。人間達がAISを使い捨てる様に……。ISもまたエインヘリヤルを使い捨て同然に運用している……」
嫌な共通点である。
人類はIS適性がある女性をAISとして扱って使い捨てる前提。対するISは死んだ男性をエインヘリヤルとして改造し使い捨て兵器として運用している。ただ、違う点と言えば生きているか死んでいるか、そしてIS側は自らも戦闘に加わる場合があると言う事だ。
『ISは人類と敵対してから独自の進化を現在進行形で進んでいます。今もまた知らない情報が発生しても不思議ではありません』
進化する機械。進化する生物。生存競争の果てに何方が勝るのか……それは分からない。自分達はその渦中に居る事だけは確かである。
「あ、ねぇねぇ。エインヘリヤルのパーツって使える?」
思考の深みに嵌りかけた時、ウィキッドは壊れたエインヘリヤルを見てオトゥールを見てそう言う。
『あ、はい。えっと、ウィキ姫様。もう少し良く見せてください。もうちょっと、左に……あ、逆です逆‼︎ そうそう』
2人に渡された無線機にはカメラ機能が備わっている特別製。その為、エストレヤのオペレーターであるスピカはモニターを通して外界の様子が把握出来る。
『うーん……見た感じ劣化が酷そうですね。耐久性は然程高くは無いと思われます』
「使えない?」
『……端的に言ってしまえば、そうなりますね』
このエインヘリヤルは機械腕のパーツは劣化が激しく転用しようにも耐久性が乏しく使えた物では無い様だ……。
「そっかー……」
「兎も角、この一体だけじゃ無さそうだし……警戒を……っ。ウィキ姫ちゃん」
オトゥールがモーニングスターを構え直して周囲を見渡す。
「ん、何か、いる……?」
ウィキッドも何かの気配を感じ取ったのか、周囲を見渡してみる。割れた道路、折れた標識、朽ちた信号機、生い茂る雑草や街路樹。その内、遠くの曲がり角付近で何かが動いた様子が見えた。
『レーダーには、何も反応がありません。……野生動物でしょうか?』
地上では昆虫も居れば犬や猫と言った動物も偶に見かける。……最も死骸となっているパターンも多いが。
「……ッ‼︎」
「あ、逃げた」
影が動いた。つまり其処にナニカ居たと言う事。どうやら此方に気付いて逃亡を選択した様だ。
「どうしようかしら?」
エインヘリヤルならば此処で襲って来るだろう。気付かずに素通りしたのか?
『……放置しては後々で窮地に陥るかも知れません。正体を突き止めましょう‼︎』
スピカは追撃を指示。ウィキッドとオトゥールは同意し、得物を量子変換させ仕舞い身軽になった所で逃げたナニカの方角へと向かう。
「あ、あっちだよ‼︎」
曲がり角から見えた時、一瞬だけだが脚らしきモノが見えた。交差点を2つ程、通り過ぎた先の曲がり角。
「追いましょう」
更に追い掛ける。又しても曲がり角を抜けた一瞬だけ見えた。肌色の足?が一瞬だけ見えた。
——……人間の足?
エインヘリヤルならば両手両脚、機械のパーツに置き換えられている為にその線は無い。だとするならAIS? いや、それも無い。何故なら自分達は兎も角、AISは基本的に首から下を全身を覆い尽くすAISスーツに身を包んでいる。肌が露出している場合は大概が性処理道具として扱われている時、くらいしか思いつかない。
『ッ‼︎ 前方にエインヘリヤルの反応あり‼︎ お二人とも、気を付けてください‼︎』
「きゃあ⁉︎」
スピカの警告と共に、前方から悲鳴が聞こえてくる。更に奥の曲がり角から見えた光景は、袋小路の場所に一体のエインヘリヤル。丁度、大通りと袋小路を封鎖する形で現れた。先程の壊れ掛けとは違い装甲等は大型で人間の肉体の部分とバランスが噛み合っていない様に思える。その奥には恐怖からか腰を抜かして尻餅をついた少女が見えた。
——AIS、じゃない……? 後、あんなエインヘリヤル見た事無い。
『データに無い新型のエインヘリヤルッ⁉︎ 一先ず、あのエインヘリヤルを破壊して下さい‼︎』
「分かったわ」
「うに……‼︎」
新種のエインヘリヤル……。先程、進化の話があった為に何れは起こる事は分かっていた。
だか先ずは目の前のエインヘリヤルを倒す事からだ。幸い、相手は此方に気付いていない。今なら不意打ちを仕掛ける事が出来る。即座に得物を展開した2人はほぼ同時に得物を振るい背後からエインヘリヤルへ強襲を掛けた。